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第二部 王国奪還
マフィアと大臣
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ヴィト・プロテッツイオーネがニューホーランド警察署を訪れた時には、もうその老人は署の取調室で大暴れを繰り広げているところだった。
「おい、何があったんだ?」
ヴィトは老人の取り調べを行なっていた警察官であるマーティ・ヤングに尋ねる。
「あっ、ミスタープロテッツイオーネ……聞いてくださいよ !あの爺さん完全に頭がおかしいよ !」
マーティは今にも拳銃を抜くのだというくらいの勢いでの怒りをヴィトにぶつけた。
「まぁ、とりあえず似たような、その老人と会ってみようじゃあないか、取り敢えずその部屋に案内してくれよ」
ヴィトはマーティの袖の下に50ドル札を一枚取り出し、入れようとする。
「こっ、困りますよ、ミスター !ぼくが怒られちゃいます !」
「大丈夫さ、きみにはミラノリアとの抗争の時からお世話になってるからね、お礼だよ、それにこれは父親が息子に小遣いを上げるようなものさ……」
ニキビ面の若い青年警官はしょうがないという風に呟くと、黙ってヴィトからの"小遣い"を受け取ると、ヴィトを取調室へと案内した。
「ありがとう、キミは良い警官だよ」
ヴィトは喜ばしい表情で警官の肩に手を置く。そんな言葉に喜ぶ顔も見せずにマーティは老人に対しての忠告を呟く。
「いいですか、あの老人が少しでも変な行動を起こしたら、すぐにぼくを呼んでくださいね」
マーティはそう言うと、取調室のドアを開け、退出する。
ヴィトは軽く部屋の中を見渡す。
味気も何もない白の壁だ。床も無機質な灰色のコンクリート。ヴィトは自分がこんなところに閉じ込められたら、2分で悲鳴を上げそうだと考察する。
だが、そんな考察は目の前に座っている老人により遮られてしまう。
「お前、わしを誰だと思っておる !わしはフランソワ王国のマリア・ド・フランソワ女王陛下に大臣だと任命された人物だぞ !いくら国はギシュタルリアの配下になったとはいえ、このような国の大臣を相手にこのような非人道的な扱いは、死罪に値するぞ !警吏だ !警吏を呼べ !」
拘束衣を着せられた中世の錬金術師を思わせる男は座らされている安価な木製の椅子遠ガタガタと震わせている。
「落ち着きな、おれはあんたの味方だ」
ヴィトはその証拠とばかりにタバコの箱を取り出し、机の上に置いたのだが、男いや、老人と表現するべき老人は首を横に向けたまま、ヴィトと目を合わせようともしない。
「美味いタバコだよ、キューバ産……まぁ、南国で取れた最上級のタバコだよ、吸ってみるかい?」
ヴィトは「毒なんか入っていないぜ」とばかりに自らがライターを取り出して火を点け、タバコを吸ってみせる。
「なっ、危険なんかないだろ?こいつは麻薬とは違って毒性なんかない、あんたも試してみろよ?」
ヴィトは煙を浴びせないように取調室のドアの方に白い煙を上げながら言った。
「黙れッ!お前の魂胆は分かっているんだぞ !このエドワードの犬どもめが !わしを騙して殺すつもりだろ?妙な馬車にわしを乗せて動揺させ、それから、自動的に火を点ける魔法道具をワシに見せて、動揺したところを殺すつもりだろ!?そうはいかんぞッ!」
老人は半ばヒステリー気味に叫ぶ。
ヴィトはこの老人の頑固な態度に先代の元でマフィア稼業を学んでいた頃にあった頑固な年老いた、だが、どこかヒステリック気味な判事を思い出したが、彼のヒステリック具合は彼以上だろう。ヴィトは顎に手を置いて考えた。
彼がこの世界を別の世界だと分かっていない以上は自分の事もギシュタルリアとやらの手先だと思うだろう。
仮にマリアを連れてきても、この世界に馴染んできているマリアに会わせたとしても偽物認定する可能性が高い。どうすればいいのだろうか。
「とにかく、あんたには色々と聞きたい事があるんだ……悪いけれど、おれに力を貸してくれよ」
