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パンゲール大陸攻略編
魔界の軍団の侵攻
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魔界のかつての四天王の一人、アントニムことタキシードの悪魔は何故、自分が玉座の間に集められたのかを知らない。ただ、シリウスが目の敵としている勇者、パキラが自分たちの元に迫っているというのだけは知っていた。
今回、自分たちが集められたのは評議のためだというのが容易に推測できる。
だが、アントニムはここで胸の中につっかえて取れない違和感のようなものを感じた。
もし、評議を行うというのであれば、シリウスが最も信頼する転移衆と呼ばれる腹心の部下たちが居ないのだろうか、と。
特にあの十字傷の男が居ないのが一番の理由だろうか。
アントニムが辺りを不安そうに見渡していると、四天王の一人、リリアーヌが不安そうな顔で彼に向かって尋ねる。
「ねぇ、アントニム。少し前のライジア様のニュースを聞かなかった?」
「あぁ、お城から逃亡なされたというニュースであろう?何でも、インフエットの死にショックを受けられて逃げられたとか?」
「これはあくまでも私の考えなんだけれど、ライジア様の逃亡の少し前に摂政殿下と揉めていなかった?講和の問題でーー」
「と、なるとあのお方がライジア様をーー」
その時だった。その時までは空席だった筈の玉座の上に青白い顔の端正な男が座り、小さなそれでも威厳のある声で呟く。
「頭を垂れてつくばえ。私の元に服従せよ」
その言葉を聞くのと同時に四天王は慌てて玉座の前で跪いていく。
リリアーヌは顔全体に冷や汗をかきながら言った。
「も、申し訳ありません!あなた様が来られたとは思いもしませんでーー」
「誰が喋って良いと言った」
シリウスの声がリリアーヌの胸を貫く。彼の声はまるで、矢に射抜かれたかのように鋭く心の中を不安にさせていく。
リリアーヌは黙って頭を下げてシリウスの言葉を待つ。
玉座の上のシリウスもそれを察したのか、黙って玉座の肘掛けをコンコンと鳴らしていた。
明らかに不機嫌な様子で彼はそれまで閉じていた口を開く。
「リッジーが殺された。転移衆だ。貴様らに問う。貴様らは何をしておった?」
「と、申しますと?」
「分からぬかッ!貴様らはリッジーとアルパークの二名がパキラに殺された折には何をしておったのかと尋ねておるッ!」
シリウスは激昂して立ち上がるのと同時に小さな筒の塊を取り出し、アントニムに向ける。
すると、轟音が玉座の間に轟き、たちまちのうちにアントニムは額から一筋の赤い血を流して地面の上に倒れていく。
四天王の間に動揺が走る。ざわめき声が玉座の上にまで届いていく。
シリウスはそれを聞いて眉間に青筋を立てていく。彼は心の内に何故、此奴らは譜代の臣というだけで、こんな地位に就いているのだろう、こんな役立たずばかりが魔界に揃っているのか、という感情を抱いていたのだ。最も、彼らは直接の戦闘作業や国取の作業には参加はしておらず、後方の事務作業ばかりであり、目立たなかったのでシリウスの目に止まらなかっただけであり、彼が感じた怒りは理不尽とも言えるものであった。
だが、彼はそんな事を考える事もなく彼自身が感じた理不尽とも言える怒りの感情をそのまま四天王へとぶつけていく。
シリウスは自ら玉座の上を降り、自身の魔法、『征服王の計測』を使用し、四天王の一人、ゼクトムを竜王の腕を使用して締め殺す。
「魔界四天王は本日限りで解体する事にする。何か遺言があるのならば聞くぞ」
リリアーヌはシリウスの言葉を遺言とは捉えなかったらしい。彼女は長い金色の髪をたなびかせ、彼に媚びるように体を擦り寄っていく。
彼女は自らの乳房をシリウスの体に近付けて、
「わ、私を殺すのですか?でも、それはあまりにもご無体……あなた様にとっても忘れられない思い出を作る方がよろしいでしょう?」
リリアーヌは自らの顔にそして身体に絶対の自信を持っていた。
通常の男ならば彼女によって妙絡されていたに違いない。
