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舞踏会で隣国の王子と出会ってしまった……
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長い間、空けていたのもあったのだろう。舞踏会に参加していた面々が俺たちが現れたのを驚嘆の声で出迎えた。
俺もガブリエルも、サミュエルもなんともない様な顔をして、舞踏会に入った。
ガブリエルはあんな事があった後であるにも関わらず、相変わらず俺のエスコートを務めようと熱心であったが、その度にサミュエルに邪魔をされていた。
邪魔をされるのと同時に、彼はサミュエルを牽制するかの様な目で睨んでおり、互いに罵倒も殴り合いもしない、睨み合いの末、いわゆる『冷戦』状態が続いたが、それに終止符を打ったのは、俺がどちらかに靡いたたという理由でもなければ、どちらか片方が、相手を殴り飛ばしたという理由でもない。
思わぬ共通の敵の出現である。二人が睨み合いを続ける中で、急に俺の前に御伽噺から出ていた様な端正で見た目麗しい赤髪の青年が出てきたら、男は誰だって警戒するだろう。
加えて、登場の仕方までも完璧であった。睨み合いを続ける二人をよそに、俺が料理を取っているところに、赤髪の青年は俺に向かって黙って会釈すると、何も言わずに俺に赤ワインが入ったグラスワインを差し出す。
俺が一口啜ると、眩い笑顔で俺に向かって微笑む。
それから、手を振って去っていくという実に御伽噺的な存在であったのだ。
俺はまたしても胸がドクドクと動いていた。一目惚れというのはこんなものなのだろうか。
俺は赤髪の青年の正体が分からず、二人に尋ねると、二人は忌々しそうな声で答えた。
隣国のロバート王子だという。ロバート・ロンカスター第二王子。
それが、彼の名称であるらしい。
窓辺で薔薇を持って綺麗な歯を見せ、女性陣に黄色い声を上げられるのが、似合ってそうな青年が、まさかの王子だという。
ゲームで例えるところのいわゆる隠しキャラだろうか。
そんな事を考えていると、またしてもあの顔が俺の心の中に浮かんでいく。
ガブリエルにしろ、ロバートにしろ、どうして、『トゥルーメモリー』なるゲームはこうして、魔性の男性ばかりを出してくれるのだろうか。
俺の心臓を爆発させるつもりか。ここのゲームのスタッフは。
だが、知らないスタッフに文句を言っても始まるまい。
俺は心配そうに迫る二人に手を振って、特に何もない事を証明し、そのままパーティーの料理の探索に向かう。
俺が舞踏会に出された肉料理を貪っていると、先程の赤い髪の青年が近付いて、俺に向かってもう一度、頭を下げて、
「どうか、ぼくと踊ってはくれませんか?異国の姫君よ……」
それを聞いた時、俺は無意識のうちに食べていたナッパを口から落としてしまう。王子はそんな俺を見ても嫌悪感を感じるどころか、黙って綺麗な白色のハンカチで汚れた口元を拭う。
俺もガブリエルも、サミュエルもなんともない様な顔をして、舞踏会に入った。
ガブリエルはあんな事があった後であるにも関わらず、相変わらず俺のエスコートを務めようと熱心であったが、その度にサミュエルに邪魔をされていた。
邪魔をされるのと同時に、彼はサミュエルを牽制するかの様な目で睨んでおり、互いに罵倒も殴り合いもしない、睨み合いの末、いわゆる『冷戦』状態が続いたが、それに終止符を打ったのは、俺がどちらかに靡いたたという理由でもなければ、どちらか片方が、相手を殴り飛ばしたという理由でもない。
思わぬ共通の敵の出現である。二人が睨み合いを続ける中で、急に俺の前に御伽噺から出ていた様な端正で見た目麗しい赤髪の青年が出てきたら、男は誰だって警戒するだろう。
加えて、登場の仕方までも完璧であった。睨み合いを続ける二人をよそに、俺が料理を取っているところに、赤髪の青年は俺に向かって黙って会釈すると、何も言わずに俺に赤ワインが入ったグラスワインを差し出す。
俺が一口啜ると、眩い笑顔で俺に向かって微笑む。
それから、手を振って去っていくという実に御伽噺的な存在であったのだ。
俺はまたしても胸がドクドクと動いていた。一目惚れというのはこんなものなのだろうか。
俺は赤髪の青年の正体が分からず、二人に尋ねると、二人は忌々しそうな声で答えた。
隣国のロバート王子だという。ロバート・ロンカスター第二王子。
それが、彼の名称であるらしい。
窓辺で薔薇を持って綺麗な歯を見せ、女性陣に黄色い声を上げられるのが、似合ってそうな青年が、まさかの王子だという。
ゲームで例えるところのいわゆる隠しキャラだろうか。
そんな事を考えていると、またしてもあの顔が俺の心の中に浮かんでいく。
ガブリエルにしろ、ロバートにしろ、どうして、『トゥルーメモリー』なるゲームはこうして、魔性の男性ばかりを出してくれるのだろうか。
俺の心臓を爆発させるつもりか。ここのゲームのスタッフは。
だが、知らないスタッフに文句を言っても始まるまい。
俺は心配そうに迫る二人に手を振って、特に何もない事を証明し、そのままパーティーの料理の探索に向かう。
俺が舞踏会に出された肉料理を貪っていると、先程の赤い髪の青年が近付いて、俺に向かってもう一度、頭を下げて、
「どうか、ぼくと踊ってはくれませんか?異国の姫君よ……」
それを聞いた時、俺は無意識のうちに食べていたナッパを口から落としてしまう。王子はそんな俺を見ても嫌悪感を感じるどころか、黙って綺麗な白色のハンカチで汚れた口元を拭う。
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