よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います!

アンジェロ岩井

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あるあるネタが大好きな人には分かる話

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カラオケ店でノリノリで歌っている時に、店員さんが来て、飲み物を置いていく。
その間、俺も友人も無言。カラオケボックスのテレビだけが映像を映し続けている。しかも、映像が特撮だとか、アニメだとかだと、何故か耳まで真っ赤になる程恥ずかしくなるのだ。
こんな、気まずい場面に遭遇した事はないだろうか。
俺はある。前世で数回、そして、アンソロジー漫画の性悪女に転生してから一度。
今、この瞬間がそれだ。顔に気まずい笑顔を浮かべる俺を置いて、執事は左手で抱えていた冒険小説と歴史書を部屋の机の上に置いて、背中を向けて去っていく。
恐らく、退屈していると思って、持ってきてくれたのだろう。
俺はまず歴史書から読み始めた。歴史書の内容は神話の初代王朝の後の次の王朝について書かれたもので、この時代に我々が知る古典劇の基礎が記された事を説明していた。
学校の古語の授業の教典として使われる物語の大半はこの王朝の時代に設立されたらしい。
俺はそんな事を考えながら、歴史書をめくっていく。時間を忘れて没頭し、次に冒険小説に取り掛かろうとした時だ。
ノックの音が聞こえ、食事の載った台車を持ったエミリオがもう一度、姿を表す。
「こんばんは、お嬢様、楽しんでいただけましたか?我が家は?」
「ええ、こんなに面白い本をありがとう。お陰で、不安に苛まれる事なく過ごせたわ」
これは本当である。歴史の本を読み、自分なりの考えを纏めていたら、あっという間に時間が過ぎてしまったのだ。
エミリオは台車を交換すると、もう一度、丁寧に頭を下げて退出しようとしたが、その前に俺はある案を思い付いたために、彼を呼び止める。
「あの、待ってくださいませんか!?私は少し、ペーターと話したいんです!」
それを聞くと、彼は無言で頭を下げて台車を押して部屋を出ていく。
彼と入れ替わる形でペーターが部屋に飛び込んできた。
ペーターは部屋に入ると同時に、俺に飛び付き、結果として俺をベットの上に押し倒す。
俺が彼の下でもがき、彼の頭を軽く小突いたことで、彼もようやく自分の過ちに気が付いたらしい。
慌てて、ベッドから離れ、俺に謝っていく。
俺はそれを寛大な笑顔で許し、唇をギュッと締めると、
「お嬢様!私はお嬢様が閉じ込められている間、ずっとここから出る方法を考えていました!オレはあのいけすかない羊野郎の首にフォークを突き付けて、それでーー」
「確かに、それは可能性があるかもしれないけれど、素人がそんな事をやったとしても成功するの?途中で腕を振りはられるんじゃなくて?」
ペーターは自分の腕が振り払われた事を思い出したのか、がっくりとした表情を浮かべて肩を落とす。
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