よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います!

アンジェロ岩井

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呼んでますよ、リチャードさん

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「つ、つまり、この話のタイトルに込められた『光る石』というのはだね、宇宙人の石でもあるけど、その実、本当は冒険の中でいつの間にか、育みあった真実の愛の事を指しているんだ。つまり、ぼくはだね、これまでの従来の形に囚われない冒険小説を書きたかったのさ」
確かに。悪くはない。俺はリチャードの解説を聞きながら、得意げな顔を浮かべてうんうんと頷く。
恐らく、ジャン○とかマガジ○とか、サン○ーとかに載れば、確実に人気は出るだろう。
もし、この作品が漫画になるのならば、あの設定を大幅に削り、読み切りサイズにしてから投稿という形になるのだろうか。
俺は返還を渋るリチャードを無視し、そのままエミリオに小説を渡す。
執事らしく側に立っていたエミリオは受け取る時だけ、俺の近くにより、そのまま背後で読んでいた。
本当に無言で、黙って読んでいる。表情には一切の変化も見えないので、不安になっていると、全て読み終えると、彼はノートを勢いよく閉ざし、それを丁寧にリチャードに返す。
リチャードは苦笑いを浮かべながら、
「あ、あの、どうでした?」
一応、執事であるのに対し、なぜか彼は敬語であった。
だが、エミリオは敢えてそれを指摘し、彼の小説の評価点と批判点の両方を交互に述べていく。
文章の点も彼は舌鋒鋭く批判したが、それ以上に批判したのはストーリーの整合性である。
終盤は彼も高く評価したのだが、その途中までがチグハグ、書きながら考えた、その場で考えるものが投影されていると、散々である。
予想以上の酷評に、すっかりと意気消沈しているリチャード。
見かねたのか、妹が席を立って叫ぶ。
「待ってください!あなたはお兄様の小説の何が分かるんですの!?」
「と、仰られますと?」
「お兄様の小説は神話よりも素晴らしいものですわ!ええ、ゲゲアニア紛争?怪物たちが支配する王国?冒険家が力を与えられ、皇帝になる?そちらの方がお兄様の小説よりも、余程、不自然ですわ!第一、エルフもオークもドワーフもみな、大人しい方々ばかりではありませんか!あの神話はあの方々への偏見にもなりますし、何よりも歴史の学の授業で、それを史実として語るのは不自然すぎますわ!」
とうとう、妹は愛のため、毒舌執事の批判の矛先を兄と兄の書いた作品から変えるために神話をdisり、なぜ、それを批判しないのかと言い始めた。
これで、気の毒なのは神話である。唐突に槍玉に挙げられてしまったのだろうか。俺は呆れた様子で、彼女の喋る様を見つめていた。
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