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アールランドリー大陸編
パチャテク帝国攻略史ーその⑧
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赤い肌の青年は大声を上げて寝床から起き上がる。嫌な夢を見た事だけは覚えているのだが、明確にその夢が何であったのかは思い出せない。
もしかしすると、その夢こそが自分の記憶を辿る明確な手掛かりであるのかもしれないのに。
彼が辺りを見渡すと、そこには剣と共に眠っているもう一人の仲間の青年、そして、パキラに瓦礫の下から助けられたという少女、シャリアが毛布の上でスヤスヤと音を立てて眠っていた。
コウタロウが辺りを見渡すと、目の前に一睡もせずに見張りを続けているパキラの姿があった。昨日は交代で見張りをするつもりであったのだが、恐らく、彼は仲間が眠っている所を起こすのを悪いと思ったのだろう。
だから、そのまま見張りを続けていたに違いない。
コウタロウはその様子を見て思った。彼こそが真の英雄であり、勇者であると。
コウタロウはこの世界に来てから、勇者を名乗る悪党や民を守る騎士でありながら、その民を物を奪い取る騎士などを見てきたから、自信を持って言えたに違いない。
勇者パキラは一点の曇りも見せずに、ただ仲間を守るためにじっと目の前を眺めていた。
コウタロウはそんな勇者の肩に手を置いて、
「疲れただろう?少し休んできていいぞ、後の見張りはオレがやるから」
その問いにもパキラは首を横に振る。
「いいよ。この仕事だけはオレがやりたいんだ。オレはお前や仲間達と出会う前までは一人だったし、宿に泊まれない日はこんな風に一人で見張りもこなしたんだぞ、だから、これくらい何とも無いよ」
弱々しく笑ってみせる少年を赤い肌の青年は無言で抱き寄せて、
「いいんだよ。無理をしなくても……それに、大人には子供を守る義務がある。つまり、子供のお前はその義務に従わなければならない。だから、少しの間だけでも寝ろ」
「ずるいや、こんな時にだけ『大人』を主張するなんて……」
そう言って、パキラが見張りから降り、少しの間だけでも休もうと、両目を閉じ掛けようとした時だ。
彼は背後から殺気を感じ、咄嗟にその場からコウタロウを突き飛ばし、背中に背負っている光の神から授かりし剣を抜く。
「何者だ!?」
パキラの問いに暫くの沈黙の後に答えが届く。
「……。魔王側近転移衆の一人、ドロシー・ウェントワースです。摂政殿下の御命令により、あなた方の命を貰いに来ましたッ!」
ドロシーなる金髪の女騎士は右手に持っていた鞘に収められた剣を抜くと、鞘を腰に下げてから、両手で剣を持ってパキラに襲い掛かって来る。
パキラは剣を構えてドロシーを迎え撃つ過程で、彼女の剣に血が付いていない事に安堵した。
もし、彼女が仲間を殺していたとするのならば、その時は彼も正気ではいられなかっただろう。
名乗りを上げてから、襲い掛かってきた様子や帝国の紋章の描かれた鎧を見るに、彼女は元は騎士の一人だったのだろう。
だが、何らかの理由で闇に魅入られた。パキラがそこまで考えていた時だ。彼の剣に彼女の剣が辺り、彼は思案を中断せざるを得なくなる。
火花が飛ぶまで剣同士をにじみ合わせた後も、彼女の攻撃は止む事が無い。
右斜め下から振り上げられた剣をパキラは剣を縦に構えて受け止め、更に強い力で彼女の剣を弾いてから、彼女の左脇に向かって攻撃を振るうが、その剣は彼女の剣によって止められ、あろう事か彼女はそのまま剣を滑らせて、その刃でパキラの首を跳ねようとしたのだが、パキラはそれを見越してか、自身の力で剣を弾き飛ばし、事なき事を得る事に成功したらしい。
ドロシーはパキラと距離を詰めた後に、見事と褒めてから、生成魔法により、同じ形の剣を作り出し、それを左手に持つ。
横で戦いを見ていたコウタロウは二刀流の女剣士を見て、つい口に出してしまう。
「そ、そんなの反則だ。この世に両利きの剣使いなんて奴なんているなんて……いや、待て、確か、過去にオレが読んだ小説の中に……」
この時、コウタロウの頭をアイスピックで突かれた様な酷い痛みが襲う。
まるで、これ以上の事を思い出すのは世界が許さないとばかりに。
酷い頭痛のためにコウタロウは折角思い出しかけていた記憶がお釈迦になったのだが、悲しんでばかりもいられないらしい。
彼の前に先程の二刀流の女騎士、ドロシー・ウェントワースが近付いて来たのだ。
ドロシーは憎々しい表情で頭を抱えるコウタロウを見下ろして、
「反則?両利きの剣士なんていない?よくも、仲間に戦いを任せているだけの男がそこまで偉そうな事を言えますね?あなた何様ですか?あなたの様な見ているだけの人がロバートを死に追いやったんだッ!」
ドロシーが両手の剣を振り下ろそうとした時だ。咄嗟に彼の仲間であるもう一人の青年が助けに入った。恐らく、騒ぎを聞いて起きていたのだろう。
彼は眠そうな目を完全に振り払っているらしく、精力に溢れた瞳を浮かべながら、握っていた小型のナイフでドロシーの持つ二本の剣を受け止め、彼女の剣を弾いてから、空中で回転を切り、そのまま彼女の懐に踏み込もうとするが、彼女の右手の剣が伸びた方が早かったらしい。
青年は咄嗟に地面を足で蹴り、ナイフを振って彼女の剣を弾く。
「ようよう、お姉ちゃん!あんた、オレの仲間に何をしようとした?事と次第によっちゃあ、少しお仕置きさせてもらうがどうする?」
ドロシーはもう一人の青年の登場に、片眉を上げて不快感を露わにしてから、
「不愉快ですね。それが女性への態度ですか?あなたもあなたの仲間も不愉快です。特にあなたはあの男を思い出すので死んでくれませんか?」
ドロシーの両腕の剣がもう一度振り下ろされようとした時だ。
彼女の背中に赤い球が直撃し、彼女は悶絶した後に背後を振り向く。
そこには一人の少女が右手の掌を広げて、ドロシーを睨んでいた。
成る程、これで四対一ですか、些か部が悪いですね。仕方ありません。今日の所は勝負はお預けにしましょう」
彼女は右手に持っていた剣を腰に下げていた鞘の中に戻し、左手の剣を魔法で消滅させてから、その場を去っていく。
そして、去る前にシャリアと合流していたパキラの方に向かって向き直り、
「ここから東に進んでください。中部の東の端は海に面しており、今、我々がいる王国の領土の東の端には海があり、小島があります!そこで決着を付けましょう!」
ドロシーはそれだけを告げると、転移魔法を使用して去っていく。
恐らく、小島に向ったのだろう。
仲間達は合流するのと同時に、中部の東端の小島に向かう事を決めた。
彼女の決着を付けるために。
もしかしすると、その夢こそが自分の記憶を辿る明確な手掛かりであるのかもしれないのに。
彼が辺りを見渡すと、そこには剣と共に眠っているもう一人の仲間の青年、そして、パキラに瓦礫の下から助けられたという少女、シャリアが毛布の上でスヤスヤと音を立てて眠っていた。
コウタロウが辺りを見渡すと、目の前に一睡もせずに見張りを続けているパキラの姿があった。昨日は交代で見張りをするつもりであったのだが、恐らく、彼は仲間が眠っている所を起こすのを悪いと思ったのだろう。
だから、そのまま見張りを続けていたに違いない。
コウタロウはその様子を見て思った。彼こそが真の英雄であり、勇者であると。
コウタロウはこの世界に来てから、勇者を名乗る悪党や民を守る騎士でありながら、その民を物を奪い取る騎士などを見てきたから、自信を持って言えたに違いない。
勇者パキラは一点の曇りも見せずに、ただ仲間を守るためにじっと目の前を眺めていた。
コウタロウはそんな勇者の肩に手を置いて、
「疲れただろう?少し休んできていいぞ、後の見張りはオレがやるから」
その問いにもパキラは首を横に振る。
「いいよ。この仕事だけはオレがやりたいんだ。オレはお前や仲間達と出会う前までは一人だったし、宿に泊まれない日はこんな風に一人で見張りもこなしたんだぞ、だから、これくらい何とも無いよ」
弱々しく笑ってみせる少年を赤い肌の青年は無言で抱き寄せて、
「いいんだよ。無理をしなくても……それに、大人には子供を守る義務がある。つまり、子供のお前はその義務に従わなければならない。だから、少しの間だけでも寝ろ」
「ずるいや、こんな時にだけ『大人』を主張するなんて……」
そう言って、パキラが見張りから降り、少しの間だけでも休もうと、両目を閉じ掛けようとした時だ。
彼は背後から殺気を感じ、咄嗟にその場からコウタロウを突き飛ばし、背中に背負っている光の神から授かりし剣を抜く。
「何者だ!?」
パキラの問いに暫くの沈黙の後に答えが届く。
「……。魔王側近転移衆の一人、ドロシー・ウェントワースです。摂政殿下の御命令により、あなた方の命を貰いに来ましたッ!」
ドロシーなる金髪の女騎士は右手に持っていた鞘に収められた剣を抜くと、鞘を腰に下げてから、両手で剣を持ってパキラに襲い掛かって来る。
パキラは剣を構えてドロシーを迎え撃つ過程で、彼女の剣に血が付いていない事に安堵した。
もし、彼女が仲間を殺していたとするのならば、その時は彼も正気ではいられなかっただろう。
名乗りを上げてから、襲い掛かってきた様子や帝国の紋章の描かれた鎧を見るに、彼女は元は騎士の一人だったのだろう。
だが、何らかの理由で闇に魅入られた。パキラがそこまで考えていた時だ。彼の剣に彼女の剣が辺り、彼は思案を中断せざるを得なくなる。
火花が飛ぶまで剣同士をにじみ合わせた後も、彼女の攻撃は止む事が無い。
右斜め下から振り上げられた剣をパキラは剣を縦に構えて受け止め、更に強い力で彼女の剣を弾いてから、彼女の左脇に向かって攻撃を振るうが、その剣は彼女の剣によって止められ、あろう事か彼女はそのまま剣を滑らせて、その刃でパキラの首を跳ねようとしたのだが、パキラはそれを見越してか、自身の力で剣を弾き飛ばし、事なき事を得る事に成功したらしい。
ドロシーはパキラと距離を詰めた後に、見事と褒めてから、生成魔法により、同じ形の剣を作り出し、それを左手に持つ。
横で戦いを見ていたコウタロウは二刀流の女剣士を見て、つい口に出してしまう。
「そ、そんなの反則だ。この世に両利きの剣使いなんて奴なんているなんて……いや、待て、確か、過去にオレが読んだ小説の中に……」
この時、コウタロウの頭をアイスピックで突かれた様な酷い痛みが襲う。
まるで、これ以上の事を思い出すのは世界が許さないとばかりに。
酷い頭痛のためにコウタロウは折角思い出しかけていた記憶がお釈迦になったのだが、悲しんでばかりもいられないらしい。
彼の前に先程の二刀流の女騎士、ドロシー・ウェントワースが近付いて来たのだ。
ドロシーは憎々しい表情で頭を抱えるコウタロウを見下ろして、
「反則?両利きの剣士なんていない?よくも、仲間に戦いを任せているだけの男がそこまで偉そうな事を言えますね?あなた何様ですか?あなたの様な見ているだけの人がロバートを死に追いやったんだッ!」
ドロシーが両手の剣を振り下ろそうとした時だ。咄嗟に彼の仲間であるもう一人の青年が助けに入った。恐らく、騒ぎを聞いて起きていたのだろう。
彼は眠そうな目を完全に振り払っているらしく、精力に溢れた瞳を浮かべながら、握っていた小型のナイフでドロシーの持つ二本の剣を受け止め、彼女の剣を弾いてから、空中で回転を切り、そのまま彼女の懐に踏み込もうとするが、彼女の右手の剣が伸びた方が早かったらしい。
青年は咄嗟に地面を足で蹴り、ナイフを振って彼女の剣を弾く。
「ようよう、お姉ちゃん!あんた、オレの仲間に何をしようとした?事と次第によっちゃあ、少しお仕置きさせてもらうがどうする?」
ドロシーはもう一人の青年の登場に、片眉を上げて不快感を露わにしてから、
「不愉快ですね。それが女性への態度ですか?あなたもあなたの仲間も不愉快です。特にあなたはあの男を思い出すので死んでくれませんか?」
ドロシーの両腕の剣がもう一度振り下ろされようとした時だ。
彼女の背中に赤い球が直撃し、彼女は悶絶した後に背後を振り向く。
そこには一人の少女が右手の掌を広げて、ドロシーを睨んでいた。
成る程、これで四対一ですか、些か部が悪いですね。仕方ありません。今日の所は勝負はお預けにしましょう」
彼女は右手に持っていた剣を腰に下げていた鞘の中に戻し、左手の剣を魔法で消滅させてから、その場を去っていく。
そして、去る前にシャリアと合流していたパキラの方に向かって向き直り、
「ここから東に進んでください。中部の東の端は海に面しており、今、我々がいる王国の領土の東の端には海があり、小島があります!そこで決着を付けましょう!」
ドロシーはそれだけを告げると、転移魔法を使用して去っていく。
恐らく、小島に向ったのだろう。
仲間達は合流するのと同時に、中部の東端の小島に向かう事を決めた。
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