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序章
この世界の事
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「お兄様、朝ですよ」
シリウスは両肩を揺さぶられて起きた。彼が両目を開けると、彼の真上には妹が最愛の女性が優しい笑顔を浮かべながら言った。
「お兄様、昨晩は随分ご熱心にこの家にある本を読んでいらっしゃいましたね?何か収穫はございましたか?」
シャーロットの言葉にシリウスは思わず口元を綻ばせてしまう。この妹が相手ならば気が付かないうちに頬の筋肉が弛緩してしまうのだ。
シリウスは昨晩の発見を朝食が出来たという妹に向かって説明していく。
シリウスは暗黒神の補助により、自分達二人がこの世界の文字を英語で読める事やこの世界の地理、歴史を学んだ事を話していく。
シリウスはシャーロットの用意した朝食の場所に案内される途中に、これまでの事を話していく。
家を出て、家の正面で鳥と鹿を焼いている場所にまで足を運び、この世界の未知の鳥と未知の鹿に口を付けている間も、彼はこの世界について話し続けていた。
火を囲み、正面に座る妹は可愛らしく相槌を打っていた。
兄の話が終わるのと同時に、シャーロットは鹿肉を噛みながら、頭の中で兄から聞いた話を整理していく。
どうやら、この世界は中世ヨーロッパに類似した世界である事は間違い無いらしい。パンゲール大陸とアールランドリー大陸と呼ばれる二つの三日月状の大陸に分かれ、二つの大陸はポリスシーと呼ばれる海を隔てて分かれているそうだ。
最も、アールランドリー大陸はこちらの世界の人間は殆どが渡った事が無いらしく、大陸の地形が分かるのは魔法の力によるものらしく、それ以上の情報を得ようにも、こちらの世界の魔術師は向こうの大陸の魔術師の妨害による詳しく見るのは不可能らしい。
次にこの世界の歴史だが、かつての自分達の住んでいた世界と同様にこの世界の大陸も元々は一つだったらしく、火山による地下変動によって二つの大陸に分けられたらしい。
そこから、二つの大陸に分かれ、各々の大陸でそれぞれの歴史が繰り広げられているらしい。
アールランドリー大陸の歴史は伝承や伝聞などの不確かな伝説に基づくものが多かったので、兄が割愛していたのをシャーロットは鮮明に覚えていた。
シャーロットがいよいよパンゲール大陸の歴史の整理を始めようとした時に、彼女の目の前から兄が立ち上がったので、シャーロットは慌てて料理を食べ終え、後片付けに専念する事になった。
後片付けには長い時間が掛かってしまったものの、上手く火を消し、残った肉を近くにあった平らな石の上で武器保存から取り出したユニオン帝国の最新式のアーミーナイフで刻み、二人が現在の拠点としている魔術師が使っていた瓦葺の家の近くの木の上に保管したのを見届け、彼女は家の中で本を読んでいる兄に肉の事を話した。
シリウスは読んでいた本から目を離し、肉を交代で見張るように指示を出す。
何でも、この肉は今夜の夕食になるらしい。
シャーロットは首肯し、最初の見張りをするために、家の近くにある大きな木の前で枝の上から垂れ下がっている肉を見ながら、彼女はパンゲール大陸の歴史を整理していく。
朝に聞いた話だが、彼女は忘れてはいない。パンゲール大陸の歴史を彼女は頭の中で纏めていく。
パンゲール大陸は現在の自分達が居る大陸であり、その大陸の上で人々は争いを繰り広げているのだ。
大陸の北部ではこの大陸最大の国とも言えるディスペランサー=ディングル帝国なる帝国とそれに次ぐ規模を誇るルーベルンラント帝国が幅を利かせているらしい。
中部には大小の国に分かれ、どの国もどちらかの派閥に属しているらしく、それぞれの国が北部や中部を舞台に無用の争いを繰り広げているらしい。
戦争の歴史の中で、兄は北部陣営は中部の陣営に戦争では滅多に干渉しない事も忘れずに胸に刻み込んでおかなければならない。何故ならば、北部と中部の間には大きな山脈が置かれており、北部と中部を行き来する場所は二箇所しか無い歩幅の狭い峠しかない無いため、どちらの峠を取るためにも、両者が果てしない抗争を繰り広げなければならないのが、中部にはあまり干渉しない理由と言えるだろう。結果、北部に異変があった時には中部同士のみで争うような事件が起きてしまうのであったのだ。
シャーロットはここで元の世界の地球の事を思い出し、思わず溜息を吐いてしまう。
立憲制君主若しくは専制君主国家と共産主義国家の争いがこの世界ではどちらの皇帝に着くかに代わっているだけなのだ。
