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第二部 王国奪還
サウス・スターアイランド事変ーその⑥
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それから、お茶が二人のテーブルに届けられた。
「お待たせしました。アールグレイ紅茶です !茶葉の色は中国から輸入致しましたよ !」
お茶を運んできた緑色の背広と同じ色の中折れ帽を身につけた男は調子の良い声でお茶を置く。その様子が面白くなかったのか、エリザベスはまた顔をしかめている。
「どうしたの?」
メアリーの言葉にエリザベスはドンと目の前の机を叩く。たった今置かれたばかりの紅茶から水滴が飛ぶ。
「どうしたもこうしたもないわッ!あんたの部下はどうしてこんなにも無礼なのッ!」
メアリーはエリザベスの言葉が一向に理解できなかった。彼は普通にお茶を進めだけだ。それの何に落ち度があるのか理解できない。
「女王にそんな態度を取るなんて、許さないッ!このものを殺しなさいッ!」
エリザベスは持っていた杖の先端を男に向ける。
「どうしたんスか?俺なんかしたんスか?」
男の質問にメアリーは何もないわと男を下がらせた。
「どういうつもりッ!あいつはわたしに無礼な口を聞いたのよ、処分して当然でしょ!?」
エリザベスの言葉は半ば理不尽とも言えた。いや、そうとしか思えない。
中世のヨーロッパにもこんな王様はいなかっただろう。それくらい、メアリーにはエリザベスが酷い君主に思えた。
「ともかく……あなたの部下ではありません、彼はわたしの部下です。あなたに処分する事はできませんわ」
メアリーこの時の判断は賢明と言えた。少なくともルイにはそう思えた。確かに彼は自分たちの王国に仕える兵でもないし、臣下でもないのだ。彼女に処罰したり、処刑したりする権利はない。
「あんた……わたしに逆らう気 !いいわ……あたしに逆らうとどうなるか……」
その時だった。その手をルイが止めていた。
「陛下……彼女は平民とはいえ、仮にも同盟相手……もしものことがあれば、エドワード陛下が黙っておられませんぞ !」
ルイの厳しい顔にエリザベスはどうにもできなかった。
「さてと、失礼いたしましたな、話の続きをさせてもらいましょうか」
その後はルイとメアリーとの間で話が進む。丁度カヴァリエーレ・ファミリーとマリアの事が話題の登った時であった。勢いよく部屋の扉が開く。扉を開けたのは中世風の鎧を着た体格の良い中年の男だった。
「報告 !我々の兵が駅という施設に現れた謎の部隊と衝突 !!」
エリザベスは兵士に怒鳴りつけながら尋ねる。
「それは本当 !」
「ええ、少し前に衝突したと報告がありまして……」
その言葉にメアリーは思わず素早く息を吸い込む。
(まさか、カヴァリエーレ・ファミリーの連中がこんなに早く来るとは想定外だったわ、兄さんは死にアールは捕らえられ、あぁ……あたしはどうすればいいの?)
メアリーは苦悩した。
だが、悩んでばかりいる訳にもいかない。メアリーはすぐに大声で扉の外に待機していると思われる構成員を呼び寄せる。
「ドン・マーニー !お呼びですか?」
構成員の男はアロハシャツとジーンズパンツというラフな格好であったが、これがこのファミリーの通常の服であった。
「悪い噂よ、駅の方へと向かってちょうだい……それから、負けた場合にも備えて、わたし達の今いるホテルの警備を固めてください !!」
と、ここにきてエリザベスが口を挟む。
「待ってよ !あたし達の軍がそんなに弱いって言いたいの!?」
どうやら、先ほどの負けた場合という言葉が癇に障ったようだ。
エリザベスは全身に極度の震えを起こしながら叫ぶ。
「落ち着いて、もしもの話よ、何だって仮定くらいはするでしょ?よくあるじゃあない『石橋を叩いて渡れ』と……わたし達はそれをやろうとしているだけなの」
メアリーは幼い子供を宥めるように言った。そうでもしないと目の前の子が落ち着いてくれないのだと考えたからだ。
「ううう……あんた、あたしを何処まで馬鹿にすれば気がすむの……」
今度は極度の震えだけではなく、口の端に唾液も溜まっている。
「落ち着いてよ、これはわたし達の勝利に関わる重大な問題なの……カヴァリエーレ・ファミリーの連中がこの街を手に入れるという事は、わたし達がアメリカ政府に宣戦布告する事ができなくなるという訳なのよ、あなたはそれも分かってるの?」
