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アールランドリー大陸編
勇者パキラ動く
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パチャテク帝国は二つの王国の南に存在する強大な帝国であり、その帝国の強大さは大陸でも一、二を争うという。
浅黒い肌を持つ帝国の住民達は親切で、情け深い崇高な国民性を持っているのだが、その反面、敵対する勢力には容赦が無く、過去に二つの王国が手を組んで帝国を蹂躙させようとしたものの、その帝国による魔法師達の活躍により、大打撃を受けたのだという。
シリウスは初め、この事実は嘘だと感じていたが、国民の慌てる様子を見るに、あながち間違いだとも思えない。
厄介な事だ。シリウスが王国の玉座に座って考えていると、彼の前にケイトリンが現れ、彼の前に跪き、自身の案を述べていく。
「何?貢物をせよと言うのか?」
あまりの突拍子も無い進言にシリウスの声は裏返っていた。
だが、ケイトは武勇一片で王国の運営者を変えたという評判の通り、勇猛という名に相応しい勇士を心の内に宿していたために、今回の進言も怯む事なく行えた。
シリウスとしても転移衆の頂点として、それくらいの進言の見返りくらいは与えてやらねばならぬ。
彼は検討するとだけ告げて、彼女を下がらせ、他の臣下達の意見を取り入れる事に決めた。
ケイトを除く王国時代からの重臣達の意見も全員がケイトと同意見を有しており、シリウスはやむを得ずに、貢物を送り、機嫌を取るという作戦を取る事に決めた。
その後、この作戦が功を奏したのか、先程の演説にも帝国は干渉しようとはしない。
シリウスは危機を乗り切れたと感じ、ケイトとき重臣達に自分は暫くの間、別の場所で政務を行うので、留守にするとだけ、告げて彼は魔界へと戻っていく。
転移魔法を使用し、臣下達の前で姿を消してみせると、魔界へと戻ったシリウスは玉座に座る降魔霊蔵にその場を明け渡すように指示を出し、彼は再び魔王の城の玉座に座り、アールランドリー大陸を攻める前に、自分に対して苦言を呈した四天王を呼び寄せ、自分の手腕について問う。
流石の四天王達もまさか、こんな短期間で二つも王国が手に入るとは思わなかったのだろう。
ただ平伏し、シリウスの全てを肯定していく。
シリウスはその報告を満足そうに聞き終えると、四天王の一人に自分の不在中に何も無かったのかを問いかける。
それを聞くや否や長い金髪の女ことリリアーヌが手を挙げて、
「恐れながら申し上げます。パキラなる少年が各地を放浪し、王国の王達に今の二人の皇帝の様子がおかしいという旨を告げ回っているという事です」
シリウスは玉座の上でギロリと目を光らせて、
「その話は本当か?」
「既に中部全体で噂になっている話でございます。我が君……。如何なさいますか?この小僧を放っておくのは危険極まりなく、既に両帝国内に侵入した転移衆のお二方やあなた様の妹様に影響があるとすれば……」
その言葉を聞くなり、シリウスは玉座の上から立ち上がり、右腕を払って、勢いのままに四天王達に向かって叫ぶ。
「パキラなる小僧を始末せよ!その折には魔界並びに中部の魔族をいくら動員しても構わぬ!必ず、私の前にパキラなる小僧の首を持ってこい!」
ドロシーは無言で頭を下げ、腰に下げていた剣を持って、玉座の間を立ち去っていく。
パキラなる少年の事を思い返すたびに、シリウスの頭の中にかつての世界での記憶の事が思い浮かぶ。
その記憶には自分を血走った目で睨む赤い肌の青年の顔。
あの忌々しい台詞とかつて、パキラなる少年と邂逅した時の重なってならない。
頭の中で二人の放った言葉が重なるのと同時に、シリウスは頭にどうしようもない痛みを感じ、思わず両手で頭を抑えてしまう。
「己ッ!貴様、異なる世界にまで干渉するのではないッ!必ず、お前のその忌々しい面を吹き飛ばしてやるわッ!」
シリウスのただならぬ雰囲気を察してか、四天王は既に玉座の間から立ち去っていたために、彼の言葉は聞く事が無かったが、唯一、玉座の間にてその事を耳に挟んだ人間がいた。
降魔霊蔵は玉座の近くで柱の陰で聞き耳を立てていたらしく、動じる事の少ない頭領の言葉をニヤニヤとした笑顔を浮かべながら聞いていた。
(あの頭領がここまで取り乱すとは思いもせなんだわ。まさか、これ程とは……儂もあの男を脅威には思うておうたが、頭領にはあの男とは予想以上の因縁があったようじゃな。くわばらくわばら」
シリウスは霊蔵の視線に気が付く事なく、ただひたすら過去から迫る刺客を睨んでいた。
勇者、パキラ・ベルモンドは仲間と共に国々を旅する中で、最近人々に元気が無い事に気が付く。
パキラが人々に理由を尋ねると、なんでも彼らの王が帰属する帝国がこれまでの倍以上の保護金を要求しているという。
なんでも、三ヶ月前からだそうだ。
特に、ディスペランサー=ディングル帝国から要求される金額はこれまでの戦争の際に用いられた最高金額を大幅に上回り、そのお鉢がこちらに向かって来ているのだ言う。
パキラはギルドから配られた金の配分が少なくなっている事を理解し、金を渡す前に話を聞かせてくれたギルドの案内の女性に向かって礼を述べ、皮の袋の中に入った数枚の銀貨と銅貨とを持って、外で待っている仲間の元へと向かう。
パキラから報酬を受け取った青年は報酬の少なさに不満を述べたのだが、それを止めたのはこのパーティーの紅一点とも言うべき存在、シャリア・ブラッドリーが青年を嗜める。
その様子を見て、パキラは笑っていたが、無邪気に笑ってばかりもいられないのが今の現状である事をパーティーの中で一番の年上と思われる赤い肌の青年が指摘する。
だが、パキラは勇者らしく、金がなんだと否定し、加えて赤い肌の青年に向かって逆に説教を飛ばす。
「オレ達は金のために戦っているんじゃあない!魔物に苦しむ人達を助けるために、戦っているんだろう!?」
その言葉に青年は一旦はたじろいだものの、直ぐに笑顔を見せて、
「確かにそうだな。オレ達は金のために戦っているんじゃあない。魔物に苦しむ人達に戦っているんだった。そして、そんなお前の戦う姿に惹かれて、このパーティーに入ったんだったな?」
パキラは首肯してから、青年に向かって言葉を返す。
「その通り!さぁ、文句を言ってないで、次の町へと向かうぞ!」
リーダーである少年の号令に従い、三人の仲間達は意気揚々とした調子で付いて行く。
その様子をこっそりと眺めていた視線にも気が付かずに。
浅黒い肌を持つ帝国の住民達は親切で、情け深い崇高な国民性を持っているのだが、その反面、敵対する勢力には容赦が無く、過去に二つの王国が手を組んで帝国を蹂躙させようとしたものの、その帝国による魔法師達の活躍により、大打撃を受けたのだという。
シリウスは初め、この事実は嘘だと感じていたが、国民の慌てる様子を見るに、あながち間違いだとも思えない。
厄介な事だ。シリウスが王国の玉座に座って考えていると、彼の前にケイトリンが現れ、彼の前に跪き、自身の案を述べていく。
「何?貢物をせよと言うのか?」
あまりの突拍子も無い進言にシリウスの声は裏返っていた。
だが、ケイトは武勇一片で王国の運営者を変えたという評判の通り、勇猛という名に相応しい勇士を心の内に宿していたために、今回の進言も怯む事なく行えた。
シリウスとしても転移衆の頂点として、それくらいの進言の見返りくらいは与えてやらねばならぬ。
彼は検討するとだけ告げて、彼女を下がらせ、他の臣下達の意見を取り入れる事に決めた。
ケイトを除く王国時代からの重臣達の意見も全員がケイトと同意見を有しており、シリウスはやむを得ずに、貢物を送り、機嫌を取るという作戦を取る事に決めた。
その後、この作戦が功を奏したのか、先程の演説にも帝国は干渉しようとはしない。
シリウスは危機を乗り切れたと感じ、ケイトとき重臣達に自分は暫くの間、別の場所で政務を行うので、留守にするとだけ、告げて彼は魔界へと戻っていく。
転移魔法を使用し、臣下達の前で姿を消してみせると、魔界へと戻ったシリウスは玉座に座る降魔霊蔵にその場を明け渡すように指示を出し、彼は再び魔王の城の玉座に座り、アールランドリー大陸を攻める前に、自分に対して苦言を呈した四天王を呼び寄せ、自分の手腕について問う。
流石の四天王達もまさか、こんな短期間で二つも王国が手に入るとは思わなかったのだろう。