ヴィトは一先ずは老人に話を聞いてもらうように説得することにした。
まぁ、一応彼はマリアの居た世界では大臣を務めていた男だ。話を聞くという交渉だけなら、スムーズにいった。
ヴィトはそれから頑張って説明した。この世界はギシュタルリア帝国とフランソワ王国が存在した世界とは別の世界である事。
この世界は魔物や魔法等が存在しない事を教えた。その間にヴィトは老人に馴染めるようにタバコを懸命に勧めたり、マーティを呼んでコーヒーを入れてもらい、飲んでもらおうとしたのだが、タバコは見慣れない物だからと拒否し、コーヒーに至っては悪魔の飲み物だとカップを放り投げてしまった。
ヴィトは随分厄介なものを背負い込んだと、考えたが取り敢えず説得するように努力した。彼が先代から学んだ事は「辛抱強く話を聞け」だったから。
「お願いしますよ、姫様だってあなたに会えば喜びそうだし、あなたも見慣れない世界でどうやって暮らすんですか?英語は話せるみたいですが、そんな意識ではどこも雇ってくれませんよ」
ヴィトは老人に宥めるように言い聞かせる。と、ここでようやく老人は納得してくれたようで、浅くだが、深いため息を吐いた。
「そうか、分かった……キミの言うことを聞こう、陛下にも会えるみたいだしな」
老人がそう言うと、ヴィトはマーティに拘束衣を外すように指示する。
「ふぅ、この魔法道具は何じゃ?ワシが魔法を呟いても、全く外れんかったが……」
老人は不思議そうに地面に落ちた拘束衣を見つめる。
「文明の利器ですよ、そうだ。もう一つ面白いものをお目にかけましょうか?」
ヴィトはマーティに屋上に行けるかを尋ねた。マーティは五分だけならいけるだろうと言った。
老人はヴィトの肩を掴みながら、階段を一歩一歩ゆっくりと登っていく。
「着きましたよ」とヴィトは警察署の屋上から見える街の夜景を老人に味あわせる。
「おお、信じられん……鉄の建物が建っており、馬も付いていない馬車があれ程走っているなんて……いくら、魔法道具があると言っても、他の事にも使わなければならんだろうから、流石にあんな膨大な馬車に……」
「使えない?」
ヴィトの指摘に老人は屋上の下を走る小さな明かりを凝視しながら答えた。
「おい、何があったんだ?」
ヴィトは老人の取り調べを行なっていた警察官であるマーティ・ヤングに尋ねる。
「あっ、ミスタープロテッツイオーネ……聞いてくださいよ !あの爺さん完全に頭がおかしいよ !」
マーティは今にも拳銃を抜くのだというくらいの勢いでの怒りをヴィトにぶつけた。
「まぁ、とりあえず似たような、その老人と会ってみようじゃあないか、取り敢えずその部屋に案内してくれよ」
ヴィトはマーティの袖の下に50ドル札を一枚取り出し、入れようとする。
「こっ、困りますよ、ミスター !ぼくが怒られちゃいます !」
「大丈夫さ、きみにはミラノリアとの抗争の時からお世話になってるからね、お礼だよ、それにこれは父親が息子に小遣いを上げるようなものさ……」
ニキビ面の若い青年警官はしょうがないという風に呟くと、黙ってヴィトからの"小遣い"を受け取ると、ヴィトを取調室へと案内した。
「ありがとう、キミは良い警官だよ」
ヴィトは喜ばしい表情で警官の肩に手を置く。そんな言葉に喜ぶ顔も見せずにマーティは老人に対しての忠告を呟く。
「いいですか、あの老人が少しでも変な行動を起こしたら、すぐにぼくを呼んでくださいね」
マーティはそう言うと、取調室のドアを開け、退出する。
ヴィトは軽く部屋の中を見渡す。
味気も何もない白の壁だ。床も無機質な灰色のコンクリート。ヴィトは自分がこんなところに閉じ込められたら、2分で悲鳴を上げそうだと考察する。
だが、そんな考察は目の前に座っている老人により遮られてしまう。
「お前、わしを誰だと思っておる !わしはフランソワ王国のマリア・ド・フランソワ女王陛下に大臣だと任命された人物だぞ !いくら国はギシュタルリアの配下になったとはいえ、このような国の大臣を相手にこのような非人道的な扱いは、死罪に値するぞ !警吏だ !警吏を呼べ !」
