66 / 133
第二部 王国奪還
アーサー王の死
しおりを挟む
マリア・ド・フランソワは夢を見ていた。彼女の夢は現実的なものである。その夢とは数ヶ月前に彼女の父親であるアーサーが病気で亡くなる際の夢であった。
「お父さん !しっかり !」
マリアはやつれ切った父親の顔を見て涙を流す。
「マリアか……すまんな、私はもう助かりそうにない……」
アーサーは弱々しい手を震わせている。
「大丈夫よ !お父さんにはまだまだ生きててもらわないと、国民だってお父様が生き残ることを望んでいるに決まっているわッ!」
マリアの励ましにアーサーは思わず涙を流していた。
「そうか……国民が……ありがたいな、私はずっと国のために民のために頑張ってきた……だが、中々後継者には恵まれなかった……が、お前が現れた……フランソワ王国はお前に任せるよ」
アーサーはマリアの手をギュッと握り締める。
「もっ、勿論よ……絶対に誰にも渡したりはしないわ !」
「はは……我が娘ながら頼もしい子だ……そうだ。一つ良いことを教えてやろう」
アーサーはゴホゴホと咳をした後にマリアの手を握り返す。
「代々我が王家には伝説がある……それは、悪しき者に乗っ取られし時にどこからか、国を守護する騎士たちが現れるだろう……仮にギシュタルリアやエリザベスが何かしようともその騎士たちがお前を守ってくれるよ」
マリアは未だに知らない騎士のことを考えた。その騎士たちはどんな姿をしているのだろう。ギシュタルリアの最新の鎧よりも頑丈な鎧を着ているのだろうか。武器は未だに誰も使っことがない伝説の武器なのだろうか。
そんな妄想を頭の中で駆け巡らせているうちに、アーサーが優しくマリアの髪を撫でた。
「大丈夫さ、きっといい人たちだよ」
父の言葉にマリアは勢いよく首を縦に振る。
「最後になるが……お前とマーリンに出会えて、本当に良かったよ、そして神に感謝する。戦場での名誉の戦死ではなく、全員に看取られて安らかに死ねることを……」
それが彼の遺言となった。彼は言い終わるのと同時にマリアの手から手を離し、かろうじて開いていた目を塞いだ。
そして、その目はもう二度と開かれる事はないだろう。臣下一同が悲しみにくれる中マリアはその中でも一番悲観に暮れていた。王女いや、今では女王か。そんな肩書きの事など忘れ、彼女は泣き続けていた。
その後は悲しみを払いつつも、女王として国を統治し続けていたが、その時にエリザベスがクーデターを起こし、自分を廃位に追い込んだのだ。それから"悪魔の門"に体を投げ込み……。
そこで、マリアを目を覚ます。辺りを見回してみる。ここは自分の今の城であり、今の騎士たちと暮らしている場所だった。
そうか、あれは夢だったのねと考え、涙を流していると、後ろから声を掛けられた。
「どうしたんだい?」
ヴィトの優しい声が背後から響く。
「何でもないわ !それよりも話は終わったの?」
マリアの問いかけにヴィトは首を縦に動かす。
「勿論さ、それよりもこんな所で寝てたら、風邪引くぜ……寝室へ行こう、オレらももう寝るところなんだ」
ヴィトはマリアの手を取ろうとしたが、マリアはそれを拒否する。
「悪いけど、一人にしてくれない……ちょっと辛いことを思い出しちゃって」
「そうか、だが寝るのは良くないぜ、話はどこか別の場所で聞くよ」
ヴィトはマリアの手を取り、立ち上がらせると、砂嵐の映るテレビを消し、書斎へと向かう。
「で、何故泣いていたんだい?僕で良ければ相談に乗るよ」
マリアと一緒に書斎のソファーに座り、ヴィトは優しく問いかける。
「うん、お父さんが死んだ事を思い出しちゃって……夢で鮮明に浮かんできて……」
マリアは本当に子供のように泣きじゃくっている。
「そうか……それは辛い夢だ」
ヴィトはマリアに気分を落ち着けるために葉巻を吸っていいかを尋ねる。マリアはそれを許可した。ヴィトはキューバ産の葉巻に火を点ける。いつも上手い葉巻だが、今日は何の味も感じない。
「辛いなんてものじゃあないわ、あの苦しみが二度も……どうして、思い出さなければいけないの!?」
マリアは自分でも驚くような大きな声で叫んだのがヴィトの驚く顔で分かった。そんなに大きかったのだろうか。
「……分かるよ、オレもお袋と親父を失った……親父は事故で、お袋は病気で……どうしようもなかった。そんな時に拾ってくれたのが、ドン・カヴァリエーレだった。オレは感謝したよ、忠誠も尽くした」
ヴィトは葉巻を口から取り、それをソファーとソファーの狭間にある長机の上に置いてある灰皿に押し付けた。
「ヴィト……」
マリアは返す言葉が思い浮かばなかった。
