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第二部 王国奪還
サウス・スターアイランド事変ーその12
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「ッ、いいわッ!そんなにもあたしを信頼できないらしわねッ!」
エリザベスはレイピアの先端から、雷の球を再び発射する。
「あんたの魔法で勝てると思うのッ!」
マリアはエリザベスの雷魔法に対抗し、自分自身も雷魔法を放つ。
二つの雷の球が空中でぶつかり合う。
「頼むわよッ!あたしの魔法でしょ!あの逆賊を何とか倒してよ !」
マリアは雷の球を励ますように叫ぶ。エリザベスも負けじと大声で言い返す。
「あんたこそッ!あたしの雷魔法でしょうがァァァァ~!あんな奴にあたしの雷魔法が負ける訳はないのよォォォォォォ~!」
結局どちらも勝つ事はなかった。二つの雷の球はお互いに刺激しあい、空中で爆発した。
その衝撃で、エリザベスは壁に体を打ち付け、マリアも後ろに吹き飛ばされそうになるのだが、マリアはヴィトが体を支えたために無事であった。
「大丈夫か!?マリア !」
「ヴィト……ありがとう !」
マリアは頰を赤く染めながら叫ぶ。
「くっ、どうして……どうして……あんたばかりッ!どうしてあんたばかりが、そんなに優遇されるのよォォォォォォ~!」
エリザベスは何やらブツブツと呟くと、下半身と両腕を鳥へと変えた。
「なんなんだ……あの姿は……」
ヴィトは呆気に取られていたが、マリアは冷静に怪物の正体を分析した。
「あいつはハーピーと呼ばれる怪物よ、戦場に現れる怪物だと言われるわ、確か戦場では傷付いた兵士たちを優先的に攻撃するって……」
ヴィトは自分があまり、怪我をしていない事を不幸中の幸いだと考えた。マリアの言う通り、怪我をしていたのなら、すぐにでもあの怪物に捕らえられただろう。
「ふふふふ、ヴィトにマリア……あなた達こう思っているでしょ?『あいつは武器を持てないから、簡単に勝てる』と……でもね、その考え方は間違いだと伝えてあげるわッ!」
その言葉に偽りはない。怪物は口でレイピアを咥えると、手に持っている時と同じように容易に操り、ヴィトに襲い掛かった。
「死になァァァァ~!汚らわしい平民ッ!」
「やろっ!」
ヴィトは自分の真上から襲い掛かってきた怪物の攻撃を剣で防ぐ。
「あんた……その剣で何人の敵を葬ってきたのかしら?まぁいいわ……その王家の宝剣はあんたを殺した後で、あたしが大切に保管しておいてあげるから……あんたは大人しくあの世に行きなさいッ!」
怪物の剣の重みが一層重くなる。口で咥えているとは思えない力強さだ……。
「あらあら、あんたもう限界がきたのかしら?腕がプルプルと震えていてよ」
ヴィトは「黙れ」と小声で言い返す。
「おほほほほ、そんな小声でしか反論できないような、カスにあたしを始末できると思って!?」
怪物の顔は笑っていた。笑顔に満ちていたと言っても過言ではないかもしれない。
ただし、その笑顔はマリアのような明るい笑顔ではない、まるで聖書に出てくる悪魔のような邪悪な笑顔であった。
「何余所見してんのよ !」
鳥はレイピアを一旦離すと、今度はヴィトの目を狙って突っ込む。
「ッ、あの野郎……」
ヴィトは剣を構え、レイピアを自分の剣で滑り下ろすように交わす。
「見込違いだったけど……中々やるわね、でもね、フランソワ王国の正統なる女王陛下はあたしなのよ !他の誰でもないあたし !!!」
怪物はいや、エリザベスはヴィトに雷の球を投げつける。
「抜かせッ!たかが雷の球一つオレの剣で落としてやるぜッ!」
ヴィトは剣で雷の球を破壊しようとした。
だが、エリザベスの狙いはそこにあった。雷の球は確かにヴィトの剣により破壊されるだろう。
だが、その時に雷が弾け飛ぶだろう。ヴィトはその雷で倒れる筈。少なくとも目には飛び火するだろう。
エリザベスは勝利の笑みを浮かべた。
だが、その笑みはマリアの新たなる雷の球に消しとばされる。