だが、シリウスは反対に怒りの感情を昂らせていた。一度地獄に堕ち、そこで妹の温もりを知った彼にとって妹以外の女性に迫られる事などあってはならない事である。
シリウスは無言でリリアーヌの頭を砕き割り、その死骸を辺りに散らしていく。
シリウスは冷たい視線で四天王の最後の一人、カタリアーナに問い掛けた。
「お前は例の小僧と対峙した際にこう考えておろう?“自分の身が第一、魔界の簒奪者など知った事ではない”と」
カタリアーナは自分が思っていた事をシリウスに指摘され、冷や汗を垂らしていた。そしてそれを目の前で対峙しているこの悪魔の様な簒奪者は見抜いているに違いない。
カタリアーナは咄嗟に言い訳の言葉を紡ぐために頭の中に存在する今まで自分が人生の中で取得してきた中で一番、延命に使えそうな言葉を探そうとするが、その前にシリウスにより、足を撃ち抜かれて彼女の中から思考という理論的な考えは吹き飛んでしまう。
シリウスは銃口を向けて尋ねた。
「最後に何か言い残す事はあるか?」
「わ、私は逃げません!あなた様のためにその勇者なる人物を必ずや殺してみせます!」
「では、私がライジアを殺せと命じたのなら、殺すのだな?」
カタリアーナは答えに窮した。だが、シリウスにとってはそれは大事な問い掛けだ。その返答に渋るという事は自分を裏切る事に他ならない。
シリウスは泣き喚く彼女に対しても容赦なく銃を構えて容赦なく頭を撃ち抜く。
玉座の間の中で乾いた銃声が鳴り響き、カタリアーナの頭から血が流れて倒れていく。
シリウスはその死体を一瞥すると再び玉座の間に戻り、大きな声で自身の腹心を呼び付ける。
シリウスの腹心、降魔霊蔵は彼の前に跪き、要件を尋ねた。
「霊蔵……主に命じる。魔界の軍の先端を担うのだ。その上で我が軍の跋扈を邪魔する者ども……帝国への通り道となる王国の国王を抹殺せよ」
「分かり申した。他はならぬ頭領のご命令でございますからなぁ。国王は必ずや始末して参りまする」
霊蔵がそう言って背中を向けて彼の元から去ろうした時だ。シリウスは立ち去る彼に向かって告げた。
「待て、その後にディスペンサー=ディングルス帝国に忍ばせている二人とルーベルラント帝国に忍ばせておるオレの妹に連絡を取れ、“攻撃は始まった”と」
「かしこまりました」
彼は口元をニヤつかせて言った。
今回、自分たちが集められたのは評議のためだというのが容易に推測できる。
だが、アントニムはここで胸の中につっかえて取れない違和感のようなものを感じた。
もし、評議を行うというのであれば、シリウスが最も信頼する転移衆と呼ばれる腹心の部下たちが居ないのだろうか、と。
特にあの十字傷の男が居ないのが一番の理由だろうか。
アントニムが辺りを不安そうに見渡していると、四天王の一人、リリアーヌが不安そうな顔で彼に向かって尋ねる。
「ねぇ、アントニム。少し前のライジア様のニュースを聞かなかった?」
「あぁ、お城から逃亡なされたというニュースであろう?何でも、インフエットの死にショックを受けられて逃げられたとか?」
「これはあくまでも私の考えなんだけれど、ライジア様の逃亡の少し前に摂政殿下と揉めていなかった?講和の問題でーー」
「と、なるとあのお方がライジア様をーー」
その時だった。その時までは空席だった筈の玉座の上に青白い顔の端正な男が座り、小さなそれでも威厳のある声で呟く。
「頭を垂れてつくばえ。私の元に服従せよ」
その言葉を聞くのと同時に四天王は慌てて玉座の前で跪いていく。
リリアーヌは顔全体に冷や汗をかきながら言った。
「も、申し訳ありません!あなた様が来られたとは思いもしませんでーー」
「誰が喋って良いと言った」
シリウスの声がリリアーヌの胸を貫く。彼の声はまるで、矢に射抜かれたかのように鋭く心の中を不安にさせていく。
リリアーヌは黙って頭を下げてシリウスの言葉を待つ。
玉座の上のシリウスもそれを察したのか、黙って玉座の肘掛けをコンコンと鳴らしていた。
明らかに不機嫌な様子で彼はそれまで閉じていた口を開く。
「リッジーが殺された。転移衆だ。貴様らに問う。貴様らは何をしておった?」
「と、申しますと?」
