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アールランドリー大陸編
パチャテク帝国攻略史ーその13
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大勢の軍人が王城の城門の混じり合う中で当初はシリウス側が有利に軍を進めていたのだが、やがて、地方から集まった一万の軍が王都に集結するや否や、彼らは王都の軍勢と地方から集まった兵により二分され、一気に形勢が逆転していく。彼らは集まった軍隊により蹂躙されていき、一気のその数を減らしていく。
加えて、先程、民間人を虐殺したのがマイナスの方向に働いたのだろう。
王都に残った女も子供もシリウス達に歯向かっていき、五千の軍勢を一気に叩き潰していく。
シリウスがその様子を見て動揺きている隙を狙って、皇帝ビラコマクは剣を打つのを辞めて、馬から飛び上がり、シリウスに向かって抱き付き、彼を自身もろとも石の地面の上へと叩き落とす。
いきなり地面にぶつけられた彼はあまりの痛みに一瞬絶句したが、自分の真上で光の魔法を放とうとするビラコマクの様子を見て声を震わせる。
「ま、ま、ま、待て、私は〈世界皇帝〉だぞ!私を殺せば、必ずや北の二王国の民はお前を恨む。そうでなくとも、今からこの都には二万の軍隊が向かって来ているのだ。オレが殺された事を奴らが知れば、必ず、この国の民を蹂躙しーー」
「言い残す事はそれだけか?悪鬼」
ビラコマクは自身も落下の際に右側面を地面に打った筈なのだが、そんな事はおくびにも出さずにシリウスに抱き付き、右手に剣をそして、左手に広げた掌の中に浮かべた浄化の魔法を放とうとする。
「さぁ、もうすぐお前に死が訪れるぞ、お前の大嫌いな死がな……」
シリウスが目を大きく見開いて顔全体に冷や汗を流している時だ。
突如、短い音が聞こえ、次の瞬間には息絶えたビラコマクが音も発せずに地面に倒れていく。
シリウスが起き上がり、辺りを見渡すと、城門から弓と矢を持った美しい顔の少年が現れた。
「殿下!ご無事でござりましたか!?」
あの美しい顔を忘れる筈があるまい。シリウスは顔全体に輝かんばかりの眩い笑みを浮かべて、
「そうか、ナルシーかよくやってくれた。お前には後で褒美を与えねばなッ!」
シリウスは喋りながらも、弾き飛ばされた時に転がり落ちていた自身の剣を拾い、皇帝のビラコマクの首を跳ねながら自身の命を救った部下に向かって叫ぶ。
そして、彼は皇帝、ビラコマクの首を掲げて争いを続けようとしている兵士や民衆達に向かって叫ぶ。
「よく聞け!帝国の民達よ!お前の信奉する皇帝はこの世にはおらぬッ!なぜなら、今、この瞬間にこのオレが皇帝の首を跳ね飛ばしたのだからなッ!」
その言葉にざわめくものの、大衆や兵士達は抵抗は止めようとはしない。
彼らは両目に放っておけば辺りに燃え広がんばかりの憎悪を秘めて、シリウスやその部下達に攻撃を加えていく。
「目障りな臣民どもめ、折角、オレが統治してやろうというのに、この恥知らずどもめッ!良いだろうッ!皆殺しにしてやるッ!」
シリウスが今にも竜王の怪物に変身し、兵士や大衆を皆殺しにせんばかりに迫ろうとした時だ。
再び城門の辺りにて動きがあったらしい。物見に向かった兵士の絶望した様子やそれを聞いた兵士達や大衆達の様子から、どうやらシリウスが予め頼んでいた援軍が到着したらしい。
シリウスの二度目の降伏請求に、臣民達も勝ち目がないと判断したのか、大人しく武器を下ろして降伏勧告に従い、新たなる皇帝に従う事を決めたらしい。
武器を下ろしたかつてのパチャテク帝国の兵士や臣民達に槍や剣の先を向けているために、シリウスの配下の兵はその場を動けなかったために、シリウス単独で城門に現れた女将軍、ケイトを出迎える。
大きく両腕を広げて自身を出迎える主人の姿を見て、ケイトは慌てて馬から降りて、彼の前に跪く。
「我が君、ここにあなた様より命じられし、二万五千の兵士をここに到着させました」
シリウスはその様子を見て満足に頷く。
「でかした、流石は私の譜代の臣、転移衆の一員よ。褒めて遣わすぞ」
ケイトはその言葉にもう一度改めて頭を垂れてつくばう。
シリウスはその様子を見届けると、満足そうな顔を浮かべて不安そうな表情を浮かべる臣民達を他所に、悠々とした調子で歩いていき、自身のために開かれた城門をくぐっていく。
