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第六話 ダウンタウン・ウォーズ
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ヴィトは車を飛ばし、ダウンタウンのアパートへと向かった。そんなヴィトを待ち構えていたのは、一匹いや、一体のリザードマンだった。
「何者だ貴様は……おれのアパートの前で何をしてやがる?」
ヴィトはトンプソンマシンガンを不気味な竜人に構える。
「……何って決まってるだろ?ようやく弾の切れたグラントの野郎を始末してやるのさ」
竜人はそのトカゲのような不気味な口を開け、先端が二つに分かれYの字に分かれている舌を出した。
「忠告だ……グラントに手を出してみろ、貴様の体を蜂の巣にしてやるぜ」
ヴィトはこれは脅しではないとばかりに引き金に後一歩の所で撃てるという所にまで、近づけた。
「やってみろ」
不気味な人形のトカゲは気色の悪い笑みをヴィトに向かって向けた。
「……忠告はしたぞ」
ヴィトはリザードマンもといトカゲにトンプソンマシンガンの弾を一斉に浴びせた。
「すっ、すごい !これなら効くんじゃないかしら」
マリアは二つの拳をギュッと握り締め、目を輝かせていた。
「どうだろうな?野郎の息が止まるのを確認しなけりゃあ、安心はできない」
ヴィトはそう言うと、フランク・シナトラ風の帽子のつばを上下に揺らす。
「じゃあ早く確認しなくちゃ」
ヴィトは「そうだな」と呟き、リザードマンに近づこうとする。だが次の瞬間に怪物の「弾の切れたグラントを始末する」というセリフが気になった。
もしかして。ヴィトは仰向けに倒れているリザードマンに更に銃を発砲する。
「ちょっと、あんた何やってんのよ !!」
「ああ、奴にトドメをな……奴がさっき言った言葉が引っかかってたんでな」
ヴィトはマシンガンを背負いながら呟く。
「でも、倒れている相手に攻撃するなんて……」
「野郎がもうこれ以上おれ達に攻撃しないための処置だよ」
ヴィトの言うことにマリアは納得しかねているようで、こわばった表情をヴィトに向けていた。
「しょうがないだろ?命の取り合いなのに手加減してたら、こっちの命が……」
ヴィトがそう言いかけた時だった。トカゲ男がムクリと立ち上がり、ヴィトの方へと駆けてくる。
「くっ、」
ヴィトは歯ぎしりしながら、残った弾をトカゲ男へと向ける。だが、その弾は簡単に弾かれていく。
「なっ、まるでスベスベとしている物に硬いものを飛ばすと、摩擦の影響で弾かれていく時みてぇだ !!」
ヴィトは自分の銃が通じないことが分かり、冷や汗をかくばかりだった。自分はギャングやマフィアと言った言わば、国に仇す反社会的組織の中枢メンバーだ。こんな事は覚悟していた。だが、自分が死ねば、ルーシーや後ろにいる少女はどうなるのだ。ヴィトは戦いの中で初めて死にたくないと思った。どうすればいいかと思案すると、背後から通りにまで響くかのような大声が聞こえた。
「ヴィトォォォォォォ~~!その剣を使うのよッ!その剣は王家伝来の剣で、伝説の騎士が王を守る時に使う剣なのよォォォォ~~!早くそれを使いなさい !!!」
マリアのその声にヴィトは懐の中の剣の鞘に手をかける。そしてマシンガンを捨て、剣を鞘から引き抜く。
立派な剣だ。ヴィトは改めてそう感じずにはいられない。塚と持ち手の所は金でできているし、剣の鍔の所には大きなダイヤモンドの宝石が埋め込まれている。そして刃の部分はまばゆいばかりの輝きを放っていた。まさに宝剣と名付けるに相応しい。日本の刀いや、それ以上の美しさを誇っている。剣に疎いヴィトでも充分に理解できた。そしてその宝剣を迫り来るトカゲ男に向けた。
