女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ

三龍会との決戦ーその④

ルーシーは真っ先に拳銃を発砲する。
「銃の弾ね、私に撃っても無駄って事を分からせてあげるよ」
オウはテーブルの脚で拳銃の弾を弾き返す。
「そっ、そんなベレッタを簡単に弾き返すなんて……」
「ふふふ、驚いた？私が身につけているのは、中国古来の武術カンフーよ、あんたも名前くらいは聞いた事があるよね？」
オウの言葉にルーシーは両眉をあげる。
「あれね ！脚で蹴る技……」
「やっぱり、アメリカ人の発想ってそんなものなのね、あんたは勘違いしてるけど、カンフーは足技だけじゃあないの、それに言っておくけど、今のはカンフーじゃあない」
「カンフーじゃない？でも、あなたはさっきカンフーって」
「それは、これからの説明を分かりやすくするために言っただけよ、カンフーというのは中国の武術の一つ。つまり、カンフー以外にも中国には多種多様な武術がある事を分からせてやりたかったのッ！」
オウの言葉にルーシーは顔を青ざめる。
「つまり、あなたが使ったのは中国の武術の一つだと言いたいの？」
「ご名答」
オウは手をパチパチと叩く。
「私が使ったのは、中国の武術の一つ棒術ね、他にもヌンチャクという武器を使ったり、サイというあんたらの言葉で言うナイフのようなものを使う武術があるね」
ルーシーは冷や汗を垂らす。
『参ったわね、わたしは魔法を少ししか覚えていないわ、少しは使える筈なんだけど、そこまで強い魔法が使える魔法があるとは思えないわ）
「焦ってるね、あなた……『わたしではあの子に勝てないわ』大方そんな風に考えたんだろうね」
オウの言葉はまるでルーシーの心の底を覗いているかのようだ。
「だったら、どうするというの……」
ルーシーは屈さないと意味でベレッタの銃口をオウに向ける。
「怖いね、それがあんたの執念ってわけ？それともファミリーのボスとしてのプライド？」
ルーシーは答えない。
「あんたに答える義務はないって？それでもいいけどね、あんたはどのみち積んでいるんだから、私が始末するまでもないんだけれど……」
オウの持っている乱暴に剥ぎ取られた机の脚の壊れて尖っている部分がルーシーに向く。
「リュー老師の手を煩わせるまでもないから、私があんたを始末してあげるよ」
オウは不気味な笑いを浮かべている。

ヴィトの剣とリューの唐剣がぶつかり合う。
「このやろっ……」
「いいぞ、若いの、お前さんの必死の顔を見れただけで、ワシはアメリカに進出した甲斐があったというものだ……」
リューは不適な笑いをヴィトに向ける。
（流石中国を牛耳る怪老……一筋縄ではいかない、相手というわけか……」
ヴィトは唇を舐めながら、考察する。目の前の怪老は中国４０００年の歴史を歩んできたと言われている。
ヴィトとしてはそんな事は嘘だろうと思っているが、目の前の老人の強さを感じれば、それくらい思いたくもなるだろう。
「あんたは今まで他の自分たちに従わないファミリーのボスもこんな風に消してきたのか？」
リューは首を横に振る。
「いいや、ワシが殺す前に大抵が、オウかチェンに殺されたよ、最もチェンはお前さんに殺されてしまったがね」
リューの言葉にヴィトは自らの下唇を舐めずにはいられない。
やばい奴を相手にしてしまったと。
「お若いのお前さんの勇気は買うがね、今からでも遅くないよ、ワシの傘下に降らないか？」
ヴィトは一瞬その考えを受け入れようかと考えたが、リューの考えを退けた。
「いいや、オレは独立したファミリーの相談役コンシリエーレでいたいんだ。三龍会やら、コミッションの配下に属したファミリーの相談役コンシリエーレなんてやっちゃあいられないよ」
ヴィトの言葉にリューは声を上げて笑い出す。
「あはははははははは～！気に入ったッ！気に入ったよッ！若いのッ！お前さんの心意気は確かに一人の君主に付き従う騎士のようなものを感じさせられるよ」
「一人じゃあない、二人さッ！」
ヴィトは店の中に響くような大きな声でリューの言葉を否定する。
「はっはっはっ、とにかくお前さんの忠誠心と強さには驚いたよ、だからこそ、お前さんを味方に引き入れたいんだッ！」
リューはそう言うと、ヴィトの剣を弾き飛ばす。ヴィトは背後の無機質な壁に体を叩きつけられた。
「うっ……ぐっ……」
「お前さんもダメージが大きいじゃろ？悪い事は言わん、別にワシはファミリーを潰せなんて言っていない、ルーシーを殺してワシを崇めろとも言っていない、今後はワシらに上納金を払い、街に中華街を作らせ、ワシのことをリュー老師と呼び尊敬するのなら、これまで通りやればいいと言っているんじゃ」
リューの言葉にヴィトは微笑を浮かべながら、小さくもハッキリとした言葉で呟く。
「一言だけ言うぜ、あんたに払う金は一銭もない……」
その言葉にリューは雲がかかったような陰気な表情を浮かべていたが、すぐに笑顔を取り戻す。
「ははははは～！残念じゃよ、お前さんを仲間に引き入れられなかったのは……」
リューの剣がヴィトの喉に斬りかかりそうになる。
「クソッ」
ヴィトは震える手で自らの剣を動かし、喉に当たるほんの数センチという距離で、リューの剣を防ぐ。
「流石、見事に防いだな、だが、お前さんこれには耐えれかな？」
リューは懐から二つの三又のナイフのような武器をチェンに放り投げる。
「いつまでボッーとしておるつもりじゃ？サッサと動いてワシのために働け」
その言葉にチェンはいや、かつてチェンだったゾンビはサイを受け取り、ヴィトに向かって襲い掛かる。
「くっ、この……」
「お前の負けだぜ」
ヴィトは咄嗟にチェンの体を左脚で蹴ったが、なんとチェンはヴィトの左脚を掴み、押さえつける。
「捉えたぞ、お前の負けだ……」
「いいや、負けはお前の方かもなッ！」
ヴィトは自分の右手の肘でチェンの顔を打つ。流石の痛覚を感じないゾンビのチェンでも衝撃は感じたのか、足を揺れ動かす。
「今だッ！」
ヴィトはチェンの腹に剣を刺し、引っこ抜く、その衝撃でチェンは左脚を放し、ゆらゆらと後ろの回転テーブルに体を打ち付ける。
「お前の力はこんなものか？」
ヴィトは自分の剣の矛先をリューに向けて言った。