よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います!

アンジェロ岩井

文字の大きさ
上 下
79 / 105

ありとあらゆる脱出方法が潰されて、絶望しているのですが……

しおりを挟む
エミリオに代わり、新たに派遣されたエルフのメイドの名前はレイアというらしい。
何処ぞの某有名宇宙戦争映画のお姫様と同じ名前だったので、俺はおかしかった。
だが、あくまでも顔は平静を保ち続けた。人の名前を笑うなんて、失礼極まりなく、相手からしても、あまり愉快ではないだろうから、黙っておいたのだ。
俺は朝から、俺の面倒を見るレイアにペーターに会いたいという旨と、また会食をしたい旨を伝えると、彼女はペコリと頭を下げて、台車を押してその場を去っていく。
もう一度、あの時と同じ作戦を取ろうかと思い、ペーターを練習相手に呼び、またしても一日を利用して練習に励む。
そして、いよいよ訪れた夕食の席。
俺は懸命に弁舌を振るう。拳を振るい、声を震わせ、相手の魂を揺さぶる様な演説を心掛けたのだが、相手はニヤニヤとした顔を浮かべて、ワインを飲んでいく。
またしても失敗かと、肩を落としたのだが、いきなり、俺の目の前に座る首元を抑えて、地面の上に倒れ込む。
俺が慌てて駆け寄ろうとすると、
「大丈夫です。御安心を、ご主人様はいや、父は少し、薬で体を痺れさせられただけですから」
背後に立っていたのは雷の紋章が描かれた薬瓶を持ったエミリオの姿。
どうして、執事のエミリオが主人に対して、害を加えたのだろう。
「やり過ぎです。エミリオ様、お父上が死んだらどうなさるおつもりでしたの?」
その声で、私は隣に立っているレイアの存在と彼が倒れている男の息子だという事に気が付く。彼女は明らかに眉根を寄せて、エミリオを詰っていた。
だが、彼はヘラヘラとした顔で笑って、
「へーき、へーき、この国の転覆を目論んだ男ですよ。それに、死んだら、死んだらで、更に私に有利に動くんじゃあないんですか?最も、私はこの家が没落したとしても、食べていける自信はありますが……」
エミリオの言葉を聞いて、納得する自分がいる。エミリオの執事スキルはあまりにも高く、俺に対する態度やその仕事ぶりは貴族の子息という事を微塵も感じさせられなかった。
恐らく、彼ならば、何処の家に雇われても、生きていけるだろう。
エミリオは席の上で呆然としている俺の元に近寄ると、改めて頭を下げる。
「改めて、名乗らせていただきます。私の名前はエミリオ、エミリオ・ガラバ。この国で名高いガラバ公爵家の息子です。身分を偽ったのは、魔法学園で、評判のあなたを身近で拝見し、会話を交わしてみたかったからです。父に無理を言って、あなたの執事をさせてもらっていたのですよ。最も、名前だけは本当の名前を名乗らせてもらいましたが……」
エミリオはそう言うと、俺の右手を手に取り、その手の甲に口付けを落とす。
柔らかい唇が手の甲をつたい、俺の全身で感じていく。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】貴方の望み通りに・・・

kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも どんなに貴方を見つめても どんなに貴方を思っても だから、 もう貴方を望まない もう貴方を見つめない もう貴方のことは忘れる さようなら

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

処理中です...