シリウスはこうして、アールランドリー大陸最大の帝国の入手に成功したのであった。
彼はナルシーの先導の元に、皇帝の座る玉座の間へと進んでいく。
何代もの帝国の為政者を出した石の玉座はとうとう帝室出身者以外の皇帝をその椅子に付けたのであった。
玉座に座るシリウスの前にて頭を垂れるのはナルシー、そして今や皇帝の攻撃を知り、帝室最後の皇帝をその玉座から引き摺り下ろそうとした故アタワルパ将軍のかつての部下達。
恐れ慄き頭を下げるアタワルパのかつての部下達にシリウスは彼らの喉が思わず心から冷えるような冷えた声で、
「お前達に命ずる」
と、言った。彼らは何事かと不安そうに互いに見回したが、次のシリウスの発した言葉により、彼らはようやく顔を綻ばせる。
「お前達の中の一人をアタワルパ将軍の後任に任じ、次にお前達を地方将軍に任命する。私の手足となりしっかりと働け」
シリウスはそれから自身の近くにいた人間に向かって人差し指を突きつけて、
「お前だ。お前をアタワルパ将軍の後任に任じよう。名を何という?」
「……。ウルコです。ウルコと申します。陛下」
「そうか、では、お前に尋ねよう。お前はアタワルパの後任には相応しくないと思うか?」
その言葉を聞いてウルコは首を横に振って明確な意思を持って否定する。
「よろしいならば、お前をアタワルパ将軍の後任に正式に任ずる。国の軍事を全て一任する大将軍だ。有事の際には私の代理を務める事にもなるだろう。その事おめおめ肝に任じておけ」
ウルコはもう一度その場で平伏し、先程と同様に玉座の前で頭を垂れる。
これで、国の軍事を決める後任は決まったらしい。
アタワルパもワアンも死んでしまった以上、適任者となるのは新しく決めるしかない。
ワアンはお飾り皇帝として使用する予定であったが、彼は先程、実の父によって殺されてしまったためにもう擁立する事は出来ない。
アタワルパも反乱の折に討ち死にしたと聞く。このため、彼は残ったアタワルパの部下を使う羽目になってしまった。
予定が狂い忌々しいという思いに駆られながら、シリウスは玉座の上で沈黙する。
シリウスは暫くの間は黙っていたものの、後任の将軍に任じたウルコを呼び付けて、
「良いな、制圧戦の折に我が軍に率先として歯向い皇帝に従っていた近衛兵団の隊長を連れて来い。私に歯向かった罰を与えてやる」
シリウスの言葉にウルコは両肩を震わせながら、玉座の間を去っていく。
加えて、先程、民間人を虐殺したのがマイナスの方向に働いたのだろう。
王都に残った女も子供もシリウス達に歯向かっていき、五千の軍勢を一気に叩き潰していく。
シリウスがその様子を見て動揺きている隙を狙って、皇帝ビラコマクは剣を打つのを辞めて、馬から飛び上がり、シリウスに向かって抱き付き、彼を自身もろとも石の地面の上へと叩き落とす。
いきなり地面にぶつけられた彼はあまりの痛みに一瞬絶句したが、自分の真上で光の魔法を放とうとするビラコマクの様子を見て声を震わせる。
「ま、ま、ま、待て、私は〈世界皇帝〉だぞ!私を殺せば、必ずや北の二王国の民はお前を恨む。そうでなくとも、今からこの都には二万の軍隊が向かって来ているのだ。オレが殺された事を奴らが知れば、必ず、この国の民を蹂躙しーー」
「言い残す事はそれだけか?悪鬼」
ビラコマクは自身も落下の際に右側面を地面に打った筈なのだが、そんな事はおくびにも出さずにシリウスに抱き付き、右手に剣をそして、左手に広げた掌の中に浮かべた浄化の魔法を放とうとする。
「さぁ、もうすぐお前に死が訪れるぞ、お前の大嫌いな死がな……」
シリウスが目を大きく見開いて顔全体に冷や汗を流している時だ。
突如、短い音が聞こえ、次の瞬間には息絶えたビラコマクが音も発せずに地面に倒れていく。
シリウスが起き上がり、辺りを見渡すと、城門から弓と矢を持った美しい顔の少年が現れた。
「殿下!ご無事でござりましたか!?」
あの美しい顔を忘れる筈があるまい。シリウスは顔全体に輝かんばかりの眩い笑みを浮かべて、
「そうか、ナルシーかよくやってくれた。お前には後で褒美を与えねばなッ!」
シリウスは喋りながらも、弾き飛ばされた時に転がり落ちていた自身の剣を拾い、皇帝のビラコマクの首を跳ねながら自身の命を救った部下に向かって叫ぶ。