結局、人類というのはどの世界でも変わらない存在であるのかもしれない。
と、ここでふと彼女は元の世界と唯一異なる南部の事を思い出す。
パンゲール大陸の南部は魔物たちが支配しており、北部や中部の人間からは蛮族の地だの魔界だのと忌み嫌われており、常に啀み合いを続けている北部や中部の国々も南部が攻め来た時のみは団結するらしい。
この時の戦争は通常『大陸戦争』と呼ばれ、過去に五度繰り返されていたらしい。
シャーロットが南部の回想の時に考えたのはもし、兄が南部を従える事が出来たのならば、兄が世界の覇者となる事も可能では無いのかと考えであった。
「23世紀でも19世紀でも世界を手に入れるのは不可能でしたわ……けれど、この世界ならどうなのかしら?お兄様が世界を手に入れるのも不可能では無いのではなくて」
シャーロットが興奮のために、拳を握り締めた時だ。彼女の肩を優しく叩く音が聞こえた。
彼女が振り向くと、そこには最愛の兄が立っており、先程の彼女の言葉が嬉しかったのだろうか、兄は優しい笑顔を浮かべて、
「シャーロット。交代の時間だ。お前は家に戻っていなさい」
「はい、お兄様」
シャーロットは兄と入れ替わる形で茅葺の一軒家へと戻っていく。
彼女は本に覆われた家の中で目に付いた本を拾い上げ、パラパラとめくっていく。
彼女が読んでいたのは生物の本であった。この世界の生態系を彼女が勉強している時だった。
扉が開き、彼女の前に二人の男が現れた。男達二人の身なりは汚く、服というよりはボロ切れを身に付けているかのようであった。
シャーロットが声を掛けるよりも先に、男達二人が口を開き、
「た、助けてくだせぇ!お、おら達はこの付近の木こりだども、遭難して二日前から迷子なんだ。ようやく、ここに辿り着いたんだ。良かったら、上げてくれねぇか?」
シャーロットはその問い掛けに満面の笑顔で応じた。
「ええ、よろしいですよ」
恐らく、外に居る兄は既に許可を出したのだろう。ならば、自分が拒む理由も無いだろう。
シャーロットは汚れた木こりを家に案内した。
勿論、彼は善意から木こりを家に案内したのでは無い。これからとある“儀式”を行うために必要な素材であるから招き入れただけに過ぎない。
二人の木こりはそんなシリウスの意図など知らずに、ようやく助かったと言わんばかりの笑みを浮かべて家の中に入っていく。その様子を見て、シリウスは二人には見えないように歪んだ笑みを浮かべた。
シリウスは両肩を揺さぶられて起きた。彼が両目を開けると、彼の真上には妹が最愛の女性が優しい笑顔を浮かべながら言った。
「お兄様、昨晩は随分ご熱心にこの家にある本を読んでいらっしゃいましたね?何か収穫はございましたか?」
シャーロットの言葉にシリウスは思わず口元を綻ばせてしまう。この妹が相手ならば気が付かないうちに頬の筋肉が弛緩してしまうのだ。
シリウスは昨晩の発見を朝食が出来たという妹に向かって説明していく。
シリウスは暗黒神の補助により、自分達二人がこの世界の文字を英語で読める事やこの世界の地理、歴史を学んだ事を話していく。
シリウスはシャーロットの用意した朝食の場所に案内される途中に、これまでの事を話していく。
家を出て、家の正面で鳥と鹿を焼いている場所にまで足を運び、この世界の未知の鳥と未知の鹿に口を付けている間も、彼はこの世界について話し続けていた。
火を囲み、正面に座る妹は可愛らしく相槌を打っていた。
兄の話が終わるのと同時に、シャーロットは鹿肉を噛みながら、頭の中で兄から聞いた話を整理していく。
どうやら、この世界は中世ヨーロッパに類似した世界である事は間違い無いらしい。パンゲール大陸とアールランドリー大陸と呼ばれる二つの三日月状の大陸に分かれ、二つの大陸はポリスシーと呼ばれる海を隔てて分かれているそうだ。
最も、アールランドリー大陸はこちらの世界の人間は殆どが渡った事が無いらしく、大陸の地形が分かるのは魔法の力によるものらしく、それ以上の情報を得ようにも、こちらの世界の魔術師は向こうの大陸の魔術師の妨害による詳しく見るのは不可能らしい。
次にこの世界の歴史だが、かつての自分達の住んでいた世界と同様にこの世界の大陸も元々は一つだったらしく、火山による地下変動によって二つの大陸に分けられたらしい。
そこから、二つの大陸に分かれ、各々の大陸でそれぞれの歴史が繰り広げられているらしい。
アールランドリー大陸の歴史は伝承や伝聞などの不確かな伝説に基づくものが多かったので、兄が割愛していたのをシャーロットは鮮明に覚えていた。
シャーロットがいよいよパンゲール大陸の歴史の整理を始めようとした時に、彼女の目の前から兄が立ち上がったので、シャーロットは慌てて料理を食べ終え、後片付けに専念する事になった。
