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パンゲール大陸攻略編
勇者パキラの決戦ーその⑦
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ブレアフォード大公は目の前に突如、現れた女に当初は恐怖に打ちひしがれていたのだが、話が進むにつれてシャーロットの正体が暴露した瞬間に、彼の心の中では恐怖よりある感情の方が優っていく。
それは『怒り』時に人間の恐怖の感情さえ吹き飛ばす事がある人の有する唯一の武器とも言える感情である。
ブレアフォード公は両手の拳を震わせながら、目の前で刀を持って笑う少女に向かって問い掛ける。
「化け物……私の子供たちを何処へやった?」
シャーロットは言葉を交わすよりも前に、首を傾げる。
「失礼ですが、お子様とは?」
「……惚けるなッ!私の大切な三人の子供の事だッ!ローレンス!マルグリッド!そして、エリザベスの三人の事だッ!」
「エリザベスが事故で死亡したのは叔父様がよくご存知ではございませんの?」
「黙れッ!エリザベスは本当は死んでいないんだッ!あれは偽物だッ!エリザベスは何処かでーー」
「あまりにも煩かったので殺したんです。良かったですよ。最後の彼女の悲鳴は、とっても良い声で良い鳴いてくれました」
シャーロットのその言葉を聞いた瞬間に大公の脳裏に過るのは愛娘の悲鳴の瞬間が浮かぶ。彼女はどれ程までに恐ろしかったのだろう。彼女は死ぬ瞬間に何を言ったのだろう。
大公は自分自身を呪う。そして、その最愛の娘を殺した目の前の女を鋭い眼光で睨んだのだが、彼女は怯えるどころか口元を隠して上品な様子で笑って、
「でも、叔父様、あの娘はあそこで死んでおいた方が良かったと思いません?」
と、信じられない様な言葉を言った。ブレアフォード公はシャーロットの言葉の意味が理解できずに固まった表情を浮かべているのだが、直ぐに彼女は大公にも理解できる様に話を続けていく。
「そうでしょう?あの娘は生きていても絶対に傲慢な貴族に生まれ育っていましたわ。あのまま生きていたのなら、いずれは民衆の手によって民意の上の処刑で死んでいたでしょうね。そんな無残な死に方をするよりも、あそこで貴族のまま幸せに死んだ方が幸福だと思いませんか?」
ブレアフォード大公はその言葉を聞いた瞬間に周りの止める声も聞かずに、我を忘れてシャーロットへと突っ込む。
彼の頭の中には屋敷から他国へと逃した妻の事も、他の子供の行方も抜け落ちていた。
ただ、目の前で自分の子供を馬鹿にされた無礼な化け物を殺すべく足を動かしたいのだが、その化け物はいとも簡単に大公の剣を交わし、背後へと回った後に大公の首を斬り付ける。
首を斬り付けられたために、大公は首から血を拭き流して死亡してしまう。
皇帝は自らの弟の死を確認し、密かに一筋の涙を流し、他の家臣や勇者の仲間たちも咽び泣く。
だが、ただ一人、赤い肌の青年だけは亜空間の武器庫から見慣れぬ剣を召喚し、彼女に向かって斬りかかっていく。
乱暴に剣を振るう青年をシャーロットは挑発する様に交わしていく。
そして、彼の剣を左側面から突いた彼女は口元を緩ませて、
「やはり、あなたは孝太郎さんでしたか、お久し振りでございますね」
「黙れッ!よくも……よくもこんな事をッ!どうして、お前たちは人をこんなにも追い詰められるんだ!?」
「あら、嫌だわ。元々この帝国は終わっていましたわ。お兄様や私はそれを少し早めただけに過ぎませんの。それの何が問題でしょうか?」
孝太郎の中では我慢の限界が迫っていた。思えば、23世紀にしろ、明治時代にしろ、彼女は人を殺した事を後悔する事などなかった筈だ。それでいて、人を殺し、相手を乏しめる事にかけては天才的。
まさに悪魔だ。孝太郎の頭の中には改めてペンドラゴン兄妹の危うさを思い出していく。
その瞬間に、孝太郎は目の前の金髪の女性の所業により、死んだ人間の事を思い出す。
ただ快楽のためだけに潜伏先の一家を皆殺しにした事件の事を。
孝太郎は激情に駆られ、滅茶苦茶に刀を振るっていくが、彼女はそれをいとも容易く回避し、孝太郎を嘲笑うかの様に背後へと回っていく。
「あら、鬼ごっこは終わりですか?」