そして、彼は皇帝、ビラコマクの首を掲げて争いを続けようとしている兵士や民衆達に向かって叫ぶ。
「よく聞け!帝国の民達よ!お前の信奉する皇帝はこの世にはおらぬッ!なぜなら、今、この瞬間にこのオレが皇帝の首を跳ね飛ばしたのだからなッ!」
その言葉にざわめくものの、大衆や兵士達は抵抗は止めようとはしない。
彼らは両目に放っておけば辺りに燃え広がんばかりの憎悪を秘めて、シリウスやその部下達に攻撃を加えていく。
「目障りな臣民どもめ、折角、オレが統治してやろうというのに、この恥知らずどもめッ!良いだろうッ!皆殺しにしてやるッ!」
シリウスが今にも竜王の怪物に変身し、兵士や大衆を皆殺しにせんばかりに迫ろうとした時だ。
再び城門の辺りにて動きがあったらしい。物見に向かった兵士の絶望した様子やそれを聞いた兵士達や大衆達の様子から、どうやらシリウスが予め頼んでいた援軍が到着したらしい。
シリウスの二度目の降伏請求に、臣民達も勝ち目がないと判断したのか、大人しく武器を下ろして降伏勧告に従い、新たなる皇帝に従う事を決めたらしい。
武器を下ろしたかつてのパチャテク帝国の兵士や臣民達に槍や剣の先を向けているために、シリウスの配下の兵はその場を動けなかったために、シリウス単独で城門に現れた女将軍、ケイトを出迎える。
大きく両腕を広げて自身を出迎える主人の姿を見て、ケイトは慌てて馬から降りて、彼の前に跪く。
「我が君、ここにあなた様より命じられし、二万五千の兵士をここに到着させました」
シリウスはその様子を見て満足に頷く。
「でかした、流石は私の譜代の臣、転移衆の一員よ。褒めて遣わすぞ」
ケイトはその言葉にもう一度改めて頭を垂れてつくばう。
シリウスはその様子を見届けると、満足そうな顔を浮かべて不安そうな表情を浮かべる臣民達を他所に、悠々とした調子で歩いていき、自身のために開かれた城門をくぐっていく。
シリウスはこうして、アールランドリー大陸最大の帝国の入手に成功したのであった。
彼はナルシーの先導の元に、皇帝の座る玉座の間へと進んでいく。
何代もの帝国の為政者を出した石の玉座はとうとう帝室出身者以外の皇帝をその椅子に付けたのであった。
玉座に座るシリウスの前にて頭を垂れるのはナルシー、そして今や皇帝の攻撃を知り、帝室最後の皇帝をその玉座から引き摺り下ろそうとした故アタワルパ将軍のかつての部下達。
恐れ慄き頭を下げるアタワルパのかつての部下達にシリウスは彼らの喉が思わず心から冷えるような冷えた声で、
「お前達に命ずる」
と、言った。彼らは何事かと不安そうに互いに見回したが、次のシリウスの発した言葉により、彼らはようやく顔を綻ばせる。
「お前達の中の一人をアタワルパ将軍の後任に任じ、次にお前達を地方将軍に任命する。私の手足となりしっかりと働け」
シリウスはそれから自身の近くにいた人間に向かって人差し指を突きつけて、
「お前だ。お前をアタワルパ将軍の後任に任じよう。名を何という?」
「……。ウルコです。ウルコと申します。陛下」
「そうか、では、お前に尋ねよう。お前はアタワルパの後任には相応しくないと思うか?」
その言葉を聞いてウルコは首を横に振って明確な意思を持って否定する。
「よろしいならば、お前をアタワルパ将軍の後任に正式に任ずる。国の軍事を全て一任する大将軍だ。有事の際には私の代理を務める事にもなるだろう。その事おめおめ肝に任じておけ」
ウルコはもう一度その場で平伏し、先程と同様に玉座の前で頭を垂れる。
これで、国の軍事を決める後任は決まったらしい。
アタワルパもワアンも死んでしまった以上、適任者となるのは新しく決めるしかない。
ワアンはお飾り皇帝として使用する予定であったが、彼は先程、実の父によって殺されてしまったためにもう擁立する事は出来ない。
アタワルパも反乱の折に討ち死にしたと聞く。このため、彼は残ったアタワルパの部下を使う羽目になってしまった。
予定が狂い忌々しいという思いに駆られながら、シリウスは玉座の上で沈黙する。
シリウスは暫くの間は黙っていたものの、後任の将軍に任じたウルコを呼び付けて、
「良いな、制圧戦の折に我が軍に率先として歯向い皇帝に従っていた近衛兵団の隊長を連れて来い。私に歯向かった罰を与えてやる」
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