拘束衣を着せられた中世の錬金術師を思わせる男は座らされている安価な木製の椅子遠ガタガタと震わせている。
「落ち着きな、おれはあんたの味方だ」
ヴィトはその証拠とばかりにタバコの箱を取り出し、机の上に置いたのだが、男いや、老人と表現するべき老人は首を横に向けたまま、ヴィトと目を合わせようともしない。
「美味いタバコだよ、キューバ産……まぁ、南国で取れた最上級のタバコだよ、吸ってみるかい?」
ヴィトは「毒なんか入っていないぜ」とばかりに自らがライターを取り出して火を点け、タバコを吸ってみせる。
「なっ、危険なんかないだろ?こいつは麻薬とは違って毒性なんかない、あんたも試してみろよ?」
ヴィトは煙を浴びせないように取調室のドアの方に白い煙を上げながら言った。
「黙れッ!お前の魂胆は分かっているんだぞ !このエドワードの犬どもめが !わしを騙して殺すつもりだろ?妙な馬車にわしを乗せて動揺させ、それから、自動的に火を点ける魔法道具をワシに見せて、動揺したところを殺すつもりだろ!?そうはいかんぞッ!」
老人は半ばヒステリー気味に叫ぶ。
ヴィトはこの老人の頑固な態度に先代の元でマフィア稼業を学んでいた頃にあった頑固な年老いた、だが、どこかヒステリック気味な判事を思い出したが、彼のヒステリック具合は彼以上だろう。ヴィトは顎に手を置いて考えた。
彼がこの世界を別の世界だと分かっていない以上は自分の事もギシュタルリアとやらの手先だと思うだろう。
仮にマリアを連れてきても、この世界に馴染んできているマリアに会わせたとしても偽物認定する可能性が高い。どうすればいいのだろうか。
「とにかく、あんたには色々と聞きたい事があるんだ……悪いけれど、おれに力を貸してくれよ」
ヴィトは一先ずは老人に話を聞いてもらうように説得することにした。
まぁ、一応彼はマリアの居た世界では大臣を務めていた男だ。話を聞くという交渉だけなら、スムーズにいった。
ヴィトはそれから頑張って説明した。この世界はギシュタルリア帝国とフランソワ王国が存在した世界とは別の世界である事。
この世界は魔物や魔法等が存在しない事を教えた。その間にヴィトは老人に馴染めるようにタバコを懸命に勧めたり、マーティを呼んでコーヒーを入れてもらい、飲んでもらおうとしたのだが、タバコは見慣れない物だからと拒否し、コーヒーに至っては悪魔の飲み物だとカップを放り投げてしまった。
ヴィトは随分厄介なものを背負い込んだと、考えたが取り敢えず説得するように努力した。彼が先代から学んだ事は「辛抱強く話を聞け」だったから。
「お願いしますよ、姫様だってあなたに会えば喜びそうだし、あなたも見慣れない世界でどうやって暮らすんですか?英語は話せるみたいですが、そんな意識ではどこも雇ってくれませんよ」
ヴィトは老人に宥めるように言い聞かせる。と、ここでようやく老人は納得してくれたようで、浅くだが、深いため息を吐いた。
「そうか、分かった……キミの言うことを聞こう、陛下にも会えるみたいだしな」
老人がそう言うと、ヴィトはマーティに拘束衣を外すように指示する。
「ふぅ、この魔法道具は何じゃ?ワシが魔法を呟いても、全く外れんかったが……」
老人は不思議そうに地面に落ちた拘束衣を見つめる。
「文明の利器ですよ、そうだ。もう一つ面白いものをお目にかけましょうか?」
ヴィトはマーティに屋上に行けるかを尋ねた。マーティは五分だけならいけるだろうと言った。
老人はヴィトの肩を掴みながら、階段を一歩一歩ゆっくりと登っていく。
「着きましたよ」とヴィトは警察署の屋上から見える街の夜景を老人に味あわせる。
「おお、信じられん……鉄の建物が建っており、馬も付いていない馬車があれ程走っているなんて……いくら、魔法道具があると言っても、他の事にも使わなければならんだろうから、流石にあんな膨大な馬車に……」
「使えない?」
ヴィトの指摘に老人は屋上の下を走る小さな明かりを凝視しながら答えた。
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