メアリーの指摘にエリザベスは黙ってうなだれるしかない。
「分かればいいわ、それよりもカヴァリエーレ・ファミリーの奴らを片付ける方が大切よ、あなた駅に行って調べてきなさい !!」
メアリーの命令に男は頭を下げ、部屋を退出し、慌ててホテルの階段を駆け下りていく。
「あれで、応援になればいいのだけど」
メアリーは不安そうに左手をギュッと握りしめる。
「ふん、あれで応援かしら?あなた達の兵隊ってとても弱そうだし、あたし達の兵の役に立つかどうか……」
と、その瞬間にエリザベスの目と鼻先に一丁の拳銃が突きつけられる。
「そう、言っておくけど……わたし達の兵隊はみんな、これを持っているわ……魔法はないけれど、あなた達が魔法を発動させるより前に撃てると思うけど……」
銃を突きつけながら、メアリーはクスクス笑う。
「くっ、しょうがないわ……」
エリザベスは沈黙せざるを得なかった。
その後に不安な時間を過ごしているうちに再び扉がノックされる音が聞こえた。
「申し上げます !駅構内には銃死体と思われる遺体を初め、他の死因による死体がありました !」
「応援は間に合ったの?」
メアリーの問いかけに男は首を横に振る。
それをエリザベスはこれ見ようがしに腕を組む。
「残念ね、やはりあなたの兵隊は役に立たないと分かったらしいわね」
「まだ分からないわよ、それよりも無事に今晩を過ごせるように祈りでも唱えた方がいいんじゃあないかしら」
メアリーの指摘にエリザベスは首を傾げている。
「どういう事なの?」
「分からないの?夜襲をかけられる可能性があるのよ、寝込みを襲われたら、わたし達は一貫の終わりだわッ!」
メアリーの意見は正論だった。実際に夜に攻撃を仕掛けられ、勝敗を決した戦いが過去にあったのだから。
「つまり、用心しろという事かな?」
ルイの問いにメアリーは意を唱えないという消極的な形で同意してみせる。
「お待たせしました。アールグレイ紅茶です !茶葉の色は中国から輸入致しましたよ !」
お茶を運んできた緑色の背広と同じ色の中折れ帽を身につけた男は調子の良い声でお茶を置く。その様子が面白くなかったのか、エリザベスはまた顔をしかめている。
「どうしたの?」
メアリーの言葉にエリザベスはドンと目の前の机を叩く。たった今置かれたばかりの紅茶から水滴が飛ぶ。
「どうしたもこうしたもないわッ!あんたの部下はどうしてこんなにも無礼なのッ!」
メアリーはエリザベスの言葉が一向に理解できなかった。彼は普通にお茶を進めだけだ。それの何に落ち度があるのか理解できない。
「女王にそんな態度を取るなんて、許さないッ!このものを殺しなさいッ!」
エリザベスは持っていた杖の先端を男に向ける。
「どうしたんスか?俺なんかしたんスか?」
男の質問にメアリーは何もないわと男を下がらせた。
「どういうつもりッ!あいつはわたしに無礼な口を聞いたのよ、処分して当然でしょ!?」
エリザベスの言葉は半ば理不尽とも言えた。いや、そうとしか思えない。
中世のヨーロッパにもこんな王様はいなかっただろう。それくらい、メアリーにはエリザベスが酷い君主に思えた。
「ともかく……あなたの部下ではありません、彼はわたしの部下です。あなたに処分する事はできませんわ」
メアリーこの時の判断は賢明と言えた。少なくともルイにはそう思えた。確かに彼は自分たちの王国に仕える兵でもないし、臣下でもないのだ。彼女に処罰したり、処刑したりする権利はない。
「あんた……わたしに逆らう気 !いいわ……あたしに逆らうとどうなるか……」
その時だった。その手をルイが止めていた。
「陛下……彼女は平民とはいえ、仮にも同盟相手……もしものことがあれば、エドワード陛下が黙っておられませんぞ !」
ルイの厳しい顔にエリザベスはどうにもできなかった。
「さてと、失礼いたしましたな、話の続きをさせてもらいましょうか」
その後はルイとメアリーとの間で話が進む。丁度カヴァリエーレ・ファミリーとマリアの事が話題の登った時であった。勢いよく部屋の扉が開く。扉を開けたのは中世風の鎧を着た体格の良い中年の男だった。
「報告 !我々の兵が駅という施設に現れた謎の部隊と衝突 !!」
エリザベスは兵士に怒鳴りつけながら尋ねる。
「それは本当 !」
「ええ、少し前に衝突したと報告がありまして……」
その言葉にメアリーは思わず素早く息を吸い込む。
(まさか、カヴァリエーレ・ファミリーの連中がこんなに早く来るとは想定外だったわ、兄さんは死にアールは捕らえられ、あぁ……あたしはどうすればいいの?)
メアリーは苦悩した。
だが、悩んでばかりいる訳にもいかない。メアリーはすぐに大声で扉の外に待機していると思われる構成員を呼び寄せる。
「ドン・マーニー !お呼びですか?」
構成員の男はアロハシャツとジーンズパンツというラフな格好であったが、これがこのファミリーの通常の服であった。
「悪い噂よ、駅の方へと向かってちょうだい……それから、負けた場合にも備えて、わたし達の今いるホテルの警備を固めてください !!」
と、ここにきてエリザベスが口を挟む。
「待ってよ !あたし達の軍がそんなに弱いって言いたいの!?」
どうやら、先ほどの負けた場合という言葉が癇に障ったようだ。
エリザベスは全身に極度の震えを起こしながら叫ぶ。
「落ち着いて、もしもの話よ、何だって仮定くらいはするでしょ?よくあるじゃあない『石橋を叩いて渡れ』と……わたし達はそれをやろうとしているだけなの」
メアリーは幼い子供を宥めるように言った。そうでもしないと目の前の子が落ち着いてくれないのだと考えたからだ。
「ううう……あんた、あたしを何処まで馬鹿にすれば気がすむの……」
今度は極度の震えだけではなく、口の端に唾液も溜まっている。
「落ち着いてよ、これはわたし達の勝利に関わる重大な問題なの……カヴァリエーレ・ファミリーの連中がこの街を手に入れるという事は、わたし達がアメリカ政府に宣戦布告する事ができなくなるという訳なのよ、あなたはそれも分かってるの?」
メアリーの指摘にエリザベスは黙ってうなだれるしかない。
「分かればいいわ、それよりもカヴァリエーレ・ファミリーの奴らを片付ける方が大切よ、あなた駅に行って調べてきなさい !!」
メアリーの命令に男は頭を下げ、部屋を退出し、慌ててホテルの階段を駆け下りていく。
「あれで、応援になればいいのだけど」
メアリーは不安そうに左手をギュッと握りしめる。
「ふん、あれで応援かしら?あなた達の兵隊ってとても弱そうだし、あたし達の兵の役に立つかどうか……」
と、その瞬間にエリザベスの目と鼻先に一丁の拳銃が突きつけられる。
「そう、言っておくけど……わたし達の兵隊はみんな、これを持っているわ……魔法はないけれど、あなた達が魔法を発動させるより前に撃てると思うけど……」
銃を突きつけながら、メアリーはクスクス笑う。
「くっ、しょうがないわ……」
エリザベスは沈黙せざるを得なかった。
その後に不安な時間を過ごしているうちに再び扉がノックされる音が聞こえた。
「申し上げます !駅構内には銃死体と思われる遺体を初め、他の死因による死体がありました !」
「応援は間に合ったの?」
メアリーの問いかけに男は首を横に振る。
それをエリザベスはこれ見ようがしに腕を組む。
「残念ね、やはりあなたの兵隊は役に立たないと分かったらしいわね」
「まだ分からないわよ、それよりも無事に今晩を過ごせるように祈りでも唱えた方がいいんじゃあないかしら」
メアリーの指摘にエリザベスは首を傾げている。
「どういう事なの?」
「分からないの?夜襲をかけられる可能性があるのよ、寝込みを襲われたら、わたし達は一貫の終わりだわッ!」
メアリーの意見は正論だった。実際に夜に攻撃を仕掛けられ、勝敗を決した戦いが過去にあったのだから。
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