「分からぬかッ!貴様らはリッジーとアルパークの二名がパキラに殺された折には何をしておったのかと尋ねておるッ!」
シリウスは激昂して立ち上がるのと同時に小さな筒の塊を取り出し、アントニムに向ける。
すると、轟音が玉座の間に轟き、たちまちのうちにアントニムは額から一筋の赤い血を流して地面の上に倒れていく。
四天王の間に動揺が走る。ざわめき声が玉座の上にまで届いていく。
シリウスはそれを聞いて眉間に青筋を立てていく。彼は心の内に何故、此奴らは譜代の臣というだけで、こんな地位に就いているのだろう、こんな役立たずばかりが魔界に揃っているのか、という感情を抱いていたのだ。最も、彼らは直接の戦闘作業や国取の作業には参加はしておらず、後方の事務作業ばかりであり、目立たなかったのでシリウスの目に止まらなかっただけであり、彼が感じた怒りは理不尽とも言えるものであった。
だが、彼はそんな事を考える事もなく彼自身が感じた理不尽とも言える怒りの感情をそのまま四天王へとぶつけていく。
シリウスは自ら玉座の上を降り、自身の魔法、『征服王の計測』を使用し、四天王の一人、ゼクトムを竜王の腕を使用して締め殺す。
「魔界四天王は本日限りで解体する事にする。何か遺言があるのならば聞くぞ」
リリアーヌはシリウスの言葉を遺言とは捉えなかったらしい。彼女は長い金色の髪をたなびかせ、彼に媚びるように体を擦り寄っていく。
彼女は自らの乳房をシリウスの体に近付けて、
「わ、私を殺すのですか?でも、それはあまりにもご無体……あなた様にとっても忘れられない思い出を作る方がよろしいでしょう?」
リリアーヌは自らの顔にそして身体に絶対の自信を持っていた。
通常の男ならば彼女によって妙絡されていたに違いない。
だが、シリウスは反対に怒りの感情を昂らせていた。一度地獄に堕ち、そこで妹の温もりを知った彼にとって妹以外の女性に迫られる事などあってはならない事である。
シリウスは無言でリリアーヌの頭を砕き割り、その死骸を辺りに散らしていく。
シリウスは冷たい視線で四天王の最後の一人、カタリアーナに問い掛けた。
「お前は例の小僧と対峙した際にこう考えておろう?“自分の身が第一、魔界の簒奪者など知った事ではない”と」
カタリアーナは自分が思っていた事をシリウスに指摘され、冷や汗を垂らしていた。そしてそれを目の前で対峙しているこの悪魔の様な簒奪者は見抜いているに違いない。
カタリアーナは咄嗟に言い訳の言葉を紡ぐために頭の中に存在する今まで自分が人生の中で取得してきた中で一番、延命に使えそうな言葉を探そうとするが、その前にシリウスにより、足を撃ち抜かれて彼女の中から思考という理論的な考えは吹き飛んでしまう。
シリウスは銃口を向けて尋ねた。
「最後に何か言い残す事はあるか?」
「わ、私は逃げません!あなた様のためにその勇者なる人物を必ずや殺してみせます!」
「では、私がライジアを殺せと命じたのなら、殺すのだな?」
カタリアーナは答えに窮した。だが、シリウスにとってはそれは大事な問い掛けだ。その返答に渋るという事は自分を裏切る事に他ならない。
シリウスは泣き喚く彼女に対しても容赦なく銃を構えて容赦なく頭を撃ち抜く。
玉座の間の中で乾いた銃声が鳴り響き、カタリアーナの頭から血が流れて倒れていく。
シリウスはその死体を一瞥すると再び玉座の間に戻り、大きな声で自身の腹心を呼び付ける。
シリウスの腹心、降魔霊蔵は彼の前に跪き、要件を尋ねた。
「霊蔵……主に命じる。魔界の軍の先端を担うのだ。その上で我が軍の跋扈を邪魔する者ども……帝国への通り道となる王国の国王を抹殺せよ」
「分かり申した。他はならぬ頭領のご命令でございますからなぁ。国王は必ずや始末して参りまする」
霊蔵がそう言って背中を向けて彼の元から去ろうした時だ。シリウスは立ち去る彼に向かって告げた。
「待て、その後にディスペンサー=ディングルス帝国に忍ばせている二人とルーベルラント帝国に忍ばせておるオレの妹に連絡を取れ、“攻撃は始まった”と」
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