58 / 99
アールランドリー大陸編
トールキールランド攻略戦ーその⑤
しおりを挟む
トールキールランドはエルフとダークエルフにより構成される国であり、最高統治者は国王ではあるが、これは世襲制ではなく、王が死ねば次の選挙を前に統治していた国王とは異なる種族から選ばなければならない。
言うなれば、終身制の大統領とでも言うべき地位であると言っても良いだろう。
この制度を苦々しく思う国王は過去に何人も居たに違いない。
だが、誰もそれを口には出さない。それが暗黙のルールだと国王に就任した人間の誰もが知っていたからだ。
加えて、この制度を作ったのは建国の英雄にして通常のエルフとダークエルフのハーフ、カイロー・ホースであった。
カイロー・ホースは即位式を終わらせるのと同時に、バルコニーの前に集まる大衆達に向かってこう演説したという。
「ここに集いし、エルフ族に、ダークエルフ族の諸君!私はこの度、王に就任したカイロー・ホースである!まずは礼を言わせてもらいたい!私の統一を手伝ってくれてありがとう!諸君らの協力もあり、今日、私はここに悪逆非道なダークエルフ族の国王にして大陸の皇帝を自称するザルタンより、王位を簒奪する事に成功した!」
記録によれば、その日、王宮のバルコニーの下に集った大衆のみならず、その知らせを後に知った地方の民や山々に住むエルフ、ダークエルフ、それに海の近くに居を構えるエルフ、ダークエルフといった辺境の民の耳にも王の感謝の言葉は届けられたという。
後年にも伝えられており、これは当時のカイロー・ホース人気がどれほど高かったのかを示す重要なエピソードだと知られており、現在でも国王の帝王学の教授がよくこのエピソードを引用すると言われている。
だが、それ以上に強烈な印象を当時の人々にもそして、後世の人々にも与えたのはカイロー・ホースの次の台詞であった。
彼はバルコニーの下に集まった大衆達のざわめきが落ち着くのを待ってから、大きく声を張り上げて、
「だが、私は自分の子供を王位に継がせる気は無いという事を主張しようではないか!私の次の王はエルフか、ダークエルフから選び、それを次の王にするという事をここに宣言しようではないかッ!」
このカイロー・ホースの演説により、トールキルランドを統治せし、国王は終身制ではあっても、世襲制ではない事、次の王は異なる種族の人間から有能な人間を選出し、国王として選出する事が決定付けられた。
実際に、英雄にして建国の王カイローは崩御した際に、子孫には何も残さないと記された紙を残していたという。
この建国王の犠牲精神により、国王制度は世襲ではなく、選挙、一種族による独裁ではなく、二種族による選挙が引き継がれていったのであった。
アラトスは英雄にして建国の王カイロー・ホースの回顧録を閉じ、大きな溜息を吐く。
そして、褐色の肌の尖った耳の現国王、アラトスは窓の近くに存在する王のために用意された広くて大きな寝台の上に大の字になって横たわる。
寝台の横には小物を詰めるためのサイドテーブル、足元にはクローゼット。
地面には動物の毛で覆われた絨毯。
間違いなく、ここは王の寝室であった。
窓の側の寝台の上で寝転ぶアラトスはその褐色肌から分かる様に、ダークエルフであり、この年195歳になる老齢の王である。
エルフ並びにダークエルフの寿命は平均、200歳と言われており、彼にもその平均寿命とされる年齢が近付いて来ている事を知っていた。
その証拠として、若い頃ならば掛からなかったであろう喘息やら突如、発作的に胸が痛む病等を罹っていた。
自分が死ぬのは良い。死ねば今まで通りに内政を上手く行い、北部とも中部とも揉め事を起こさなかった良き統治者として名を残すだろう。
だが、気掛かりなのは一人息子のパールとその家族であった。
パールは幼少期から貧乏な家庭であり、尚且つ母親を幼い頃に事故で亡くし、家庭の面倒を押し付けていたという負い目とずっと寂しい思いをさせていたという負い目が一人息子にはある。
それだけに、楽をさせたくて彼は勤労の傍に眠る暇さえも惜しみ、勉学に勤しんでから、政界に入り、頭角を現し、とうとう国王にまで就任したのだった。
自分一人だけならば満ち足りた人生であったと言えるだろう。
だが、あの子はまだ96歳。自分が死ぬのと同時に王子ではなく、平民として放り出されるのには不憫すぎる年だ。加えて、彼には94歳になる妻と48歳となる息子がいた。
彼らもどうするのだろう。主人、父親共々放逐されても行き場所は無いだろう。
政治家を目指すとしても、かつての王就任者への風当たりは強いだろうし、新たに何処かで雇ってくれる可能性は少ない。こんな中途半端な年齢の人間など、どこも雇ってはくれないだろう。
