上 下
2 / 133

第二話 マフィア対帝国騎士

しおりを挟む
ヴィトは少女を連れ、アパートへと向かう中にまるで中世の騎士が持ってそうな剣に思わず目を止める。
「なぁ、きみ……それはどこで手に入れたんだい?」
「あんた、この剣も知らないの!?代々フランソワ王家に伝わる伝説の剣よ !!」
マリアは呆れたような、怒ったような口調で説明する。
「知らないな……きみはところで一体どこから……」
ヴィトがそう説明しようとした時だった。目の前に中世の鎧のような、だがどこか現実の防弾チョッキのような奇妙な鎧に身を包んだ顎と頰に立派なヒゲを蓄えた壮年の男とその部下と思われる短い金髪のパーツの大きいややきつ味の顔の青年の二人が空から降ってきた。
「……今日は随分と変人が多いようだ」
ヴィトはそうは言いながらも、用心のためにコートに隠してある拳銃に手をやる。
「ギシュタルリアの兵士だわ !!!」
マリアがそう叫ぶやいなや、二人の兵士はマリアの存在に気がついたようで、腰に下げていた剣を鞘から引き抜く。
「おやおや、誰かと思えばこんな所に王女様がいるじゃないか、こいつは運がいいぜ !」
男のうちのヒゲを生やした方がニンマリと口元を歪ます。
「無礼な !下級兵士ごときがわたしを誰だと思っているの !下がりなさいッ!」
それを聞くなり、青年の兵士がヘソを曲げたようで、鞘を落ち着かなさそうに揺らす。
「おいおい、分かってんのかよ?お前が即位したせいで、戦争が起こったことをよぉ~」
青年の兵士が剣の矛先をマリアに向ける。
「おいやめとけ、身分とか関係なく女に武器を向けるなんてのは、男のやる事じゃあないぜ」
ヴィトは冷静に言ったつもりだが、青年の兵士はカチッときたようで、怒りの表情を向ける相手をマリアからヴィトに変更した。
「お前何者だよ、お前は関係ないだろう?おれたちはこいつを殺して、皇帝陛下から勲章をいただく予定なんだ、邪魔すんなよ」
青年は剣先をヴィトに向け直した。ヴィトもそれに合わせ、懐から拳銃を取り出し、銃口青年に向けた。
「いいや、オレはお前のやっている事に賛同しかねるんでね、それにお前がそので斬りかかるより、オレの銃の方が早いぜ、試してみるか?」
「脅してるつもりか知らんが、そんなおれは怖くないぜ、試してみるか?」
青年は体をプルプルと震わせると、何と剣に炎がまとわりついたのだ。
「信じられん……人間業と思えない」
ヴィトはこの世界においては当然の事を言ったのだが、マリアや二人の兵士と言った異世界で育った人間には信じられない言葉だったようで、肩をすくめている。
「信じられない……あんたどんだけ田舎者なのよ !も知らないの!?」
だと!?おれはきみ達が何を言っているのか、理解できない……」
「へん、マリア王女様よぉ~あんたとんでもない奴をボディガードにしたようだな?安心して、死にや……」
それが青年の人生最期の言葉となった。ヴィトは眉ひとつ動かさずに相手を殺していた。その証拠にヴィトのオート拳銃の銃口から、白い煙が出ている。
「一つ忠告しておくが……人を殺す前にいらんおしゃべりはしない事だ……プロのルールだぜ」
ヴィトは地面に倒れた青年を見下しながら、呟く。
「貴様ァァァ~~よくも、ハンスをッ!」
壮年の男の方が炎の剣を構えて突っ込む。
「まだ殺され足りないらしいな?」
ヴィトはそう迫ってくる男にハンスを殺した拳銃を向ける。
「何くそォォォ~~舐めるなッ!」
壮年の男は何やら一言呟くと、高速で移動し始めた。
「動きが変わっただと!?」
「気をつけて !あれは高速魔法よ !ギシュタルリアの兵士は火炎魔法と一緒に使える魔法なのよ !!」
マリアの忠告にヴィトは思わず冷や汗を垂らす。
「高速だと!?どうやって捉えたらいいんだ!?」
ヴィトは背後にいるマリアにそう問いかけだが、マリアは無言で頭を振るばかりだった。
「クソッ!どうすればいいんだ!?」
そう叫ぶと同時に目の前に目の前に壮年の男が立っているのに気がつく。
「くっ……」
「もらったッ!」
壮年の男は剣をヴィト目掛けて剣を振り下ろそうとしたが、ヴィトはその隙を狙い、拳銃を壮年の男に向けた。パァーンと拳銃の乾いた音が閑静な住宅街に鳴り響く。
「ハァハァ……やったか?」
ヴィトが壮年の男を見ると、脇腹を押さえているのを確認した。
(こいつはもう動けんかもな)
ヴィトは男にゆっくりと近づくと、拳銃を男の頭に突きつける。
「いくら頭が悪くてもこれの威力は知っただろう?お前に一つ聞きたい、お前はどこから来た?この子を追って来たのか?」
「へっ、オレとハンスはギシュタルリア帝国の兵士だよ、戦いに参加してよぉ~終わった後に城の中を歩いていたら、門が開いていたのに気がついてよぉ~立派な門だったから、宝物庫かなと思って入ったんだよ、だが……おれとハンスは妙な光に包まれちまってよぉ~気がついたら、ここに居たわけさ」
ヴィトはどこか他の国から来たのだと認識した。これは気をひくための嘘で、本当はマリアを殺すためだけに近くのビルの屋上から飛び降りたとかそんなのだろう。炎やら、高速移動やらはおれに幻覚でも見せたのだろう、ヴィトはそう認識した。
「よし、お前に一つだけチャンスをやろう、我々のファミリーに忠誠を誓う代わりにお前にアメリカ国籍と仕事をやろう」
「あめりか?何だそりゃあ?」
ヴィトはここに来て首を傾げた。おかしいアメリカ国籍をやろうと言われ、喜ばない人間はいないだろう。ましてや仕事も与えると言われ、動かない人間はいない。
と……すると、ヴィトは本当に異世界とやらの存在を信じるしかないと考えた。
「お前は本当に異世界とやらから来たのか?」
「あん、何言ってんだよ !こここそフランソワ王国の田舎じゃあないのかよ !」
どうも話が噛み合わんな。ヴィトはフゥとため息を吐く。
「お前の出自などどうでもいいが、おれ達のファミリーに来る気はないか?今敵対組織と揉めててな、人が欲しい所だったんだ」
ヴィトは脇腹を押さえる男に手を差し伸べようとしたが、その瞬間にマシンガンの音が鳴った。
「マズイッ!ミラノリアの奴らだッ!」
ヴィトはマリアの上に乗り、守った。
「うぐァァァァァァァ~~」
男はマシンガンが当たり、死亡する。
「参ったな、それよりきみ歩けるかな?」
ヴィトはマリアにそう問いかけたが、マリアは「平気よ」と叫んだ。
「そうか、なら安心だ」
ヴィトは拳銃を迫ってくるマシンガンを持った男達に銃を発砲する。
「これで奴らもしばらくは怯むだろう……さてと、おれと一緒に来てくれ !」
ヴィトはマリアの手を引き、アパートへと走っていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。

トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。 謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。 「え?ここどこ?」 コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。 ――え? どうして カクヨムにて先行しております。

私は魔法最強の《精霊巫女》でした。〜壮絶な虐めを受けてギルドをクビにされたので復讐します。今更「許してくれ」と言ってももう遅い〜

水垣するめ
ファンタジー
アイリ・ホストンは男爵令嬢だった。 しかし両親が死んで、ギルドで働くことになったアイリはギルド長のフィリップから毎日虐めを受けるようになった。 日に日に虐めは加速し、ギルドの職員までもアイリを虐め始めた。 それでも生活費を稼がなければなかったため屈辱に耐えながら働いてきたが、ある日フィリップから理不尽な難癖をつけられ突然ギルドをクビにされてしまう。 途方に暮れたアイリは冒険者となって生計を立てようとするが、Aランクの魔物に襲われた時に自分が《精霊巫女》と呼ばれる存在である事を精霊から教えられる。 しかも実はその精霊は最強の《四大精霊》の一角で、アイリは一夜にしてSランク冒険者となった。 そして自分をクビにしたギルドへ復讐することを計画する。 「許してくれ!」って、全部あなた達が私にしたことですよね? いまさら謝ってももう遅いです。 改訂版です。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

錬金術師カレンはもう妥協しません

山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」 前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。 病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。 自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。 それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。 依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。 王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。 前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。 ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。 仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。 錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。 ※小説家になろうにも投稿中。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

レベルってなんですか?

Nombre
ファンタジー
大学の入学式にバイクで向かう途中、主人公は事故によって命を落とす。 目が覚めるとそこは異世界だった!? そして指には謎の指輪が…… この世界で一人だけレベルがない主人公は指輪の力を使ってなんとか生き抜いていく! しかし、主人公に降りかかる数々の理不尽な現実。 その裏に隠された大きな陰謀。 謎の指輪の正体とは!そして主人公は旅の果てに何を求めるのか! 完全一人称で送る、超リアル志向の異世界ファンタジーをどうぞお楽しみください。 ㊟この小説は三人称ではなく、一人称視点で想像しながら是非お楽しみください。 毎週日曜投稿予定 「小説家になろう」「ノベルアップ+」「カクヨム」でも投稿中!

さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~

みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。 生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。 夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。 なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。 きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。 お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。 やっと、私は『私』をやり直せる。 死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。

処理中です...