ただ平伏し、シリウスの全てを肯定していく。
シリウスはその報告を満足そうに聞き終えると、四天王の一人に自分の不在中に何も無かったのかを問いかける。
それを聞くや否や長い金髪の女ことリリアーヌが手を挙げて、
「恐れながら申し上げます。パキラなる少年が各地を放浪し、王国の王達に今の二人の皇帝の様子がおかしいという旨を告げ回っているという事です」
シリウスは玉座の上でギロリと目を光らせて、
「その話は本当か?」
「既に中部全体で噂になっている話でございます。我が君……。如何なさいますか?この小僧を放っておくのは危険極まりなく、既に両帝国内に侵入した転移衆のお二方やあなた様の妹様に影響があるとすれば……」
その言葉を聞くなり、シリウスは玉座の上から立ち上がり、右腕を払って、勢いのままに四天王達に向かって叫ぶ。
「パキラなる小僧を始末せよ!その折には魔界並びに中部の魔族をいくら動員しても構わぬ!必ず、私の前にパキラなる小僧の首を持ってこい!」
ドロシーは無言で頭を下げ、腰に下げていた剣を持って、玉座の間を立ち去っていく。
パキラなる少年の事を思い返すたびに、シリウスの頭の中にかつての世界での記憶の事が思い浮かぶ。
その記憶には自分を血走った目で睨む赤い肌の青年の顔。
あの忌々しい台詞とかつて、パキラなる少年と邂逅した時の重なってならない。
頭の中で二人の放った言葉が重なるのと同時に、シリウスは頭にどうしようもない痛みを感じ、思わず両手で頭を抑えてしまう。
「己ッ!貴様、異なる世界にまで干渉するのではないッ!必ず、お前のその忌々しい面を吹き飛ばしてやるわッ!」
シリウスのただならぬ雰囲気を察してか、四天王は既に玉座の間から立ち去っていたために、彼の言葉は聞く事が無かったが、唯一、玉座の間にてその事を耳に挟んだ人間がいた。
降魔霊蔵は玉座の近くで柱の陰で聞き耳を立てていたらしく、動じる事の少ない頭領の言葉をニヤニヤとした笑顔を浮かべながら聞いていた。
(あの頭領がここまで取り乱すとは思いもせなんだわ。まさか、これ程とは……儂もあの男を脅威には思うておうたが、頭領にはあの男とは予想以上の因縁があったようじゃな。くわばらくわばら」
シリウスは霊蔵の視線に気が付く事なく、ただひたすら過去から迫る刺客を睨んでいた。
勇者、パキラ・ベルモンドは仲間と共に国々を旅する中で、最近人々に元気が無い事に気が付く。
パキラが人々に理由を尋ねると、なんでも彼らの王が帰属する帝国がこれまでの倍以上の保護金を要求しているという。
なんでも、三ヶ月前からだそうだ。
特に、ディスペランサー=ディングル帝国から要求される金額はこれまでの戦争の際に用いられた最高金額を大幅に上回り、そのお鉢がこちらに向かって来ているのだ言う。
パキラはギルドから配られた金の配分が少なくなっている事を理解し、金を渡す前に話を聞かせてくれたギルドの案内の女性に向かって礼を述べ、皮の袋の中に入った数枚の銀貨と銅貨とを持って、外で待っている仲間の元へと向かう。
パキラから報酬を受け取った青年は報酬の少なさに不満を述べたのだが、それを止めたのはこのパーティーの紅一点とも言うべき存在、シャリア・ブラッドリーが青年を嗜める。
その様子を見て、パキラは笑っていたが、無邪気に笑ってばかりもいられないのが今の現状である事をパーティーの中で一番の年上と思われる赤い肌の青年が指摘する。
だが、パキラは勇者らしく、金がなんだと否定し、加えて赤い肌の青年に向かって逆に説教を飛ばす。
「オレ達は金のために戦っているんじゃあない!魔物に苦しむ人達を助けるために、戦っているんだろう!?」
その言葉に青年は一旦はたじろいだものの、直ぐに笑顔を見せて、
「確かにそうだな。オレ達は金のために戦っているんじゃあない。魔物に苦しむ人達に戦っているんだった。そして、そんなお前の戦う姿に惹かれて、このパーティーに入ったんだったな?」
パキラは首肯してから、青年に向かって言葉を返す。
「その通り!さぁ、文句を言ってないで、次の町へと向かうぞ!」
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