「何ッ!あんたいつの間にッ!」
「わたしは考えたのよ、あんたがまだ勝負の途中にも関わらず笑ったのかを……可能性は一つよ、その雷に何か細工をしているッ!それだけよ !!」
マリアは杖の先端をエリザベスに向ける。改めての宣戦布告という事なのだろう。
「このクソガキがァァァァ~!あたしは前から、あんたの事が気に入らなかったのよ !いつもいつも何かの機転を利かせて !周りの大人に媚び売って !」
「でもね……あなたはそれすらもできなかったのよ……そんな媚びを売るクソガキに負けたのよ……」
ヴィトは今が、好機かと一気にエリザベスに特攻を仕掛け、見事に彼女の右腕と腹を斬りつけた。
「ぐっ……はっ……あたしがこんな奴に負けたというの?あり得ない……あり得ないわ……」
「お前は負けたんだ。それだけが真実だ……」
ヴィトは冷たい視線でエリザベスを見下ろす。
「くっ……女王としての最後の問いよ !マリアッ!」
エリザベスは唇を震わせながら、フォードラゴンの壁に向かって火炎魔法を放つ。
火はみるみるうちに部屋の中を燃え広がっていく。ドラゴンの悲鳴が聞こえる。
「なっ、どういうつもりなの!?」
「どうしたもこうしたもないわよ……あたしからの最後の問題よ、燃え盛る要塞からあなたはどうやって脱出するのかしら?」
エリザベスは満面の笑みを浮かべていた。自分の体はとっくに弱くなっているというのに、余程マリアを追い詰められたのが嬉しかったのだろう。
「マリア……逃げるぜッ!ここから走れば、死神を追い抜ける筈だッ!」
ヴィトは倒れているエリザベスを背負い、マリアに指示を出す。
「無茶よ、こんな状況から逃げられないわ、できるわけがないわッ!」
その時にヴィトはマリアの前に自分の手のひらをかざしてみせる。
「いいか…… 前にオレが言ったことを覚えているだろ?」
マリアはハッと息を呑む。
「『できる。できないじゃない。やるか。やらないか。』ね……」
ヴィトは首を縦に動かす。
「その通りだッ!このドラゴンの中から脱出するぜ、安心しろッ!オレはお前が必ず守ってやるさ !」
ヴィトはマリアの手を取り、出口へと向かって行く。
エリザベスはレイピアの先端から、雷の球を再び発射する。
「あんたの魔法で勝てると思うのッ!」
マリアはエリザベスの雷魔法に対抗し、自分自身も雷魔法を放つ。
二つの雷の球が空中でぶつかり合う。
「頼むわよッ!あたしの魔法でしょ!あの逆賊を何とか倒してよ !」
マリアは雷の球を励ますように叫ぶ。エリザベスも負けじと大声で言い返す。
「あんたこそッ!あたしの雷魔法でしょうがァァァァ~!あんな奴にあたしの雷魔法が負ける訳はないのよォォォォォォ~!」
結局どちらも勝つ事はなかった。二つの雷の球はお互いに刺激しあい、空中で爆発した。
その衝撃で、エリザベスは壁に体を打ち付け、マリアも後ろに吹き飛ばされそうになるのだが、マリアはヴィトが体を支えたために無事であった。
「大丈夫か!?マリア !」
「ヴィト……ありがとう !」
マリアは頰を赤く染めながら叫ぶ。
「くっ、どうして……どうして……あんたばかりッ!どうしてあんたばかりが、そんなに優遇されるのよォォォォォォ~!」
エリザベスは何やらブツブツと呟くと、下半身と両腕を鳥へと変えた。
「なんなんだ……あの姿は……」
ヴィトは呆気に取られていたが、マリアは冷静に怪物の正体を分析した。
「あいつはハーピーと呼ばれる怪物よ、戦場に現れる怪物だと言われるわ、確か戦場では傷付いた兵士たちを優先的に攻撃するって……」
ヴィトは自分があまり、怪我をしていない事を不幸中の幸いだと考えた。マリアの言う通り、怪我をしていたのなら、すぐにでもあの怪物に捕らえられただろう。
「ふふふふ、ヴィトにマリア……あなた達こう思っているでしょ?『あいつは武器を持てないから、簡単に勝てる』と……でもね、その考え方は間違いだと伝えてあげるわッ!」
その言葉に偽りはない。怪物は口でレイピアを咥えると、手に持っている時と同じように容易に操り、ヴィトに襲い掛かった。
