シリウス・イントルーダー・ロード〜暗黒神に見染められた前作のラスボスは異世界で猛威を振るう〜

アンジェロ岩井

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アールランドリー大陸編

オーランドリュー王国滅亡録 終盤

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国王ピサロ一世並びに王女、オラジャの処刑の日程は『大陸皇帝』即位の前日に決まり、皇帝の即位の前日に二人は絞首台の上での絞首刑に処され、その遺骸は国民から長年、金銭を搾取し続けて来た末路として無残にも暫く絞首台で晒される事になった。
翌日、『世界皇帝』は大勢の臣下達に祝われ、玉座の間にて大掛かりな戴冠式を挙行した。
尚、皇帝は即位に伴い、自分の代行として王を置く事を民衆に提案し、その王としてオラジャの侍女として仕えていたルシアを添える事を民衆達に向かって提案した。
ルシア女王はあくまでも皇帝の代理人に過ぎない事と一代限りの即位である事を強調しての即位であったが、それでも、玉座の間にてシリウスから国王の冠を渡される彼女は感極まって泣いていた事に気が付く。
そんな彼女の涙を拭ってやる事で、彼は臣下達にも自分の優しさをアピールする事となった。
その晩、彼女は高慢な王女の側に仕えている際に夢見ていた国王のベッドの上で眠る。
国王のベッドは寝心地の良いマットレスに、清潔なシーツ、天蓋の付いた豪華なものであり、かつての自分が夢見た場所で、最高の夢を見た。
それはシリウスの妻となり、二人でこの大陸を支配するという夢であった。
大陸の端にある二つの王国は他の王国に比べれば、確かに王都と後はバラバラに広がる村や町程度のものしかなかったが、この大陸を下っていけば強力な国々がある事や更にその下に亜人種と人間とそれに神に近い種族とが共存する強大な帝国が広がっているという。
いずれ、シリウスの妻となった暁に彼から贈り物として国を貰う夢であった。
だが、その夢は勢い良く開かれた扉によって遮られてしまう。
ルシアは無礼者に向かって叫んだものの返事は返ってこない。
彼女が更に叫ぼうとしたものの、彼女はそれ以上は叫ばれない魔法を掛けられたらしい。喉が上手く動かない。
体も拘束されたのか、ベッドから動こうとはしない。
そんな彼女に向かって来たのは醜いオークの男であった。
男は足に括り付けていたのか、少ししゃがんでから、細くて尖ったナイフを取り出し、白色のネクジェ姿の彼女を滅多刺しにしていく。
白色であったネクジェが血に染まった頃に、男は彼女の元から離れた。
既に虫の息であったルシアは弱々しく正面を眺めていると、もう一人の禿げた男は魔法の詠唱を唱えると、部屋全体を炎で包む。
彼女は煙と体全体に負った傷のために完全に呼吸を失って、完全に意識を失ってしまう。そして、その後に呼吸を失って窒息死したと思われる。
彼女の死体と共に大勢の王族が使用した部屋を紅蓮の炎が包み込む。
こうして、シリウスの放った炎は王族だけに留まらず、歴代の王族が使用した部屋まで完全に燃やし尽くしたのであった。
その後、炎は城全体を包み込むかと思われたが、運良く魔法師の一人が炎に気が付き、慌ててその炎を消化した。
そして、彼はベッドの上で黒ずみの死体となった女王を発見し、大きな声で叫ぶ。
翌日、女王の葬儀が営まれ、大規模な国葬によって彼女はあの世へと送られた。
シリウスは大衆に、女王の就任を憎んだ南の国々がやったと叫び、人々の不安を高まらせていく。
最も、犯人はシリウスが魔界から呼び寄せた転移衆の凶悪なコンビであり、指示を出したのはシリウスであったのだが、人々はそのような事実を知る由もなく、シリウスの目論見通り、南に点在していると思われる国々へと憎悪の念を燃やしていく。
シリウスは大衆達に訴えながらも、内心で作戦が成功した事を笑っていた。
そして、わざわざ魔法で魔界から呼び寄せたリッジーとアルパークの両名に与える褒美の事を思案していく。











「聞いたか、お前、いよいよ。アールランドリー大陸の一部が暴かれたのだと。しかも、話によれば、そこで『大陸皇帝』を名乗る男が海の近くの北の二つの王国で民衆を焚きつけて、国を乗っ取ったそうだ」
ルーベルンラント帝国の皇帝、ジェームズ二世は厳かな声で妻に向かって言った。
「まぁ、怖いですわ。陛下……私達は大丈夫ですわよね?」
「心配は無いさ、それに、私は皇帝だぞ、倒される心配なんかないさ、なぁ、アリス?」
皇帝は自分の膝の上で本を読んでいた娘に向かって問い掛ける。
最愛の娘は笑顔で父親の言う事を肯定した。その愛しい顔をジェームズは大きな手で撫でていく。
「そうね。アリスも陛下が倒される事なんてないって思うわよね?」
「はい、お母様!私は永遠にお父様とお母様との娘であり、誇り高き皇女です!」
娘の愛しい顔に向かって、皇妃は思わず口付けをしてしまう。
夫婦の中にこの新しい子供を甘やかしている自覚はあるのだが、それ以上に見れば見るほど、美しい顔に、愛らしい性格、そして、自分と夫に語ってくれる聞いた事もない楽しい話の数々。そして、何よりも血の繋がりの無い自分たち夫婦を慕い懐いてくれる事が二人の理性を他所にやってしまっていた。
元々、政治に興味が無い二人であったが、アリステリアという美しく聡明な娘が出来たことにより、政治への無関心は更に拍車が掛かっていったらしい。
現在の所、政治は彼の弟にして大公であるブレアフォード公ハロルドが面倒を見ているが、そのブレアフォード公は古い制度に拘り、貴族と癒着し、国民に重税を掛ける事も厭わない腐敗した貴族政治の集大成とも言うべき男であった。
また、彼は我儘な娘を二人、息子を一人持っており、彼らの欲を満たすために私財を投じ、彼らに豪華なおもちゃを与える事も多いと聞く。
噂で聞くそんな我儘な存在をアリステリアもといシャーロットは心の底から嫌っていたが、社交界ともなれば彼らと顔を合わせる事もあった。
特に自分を引き取った皇帝と皇妃の両名はシャーロットの事を周囲の貴族への自慢の種にしており、彼女は豪華なドレスを纏い、飲み物の入ったグラスを片手に貴族達に笑顔を向けなければならなかった。
以後は園遊会にしろ、ダンスパーティーにしろ、それらの貴族が道楽と見栄のために行う不必要なパーティーは彼らを観察するための場所となった。
だが、その際に問題となるのが、例のブレアフォード家の子供三人である。
甘やかされており、尚且つ全員が14歳に満たない年齢にあるという事もあり、その幼児性のために、これまで自分を可愛がってくれていた叔父と叔母を奪ったという罪で、裏で陰湿ないじめを受けていたのであったが、シャーロットは涼しい顔でそれを受け流し、ブレアフォード家の子供が拷問に掛けられる様を想像し、苦痛の時を癒すのであった。
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