「気にするなよ、それよりも今晩はオレも付き合うよ、丁度オレも眠れなかったし、新しい本を買ったばっかりだったからな」
「そんなの悪いわ !」
マリアは抗議の声を上げたが、ヴィトは愛想の良い顔を向け、親指を上に挙げる。
「本を取ってくるよ……キミはここにいてくれ」
ヴィトは書斎を跡にする。
「ヴィト……」
マリアはヴィトへの感謝の気持ちで心が一杯であった。ヴィトは買ったばかりのアメリカの架空の街セントラル・ブルックリンシティーが舞台の恋愛劇が描かれた本を自分の本棚から、取り出し、書斎へと戻る。
「タイトルは『セトラル・セントラル』か……」
ヴィトはタイトルを再確認し、書斎へと戻る。
「お待たせ、本を持ってきた。あとは立っているついでに紅茶でも持ってこようか?」
ヴィトの問いにマリアは首を横に振る。何となく飲む気になれなかったからだ。
「いや、いいわ……」
「そうか……」
ヴィトは無言で本を読み始めた。しばらくはマリアもジッとしていたが、やがてヴィトの読んでいる小説が気になったらしく、やがて、彼女を灼けつくような好奇心が襲った。
「ねえ、どんな話なのよ」
ヴィトは簡潔に話の内容を話す。物語は架空の街に住む男女の話で、学生生活をしているうちに恋が芽生え、やがて結ばれていくという内容だった。
そしてこの小説の中で一番面白い点は、主人公とヒロインをめぐるライバルがサッカーでもライバルで、競い合うという内容だった。
だが、マリアはサッカーを理解できなかったようで、首を傾げていたが、それでも恋愛の部分にはかなりの興味を示していた。
「お父さん !しっかり !」
マリアはやつれ切った父親の顔を見て涙を流す。
「マリアか……すまんな、私はもう助かりそうにない……」
アーサーは弱々しい手を震わせている。
「大丈夫よ !お父さんにはまだまだ生きててもらわないと、国民だってお父様が生き残ることを望んでいるに決まっているわッ!」
マリアの励ましにアーサーは思わず涙を流していた。
「そうか……国民が……ありがたいな、私はずっと国のために民のために頑張ってきた……だが、中々後継者には恵まれなかった……が、お前が現れた……フランソワ王国はお前に任せるよ」
アーサーはマリアの手をギュッと握り締める。
「もっ、勿論よ……絶対に誰にも渡したりはしないわ !」
「はは……我が娘ながら頼もしい子だ……そうだ。一つ良いことを教えてやろう」
アーサーはゴホゴホと咳をした後にマリアの手を握り返す。
「代々我が王家には伝説がある……それは、悪しき者に乗っ取られし時にどこからか、国を守護する騎士たちが現れるだろう……仮にギシュタルリアやエリザベスが何かしようともその騎士たちがお前を守ってくれるよ」
マリアは未だに知らない騎士のことを考えた。その騎士たちはどんな姿をしているのだろう。ギシュタルリアの最新の鎧よりも頑丈な鎧を着ているのだろうか。武器は未だに誰も使っことがない伝説の武器なのだろうか。
そんな妄想を頭の中で駆け巡らせているうちに、アーサーが優しくマリアの髪を撫でた。
「大丈夫さ、きっといい人たちだよ」
父の言葉にマリアは勢いよく首を縦に振る。
「最後になるが……お前とマーリンに出会えて、本当に良かったよ、そして神に感謝する。戦場での名誉の戦死ではなく、全員に看取られて安らかに死ねることを……」
それが彼の遺言となった。彼は言い終わるのと同時にマリアの手から手を離し、かろうじて開いていた目を塞いだ。
そして、その目はもう二度と開かれる事はないだろう。臣下一同が悲しみにくれる中マリアはその中でも一番悲観に暮れていた。王女いや、今では女王か。そんな肩書きの事など忘れ、彼女は泣き続けていた。
その後は悲しみを払いつつも、女王として国を統治し続けていたが、その時にエリザベスがクーデターを起こし、自分を廃位に追い込んだのだ。それから"悪魔の門"に体を投げ込み……。
そこで、マリアを目を覚ます。辺りを見回してみる。ここは自分の今の城であり、今の騎士たちと暮らしている場所だった。
そうか、あれは夢だったのねと考え、涙を流していると、後ろから声を掛けられた。
「どうしたんだい?」
ヴィトの優しい声が背後から響く。
「何でもないわ !それよりも話は終わったの?」
マリアの問いかけにヴィトは首を縦に動かす。
「勿論さ、それよりもこんな所で寝てたら、風邪引くぜ……寝室へ行こう、オレらももう寝るところなんだ」
ヴィトはマリアの手を取ろうとしたが、マリアはそれを拒否する。
「悪いけど、一人にしてくれない……ちょっと辛いことを思い出しちゃって」
「そうか、だが寝るのは良くないぜ、話はどこか別の場所で聞くよ」