後片付けには長い時間が掛かってしまったものの、上手く火を消し、残った肉を近くにあった平らな石の上で武器保存から取り出したユニオン帝国の最新式のアーミーナイフで刻み、二人が現在の拠点としている魔術師が使っていた瓦葺の家の近くの木の上に保管したのを見届け、彼女は家の中で本を読んでいる兄に肉の事を話した。
シリウスは読んでいた本から目を離し、肉を交代で見張るように指示を出す。
何でも、この肉は今夜の夕食になるらしい。
シャーロットは首肯し、最初の見張りをするために、家の近くにある大きな木の前で枝の上から垂れ下がっている肉を見ながら、彼女はパンゲール大陸の歴史を整理していく。
朝に聞いた話だが、彼女は忘れてはいない。パンゲール大陸の歴史を彼女は頭の中で纏めていく。
パンゲール大陸は現在の自分達が居る大陸であり、その大陸の上で人々は争いを繰り広げているのだ。
大陸の北部ではこの大陸最大の国とも言えるディスペランサー=ディングル帝国なる帝国とそれに次ぐ規模を誇るルーベルンラント帝国が幅を利かせているらしい。
中部には大小の国に分かれ、どの国もどちらかの派閥に属しているらしく、それぞれの国が北部や中部を舞台に無用の争いを繰り広げているらしい。
戦争の歴史の中で、兄は北部陣営は中部の陣営に戦争では滅多に干渉しない事も忘れずに胸に刻み込んでおかなければならない。何故ならば、北部と中部の間には大きな山脈が置かれており、北部と中部を行き来する場所は二箇所しか無い歩幅の狭い峠しかない無いため、どちらの峠を取るためにも、両者が果てしない抗争を繰り広げなければならないのが、中部にはあまり干渉しない理由と言えるだろう。結果、北部に異変があった時には中部同士のみで争うような事件が起きてしまうのであったのだ。
シャーロットはここで元の世界の地球の事を思い出し、思わず溜息を吐いてしまう。
立憲制君主若しくは専制君主国家と共産主義国家の争いがこの世界ではどちらの皇帝に着くかに代わっているだけなのだ。
結局、人類というのはどの世界でも変わらない存在であるのかもしれない。
と、ここでふと彼女は元の世界と唯一異なる南部の事を思い出す。
パンゲール大陸の南部は魔物たちが支配しており、北部や中部の人間からは蛮族の地だの魔界だのと忌み嫌われており、常に啀み合いを続けている北部や中部の国々も南部が攻め来た時のみは団結するらしい。
この時の戦争は通常『大陸戦争』と呼ばれ、過去に五度繰り返されていたらしい。
シャーロットが南部の回想の時に考えたのはもし、兄が南部を従える事が出来たのならば、兄が世界の覇者となる事も可能では無いのかと考えであった。
「23世紀でも19世紀でも世界を手に入れるのは不可能でしたわ……けれど、この世界ならどうなのかしら?お兄様が世界を手に入れるのも不可能では無いのではなくて」
シャーロットが興奮のために、拳を握り締めた時だ。彼女の肩を優しく叩く音が聞こえた。
彼女が振り向くと、そこには最愛の兄が立っており、先程の彼女の言葉が嬉しかったのだろうか、兄は優しい笑顔を浮かべて、
「シャーロット。交代の時間だ。お前は家に戻っていなさい」
「はい、お兄様」
シャーロットは兄と入れ替わる形で茅葺の一軒家へと戻っていく。
彼女は本に覆われた家の中で目に付いた本を拾い上げ、パラパラとめくっていく。
彼女が読んでいたのは生物の本であった。この世界の生態系を彼女が勉強している時だった。
扉が開き、彼女の前に二人の男が現れた。男達二人の身なりは汚く、服というよりはボロ切れを身に付けているかのようであった。
シャーロットが声を掛けるよりも先に、男達二人が口を開き、
「た、助けてくだせぇ!お、おら達はこの付近の木こりだども、遭難して二日前から迷子なんだ。ようやく、ここに辿り着いたんだ。良かったら、上げてくれねぇか?」
シャーロットはその問い掛けに満面の笑顔で応じた。
「ええ、よろしいですよ」
恐らく、外に居る兄は既に許可を出したのだろう。ならば、自分が拒む理由も無いだろう。
シャーロットは汚れた木こりを家に案内した。
勿論、彼は善意から木こりを家に案内したのでは無い。これからとある“儀式”を行うために必要な素材であるから招き入れただけに過ぎない。
二人の木こりはそんなシリウスの意図など知らずに、ようやく助かったと言わんばかりの笑みを浮かべて家の中に入っていく。その様子を見て、シリウスは二人には見えないように歪んだ笑みを浮かべた。
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