「うおっと !」
トカゲ男は急ブレーキをかけて、ヴィトに迫るのを停止した。
「危ない危ない、まさかお前が王家の宝剣を持っているとはな……」
「やはり、貴様も別の世界から来た口か?」
その言葉にトカゲ男は満面の笑みを浮かべた。
「そうか、そうか、お前もその口
だったんだなッ!おれはこの力をドン・ミラノリアから頂いたッ!そして魔法の力とこの剣もだなッ!」
トカゲ男は何やら呪文を唱えると、手元に片手サイズの形の良い綺麗なサーベルを取り出した。
「これでお前を切り刻んでいるよ、ヴィト・プロテッツイオーネ !!」
トカゲ男はサーベルを構え、ヴィトに襲い掛かってくる。
「フンッ!」
ヴィトは剣を横にして、サーベルを防ぐ。
その衝撃で、トカゲ男は後方の方へと吹き飛ばされる。
「やるじゃあないか、流石おれとダウンタウンを取り合った男だよ !」
その言葉を聞き、目の前のトカゲ男の正体にヴィトは気づく。
(やはり、ダウンタウンを支配する幹部。トニー・マリーノか……どうやら、魔法とやらの力で、姿をトカゲ男に変えているらしい、悪趣味な奴だよ)
ヴィトは苦笑して、トニーのハンサムと称される顔を思い出す。
(あんな気持ち悪い顔にしちゃって、勿体無いよな)
ヴィトがそう考えていると、トカゲ男もといトニーが、ヴィトの頭上からサーベルを振り下ろしてきた。
「死ねッ!ヴィト !!」
トニーの剣を防ぐ手立てはない、ヴィトは考え事に夢中になった自分を責め、目を瞑ったが、そのトニーに一つの小さな火の玉が直撃する。
「ウォォォ~~!」
トニーは火の暑さに悶え苦しみ、地面に落ちた。
「助かったよ」
ヴィトは背後のマリアに目配せする。マリアは「別にどうってことないわよ」という顔でヴィトを見つめる。
「さてと、覚悟してもらおうか、トニー・マリーノ。ダウンタウンは俺たちカヴァリエーレ・ファミリーがいただく」
トニーはハァハァと荒い息を吐き、地面の岩のタイルを破壊しながら、ヴィトの元へと迫る。
「ふん、おれとした事がつい油断しちまったよ、今度は油断せずに行かんとな……」
トニーは血反吐を吐き捨てると、空中に飛び上がり、今度は空中を歩きながら、ヴィトの元へと迫る。
「おい、おれを宙に浮かばせることはできるかッ!?」
「無理よ !あたしが得意なのは火炎魔法だけで、他の魔法はてんでダメで……」
そう弱音を吐く、王女様にヴィトは激励を投げかける。
「いいかッ!大事なのはできるできないじゃあない !!おれ達ギャングの世界じゃあ、やるか、やれないかだッ!おれはお前にそれを聞いているんだッ!」
マリアはドレスの裾を掴み、唇をギュッと噛み締めた後に「できるわ !」と大声で叫ぶ。
「上出来だッ!おれをあいつと同様に空に浮かばせてくれたらいいッ!」
マリアは必死に浮遊魔法の唱え方を思案した。そして必死に小さい頃に習った魔法の授業のことを思い出し、ヴィトにその魔法をかけてあげた。ヴィトは自分の体が、緑の光に包まれたのを確認した。
そして、確かめるために空中に思いっきり飛び上がってみせる。今まで飛び上がったところまで、飛んだ上に何と、地面を歩くみたいに空中を歩くことが可能になったのだ。
「嘘……あたし、今まで浮遊魔法なんて成功した事がなかったのに……」
地面で目を丸くしているマリアにヴィトは大声で問いかける。
「言っただろう !『大切なのは、出来るか、出来ないかじゃなくて、やるか、やらないかだって !!、それときみは先にルーシーのところへと戻れ、これ以上、この戦いに巻き込みたくないからな」
マリアは首を縦にして、その場から立ち去った。
(これであたしもあいつの役に立てかしら?これであの女に差をつけれたかな?)
