60 / 105
舞踏会で隣国の王子と出会ってしまった……
しおりを挟む
長い間、空けていたのもあったのだろう。舞踏会に参加していた面々が俺たちが現れたのを驚嘆の声で出迎えた。
俺もガブリエルも、サミュエルもなんともない様な顔をして、舞踏会に入った。
ガブリエルはあんな事があった後であるにも関わらず、相変わらず俺のエスコートを務めようと熱心であったが、その度にサミュエルに邪魔をされていた。
邪魔をされるのと同時に、彼はサミュエルを牽制するかの様な目で睨んでおり、互いに罵倒も殴り合いもしない、睨み合いの末、いわゆる『冷戦』状態が続いたが、それに終止符を打ったのは、俺がどちらかに靡いたたという理由でもなければ、どちらか片方が、相手を殴り飛ばしたという理由でもない。
思わぬ共通の敵の出現である。二人が睨み合いを続ける中で、急に俺の前に御伽噺から出ていた様な端正で見た目麗しい赤髪の青年が出てきたら、男は誰だって警戒するだろう。
加えて、登場の仕方までも完璧であった。睨み合いを続ける二人をよそに、俺が料理を取っているところに、赤髪の青年は俺に向かって黙って会釈すると、何も言わずに俺に赤ワインが入ったグラスワインを差し出す。
俺が一口啜ると、眩い笑顔で俺に向かって微笑む。
それから、手を振って去っていくという実に御伽噺的な存在であったのだ。
俺はまたしても胸がドクドクと動いていた。一目惚れというのはこんなものなのだろうか。
俺は赤髪の青年の正体が分からず、二人に尋ねると、二人は忌々しそうな声で答えた。
隣国のロバート王子だという。ロバート・ロンカスター第二王子。
それが、彼の名称であるらしい。
窓辺で薔薇を持って綺麗な歯を見せ、女性陣に黄色い声を上げられるのが、似合ってそうな青年が、まさかの王子だという。
ゲームで例えるところのいわゆる隠しキャラだろうか。
そんな事を考えていると、またしてもあの顔が俺の心の中に浮かんでいく。
ガブリエルにしろ、ロバートにしろ、どうして、『トゥルーメモリー』なるゲームはこうして、魔性の男性ばかりを出してくれるのだろうか。
俺の心臓を爆発させるつもりか。ここのゲームのスタッフは。
だが、知らないスタッフに文句を言っても始まるまい。
俺は心配そうに迫る二人に手を振って、特に何もない事を証明し、そのままパーティーの料理の探索に向かう。
俺が舞踏会に出された肉料理を貪っていると、先程の赤い髪の青年が近付いて、俺に向かってもう一度、頭を下げて、
「どうか、ぼくと踊ってはくれませんか?異国の姫君よ……」
それを聞いた時、俺は無意識のうちに食べていたナッパを口から落としてしまう。王子はそんな俺を見ても嫌悪感を感じるどころか、黙って綺麗な白色のハンカチで汚れた口元を拭う。
俺もガブリエルも、サミュエルもなんともない様な顔をして、舞踏会に入った。
ガブリエルはあんな事があった後であるにも関わらず、相変わらず俺のエスコートを務めようと熱心であったが、その度にサミュエルに邪魔をされていた。
邪魔をされるのと同時に、彼はサミュエルを牽制するかの様な目で睨んでおり、互いに罵倒も殴り合いもしない、睨み合いの末、いわゆる『冷戦』状態が続いたが、それに終止符を打ったのは、俺がどちらかに靡いたたという理由でもなければ、どちらか片方が、相手を殴り飛ばしたという理由でもない。
思わぬ共通の敵の出現である。二人が睨み合いを続ける中で、急に俺の前に御伽噺から出ていた様な端正で見た目麗しい赤髪の青年が出てきたら、男は誰だって警戒するだろう。
加えて、登場の仕方までも完璧であった。睨み合いを続ける二人をよそに、俺が料理を取っているところに、赤髪の青年は俺に向かって黙って会釈すると、何も言わずに俺に赤ワインが入ったグラスワインを差し出す。
俺が一口啜ると、眩い笑顔で俺に向かって微笑む。
それから、手を振って去っていくという実に御伽噺的な存在であったのだ。
俺はまたしても胸がドクドクと動いていた。一目惚れというのはこんなものなのだろうか。
俺は赤髪の青年の正体が分からず、二人に尋ねると、二人は忌々しそうな声で答えた。
隣国のロバート王子だという。ロバート・ロンカスター第二王子。
それが、彼の名称であるらしい。
窓辺で薔薇を持って綺麗な歯を見せ、女性陣に黄色い声を上げられるのが、似合ってそうな青年が、まさかの王子だという。
ゲームで例えるところのいわゆる隠しキャラだろうか。
そんな事を考えていると、またしてもあの顔が俺の心の中に浮かんでいく。
ガブリエルにしろ、ロバートにしろ、どうして、『トゥルーメモリー』なるゲームはこうして、魔性の男性ばかりを出してくれるのだろうか。
俺の心臓を爆発させるつもりか。ここのゲームのスタッフは。
だが、知らないスタッフに文句を言っても始まるまい。
俺は心配そうに迫る二人に手を振って、特に何もない事を証明し、そのままパーティーの料理の探索に向かう。
俺が舞踏会に出された肉料理を貪っていると、先程の赤い髪の青年が近付いて、俺に向かってもう一度、頭を下げて、
「どうか、ぼくと踊ってはくれませんか?異国の姫君よ……」
それを聞いた時、俺は無意識のうちに食べていたナッパを口から落としてしまう。王子はそんな俺を見ても嫌悪感を感じるどころか、黙って綺麗な白色のハンカチで汚れた口元を拭う。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
相沢結衣は秘書課に異動となり、冷徹と噂される若き社長・西園寺蓮のもとで働くことになる。彼の完璧主義に振り回されながらも、仕事を通じて互いに信頼を築いていく二人。秘書として彼を支え続ける結衣の前に、次第に明かされる蓮の本当の姿とは――。仕事と恋愛が交錯する中で紡がれる、大人の純愛ストーリー。
氷の令嬢は愛されたい
むんず
恋愛
ソフィー・ラスラーニャは当時落ちこぼれの令嬢として知られていた母リリィ・アンレインと伯爵の父オスカー・ラスラーニャの元に生まれた望まぬ子供として生まれた。
そのうち、父のオスカーは他に好きな令嬢ができ離婚。
何故か、オスカーの元についていくこととなったソフィーはその後けして幸せとは言えない生活を送るのであった……。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる