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イケメン執事くんの腕前が大したものであった事についた件について……

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夢中で冒険小説を読んでいたら、いつの間にか眠っていたらしい。俺はエミリオに肩を揺さぶられて起こされる。
翌日になり、エミリオが朝食を運んできていたらしい。彼が運んできた台車の上には朝食のメニューはハムエッグに、丸いロールパン、サラダ、果物の盛り合わせという組み合わせであった。
エミリオは俺が食べ終えるまで待ってくれ、食べ終わった後は片付けるのと同時に、紅茶まで入れてくれた。
悪魔の執事とか、某有名刑事ドラマの有名キャラクターがする様に、ポットを上げて、その下に持っているカップに注いでいく。
その間、一滴も溢していない事に思わず俺は目を丸くしてしまう。本場の執事というのはここまで凄いものなのだろうか。
執事の凄さに見惚れているところにそのお茶を笑顔で差し出されれば、誰でも耳を赤く染めてしまうだろう。
俺は恭しく受け取り、それをそっと口に付ける。同時に鼻に香ばしい香りが入っていく。香りだけではない。お茶の葉も中々、いいのを使っており、味の面でも俺を楽しませてくれている。
俺がお茶の味に惚けていると、彼は目の前でニコニコと笑って、
「お気に召していただけましたか?中々に美味しいでしょう?」
「ええ、ありがとう。とっても美味しいわ。それよりも、今日の願望なのだけれども……」
俺は真剣な表情と声でエミリオに昨日の話を切り出す。
エミリオは表情を崩す事なく、丁寧にお辞儀をすると、優しい声で言った。
「ご安心を、ご主人様とはよく相談しておきましたので、今日の夕食の席では話し合う事ができるでしょう」
「良かったわ。じゃあ、この後でペーターと話す事は可能かしら?」
「ええ、勿論です。台所に戻る前に彼に告げておきますので、私と入れ違いで、彼は入ってくるでしょう」
エミリオは「では」と別れの挨拶を告げ、頭を下げると、そのまま台車を押して部屋を去っていく。
そして、扉が閉まったのもつかの間。直ぐにペーターが扉を開けて入ってきて、俺に抱き着こうと試みる。
俺は慌てて体を逸らし、ペーターが派手にベッドに突っ込むのを見届けた。
ペーターがベッドから顔を上げると、大きな声を上げて抗議の声を挙げる。
「ひ、酷いじゃあないですか!何も避けなくてもいいじゃあありませんか!」
「だって、あなたが抱き着くと、私の体が苦しくなるんですもの。それよりも、何か有益な情報はないの?」
そう尋ねると、ペーターはしょんぼりとした様子で、
「申し訳ありません。ずっと、部屋に篭っていたもので……」
と、弱々しい声で呟く。仕方があるまい。この状況である。
俺は怒っていない事を告げると、暫く話し合いになる様に指示を出す。
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