マリアはそんな事を考えながら、やがてあの竜人と戦うであろう、ヴィトの身を案じた。
「信じられねぇ、ドン・ミラノリアからの話だと、噂の王女様とやらは、てんで魔法がダメだって聞いてたのに……」
トニーは一瞬呆気にとられていたようで、それから、王女様を逃したことを悔い、その怒りをヴィトにぶつけるべく、体勢を立て直し、空中でヴィトにサーベルで襲い掛かってきた。それにヴィトも自分の剣で対抗する。
「中々やるじゃあないか、えっ、ヴィト?」
「お前ほどじゃあないがな」
二人はそんな言葉を交わしながらも、必死に剣を操作していた。
「もらったッ!」
トニーはヴィトの脇腹に狙いを定めたようだが、ヴィトはそこに剣をやり、サーベルを滑らせるようにして、刃をずらさせた。
「中々しつこいじゃあないか」
「どうだろうな?それより、このままアメコミのヒーローみてぇに飛びながら、剣を振るってるだけか?」
ヴィトの挑発に掛かったようで、トニーは顔を真っ赤にして、ヴィトに斬りかかってくる。
サーベルと剣がぶつかり合う。火花がバチバチと鳴っているのにヴィトもトニーに気づいていた。途端にヴィトは背後のビルを勢いよく蹴りつけ、トニーの剣を振りほどく。
「チッ、女たらしがァァァ~~!」
トニーは激昂すると、懐からリボルバーを取り出し、ヴィトに向けて発砲する。
弾はヴィトに逸れ、近くのビルに当たる。ビルのレンガの壁の中にリボルバーの弾がめり込む。
「危ないな、ギャングではない人間まで殺すつもりかッ!」
ヴィトの忠告にトニーいやらしい笑顔を見せるばかりだった。
「おいおい、何言ってんだよ、シカゴのアル・カポネ一味は抗争に平然とカタギの連中を巻き込んでたじゃあないか、おれ達はしちゃあいけないなんて事はないだろ?」
トニーのその問いかけにヴィトは冷ややかな目で見つめながら、答える。
「ギャングやマフィアになっている奴らが全員、アル・カポネに習わなくちゃあならんルールはないだろ?共産主義の国が全員スターリンや毛沢東に習わなくちゃあいけないなんてルールがないようにな……」
「ウダウダとうるせぇ野郎だなぁ~~!どうでもいいだろッ!?おれ達がカタギやサツにすりゃあ、どっちも社会のゴミに過ぎない事は変わらんだろ?」
「でも、ゴミでも、ルールは守らなくちゃいかんだろ?」
ヴィトはそう呟くと、剣を構え、トニーに突っ込み、トニーの胴体を斬りつけた。トニーは先ほどの炎の傷と合わさり、大ダメージを食らったようで、近くのロイヤルホテルの屋上にトニーは落下した。
「うっ、ぐっ……さっさと殺せよ、ヴィト……明日にはオレの代わりが現れるぜ、お前のやっている事は無駄なんだよ」
竜人の魔法が解けてしまったトニーは疲れのためか、或いは高級スーツの真ん中を破かれ、そこから出ている血のためか、息も絶え絶えに喋る。
「どうかな?」
ヴィトはトニーを掴みあげると、下の方にミラノリアの車。恐らくトニーが頼んだであろう援軍の車が見えたのを確認すると、その車にロイヤルホテルの屋上から、トニーを思いっきり投げつけた。
ダウンタウンを支配していた男は悲痛な叫び声を上げ、ロイヤルホテルの屋上から真っ逆さまに落ちていき、悲痛な叫び声を上げ、応援の車の屋根に激突した。
ヴィトはその様子を屋上から、冷徹な目で見つめていた。
「何者だ貴様は……おれのアパートの前で何をしてやがる?」
ヴィトはトンプソンマシンガンを不気味な竜人に構える。
「……何って決まってるだろ?ようやく弾の切れたグラントの野郎を始末してやるのさ」
竜人はそのトカゲのような不気味な口を開け、先端が二つに分かれYの字に分かれている舌を出した。
「忠告だ……グラントに手を出してみろ、貴様の体を蜂の巣にしてやるぜ」
ヴィトはこれは脅しではないとばかりに引き金に後一歩の所で撃てるという所にまで、近づけた。
「やってみろ」
不気味な人形のトカゲは気色の悪い笑みをヴィトに向かって向けた。
「……忠告はしたぞ」
ヴィトはリザードマンもといトカゲにトンプソンマシンガンの弾を一斉に浴びせた。
「すっ、すごい !これなら効くんじゃないかしら」
マリアは二つの拳をギュッと握り締め、目を輝かせていた。
「どうだろうな?野郎の息が止まるのを確認しなけりゃあ、安心はできない」
ヴィトはそう言うと、フランク・シナトラ風の帽子のつばを上下に揺らす。
「じゃあ早く確認しなくちゃ」
ヴィトは「そうだな」と呟き、リザードマンに近づこうとする。だが次の瞬間に怪物の「弾の切れたグラントを始末する」というセリフが気になった。
もしかして。ヴィトは仰向けに倒れているリザードマンに更に銃を発砲する。
「ちょっと、あんた何やってんのよ !!」
「ああ、奴にトドメをな……奴がさっき言った言葉が引っかかってたんでな」
ヴィトはマシンガンを背負いながら呟く。
「でも、倒れている相手に攻撃するなんて……」
「野郎がもうこれ以上おれ達に攻撃しないための処置だよ」
ヴィトの言うことにマリアは納得しかねているようで、こわばった表情をヴィトに向けていた。
「しょうがないだろ?命の取り合いなのに手加減してたら、こっちの命が……」
ヴィトがそう言いかけた時だった。トカゲ男がムクリと立ち上がり、ヴィトの方へと駆けてくる。
「くっ、」
ヴィトは歯ぎしりしながら、残った弾をトカゲ男へと向ける。だが、その弾は簡単に弾かれていく。
「なっ、まるでスベスベとしている物に硬いものを飛ばすと、摩擦の影響で弾かれていく時みてぇだ !!」
ヴィトは自分の銃が通じないことが分かり、冷や汗をかくばかりだった。自分はギャングやマフィアと言った言わば、国に仇す反社会的組織の中枢メンバーだ。こんな事は覚悟していた。だが、自分が死ねば、ルーシーや後ろにいる少女はどうなるのだ。ヴィトは戦いの中で初めて死にたくないと思った。どうすればいいかと思案すると、背後から通りにまで響くかのような大声が聞こえた。
「ヴィトォォォォォォ~~!その剣を使うのよッ!その剣は王家伝来の剣で、伝説の騎士が王を守る時に使う剣なのよォォォォ~~!早くそれを使いなさい !!!」
マリアのその声にヴィトは懐の中の剣の鞘に手をかける。そしてマシンガンを捨て、剣を鞘から引き抜く。
立派な剣だ。ヴィトは改めてそう感じずにはいられない。塚と持ち手の所は金でできているし、剣の鍔の所には大きなダイヤモンドの宝石が埋め込まれている。そして刃の部分はまばゆいばかりの輝きを放っていた。まさに宝剣と名付けるに相応しい。日本の刀いや、それ以上の美しさを誇っている。剣に疎いヴィトでも充分に理解できた。そしてその宝剣を迫り来るトカゲ男に向けた。
「うおっと !」
トカゲ男は急ブレーキをかけて、ヴィトに迫るのを停止した。
「危ない危ない、まさかお前が王家の宝剣を持っているとはな……」
「やはり、貴様も別の世界から来た口か?」
その言葉にトカゲ男は満面の笑みを浮かべた。
「そうか、そうか、お前もその口
だったんだなッ!おれはこの力をドン・ミラノリアから頂いたッ!そして魔法の力とこの剣もだなッ!」
トカゲ男は何やら呪文を唱えると、手元に片手サイズの形の良い綺麗なサーベルを取り出した。
「これでお前を切り刻んでいるよ、ヴィト・プロテッツイオーネ !!」
トカゲ男はサーベルを構え、ヴィトに襲い掛かってくる。
「フンッ!」
ヴィトは剣を横にして、サーベルを防ぐ。
その衝撃で、トカゲ男は後方の方へと吹き飛ばされる。
「やるじゃあないか、流石おれとダウンタウンを取り合った男だよ !」
その言葉を聞き、目の前のトカゲ男の正体にヴィトは気づく。
(やはり、ダウンタウンを支配する幹部。トニー・マリーノか……どうやら、魔法とやらの力で、姿をトカゲ男に変えているらしい、悪趣味な奴だよ)
ヴィトは苦笑して、トニーのハンサムと称される顔を思い出す。
(あんな気持ち悪い顔にしちゃって、勿体無いよな)
ヴィトがそう考えていると、トカゲ男もといトニーが、ヴィトの頭上からサーベルを振り下ろしてきた。
「死ねッ!ヴィト !!」
トニーの剣を防ぐ手立てはない、ヴィトは考え事に夢中になった自分を責め、目を瞑ったが、そのトニーに一つの小さな火の玉が直撃する。
「ウォォォ~~!」
トニーは火の暑さに悶え苦しみ、地面に落ちた。
「助かったよ」
ヴィトは背後のマリアに目配せする。マリアは「別にどうってことないわよ」という顔でヴィトを見つめる。
「さてと、覚悟してもらおうか、トニー・マリーノ。ダウンタウンは俺たちカヴァリエーレ・ファミリーがいただく」
トニーはハァハァと荒い息を吐き、地面の岩のタイルを破壊しながら、ヴィトの元へと迫る。
「ふん、おれとした事がつい油断しちまったよ、今度は油断せずに行かんとな……」
トニーは血反吐を吐き捨てると、空中に飛び上がり、今度は空中を歩きながら、ヴィトの元へと迫る。
「おい、おれを宙に浮かばせることはできるかッ!?」
「無理よ !あたしが得意なのは火炎魔法だけで、他の魔法はてんでダメで……」
そう弱音を吐く、王女様にヴィトは激励を投げかける。
「いいかッ!大事なのはできるできないじゃあない !!おれ達ギャングの世界じゃあ、やるか、やれないかだッ!おれはお前にそれを聞いているんだッ!」
マリアはドレスの裾を掴み、唇をギュッと噛み締めた後に「できるわ !」と大声で叫ぶ。
「上出来だッ!おれをあいつと同様に空に浮かばせてくれたらいいッ!」
マリアは必死に浮遊魔法の唱え方を思案した。そして必死に小さい頃に習った魔法の授業のことを思い出し、ヴィトにその魔法をかけてあげた。ヴィトは自分の体が、緑の光に包まれたのを確認した。
そして、確かめるために空中に思いっきり飛び上がってみせる。今まで飛び上がったところまで、飛んだ上に何と、地面を歩くみたいに空中を歩くことが可能になったのだ。
「嘘……あたし、今まで浮遊魔法なんて成功した事がなかったのに……」
地面で目を丸くしているマリアにヴィトは大声で問いかける。
「言っただろう !『大切なのは、出来るか、出来ないかじゃなくて、やるか、やらないかだって !!、それときみは先にルーシーのところへと戻れ、これ以上、この戦いに巻き込みたくないからな」
マリアは首を縦にして、その場から立ち去った。
(これであたしもあいつの役に立てかしら?これであの女に差をつけれたかな?)