ヴィトはマリアの手を取り、立ち上がらせると、砂嵐の映るテレビを消し、書斎へと向かう。
「で、何故泣いていたんだい?僕で良ければ相談に乗るよ」
マリアと一緒に書斎のソファーに座り、ヴィトは優しく問いかける。
「うん、お父さんが死んだ事を思い出しちゃって……夢で鮮明に浮かんできて……」
マリアは本当に子供のように泣きじゃくっている。
「そうか……それは辛い夢だ」
ヴィトはマリアに気分を落ち着けるために葉巻を吸っていいかを尋ねる。マリアはそれを許可した。ヴィトはキューバ産の葉巻に火を点ける。いつも上手い葉巻だが、今日は何の味も感じない。
「辛いなんてものじゃあないわ、あの苦しみが二度も……どうして、思い出さなければいけないの!?」
マリアは自分でも驚くような大きな声で叫んだのがヴィトの驚く顔で分かった。そんなに大きかったのだろうか。
「……分かるよ、オレもお袋と親父を失った……親父は事故で、お袋は病気で……どうしようもなかった。そんな時に拾ってくれたのが、ドン・カヴァリエーレだった。オレは感謝したよ、忠誠も尽くした」
ヴィトは葉巻を口から取り、それをソファーとソファーの狭間にある長机の上に置いてある灰皿に押し付けた。
「ヴィト……」
マリアは返す言葉が思い浮かばなかった。
「気にするなよ、それよりも今晩はオレも付き合うよ、丁度オレも眠れなかったし、新しい本を買ったばっかりだったからな」
「そんなの悪いわ !」
マリアは抗議の声を上げたが、ヴィトは愛想の良い顔を向け、親指を上に挙げる。
「本を取ってくるよ……キミはここにいてくれ」
ヴィトは書斎を跡にする。
「ヴィト……」
マリアはヴィトへの感謝の気持ちで心が一杯であった。ヴィトは買ったばかりのアメリカの架空の街セントラル・ブルックリンシティーが舞台の恋愛劇が描かれた本を自分の本棚から、取り出し、書斎へと戻る。
「タイトルは『セトラル・セントラル』か……」
ヴィトはタイトルを再確認し、書斎へと戻る。
「お待たせ、本を持ってきた。あとは立っているついでに紅茶でも持ってこようか?」
ヴィトの問いにマリアは首を横に振る。何となく飲む気になれなかったからだ。
「いや、いいわ……」
「そうか……」
ヴィトは無言で本を読み始めた。しばらくはマリアもジッとしていたが、やがてヴィトの読んでいる小説が気になったらしく、やがて、彼女を灼けつくような好奇心が襲った。
「ねえ、どんな話なのよ」
ヴィトは簡潔に話の内容を話す。物語は架空の街に住む男女の話で、学生生活をしているうちに恋が芽生え、やがて結ばれていくという内容だった。
そしてこの小説の中で一番面白い点は、主人公とヒロインをめぐるライバルがサッカーでもライバルで、競い合うという内容だった。
だが、マリアはサッカーを理解できなかったようで、首を傾げていたが、それでも恋愛の部分にはかなりの興味を示していた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
最強魔導師エンペラー
ブレイブ
ファンタジー
魔法が当たり前の世界 魔法学園ではF~ZZにランク分けされており かつて実在したZZクラス1位の最強魔導師エンペラー 彼は突然行方不明になった。そして現在 三代目エンペラーはエンペラーであるが 三代目だけは知らぬ秘密があった
錬金術師はかく語りき
三塚 章
ファンタジー
私はある飲み屋で高名な錬金術師イルミナとであう。彼女になぜ錬金術師になったのか訪ねてみると返ってきた答えは……他の投稿サイトでも掲載。 転生なしの異世界。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣
ゆうた
ファンタジー
起きると、そこは森の中。パニックになって、
周りを見渡すと暗くてなんも見えない。
特殊能力も付与されず、原生林でどうするの。
誰か助けて。
遠くから、獣の遠吠えが聞こえてくる。
これって、やばいんじゃない。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
亡国の草笛
うらたきよひこ
ファンタジー
兄を追い行き倒れた少年が拾われた先は……
大好きだった兄を追って家を出た少年エリッツは国の中心たる街につくや行き倒れてしまう。最後にすがりついた手は兄に似た大きな手のひらだった。その出会いからエリッツは国をゆるがす謀略に巻きこまれていく。
※BL要素を含むファンタジー小説です。苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる