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魔界侵略編
ライジア・フォン・ヴァートリーファルの国盗り物語
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「それは本当ですの?」
ライジアは目の前の席に座る二人の男女に向かって再度問い掛ける。
男女のうちどちらも再度首肯した事から、二人の意見が本当である事が理解できた。
ライジアは直ぐに席から立ち上がり、
「インフェット!行政機関に連絡なさい!この二人は我が家の簒奪を狙う輩よ!直ぐにでもーー」
彼女が側に立つ執事のインフェットに右手を指して指示を出そうとした時だ。彼女の右腕はいつの間にかシリウスの手によって掴まれていた。
振り解こうとしても、その力は予想よりも強く、振り払えない。
暴れるライジアに向かってシリウスは優しい声で、
「落ち着かれよ。魔王の娘よ。これはあなたにとっても悪い話では無いだろう」
「でも、お父様やお兄様方を殺めるなんて……」
「殺めるとは一言も言っておりませんよ。妹はただ『魔王になりたくはございませんか?』と質問しただけでございます」
その言葉を発し、シリウスはようやく彼女の腕を離す。
腕を離された魔王の娘は自らの最も信頼する執事のインフェットに縋り付く。
そして、自分の腕を掴んだ無礼者を険しい目で睨む。
が、その睨まれた対象は畏怖するでも、逃げるでもなく、暫く彼女を見つめた後に踵を返し、出口のほうへと向かっていく。
その様子があまりにも奇妙であったので、彼女は扉のノブに手を掛けようとするシリウスを呼び止める。
「待って!お兄様もお父様も殺める事なく、私が魔界の王になる事は可能なの?」
その言葉にそれまでは沈黙を保っていた老執事のクローが険しい声で、「お嬢様!」と一喝する。
老人は続けて、
「なりませぬ!此奴らはお嬢様方を誤った方向へとお連れする不埒な輩!直ちに追い払い、警察へと連絡を入れるのが筋というものかとッ!」
クローはそう言って懐から小刀を取り出し、無礼な侵入者へと向ける。
だが、シリウスは動じる事なく、小馬鹿にしたような表情を浮かべて、
「やれるものならばやってみなさい。だが、あなたがそのナイフを飛ばした瞬間に、私があなたの脚に反撃の機会を与える事を今、ここにお約束させて頂こう」
クローは眉間に青筋を立てながら、ドアノブに手を掛けていた短い金髪の男に向かって投げていく。
が、彼はナイフを投げるのと同時に右脚に激痛が走っている事に気が付き、クローは右足を抑えてカーペットの上でのたうち回る。
インフェットは書斎の上で悶え苦しむ父の介抱をするために、単身、長椅子から出入り口の前へと向かったが、その際に父の投げたナイフが彼が先程まで立っていた扉の直ぐ近くに落ちている事や、その場所から僅かにずれた場所で白い煙をその先端から流している謎の筒状の武器を構えて立っているシリウスの姿を見て、彼は思った。
どうして、彼がそこに立っているのかと。少なくとも、自分が最愛のお嬢様を宥めながら立っていた場所は扉の前だ。あの男が何かしらの行動を取ったとするのならば、自分が気が付く筈だ。
彼は足を抑える父に向かって呼び掛けながら、心の中で先程の事を整理させていると、彼の耳元に先程の男が現れ、彼女の耳元で、
「これが私の魔法の特徴なんだよ。私が行う魔法の前では時間や空間さえも私の意のままになる。そんな力を持つ男が味方になるのだよ。頼もしいとは思わんかね?」
シリウスはそう言うと、踵を返し、もう一度長椅子の中に座り込む。
座り込んだ長椅子の中で彼は上座の長椅子の側で震えるライジアニ向かって問い掛ける。
「さて、もう一度問いましょうか?あなたは私と共に手を組み、この国を変えますか?それとも、かつて私が居た場所で起きた悲劇を繰り返しますか?古い制度に拘り、国を滅ぼすという悲劇を……」
シリウスのその台詞にライジアは再度両肩を震わせ、目の前に座る短い金髪の髪の男を上目遣いで眺める。
漢はニヤニヤと笑いながら、
「嫌なら嫌で構いませんよ。だが、あなただって最愛の兄の誰かが魔王の後を継いで桀王や紂王や煬帝の真似事をして、国を滅ぼす様を見たくはないでしょう?なら、万が一訪れるかもしれないお兄様方の死は国を守るためのやむを得ない死とも言えますな」
「うふふ、お兄様、古代中国の暴君の名前を出されたとしても、目の前のお方は分からないと思いますわ」
そう言うと、シャーロットは兄の隣に座り、先程、兄が出した人物の最期を得意げな顔で人差し指を立てて解説していく。
彼女曰く桀王は新しく立てられた王朝に国を滅ぼされ、逃亡の末に死亡し、紂王は宝石を纏わせた贅の尽くされた服を着て宮殿の中に入り死亡。
煬帝に至っては在位途中に新たなる王朝ができ、最後はその王朝に捕らえられたの刑死ですらなく、部下に裏切られて絞殺という尊厳も何もない最後だったと言う。
全てを話し終えた後にシャーロットは明るい笑みを浮かべて、
「どうです?古いやり方に拘ると、こう言った風に国が滅びるという例を伝授致しましたが、もし、あなたのお兄様方が古い制度に拘り続けるようならば、こう言った悲劇がこの世界でも行われるかもしれませんね?」
シャーロットの言葉にライジアは決心する事を決めた。
彼女は苦しい笑みを作り上げて、
「分かったわ、このままお父様やお兄様方に国政を任せていたら、桀王や紂王や煬帝のようになるかもしれない……これはあくまでも魔界を守るための自衛処置だ。そういう事ね?」
二人は首肯した。彼女の中にあった欲望を刺激し、欲望を駆り立てるにはこの一押しが必要であったに違いない。
その役目を担ってくれた古代中国の暴君達にシリウスは密かに謝辞を送る。
シリウスは口元の右端を吊り上げて、彼女に向かって右手を差し伸べる。
ライジアはシリウスに向かって右手を出し、互いに強く手を結ぶ。
「ここに我らの同盟が設立した訳ですな?」
「ええ、共にこの国を手に入れましょう。古い制度を打ち砕き、新しくなった魔界を手に入れましょう」
その様子は周りの人物にも伝わっていたらしく、兄の隣に座っていたシャーロットは両手を叩いて喜び、インフェットも顔に微笑を浮かべて見守っていたが、唯一老齢の執事、クローはカーペットの上で横になり、右足を両手で抑えながらも、怪訝そうな顔を浮かべ、突如、訪れた男を警戒するのだけは忘れていない。
その後に、シリウスはライジアからこの国を乗っ取るための手段を聞いていく。
何でも、次期魔王の地位を得る、神前試合には女性も立候補できるらしく、その際には暗黒神ベリアドルによる規定で代理人を立てる事も認められているらしい。
シリウスはそれを聞いて、自分と妹をこの世界に送り込んだ暗黒神に改めて感謝の意を送る。
尚、今日の戯曲家によるとある程度は正常であり、それまではパキラの調整により人間との和解を保っていた魔界が狂い始め、狂気へと陥ったのは二人のペンドラゴンが本来であるのならば、継承権の無い人物が魔界を継いだためだとも言われる。
何はともあれ、ここに正常であった筈の歯車は狂い始め、魔界や人界並びにもう一つの大陸さえも狂い始めたのであった。
ライジアは目の前の席に座る二人の男女に向かって再度問い掛ける。
男女のうちどちらも再度首肯した事から、二人の意見が本当である事が理解できた。
ライジアは直ぐに席から立ち上がり、
「インフェット!行政機関に連絡なさい!この二人は我が家の簒奪を狙う輩よ!直ぐにでもーー」
彼女が側に立つ執事のインフェットに右手を指して指示を出そうとした時だ。彼女の右腕はいつの間にかシリウスの手によって掴まれていた。
振り解こうとしても、その力は予想よりも強く、振り払えない。
暴れるライジアに向かってシリウスは優しい声で、
「落ち着かれよ。魔王の娘よ。これはあなたにとっても悪い話では無いだろう」
「でも、お父様やお兄様方を殺めるなんて……」
「殺めるとは一言も言っておりませんよ。妹はただ『魔王になりたくはございませんか?』と質問しただけでございます」
その言葉を発し、シリウスはようやく彼女の腕を離す。
腕を離された魔王の娘は自らの最も信頼する執事のインフェットに縋り付く。
そして、自分の腕を掴んだ無礼者を険しい目で睨む。
が、その睨まれた対象は畏怖するでも、逃げるでもなく、暫く彼女を見つめた後に踵を返し、出口のほうへと向かっていく。
その様子があまりにも奇妙であったので、彼女は扉のノブに手を掛けようとするシリウスを呼び止める。
「待って!お兄様もお父様も殺める事なく、私が魔界の王になる事は可能なの?」
その言葉にそれまでは沈黙を保っていた老執事のクローが険しい声で、「お嬢様!」と一喝する。
老人は続けて、
「なりませぬ!此奴らはお嬢様方を誤った方向へとお連れする不埒な輩!直ちに追い払い、警察へと連絡を入れるのが筋というものかとッ!」
クローはそう言って懐から小刀を取り出し、無礼な侵入者へと向ける。
だが、シリウスは動じる事なく、小馬鹿にしたような表情を浮かべて、
「やれるものならばやってみなさい。だが、あなたがそのナイフを飛ばした瞬間に、私があなたの脚に反撃の機会を与える事を今、ここにお約束させて頂こう」
クローは眉間に青筋を立てながら、ドアノブに手を掛けていた短い金髪の男に向かって投げていく。
が、彼はナイフを投げるのと同時に右脚に激痛が走っている事に気が付き、クローは右足を抑えてカーペットの上でのたうち回る。
インフェットは書斎の上で悶え苦しむ父の介抱をするために、単身、長椅子から出入り口の前へと向かったが、その際に父の投げたナイフが彼が先程まで立っていた扉の直ぐ近くに落ちている事や、その場所から僅かにずれた場所で白い煙をその先端から流している謎の筒状の武器を構えて立っているシリウスの姿を見て、彼は思った。
どうして、彼がそこに立っているのかと。少なくとも、自分が最愛のお嬢様を宥めながら立っていた場所は扉の前だ。あの男が何かしらの行動を取ったとするのならば、自分が気が付く筈だ。
彼は足を抑える父に向かって呼び掛けながら、心の中で先程の事を整理させていると、彼の耳元に先程の男が現れ、彼女の耳元で、
「これが私の魔法の特徴なんだよ。私が行う魔法の前では時間や空間さえも私の意のままになる。そんな力を持つ男が味方になるのだよ。頼もしいとは思わんかね?」
シリウスはそう言うと、踵を返し、もう一度長椅子の中に座り込む。
座り込んだ長椅子の中で彼は上座の長椅子の側で震えるライジアニ向かって問い掛ける。
「さて、もう一度問いましょうか?あなたは私と共に手を組み、この国を変えますか?それとも、かつて私が居た場所で起きた悲劇を繰り返しますか?古い制度に拘り、国を滅ぼすという悲劇を……」
シリウスのその台詞にライジアは再度両肩を震わせ、目の前に座る短い金髪の髪の男を上目遣いで眺める。
漢はニヤニヤと笑いながら、
「嫌なら嫌で構いませんよ。だが、あなただって最愛の兄の誰かが魔王の後を継いで桀王や紂王や煬帝の真似事をして、国を滅ぼす様を見たくはないでしょう?なら、万が一訪れるかもしれないお兄様方の死は国を守るためのやむを得ない死とも言えますな」
「うふふ、お兄様、古代中国の暴君の名前を出されたとしても、目の前のお方は分からないと思いますわ」
そう言うと、シャーロットは兄の隣に座り、先程、兄が出した人物の最期を得意げな顔で人差し指を立てて解説していく。
彼女曰く桀王は新しく立てられた王朝に国を滅ぼされ、逃亡の末に死亡し、紂王は宝石を纏わせた贅の尽くされた服を着て宮殿の中に入り死亡。
煬帝に至っては在位途中に新たなる王朝ができ、最後はその王朝に捕らえられたの刑死ですらなく、部下に裏切られて絞殺という尊厳も何もない最後だったと言う。
全てを話し終えた後にシャーロットは明るい笑みを浮かべて、
「どうです?古いやり方に拘ると、こう言った風に国が滅びるという例を伝授致しましたが、もし、あなたのお兄様方が古い制度に拘り続けるようならば、こう言った悲劇がこの世界でも行われるかもしれませんね?」
シャーロットの言葉にライジアは決心する事を決めた。
彼女は苦しい笑みを作り上げて、
「分かったわ、このままお父様やお兄様方に国政を任せていたら、桀王や紂王や煬帝のようになるかもしれない……これはあくまでも魔界を守るための自衛処置だ。そういう事ね?」
二人は首肯した。彼女の中にあった欲望を刺激し、欲望を駆り立てるにはこの一押しが必要であったに違いない。
その役目を担ってくれた古代中国の暴君達にシリウスは密かに謝辞を送る。
シリウスは口元の右端を吊り上げて、彼女に向かって右手を差し伸べる。
ライジアはシリウスに向かって右手を出し、互いに強く手を結ぶ。
「ここに我らの同盟が設立した訳ですな?」
「ええ、共にこの国を手に入れましょう。古い制度を打ち砕き、新しくなった魔界を手に入れましょう」
その様子は周りの人物にも伝わっていたらしく、兄の隣に座っていたシャーロットは両手を叩いて喜び、インフェットも顔に微笑を浮かべて見守っていたが、唯一老齢の執事、クローはカーペットの上で横になり、右足を両手で抑えながらも、怪訝そうな顔を浮かべ、突如、訪れた男を警戒するのだけは忘れていない。
その後に、シリウスはライジアからこの国を乗っ取るための手段を聞いていく。
何でも、次期魔王の地位を得る、神前試合には女性も立候補できるらしく、その際には暗黒神ベリアドルによる規定で代理人を立てる事も認められているらしい。
シリウスはそれを聞いて、自分と妹をこの世界に送り込んだ暗黒神に改めて感謝の意を送る。
尚、今日の戯曲家によるとある程度は正常であり、それまではパキラの調整により人間との和解を保っていた魔界が狂い始め、狂気へと陥ったのは二人のペンドラゴンが本来であるのならば、継承権の無い人物が魔界を継いだためだとも言われる。
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