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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ

異世界組合問題

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「おい、お前ら、こんな所でストライキなんか、起こしたってなんも変わんないぞ !お前ら、いい加減にしろ !」
フランソワ王国の建築組合の役員であるカルロス・バッカは組合に所属している大工たちが立て籠もる小さな木製の小屋のドアを大きく叩いている。
「サッサと開けろ !お前らいい加減にしろッ!」
だが、大工たちは言うことを聞かずに小屋に立て籠もったままである。
「よし、お前らが、その気になろよぉ~を呼んでもらうからなッ!覚悟してとけッ!」
カルロスは捨て台詞を吐き、小屋の前を跡にする。
そして、30分くらい程時間が経ち……。
「おいゴルァ!開けろッ!お前らその場にいるのは分かってたんだぞ !ウチ騎士団を通さずにストライキを起こすとは、どんな神経してんだッ!ゴルァ!」
部屋の前に現れた二人の男のうちの二人のうち一人が、ドアを開けるように大きな声で要求している。
いや、この場合は「脅迫」と書いた方が正しいかもしれないが。
「テメェら開けやがれッ!」
男の剣幕に震えたのか、震えながら、扉を開ける音がした。
「おいテメェら、誰に断ってんだよ、オレら騎士団に何の通達もなしにストライキとはいい度胸だなッ!」
騎士団を名乗るこの中世のヨーロッパのような服装の中でこの男だけは、現実でも見慣れた背広にネクタイに中折れ帽という出で立ちであった。
「ひっ、でっ、でも……オレらは仕事の条件に不満があったんだから、この行動を起こしたんで……」
中世の服を着た中年の男は唇をつまんで答える。
「あん !お前ら……誰が、エリザベスの悪政から解放してやったと思って……」
男が、中世の服を着た中年の大工の男に手を振りあげようとした時だった。
「いい加減にしろ、オレらのやる事はそんな事じゃないだろ……」
男は後ろにいたもう一人の男に自分の手が止められているのに気がつく。
「チッ、分かったよ、交渉はあんたの役目だもんな……お前さんに譲るよ」
そう言うと、男は後ろへと引き下がり、そんな男と入れ違いに後ろにいた男が、大工の男の前に現れる。
そして、彼は男の目の前に現れると、まず頭を下げたのだ。
「申し訳ない、私の部下が横暴な態度を取ってしまったようで……」
思いがけない謝罪に大工の男は申し訳なさそうに頭をかいている。
「いいえ、気にする事はねえないですよ、それよりもオレらの話を聞いてくれません?」
男の言葉に青色の中折れ帽と青色の背広と青色のコートを着た端正な男は優しく微笑む。

「分かりました。つまりは、あなた方の労働条件を改善してほしい、そうですね?」
男の問いかけに目の前の男は激しく首を縦に動かしている。
「……即答できる答えではありませんが、前向きに検討……つまり、できる限りは考えてみますと言っておきましょう」
男の答えに小屋から出てきた大工の男たちは顔を明るくしている。
「やった。やった。あんたに任せて良かったのかもしれんな、恩にきるよ……それに組合っていいもんだな、みんなと団結できるし、以前なら、もっと揉めてたよ……」
男は目の前のスーツスタイルの男たちがやって来る前の事を思い出し、自分たちの仕事道具である金槌や釘などを遠い目で眺めている。
「以前は大きい建物を建てる時は持ち主の人やら、国にお金を払ってもらってんたんだが、給料値上げなの時とか、厳しくてな、よく追い出されたよ、エリザベス様の時代の時は、殺される仲間もいたよ」
「それが、今では、組合を作り、自分たちの不満をぶちまけたり、給料の事を訴えたりできる……。そうですよね?」
目の前の若い端正な男の言葉に大工の男は首を縦に動かす。
「そうさ、あんたらが来てくれて良かったよ、少し乱暴だけどな、でも前に比べると全然良いよ」
男は目の前の若い端正な男から、勧められた葉巻を吸いながら言った。
「うん、美味いなこの葉巻は……」
「それはですね、キューバ産の葉巻でしてね、わたしの好物なんですよ」
男の言葉に大工の男は納得の感情を思い浮かべた。一度吸うと今までの葉巻の比ではないくらいの落ち着けを与える。
この未知の葉巻は目の前のスーツスタイルの男たちが、異世界から持ち込んだものだと聞くが……。
「ところで、これはどこで取れたのかね?」
「我々の世界のキューバという場所ですよ、南国の国でね、アメリカとも親しい良い国ですよ」
「きゃーば?あめりか?」
目の前の男はちんぷんかんぷんな言葉だったかと、男は苦笑する。
「まぁ、我々の世界の国家の名前ですよ、それよりも給料の件は今晩中に騎士団長に話をつけるつもりですから、期待して待っておいてくださいね」
ここで、男は大工の男に手を差し伸べる。男も嬉しそうに端正な男の手を取った。
「そう言えば、あんたの名前は?」
「ヴィト……ヴィト・プロテッツオーネです。フランソワ王国騎士団の副団長を務めております」
それから、ヴィトは連れてきた男を連れ、自分たちの馬車へと戻る。
「なぁ、相談役コンシリエーレ……あんた、あんな事を言っても大丈夫なのか?また、ゴッドマーザーからどやされるぜ」
「心配はいらないさ、マイケル……今晩のうちにを用意しておくよ」
その言葉にマイケルは安心したのか、自分のスーツの懐に入れておいたハバナ産のタバコを吸う。

翌日の早朝に再び王国の馬車はやってきた。
「おお、あんたか……で、オレ達の給料は上がるんだろうな?」
「勿論ですよ」
ヴィトは即答した。
「現在騎士団の団長と思案した結果は、給料は上がるという事です」
それを聞いた大工達の顔は明るくなっていく。
「ただし、勤務時間は今までの七時間から、八時間に変更させて頂きます。働く時間は増えますが、その分給料は今よりも上がる事を確実にお約束させて頂きますよ」
ヴィトの言葉に大工の男たちは顔を見合わせている。
「時間が増えるだと、冗談じゃあない !オレ達は仕事を増やす事なく、金を上げて欲しいんだッ!そんな条件なら……」
「そんな条件なら願い下げだ。そうですね?」
ヴィトが男たちの言葉を先取りする。
「あなた達の焦りは分かります。あなた達は全員が子持ちだ。子供にこれ以上寂しい思いをさせたくない、そうですね?」
大工の男たちは一斉に首を縦に振った。
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