よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います!

アンジェロ岩井

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なんとか、真剣にも慣れてきたので、主人公と話して、肩の力を抜こうと思います

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「あの、グレース様」
ある日、食事をとっていたら、クロエが声を掛けてきた。
「あら、なんですの?」
俺は笑顔で答えたのだが、彼女はなぜか顔を曇らせていた。
「あの、放課後の練習の事なんですが……刃物を用いて練習をしているというのは本当でしょうか?」
彼女はそう言うと、俺の方に心配そうな顔を向ける。
純粋に俺を心配する目だ。彼女をそんな目にした責任は取らねばなるまい。
俺は首を縦に動かして、つとめて優しい声色で言った。
「大丈夫よ。これは単なる訓練に過ぎないのだから……まさか、ウェントワース団長も本気で私を斬ったりはしないわ」
「……だといいのですが……」
彼女は弱々しい声でそう言うと、両手に持っていたお盆を俺の隣に置き、キリッとした目を向けて言った。
「折角ですので、今晩はウェントワース様の横で食べます。最近の稽古の事をもっと聞きたいんですもの」
クロエはそう言うと、しきりに訓練の事を尋ねてきた。その目が真剣だったので、俺は思わず笑ってしまう。
俺の事を心から心配してくれる優しい彼女であるから、俺は団長が慎重に剣の修行を付けてくれている事を語っていく。
団長の剣の事や、彼が口ではああ言いながら、いかに気を遣ってくれているのかを語っていく。
クロエはそれを感心した様子で聞いていた。俺の話が終わると、彼女はクスッと笑って、
「凄いですね、グレース様、そんな風に剣の技術を取り入れるなんて、私にはできませんわ」
「そんな……それを言ったら、クロエの方が凄いわよ。クロエは私よりも頭がいいし、賢いし、何事にも私よりも真剣に取り組むし」
「いえいえ、そんな事はありません!むしろ、凄いのは、グレース様は私が知らない様な冒険小説の話の他にも、聞いた事がない様な、楽しいお話を知っておられますし、聞いていてとても楽しいです!」
「そんな、楽しいだなんてーー」
「いえ、とっても面白かったです!特に、あの夜、パーティーでウィニー様とお話をお伺いした時は、私までも幼い子供の様に胸が躍りましたもの、良ければ、またあの話を……いえ、折角ですから、あの時に話し損ねたお話をお聞かせくださいませんか?」
彼女は期待の目で俺を見つめている。こんな純粋な目で見つめられては、幾ら、オリビア嬢から中止されているとはいえ、話さないわけにはいくまい。
俺は一種の使命感の様なものに突き動かされ、彼女に俺が好きなヒーローの話を語っていく。
いよいよ、主人公が鏡の世界に入ろうとしたくだりで、頭を叩かれてしまう。
背後を振り向くと、そこには左手の掌にポンポンと扇子を叩くオリビア嬢の姿。
彼女は両眉をピクピクと動かせながら、
「アレの話題はするなと言いましたわよね?」
俺は悪戯がバレた子供の様に引き攣った笑顔を浮かべて答えた。
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