王子とその家族では職歴にはならない。
長い空白期間を指摘され、追い出される可能性がある。
そうなれば、後に待つのは露頭に迷っての死。
老齢の王はかつての英雄、カイローを激しく憎む。
彼は誰もが幸せになれるようにこの制度を整えたつもりだろうが、王位を退いた後の家族の事までは想定していなかったのだろう。
自然、歯が軋む。気が付けば、両手に広げていた回顧録がプルプルと震えている。そして、回顧録を寝室の地面の上に叩き付けた時だ。
背後から風の吹く音が聞こえた。扉はきちりと閉めた筈だ。
彼が背後を振り向くと、そこには大きく開いていた窓。そして、大きな音を立てて吹き付ける風の音。
そして、
「今晩わ、今日は月が綺麗ですね?」
と、言う思わず聞く者をうっとりさせる程の綺麗な女性の声。
王が背後を振り向くと、そこには長い金髪に奇妙な服を纏った女性が立っていた。
長い金髪の女性は丁寧に頭を下げてから、
「お初にお目に掛かります。国王陛下。私の名前はシャーロット・A・ペンドラゴン。魔界の摂政にして世界皇帝、シリウスの妹です」
その言葉にアラトスは思わず言葉を失ってしまう。
魔界の摂政、世界皇帝を名乗り大陸を蹂躙していく悪魔のような男。
その言葉を聞き、アラトスは何か言いたげに口を動かそうとするが、先程と同様に言葉は出ない。
やむを得ずに、その場から逃れようとするが、首元に何やら冷たいものが当てられている事に気が付く。
いや、これは冷たいものではない。再び目を凝らすと、彼の首元には黒い先端の尖ったナイフのような刃物が突き付けられていた。
アラトスが恐る恐る背後を振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべた両頬に傷を付けた得体の知れない柿色の服を着た男が立っていた。
「お初にお目に掛かりまする。私の名前は降魔霊蔵。名前だけでも覚えておいてくれると嬉しいですなぁ~」
霊蔵なる男はニヤニヤとした様子で手に握った刃物でアラトスの首元を刺激していた。
いつ、切られてもおかしくはない。だが、アラトスは恐怖に打ち勝ち、なんとか言葉を絞り出す。
「お、お前達、要求は何だ?」
「なぁに、至極単純な話でござるよ」
「ええ、私達のお話を聞いてくれるだけでよろしいのですわ」
長い金髪の女は何処からか取り出した長剣を突き付けながら言った。
言うなれば、終身制の大統領とでも言うべき地位であると言っても良いだろう。
この制度を苦々しく思う国王は過去に何人も居たに違いない。
だが、誰もそれを口には出さない。それが暗黙のルールだと国王に就任した人間の誰もが知っていたからだ。
加えて、この制度を作ったのは建国の英雄にして通常のエルフとダークエルフのハーフ、カイロー・ホースであった。
カイロー・ホースは即位式を終わらせるのと同時に、バルコニーの前に集まる大衆達に向かってこう演説したという。
「ここに集いし、エルフ族に、ダークエルフ族の諸君!私はこの度、王に就任したカイロー・ホースである!まずは礼を言わせてもらいたい!私の統一を手伝ってくれてありがとう!諸君らの協力もあり、今日、私はここに悪逆非道なダークエルフ族の国王にして大陸の皇帝を自称するザルタンより、王位を簒奪する事に成功した!」
記録によれば、その日、王宮のバルコニーの下に集った大衆のみならず、その知らせを後に知った地方の民や山々に住むエルフ、ダークエルフ、それに海の近くに居を構えるエルフ、ダークエルフといった辺境の民の耳にも王の感謝の言葉は届けられたという。
後年にも伝えられており、これは当時のカイロー・ホース人気がどれほど高かったのかを示す重要なエピソードだと知られており、現在でも国王の帝王学の教授がよくこのエピソードを引用すると言われている。
だが、それ以上に強烈な印象を当時の人々にもそして、後世の人々にも与えたのはカイロー・ホースの次の台詞であった。
彼はバルコニーの下に集まった大衆達のざわめきが落ち着くのを待ってから、大きく声を張り上げて、
「だが、私は自分の子供を王位に継がせる気は無いという事を主張しようではないか!私の次の王はエルフか、ダークエルフから選び、それを次の王にするという事をここに宣言しようではないかッ!」
このカイロー・ホースの演説により、トールキルランドを統治せし、国王は終身制ではあっても、世襲制ではない事、次の王は異なる種族の人間から有能な人間を選出し、国王として選出する事が決定付けられた。
実際に、英雄にして建国の王カイローは崩御した際に、子孫には何も残さないと記された紙を残していたという。
