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第二十話 ゴールデンストリートウォーズーその④

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フランク・ミラノリアはヴィトがトイレに隠れ、そして他の幹部やカルロを葬ってきた時のように魔法を使うつもりだと察知し、それなら自分もと、ある呪文を唱え始める。
すると、どうだろう。彼はみるもおぞましい吸血鬼へと変貌を遂げたのだ。
「驚いたわね、あなたどんな魔法を使ったの?」
セルマは思わず目を丸める。
「簡単な魔法さ……かつてダウンタウンを支配してたトニーが使っていた魔法さ……」
フランクは驚くセリアに何ともないさという目で目配せしてみる。
「あなた……もしかしてその能力で、ヴィトを始末する気なの?」
フランクは「勿論さ」と言わんばかりの目を向ける。
「そう、頑張ってね」
「きみはどうする気だ?」
フランクの呼びかけにセルマは微笑を浮かべるばかりだった。

フランクは意を決し、部下にトイレに突撃するように命令する。
散弾銃やら、機関銃を備えたフランクの部下たちがトイレの中になだれ込む。
だが、当然ギッチリと詰まっているために動きは取りにくい。
その隙をヴィトは逃さなかった。
ヴィトはトイレから出るやいなや、トイレの玄関口に詰まっている兵隊にトンプソン機関銃を連写した。スーツやタキシードの姿をした兵隊はヴィトの機関銃の前に次々と倒れていく。
ヴィトは最後の一人が倒れ落ちるのを見計らうと、弾切れになったトンプソン機関銃の丸い弾倉を捨て、死体が持っていた弾倉とすり替える。そんな時だった。ヴィトの前に大きなコウモリが飛んだのは。
「なっ、何者だッ!」
「おれだよ、気付かなかったのか?」
その声にヴィトは聞き覚えがあった。いや、聞き覚えがあるどころではない、つい先ほどまでヴィトが銃を乱射した兵隊たちの親玉ではないか。
「これこれは、フランクか……どうしたんだい、そんなコウモリみたいな格好をして……」
「あぁ、これか?おれの魔法だよ、以前トニーが使った奴があっただろう?アレの別バージョンだと思ってくれればいいよ」
フランクはいやらしく笑う。ヴィトに冷や汗をかかせているのが、面白くてたまらないようだ。
「成る程ね、化け物変身魔法モンスター・トランスフォーメーション・マジックを使ったわけか」
ヴィトは何気なしに呟くが、フランクはそれが、面白くなかったのか、大きな声で「そうさ、これでお前を確実に殺せるなッ!」と叫ぶ。
「どうかな?お前は前にジョゼフの奴を守っていたガーゴイルのようにツメとキバで戦うつもりか?」
そのヴィトの問いかけにフランクは冷静な表情で首を横に振る。
「違うねッ!オレは別の魔法も使えるのさッ!」
フランクは何やら唱え始める。すると、フランクの手元に何やら、短い、だが、殺傷力のありそうなキラリと光るジャックナイフが召喚されたのだ。
「まさか、ナイフでおれのナイフと戦うつもりか?」
ヴィトは剣を隠してあるトイレに方へと目をやる。
「その通りさ、更にお前にチャンスをやろうじゃあないか……」
「チャンスだと?」
ヴィトはフランクの思いがけない提案に思わずハッと息を飲む。
「そうだよ、お前がトイレへと行く間、おれは何も手を出さない……フェアな条件だろ?」
フランクは「これ以上の良い方法はないぜ」とばかりの愉快な声で言う。
「いいだろう……お前は必ず倒す、ルーニーのためにも、そしてマリアのためにも……」
フランクはそんなヴィトの決意に耳を傾けることもなく、フンと鼻を鳴らしていた。ヴィトは慌ててトイレへと戻ると、剣を手に取り、トイレの外へと身を乗り出す。
「よし、始めようではないか……」
フランクは黒のジャックナイフを携え、後ろに生えている大きな羽でヴィトの元へと寄る。
ヴィトは動じることなく剣を構え、ジャックナイフを防ぐ。いつも通りの斬り合いになるだろう。ヴィトはそう思っていた。が……。
「なっ、何ィ!」
異変が起きたのだ。ヴィトの剣とフランクの黒いジャックナイフとの間に通常以上の火花が飛んでいたのだ。
炎魔法ファイヤー・マジックを使っているな)
ヴィトは心の中で冷静に分析した。恐らく向こうの世界の帝国兵士が使う魔法だろう。ヴィトはかつて戦った中世の鎧風の男二人組のことを思い出す。あの時と同様にフランクのナイフに炎が纏わり付いている。
「このままテメェを焼き殺してやるぜッ!」
フランクは狂気に満ちた笑顔でヴィトに笑いかける。
「やれるもんなら……やってみろッ!」
ヴィトはフランクの体を蹴り飛ばすと、一旦距離を置き、自身の体をトイレの壁に預ける。
「よし、お前の死刑は確定した」
フランクは笑いもしない、冷静な声で呟く。
「やれるもんなら……やってみろ」
ヴィトは先ほどのフランクと同様に冷静な表情で呟く。両者一歩も譲らぬ戦いになる。そんな予感が二人の間に巻き起こる。
先端を切ったのは、フランクの方だった。彼はナイフを上空に掲げ、ヴィトを斬りつけようしたのだ。ヴィトは素早く身を右に逸らし難を逃れる。
そのヴィトの判断は賢明と言えるだろう。
現にヴィトがさっきまでいた場所の背後の壁には、ナイフで傷つけたとは思えない大きな穴が空いていたからだ。
「ハァハァ……危なかった」
「よそ見をしてる場合かッ!」
フランクは壁からナイフを早い勢いで引き抜くと、そのナイフを今ヴィトがいる方向に突き刺す。ヴィトは今度は剣を斜めにしてナイフを防いだ。
「こんないたちごっこをいつまで繰り返す気だ?」
ヴィトの問いかけにフランクは「同感だ」と短く吐き捨てるように言った。
「だなッ!」
ヴィトは剣を握る手を強め、フランクを弾き飛ばす。
「やるじゃあないか、だが、貴様はおれの第二の武器のことを忘れているようだなッ!」
フランクはコウモリいや、むしろコウモリの姿をした怪物の顔をヴィトに向け、それからライオンのように鋭利な歯を見せ、ヴィトに噛みつかんと飛びかかる。
「くっ」
ヴィトはフランクが迫る一瞬の間に対処法を思案した。
右に逃げれば、彼はすぐさま方向を変え、自分にかぶり付くだろう。左も同じ。かと言っても、このままここに留まれば、頭をかぶりつかれ、死ぬだろう。ヴィトは考えた末にある結論に達した。
「なっ、何ィィィィ~!」
そう、真っ直ぐに剣を構えてフランクに向かって突撃したのだった。
「ウォォォォォォ~~!!」
ヴィトの形の良いそして、丈夫な伝説の剣は横になり、いつでもフランクを切れる準備は万端だと言う目でフランクを睨みつける。
フランクは危機を感じ、羽を広げ、ヴィトの攻撃を回避するために上空に飛び上がる。だが、次の瞬間にそれは間違いだと気付かされた。そう、ヴィトがトイレから出てしまったのだ。
フランクは急いでヴィトを追いかけた。
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