それを聞いた孝太郎は咄嗟に背後を振り向き、大きく手に持っていた奇妙な形の剣を振るったのだが、彼女はそれを背後に飛んで避け、孝太郎の醜態を嘲笑う。
「随分と無様ですね。どうしたんですか?刑事さん?」
「……オレはもう刑事じゃない。当然、お前を法に引き渡す気もない。だから、ここで言う。お前はこの場で裁きを受けてもらおう」
シャーロットはそれを聞いても尚、笑ってはいたのだが、別の男が口を挟んだ事により、彼女の表情は一変する。
「いいや、もしキミがこの女の戦闘を無力化する事が出来たのならば、私の手に引き渡してくれ、この女だけは許せない。私自らの手で妻の仇を取りたいんだ」
ワナワナと拳を震わせる皇帝に対し、孝太郎は黙って首を縦に動かす。
だが、シャーロットはそんな孝太郎の態度など関係なく、彼に向かって剣を構えて突っ込む。
気が付いた時には彼は目の前に踏み込まれ、そのまま袈裟がかりに斬り殺されるかと思ったのだが、その前に仲間のジョージが乱入し、彼女の剣を弾く。
「あら、どなたか存じませんが、私と孝太郎さんとの戦いを邪魔しないで頂けませんか?」
「やかましいやッ!イカレ女!お前だけはオレの手でぶっ殺さないと気が済まねー!」
ジョージは背中に下げていた剣をそのまま構えていくシャーロットへと向かうのだが、その前に突如、一人の黒装束の男が現れ、ジョージの剣を弾く。
「おやおや、随分と起爆のタイミングが遅いんで見に来たのでござりまするが、どうもこの城の中に異分子が紛れ込んでおるようじゃ、これはいかんなぁ~」
「テメェ、何者だ?」
ジョージが剣を構えて尋ねると、突如、乱入した右頬に傷を付けた男はニヤニヤとした笑いを浮かべて答えた。
「儂の名前は降魔霊蔵と申しまする。現在の頭領の腹心にしてーー」
「そんな話はどうでも良い。テメェはシリウスの味方なのか?」
「……人が話をしている時は黙って聞くのが筋であろう。全く無礼な男よ」
霊蔵はそれまでの笑いを引っ込め、能面の様に冷徹でそれでいて何処か恐怖を覚える顔で言った。
「まぁ、良いか、今日がお主らの命日には相違ないからのぅ。まぁ、来世では会話の作法くらい覚えてこられるのがよかろう」
霊蔵は背中に下げていた刀を抜いて、ジョージへと斬りかかり、彼と刀同士の斬り合いを始めていく。
それは『怒り』時に人間の恐怖の感情さえ吹き飛ばす事がある人の有する唯一の武器とも言える感情である。
ブレアフォード公は両手の拳を震わせながら、目の前で刀を持って笑う少女に向かって問い掛ける。
「化け物……私の子供たちを何処へやった?」
シャーロットは言葉を交わすよりも前に、首を傾げる。
「失礼ですが、お子様とは?」
「……惚けるなッ!私の大切な三人の子供の事だッ!ローレンス!マルグリッド!そして、エリザベスの三人の事だッ!」
「エリザベスが事故で死亡したのは叔父様がよくご存知ではございませんの?」
「黙れッ!エリザベスは本当は死んでいないんだッ!あれは偽物だッ!エリザベスは何処かでーー」
「あまりにも煩かったので殺したんです。良かったですよ。最後の彼女の悲鳴は、とっても良い声で良い鳴いてくれました」
シャーロットのその言葉を聞いた瞬間に大公の脳裏に過るのは愛娘の悲鳴の瞬間が浮かぶ。彼女はどれ程までに恐ろしかったのだろう。彼女は死ぬ瞬間に何を言ったのだろう。
大公は自分自身を呪う。そして、その最愛の娘を殺した目の前の女を鋭い眼光で睨んだのだが、彼女は怯えるどころか口元を隠して上品な様子で笑って、
「でも、叔父様、あの娘はあそこで死んでおいた方が良かったと思いません?」
と、信じられない様な言葉を言った。ブレアフォード公はシャーロットの言葉の意味が理解できずに固まった表情を浮かべているのだが、直ぐに彼女は大公にも理解できる様に話を続けていく。
「そうでしょう?あの娘は生きていても絶対に傲慢な貴族に生まれ育っていましたわ。あのまま生きていたのなら、いずれは民衆の手によって民意の上の処刑で死んでいたでしょうね。そんな無残な死に方をするよりも、あそこで貴族のまま幸せに死んだ方が幸福だと思いませんか?」
ブレアフォード大公はその言葉を聞いた瞬間に周りの止める声も聞かずに、我を忘れてシャーロットへと突っ込む。