マリアはそんな事を考えながら、やがてあの竜人と戦うであろう、ヴィトの身を案じた。
「信じられねぇ、ドン・ミラノリアからの話だと、噂の王女様とやらは、てんで魔法がダメだって聞いてたのに……」
トニーは一瞬呆気にとられていたようで、それから、王女様を逃したことを悔い、その怒りをヴィトにぶつけるべく、体勢を立て直し、空中でヴィトにサーベルで襲い掛かってきた。それにヴィトも自分の剣で対抗する。
「中々やるじゃあないか、えっ、ヴィト?」
「お前ほどじゃあないがな」
二人はそんな言葉を交わしながらも、必死に剣を操作していた。
「もらったッ!」
トニーはヴィトの脇腹に狙いを定めたようだが、ヴィトはそこに剣をやり、サーベルを滑らせるようにして、刃をずらさせた。
「中々しつこいじゃあないか」
「どうだろうな?それより、このままアメコミのヒーローみてぇに飛びながら、剣を振るってるだけか?」
ヴィトの挑発に掛かったようで、トニーは顔を真っ赤にして、ヴィトに斬りかかってくる。
サーベルと剣がぶつかり合う。火花がバチバチと鳴っているのにヴィトもトニーに気づいていた。途端にヴィトは背後のビルを勢いよく蹴りつけ、トニーの剣を振りほどく。
「チッ、女たらしがァァァ~~!」
トニーは激昂すると、懐からリボルバーを取り出し、ヴィトに向けて発砲する。
弾はヴィトに逸れ、近くのビルに当たる。ビルのレンガの壁の中にリボルバーの弾がめり込む。
「危ないな、ギャングではない人間まで殺すつもりかッ!」
ヴィトの忠告にトニーいやらしい笑顔を見せるばかりだった。
「おいおい、何言ってんだよ、シカゴのアル・カポネ一味は抗争に平然とカタギの連中を巻き込んでたじゃあないか、おれ達はしちゃあいけないなんて事はないだろ?」
トニーのその問いかけにヴィトは冷ややかな目で見つめながら、答える。
「ギャングやマフィアになっている奴らが全員、アル・カポネに習わなくちゃあならんルールはないだろ?共産主義の国が全員スターリンや毛沢東に習わなくちゃあいけないなんてルールがないようにな……」
「ウダウダとうるせぇ野郎だなぁ~~!どうでもいいだろッ!?おれ達がカタギやサツにすりゃあ、どっちも社会のゴミに過ぎない事は変わらんだろ?」
「でも、ゴミでも、ルールは守らなくちゃいかんだろ?」
ヴィトはそう呟くと、剣を構え、トニーに突っ込み、トニーの胴体を斬りつけた。トニーは先ほどの炎の傷と合わさり、大ダメージを食らったようで、近くのロイヤルホテルの屋上にトニーは落下した。
「うっ、ぐっ……さっさと殺せよ、ヴィト……明日にはオレの代わりが現れるぜ、お前のやっている事は無駄なんだよ」
竜人の魔法が解けてしまったトニーは疲れのためか、或いは高級スーツの真ん中を破かれ、そこから出ている血のためか、息も絶え絶えに喋る。
「どうかな?」
ヴィトはトニーを掴みあげると、下の方にミラノリアの車。恐らくトニーが頼んだであろう援軍の車が見えたのを確認すると、その車にロイヤルホテルの屋上から、トニーを思いっきり投げつけた。
ダウンタウンを支配していた男は悲痛な叫び声を上げ、ロイヤルホテルの屋上から真っ逆さまに落ちていき、悲痛な叫び声を上げ、応援の車の屋根に激突した。
ヴィトはその様子を屋上から、冷徹な目で見つめていた。
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