この建国王の犠牲精神により、国王制度は世襲ではなく、選挙、一種族による独裁ではなく、二種族による選挙が引き継がれていったのであった。
アラトスは英雄にして建国の王カイロー・ホースの回顧録を閉じ、大きな溜息を吐く。
そして、褐色の肌の尖った耳の現国王、アラトスは窓の近くに存在する王のために用意された広くて大きな寝台の上に大の字になって横たわる。
寝台の横には小物を詰めるためのサイドテーブル、足元にはクローゼット。
地面には動物の毛で覆われた絨毯。
間違いなく、ここは王の寝室であった。
窓の側の寝台の上で寝転ぶアラトスはその褐色肌から分かる様に、ダークエルフであり、この年195歳になる老齢の王である。
エルフ並びにダークエルフの寿命は平均、200歳と言われており、彼にもその平均寿命とされる年齢が近付いて来ている事を知っていた。
その証拠として、若い頃ならば掛からなかったであろう喘息やら突如、発作的に胸が痛む病等を罹っていた。
自分が死ぬのは良い。死ねば今まで通りに内政を上手く行い、北部とも中部とも揉め事を起こさなかった良き統治者として名を残すだろう。
だが、気掛かりなのは一人息子のパールとその家族であった。
パールは幼少期から貧乏な家庭であり、尚且つ母親を幼い頃に事故で亡くし、家庭の面倒を押し付けていたという負い目とずっと寂しい思いをさせていたという負い目が一人息子にはある。
それだけに、楽をさせたくて彼は勤労の傍に眠る暇さえも惜しみ、勉学に勤しんでから、政界に入り、頭角を現し、とうとう国王にまで就任したのだった。
自分一人だけならば満ち足りた人生であったと言えるだろう。
だが、あの子はまだ96歳。自分が死ぬのと同時に王子ではなく、平民として放り出されるのには不憫すぎる年だ。加えて、彼には94歳になる妻と48歳となる息子がいた。
彼らもどうするのだろう。主人、父親共々放逐されても行き場所は無いだろう。
政治家を目指すとしても、かつての王就任者への風当たりは強いだろうし、新たに何処かで雇ってくれる可能性は少ない。こんな中途半端な年齢の人間など、どこも雇ってはくれないだろう。
王子とその家族では職歴にはならない。
長い空白期間を指摘され、追い出される可能性がある。
そうなれば、後に待つのは露頭に迷っての死。
老齢の王はかつての英雄、カイローを激しく憎む。
彼は誰もが幸せになれるようにこの制度を整えたつもりだろうが、王位を退いた後の家族の事までは想定していなかったのだろう。
自然、歯が軋む。気が付けば、両手に広げていた回顧録がプルプルと震えている。そして、回顧録を寝室の地面の上に叩き付けた時だ。
背後から風の吹く音が聞こえた。扉はきちりと閉めた筈だ。
彼が背後を振り向くと、そこには大きく開いていた窓。そして、大きな音を立てて吹き付ける風の音。
そして、
「今晩わ、今日は月が綺麗ですね?」
と、言う思わず聞く者をうっとりさせる程の綺麗な女性の声。
王が背後を振り向くと、そこには長い金髪に奇妙な服を纏った女性が立っていた。
長い金髪の女性は丁寧に頭を下げてから、
「お初にお目に掛かります。国王陛下。私の名前はシャーロット・A・ペンドラゴン。魔界の摂政にして世界皇帝、シリウスの妹です」
その言葉にアラトスは思わず言葉を失ってしまう。
魔界の摂政、世界皇帝を名乗り大陸を蹂躙していく悪魔のような男。
その言葉を聞き、アラトスは何か言いたげに口を動かそうとするが、先程と同様に言葉は出ない。
やむを得ずに、その場から逃れようとするが、首元に何やら冷たいものが当てられている事に気が付く。
いや、これは冷たいものではない。再び目を凝らすと、彼の首元には黒い先端の尖ったナイフのような刃物が突き付けられていた。
アラトスが恐る恐る背後を振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべた両頬に傷を付けた得体の知れない柿色の服を着た男が立っていた。
「お初にお目に掛かりまする。私の名前は降魔霊蔵。名前だけでも覚えておいてくれると嬉しいですなぁ~」
霊蔵なる男はニヤニヤとした様子で手に握った刃物でアラトスの首元を刺激していた。
いつ、切られてもおかしくはない。だが、アラトスは恐怖に打ち勝ち、なんとか言葉を絞り出す。
「お、お前達、要求は何だ?」
「なぁに、至極単純な話でござるよ」
「ええ、私達のお話を聞いてくれるだけでよろしいのですわ」
長い金髪の女は何処からか取り出した長剣を突き付けながら言った。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる