よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います！

こんな時には前世で俺が好きだった作品の主人公たちから、どうやって対処するのか、考えるべきであろう。

ペーターが連れ去られた後、俺は一人、ベッドの上に腰を掛けて、ここから出る方法を考えていた。
仮に、向こうが要求を呑んだとするのならば、万が一にもその事を理由に現国王から断罪されかねない。
呑まなかった場合、人質が古来より、どう扱われてきたのは向こうの歴史が教えてくれている。
だと、するのならば、ここは逃げるしかあるまい。
俺は脳内最高評議会を招集し、前世での体験を活かし、どうやってこの場を乗り切るのかを思案していく。
第一のプランは最終回で宇宙に行った特撮ヒーローが身に付けた憲法を使って、あの執事を倒し、ここから脱出するというものだ。
一見すれば、完璧かと思われるこのプランなのだが、前世の拙い記憶を頼りに、ここで使用したとしても痛い目を見るだけなのでやめておけ、と結論が出されて、却下された。
第二のプランは1963年に公開された世界的有名脱走映画に沿った上記のものよりも現実的なプランである。
すなわち、部屋の下に穴を掘り、脱出を図るというものである。一見いい、プランに思われたのだが、映画の様にたまたま地面の上に溢れた水がトンネルの方向にまで流れ落ちてバレると言う可能性とそもそも、掘った地面の土を何処に捨てるのかという問題、何よりも、このプランを断念した決定的な理由というのは、土を掘る道具が存分にあった映画と違って、それがないという問題である。
第三のプラン何処ぞの魔法少女アニメの様に、念波を送って、助けを求めるというアイディアである。
だが、俺の元には詐欺師と名高い白い悪魔などやって来ない。
したがって、このプランもボツとなった。
この他、鳥や虫に手紙を書いて助けを求めるというプランも出たが、それも現実的ではないと判断し、断念する事になった。
蛇（直訳）というコードネームの工作員が敵を尋問する時の様に、あの執事にナイフでも突き付ければ、脱出できるかと考えたが、訓練を受けていない俺が出来るとは考えられない。
助けが来るまで、或いは向こうが要求を呑み、王位継承権を放棄するまで、最悪、向こうが相手の要求を却下し、俺が最悪の結末を迎えるまではずっと、この豪華な部屋に軟禁状態という事になる。
何か、暇を潰すものはないだろうか。冒険小説か、はたまた歴史の本でもあれば、別だろうが、何もなければ退屈でしかない。
俺はまたしてもベッドの上で大の字になり、頭の中で前世で好きだった巨大特撮ヒーローの歌を一人、部屋の中で歌っていく。
「帰ってきたぞ！帰ってきたぞ！ウr」
「何をやっていらっしゃるのでしょうか？」
背後で呆れた様な声が聞こえたので、振り返ると、そこには唖然とした様子の執事が立っていた。