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実は神話というのは面白いもので、覚えておくと退屈しないものなんですよ
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「ペーター!逃げるわよ!」
「無茶ですよ!お嬢様!この大勢の人数から逃げるなんて!」
黒色のネクタイに黒色のベストを付けた地味な顔の青年が俺に向かって叫ぶ。
だが、俺はペーターの意思など無関係に手を取り、彼に大きな声で問う。
「ペーター!あなた、馬は操れる!?」
「無理です!オレは馬車専門なんで……」
最後の声が妙に弱々しい。ペーターが馬を操れないとなると、この場から逃げる術はなくなってしまうのではないのか。
俺がしどろもどろになっていると、背後から盗賊が追い付いてきた。
やはり、変身ベルトがないというのは痛い。もし、変身ベルトがあったのならば、変身した気になり、多少は自信がついたものの。
だが、そんな事を考えていても仕方があるまい。
この場を乗り切るには、やはり、自分の足で逃げるしかあるまい。
そうして、この場から逃れようとした時だ。俺は目の前に迫ってくる壮年の男の存在に気が付かず、殴り倒されてしまう。
頭に強い痛みが迸り、俺は悲鳴を上げる暇もなかった。
意識を失いつつある俺の耳に聞こえたのは、ペーターの心配する声であった。
俺が目を覚ますと、そこはベッドの上。
それも、よくゲームとかで見る粗末なベッドなどではなく、俺の部屋にある様な寝心地の良い、貴族御用達のベッドである。
急いで辺りを見回したす。そこには高価そうな壁紙に何処かの有名画家が描いと思われる歴史上の人物の絵。
恐らく、あれは我が国の発展に貢献した三代前の国王、ジェームズではないだろうか。
いや、待て、これは今、俺が住んでいる大陸にて伝説として伝わるゲゲアニア紛争で、ノウン王国とグロゲニア王国の二つの同盟国相手に勝利を収めた、クウガニアン王朝の初代国王、ジョー一世の肖像画ではないだろうか。
クウガニアン王朝の初代国王、ジョーは俺の元いた世界でいうところの東洋史の三皇五帝、西洋史でいうところのソロモン王やロムルスに当たる人物である。
神話の大まかな流れとしては、天界で神の物語が展開された後で、地上に存在した化け物が人間を支配するノウン王国とグロゲニア王国を打倒するために、神は当時、探検家であったジョーという人物に伝説の鎧と魔法の力を与えたのだという。
ジョーは当初は与えられた力で一人だけで戦っていたものの、人々は彼の戦いぶりに惹かれ、伝説の二大王国の支配を打倒するために、ジョーの部下となり、ゲゲアニア紛争で彼と共に戦い、最後は彼を王にして終わったのだという。
ジョーは二大王国の後釜に巨大帝国を築き、その初代皇帝になったのだという。
そして、これまた、伝説上の皇帝とされる彼の息子、ツーガ一世にその椅子を譲り、引退し、80歳という高齢で息を引き取ったのだという。
大陸の歴史はジョーが神から魔法を与えられるところから、始まると言ってもいい。
思えば、第一回の授業でこれを習った筈なのだが、元の性悪女は興味がなかったのか、眠っていた。
こんなに面白い神話なのに、勿体無いと思っていると、突然、扉を叩く音が聞こえた。
どうやら、俺を誘拐した張本人だろう。俺は入室の許可を出したものの、咄嗟に身構えてしまう。
「無茶ですよ!お嬢様!この大勢の人数から逃げるなんて!」
黒色のネクタイに黒色のベストを付けた地味な顔の青年が俺に向かって叫ぶ。
だが、俺はペーターの意思など無関係に手を取り、彼に大きな声で問う。
「ペーター!あなた、馬は操れる!?」
「無理です!オレは馬車専門なんで……」
最後の声が妙に弱々しい。ペーターが馬を操れないとなると、この場から逃げる術はなくなってしまうのではないのか。
俺がしどろもどろになっていると、背後から盗賊が追い付いてきた。
やはり、変身ベルトがないというのは痛い。もし、変身ベルトがあったのならば、変身した気になり、多少は自信がついたものの。
だが、そんな事を考えていても仕方があるまい。
この場を乗り切るには、やはり、自分の足で逃げるしかあるまい。
そうして、この場から逃れようとした時だ。俺は目の前に迫ってくる壮年の男の存在に気が付かず、殴り倒されてしまう。
頭に強い痛みが迸り、俺は悲鳴を上げる暇もなかった。
意識を失いつつある俺の耳に聞こえたのは、ペーターの心配する声であった。
俺が目を覚ますと、そこはベッドの上。
それも、よくゲームとかで見る粗末なベッドなどではなく、俺の部屋にある様な寝心地の良い、貴族御用達のベッドである。
急いで辺りを見回したす。そこには高価そうな壁紙に何処かの有名画家が描いと思われる歴史上の人物の絵。
恐らく、あれは我が国の発展に貢献した三代前の国王、ジェームズではないだろうか。
いや、待て、これは今、俺が住んでいる大陸にて伝説として伝わるゲゲアニア紛争で、ノウン王国とグロゲニア王国の二つの同盟国相手に勝利を収めた、クウガニアン王朝の初代国王、ジョー一世の肖像画ではないだろうか。
クウガニアン王朝の初代国王、ジョーは俺の元いた世界でいうところの東洋史の三皇五帝、西洋史でいうところのソロモン王やロムルスに当たる人物である。
神話の大まかな流れとしては、天界で神の物語が展開された後で、地上に存在した化け物が人間を支配するノウン王国とグロゲニア王国を打倒するために、神は当時、探検家であったジョーという人物に伝説の鎧と魔法の力を与えたのだという。
ジョーは当初は与えられた力で一人だけで戦っていたものの、人々は彼の戦いぶりに惹かれ、伝説の二大王国の支配を打倒するために、ジョーの部下となり、ゲゲアニア紛争で彼と共に戦い、最後は彼を王にして終わったのだという。
ジョーは二大王国の後釜に巨大帝国を築き、その初代皇帝になったのだという。
そして、これまた、伝説上の皇帝とされる彼の息子、ツーガ一世にその椅子を譲り、引退し、80歳という高齢で息を引き取ったのだという。
大陸の歴史はジョーが神から魔法を与えられるところから、始まると言ってもいい。
思えば、第一回の授業でこれを習った筈なのだが、元の性悪女は興味がなかったのか、眠っていた。
こんなに面白い神話なのに、勿体無いと思っていると、突然、扉を叩く音が聞こえた。
どうやら、俺を誘拐した張本人だろう。俺は入室の許可を出したものの、咄嗟に身構えてしまう。
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