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第十四話 ドイツ人街の戦いーその⑥

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ヴィトは何とか、気を持ち直し、カルロを睨む。
「ふん、おれとやろうって言うのか?全力で?」
「じゃなかったら、どうする気だ?」
ヴィトは剣の矛先をカルロに向け、改めて彼への敵対心をあらわにした。
「へっ、身の程知らずが」
カルロはそう捨て台詞を吐くと、金棒ごとヴィトに突っ込む。ヴィトは剣を斜めにし、金棒を防ぐ。
「オラよッ!」
カルロは金棒への力を強める。たださえ思い金棒なのにカルロの重圧まで加わっては、もうヴィトに力比べでの勝算の目処は立たない。
ヴィトは金棒に弾き飛ばされ、レストランの味気ない壁に体を預けてしまう。
「くっ……」
ヴィトは壁からやっとの事で体を起こすと、さっきしまったはずの45口径のオート拳銃を取り出し、壁の破壊跡から出来た噴煙を利用し、カルロに向かって発砲する。オート拳銃の重い音が無人のレストランに三回響く。ヴィトは拳銃を側に投げ捨てると、なんとカルロは無傷のまま立っていたのだ。
「おい、ボウズ……どうして弾が当たったのに無傷なのか知りたいか?」
カルロはヴィトが頼んでしもないのに理由を喋りたがっている。
「いいや、オレは特に興味もないけどな……」
「まぁ、遠慮するなよ、オレはな防御魔法ガード・マジックを使用したのさ、こいつは便利だぜ、緑の光がまるで壁みてえに出来て、大抵の攻撃を跳ね飛ばしてくれんだよ」
カルロは薄気味の悪い顔を浮かべ、ニヤニヤと笑う。
ヴィトはそんな粋がるカルロに唾を吐き、剣を再び手に取ると、今度はカルロに向かって飛びかかる。
「やけっぱち起こしたのか、ヴィト?」
カルロはそんなヴィトを見て、金棒を振り下ろす。カルロは勝利を確信した。
だが、次の瞬間に、自分のその考えは間違いだったと思わざるを得なかった。何故なら、ヴィトはその場から姿を消していたからだ。
「ちくしょうッ!どこに行きやがった !」
カルロは金棒をめちゃくちゃに振り回しながら、ヴィトを探し回る。
「居ねえ !居ねえ !」
カルロは自分が壊し回ったレストランの残骸の中をうろつき回りながら、忌々しげに吐き捨てる。
「チッ、まぁいいさ、ヴィト・プロテッツイオーネはオレの金棒で木っ端微塵になって死にました……ルカにはそう報告すればいいさ、それで全て丸く収まるんだからな」
カルロがそう言ってレストランを跡にしようとした時だった。突然ヴィトが目の前に現れたのだ。
「勝手に終わりにされては困るんだよな、ドイツ人街のサンタクロースさんよォォォォォォ~~!!」
ヴィトはカルロの目の前から、攻撃を仕掛ける。
カルロ咄嗟にその場から飛び跳ねて避ける事で事なき事を得たが、もし、あと少し彼の判断が遅ければ、ヴィトの剣の餌食になっていただろう。
「テメェ、何の手品を使いやがった!?」
「なんて事はないよ、だがテメェには教えてやらねえ」
ヴィトはさっきのカルロとは正反対の態度を取ることにより、更にカルロを挑発したのだった。
「野郎、外に出な、お前を地獄に送ってやるよ」
カルロは暗喩的に全力を出し、彼を殺す事を伝えたのだ。
「いいだろう、オレもその決闘にのってやろう」
ヴィトはカルロの言うままに店の外へと出る。
「これで満足か?」
「勿論」
カルロはそう言うと、右手で金棒を振り上げ、ヴィトに襲い掛かる。
「何度も同じ手を喰らうかよッ!」
ヴィトはカルロが突っ込む前に浮遊魔法スカイアップ・マジックを使い、カルロの攻撃を交わす。
「見事だ……お前も魔法を使えるのか?」
「お前バカか?じゃなければ、ここまでミラノリアを追い詰める事はできなかったぜ」
カルロはそうバカにされた言葉を聞くと、胸がムカムカしてしょうがない。
「そうか……なら、そんな事言って悪かったなァァァァァァァ~~!」
カルロは自分もヴィトと同様に浮遊魔法スカイアップ・マジックを使うと、ヴィトに空中戦を望む。
「いいだろう、どっちが街の下に落ちるか、勝負ってことか?」
「いいや、違うね……下を見な」
ヴィトは怖がることなく下を向く、すると大勢の人が二人を見て、大騒ぎをしていたのだ。
「やっぱり、他の魔法を使えない奴には、これが異常な状態に見えるんだな」
「その通りよ、普通に考えてそうだろ、他の奴らはこの世界以外に世界があるなんて想像もしねえだろうよ」
警察お巡りが来る前に片を付けようってか?」
「正解ッ!」
カルロはそう答えると、金棒を持ってヴィトに飛びかかる。
ヴィトはそれを華麗に避ける。次の瞬間に無関係のビルにカルロの金棒が直撃する。
「おいおい、今のは普通の人カタギの奴のビルだぜ、壊していいのか?」
ヴィトはカルロにそう問いかけたが、カルロは「構うもんかよ」と叫び、再びヴィトに金棒を向ける。
ヴィトは金棒を剣で斬りつける。カルロは斬り付けられた衝撃により、少し後ろに吹き飛ばされる。
「やるじゃあねえか、お前がこれ程までの実力だとは思わなかった」
「おれを見くびり過ぎたな」
ヴィトはカルロに剣の矛先を向け笑う。ただの笑みではない、勝利を確信した勝者の笑みだった。
「そうだな……だが、お前にも弱点がある事を知ってるよ」
カルロはそう言うと今いる場所から離れ、なんと南の方角へと向かう。
ヴィトは勝負放棄かと考えたが、その方角に何があるのかを思い出し、慌ててカルロを追いかける。
「まさか、テメェ !!」
「そうさ !飲み込みが悪いな、ヴィト !お前らが匿っていると言われるお姫様を狙う !!」
「お前は……お前は……最低限の仁義すら無くしちまったのかッ!」
ヴィトはカルロを追いかけながら、そう叫ぶが、当のカルロには全く応えていないようだった。
「そんなものは、大金と一緒に捨てちまったよッ!カタギを巻き込まねえだの !麻薬をやるなだの !そんな古臭い考えに拘ってるから、カヴァリエーレ・ファミリーは落ち目になっちまうんだよ !!」
ヴィトはカルロの言葉が正しいと思うことはなかった。
先代の言葉もあるし、何より彼の敬愛する上司である、ルーシー・カヴァリエーレが麻薬ビジネスを嫌っていたためだ。
「いいや、落ち目にはならんな、お前を殺し、ルカを殺し、ミラノリア・ファミリーを壊滅させりゃあ、おれ達は再びこの街のボスに戻れる」
ヴィトはあからさまにカルロを挑発し、動きを留まらせようとしたが、カルロは止まることがなく向かったために、ヴィトの頑張りは無駄に終わったのだと痛感した。
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