彼の頭の中には屋敷から他国へと逃した妻の事も、他の子供の行方も抜け落ちていた。
ただ、目の前で自分の子供を馬鹿にされた無礼な化け物を殺すべく足を動かしたいのだが、その化け物はいとも簡単に大公の剣を交わし、背後へと回った後に大公の首を斬り付ける。
首を斬り付けられたために、大公は首から血を拭き流して死亡してしまう。
皇帝は自らの弟の死を確認し、密かに一筋の涙を流し、他の家臣や勇者の仲間たちも咽び泣く。
だが、ただ一人、赤い肌の青年だけは亜空間の武器庫から見慣れぬ剣を召喚し、彼女に向かって斬りかかっていく。
乱暴に剣を振るう青年をシャーロットは挑発する様に交わしていく。
そして、彼の剣を左側面から突いた彼女は口元を緩ませて、
「やはり、あなたは孝太郎さんでしたか、お久し振りでございますね」
「黙れッ!よくも……よくもこんな事をッ!どうして、お前たちは人をこんなにも追い詰められるんだ!?」
「あら、嫌だわ。元々この帝国は終わっていましたわ。お兄様や私はそれを少し早めただけに過ぎませんの。それの何が問題でしょうか?」
孝太郎の中では我慢の限界が迫っていた。思えば、23世紀にしろ、明治時代にしろ、彼女は人を殺した事を後悔する事などなかった筈だ。それでいて、人を殺し、相手を乏しめる事にかけては天才的。
まさに悪魔だ。孝太郎の頭の中には改めてペンドラゴン兄妹の危うさを思い出していく。
その瞬間に、孝太郎は目の前の金髪の女性の所業により、死んだ人間の事を思い出す。
ただ快楽のためだけに潜伏先の一家を皆殺しにした事件の事を。
孝太郎は激情に駆られ、滅茶苦茶に刀を振るっていくが、彼女はそれをいとも容易く回避し、孝太郎を嘲笑うかの様に背後へと回っていく。
「あら、鬼ごっこは終わりですか?」
それを聞いた孝太郎は咄嗟に背後を振り向き、大きく手に持っていた奇妙な形の剣を振るったのだが、彼女はそれを背後に飛んで避け、孝太郎の醜態を嘲笑う。
「随分と無様ですね。どうしたんですか?刑事さん?」
「……オレはもう刑事じゃない。当然、お前を法に引き渡す気もない。だから、ここで言う。お前はこの場で裁きを受けてもらおう」
シャーロットはそれを聞いても尚、笑ってはいたのだが、別の男が口を挟んだ事により、彼女の表情は一変する。
「いいや、もしキミがこの女の戦闘を無力化する事が出来たのならば、私の手に引き渡してくれ、この女だけは許せない。私自らの手で妻の仇を取りたいんだ」
ワナワナと拳を震わせる皇帝に対し、孝太郎は黙って首を縦に動かす。
だが、シャーロットはそんな孝太郎の態度など関係なく、彼に向かって剣を構えて突っ込む。
気が付いた時には彼は目の前に踏み込まれ、そのまま袈裟がかりに斬り殺されるかと思ったのだが、その前に仲間のジョージが乱入し、彼女の剣を弾く。
「あら、どなたか存じませんが、私と孝太郎さんとの戦いを邪魔しないで頂けませんか?」
「やかましいやッ!イカレ女!お前だけはオレの手でぶっ殺さないと気が済まねー!」
ジョージは背中に下げていた剣をそのまま構えていくシャーロットへと向かうのだが、その前に突如、一人の黒装束の男が現れ、ジョージの剣を弾く。
「おやおや、随分と起爆のタイミングが遅いんで見に来たのでござりまするが、どうもこの城の中に異分子が紛れ込んでおるようじゃ、これはいかんなぁ~」
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ジョージが剣を構えて尋ねると、突如、乱入した右頬に傷を付けた男はニヤニヤとした笑いを浮かべて答えた。
「儂の名前は降魔霊蔵と申しまする。現在の頭領の腹心にしてーー」
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「……人が話をしている時は黙って聞くのが筋であろう。全く無礼な男よ」
霊蔵はそれまでの笑いを引っ込め、能面の様に冷徹でそれでいて何処か恐怖を覚える顔で言った。
「まぁ、良いか、今日がお主らの命日には相違ないからのぅ。まぁ、来世では会話の作法くらい覚えてこられるのがよかろう」
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