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予想外の展開になったので、どうしようかと悩んでいます!

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「久し振りですね、ぼくのプリンセス」
そう言って、ロバートは俺に近付くと、何食わない顔で俺の首筋に口付けを落とす。
やはり、赤い髪のイケメン王子にそんな事をされると体が勝手に反応してしまう。
俺が赤い顔をして、眩しい輝きを放つ、イケメン王子に呆然としていると、
「お待ちください、殿下。他国の卒業パーティーでそんな事をしてもよろしいのですかな?」
ガブリエルが苛立ちを隠さない口調で、ロバートに尋ねる。
だが、ロバートはニコニコとした顔でそれを受け流して、
「どうです?ぼくのプリンセス、学園を卒業したら、ぼくの国に来るというのは?勿論、最初はご旅行という体で、その次に留学、その次に婚約のーー」
「お、お待ちください!殿下!彼女は我が家と婚約を結ぶ予定でして、その、勝手にそのような事をなされると困るのです」
二人の間に慌ててリチャードが挟まる。
「お待ちください。あなた方は揃いも揃って、グレースに婚約を迫っていますが、元々気に掛けているのは私でーー」
「あなたには婚約者がいるでしょう!」
三人の声が見事に重なり、見事なハーモニーを奏でていた。
その後、オリビア嬢に睨まれて、体を震わせるサミュエルが可愛かった。
その後、ますます争いはヒートアップしたが、そこに凄い顔をしたアメリアが挟まり、リチャードを連れ出した事で、その場は一旦、休止となった。
その後、俺もロージー嬢と話すために離れたので、二人の争いは休止となった。
「ねぇ、破滅フラグの方なんだけど……」
「大丈夫です。後、二千万の金貨をあなたが用意してくれたのなら、俺は必ず、必ず破滅フラグを凌げます」
「要するに逃亡費用じゃねーか!末期の大本営かお前は!」
ロージー嬢の鋭い突っ込みが冴え渡る。二人でしか分からないネタで盛り上がっていると、唐突にサミュエルが現れて、一枚の紙を突き付ける。
オリビア嬢を断罪するという過程を得ずに、直接弾劾する事にしたのかと、思わず俺もロージー嬢も互いに身構える。
だが、返ってきた言葉は予想外のものであった。
「グレース、実はキミに卒業のスピーチを頼みたいんですよ。キミほど、この一年の間で成長した人間はいませんからね。あの時、頭を打ってからというもの、キミは別人のようでした」
思わず苦笑いをする俺にロージー嬢は肩に手を置いて、
「頑張れよ、主人公」
仕方がない。やるしかないだろう。俺は突然、未確認生物と対峙した警察官の様な気分になりながら、サミュエルからスピーチの原稿を受け取る。
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