「死になァァァァ~!汚らわしい平民ッ!」
「やろっ!」
ヴィトは自分の真上から襲い掛かってきた怪物の攻撃を剣で防ぐ。
「あんた……その剣で何人の敵を葬ってきたのかしら?まぁいいわ……その王家の宝剣はあんたを殺した後で、あたしが大切に保管しておいてあげるから……あんたは大人しくあの世に行きなさいッ!」
怪物の剣の重みが一層重くなる。口で咥えているとは思えない力強さだ……。
「あらあら、あんたもう限界がきたのかしら?腕がプルプルと震えていてよ」
ヴィトは「黙れ」と小声で言い返す。
「おほほほほ、そんな小声でしか反論できないような、カスにあたしを始末できると思って!?」
怪物の顔は笑っていた。笑顔に満ちていたと言っても過言ではないかもしれない。
ただし、その笑顔はマリアのような明るい笑顔ではない、まるで聖書に出てくる悪魔のような邪悪な笑顔であった。
「何余所見してんのよ !」
鳥はレイピアを一旦離すと、今度はヴィトの目を狙って突っ込む。
「ッ、あの野郎……」
ヴィトは剣を構え、レイピアを自分の剣で滑り下ろすように交わす。
「見込違いだったけど……中々やるわね、でもね、フランソワ王国の正統なる女王陛下はあたしなのよ !他の誰でもないあたし !!!」
怪物はいや、エリザベスはヴィトに雷の球を投げつける。
「抜かせッ!たかが雷の球一つオレの剣で落としてやるぜッ!」
ヴィトは剣で雷の球を破壊しようとした。
だが、エリザベスの狙いはそこにあった。雷の球は確かにヴィトの剣により破壊されるだろう。
だが、その時に雷が弾け飛ぶだろう。ヴィトはその雷で倒れる筈。少なくとも目には飛び火するだろう。
エリザベスは勝利の笑みを浮かべた。
だが、その笑みはマリアの新たなる雷の球に消しとばされる。
「何ッ!あんたいつの間にッ!」
「わたしは考えたのよ、あんたがまだ勝負の途中にも関わらず笑ったのかを……可能性は一つよ、その雷に何か細工をしているッ!それだけよ !!」
マリアは杖の先端をエリザベスに向ける。改めての宣戦布告という事なのだろう。
「このクソガキがァァァァ~!あたしは前から、あんたの事が気に入らなかったのよ !いつもいつも何かの機転を利かせて !周りの大人に媚び売って !」
「でもね……あなたはそれすらもできなかったのよ……そんな媚びを売るクソガキに負けたのよ……」
ヴィトは今が、好機かと一気にエリザベスに特攻を仕掛け、見事に彼女の右腕と腹を斬りつけた。
「ぐっ……はっ……あたしがこんな奴に負けたというの?あり得ない……あり得ないわ……」
「お前は負けたんだ。それだけが真実だ……」
ヴィトは冷たい視線でエリザベスを見下ろす。
「くっ……女王としての最後の問いよ !マリアッ!」
エリザベスは唇を震わせながら、フォードラゴンの壁に向かって火炎魔法を放つ。
火はみるみるうちに部屋の中を燃え広がっていく。ドラゴンの悲鳴が聞こえる。
「なっ、どういうつもりなの!?」
「どうしたもこうしたもないわよ……あたしからの最後の問題よ、燃え盛る要塞からあなたはどうやって脱出するのかしら?」
エリザベスは満面の笑みを浮かべていた。自分の体はとっくに弱くなっているというのに、余程マリアを追い詰められたのが嬉しかったのだろう。
「マリア……逃げるぜッ!ここから走れば、死神を追い抜ける筈だッ!」
ヴィトは倒れているエリザベスを背負い、マリアに指示を出す。
「無茶よ、こんな状況から逃げられないわ、できるわけがないわッ!」
その時にヴィトはマリアの前に自分の手のひらをかざしてみせる。
「いいか…… 前にオレが言ったことを覚えているだろ?」
マリアはハッと息を呑む。
「『できる。できないじゃない。やるか。やらないか。』ね……」
ヴィトは首を縦に動かす。
「その通りだッ!このドラゴンの中から脱出するぜ、安心しろッ!オレはお前が必ず守ってやるさ !」
ヴィトはマリアの手を取り、出口へと向かって行く。
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