50 / 105
あまりにも濃い一日でした……
しおりを挟む
サミュエルの時といい、ガブリエルの時といい、そして、今のデビッドの時といい、どうしてこう胸が高鳴るのだろう。心臓の慟哭が止まらない。
90年代に、大人気となった歌手がそんな曲を歌っていた様な気がする。
しかし、妙なのは、前世は男だったというのに、どうして、こんな風にドキドキしてしまうのだろう。まるで、マンガでよく見る恋する女の子ではないだろうか。
俺は重い溜息を吐きながら、教科書を開いていく。
いつもと変わり映えのない中身であるが、今の俺にとっては何も考えずに捲れるという点では良いのかもしれない。
俺は午後の授業の間はこの奇妙な気分の事を考えながら過ごしていく。
午後の授業の終了を告げるチャイムが聞こえると、そのまま稽古に出掛けた。
木剣での稽古をしながら、またしても今日の出来事を振り返っていく。
刃物の先端を突き付けられては、やはり、俺は腰が抜けてしまう。
やはり、自らが剣で戦うのは無理かもしれない。
そう考えていた時だ。手に強い衝撃が生じる。
木剣が地面の上に転がっていく。と、同時に俺の首元に木剣が突き付けられた。
「どうなされましたかな?今日はずっと上の空ですが……もしや、やる気がなくなったとかそういうのではありませんかな?」
「い、いえ、とんでもありません!ただ、今日はちょっと、色々とありましてーー」
「色々?何があったのですかな?よければ、私に教えていただけませんかな?」
俺は正直、言っていいのか分からなかったのだが、意を決して話してみる事にした。
すると、団長はうんうんと唸り、次に剣を抜いて、俺に向かって、剣先を突き付けた。
俺は思わず、足を後ろに下がらせてしまう。
たじろいだ俺に対し、団長は口元の右端を吊り上げて、剣を鞘へと戻す。
「どうでしょう?これが、剣です。恐ろしいでしょう?これを実際に突き付けられた気分はどうですか?」
どうですかも、クソもない。めちゃくちゃ怖い。俺が前世で好きだった漫画の主人公が『刃物を突き付けられて、迫るのは怖い』と言っていたが、その通りだ。
めちゃくちゃ怖い。明治元年に、小御所会議に慶喜公の姿が見えない事に抗議の声を上げた土佐の守容堂に対し、西郷さんが『短刀一本あれば片付く』と言った台詞を聞いた容堂さんがビビって、意見を引っ込めた事を思い出す。
俺は完全に、戦意を失った。この場合についての事を団長に相談すると、
「では、実際に剣を使って稽古するのはどうでしょう?慣れれば、怖さも引っ込むかもしれませんよ」
やれやれ、どうやら、それに従うしかあるまい。俺は団長に協力をお願いした。
90年代に、大人気となった歌手がそんな曲を歌っていた様な気がする。
しかし、妙なのは、前世は男だったというのに、どうして、こんな風にドキドキしてしまうのだろう。まるで、マンガでよく見る恋する女の子ではないだろうか。
俺は重い溜息を吐きながら、教科書を開いていく。
いつもと変わり映えのない中身であるが、今の俺にとっては何も考えずに捲れるという点では良いのかもしれない。
俺は午後の授業の間はこの奇妙な気分の事を考えながら過ごしていく。
午後の授業の終了を告げるチャイムが聞こえると、そのまま稽古に出掛けた。
木剣での稽古をしながら、またしても今日の出来事を振り返っていく。
刃物の先端を突き付けられては、やはり、俺は腰が抜けてしまう。
やはり、自らが剣で戦うのは無理かもしれない。
そう考えていた時だ。手に強い衝撃が生じる。
木剣が地面の上に転がっていく。と、同時に俺の首元に木剣が突き付けられた。
「どうなされましたかな?今日はずっと上の空ですが……もしや、やる気がなくなったとかそういうのではありませんかな?」
「い、いえ、とんでもありません!ただ、今日はちょっと、色々とありましてーー」
「色々?何があったのですかな?よければ、私に教えていただけませんかな?」
俺は正直、言っていいのか分からなかったのだが、意を決して話してみる事にした。
すると、団長はうんうんと唸り、次に剣を抜いて、俺に向かって、剣先を突き付けた。
俺は思わず、足を後ろに下がらせてしまう。
たじろいだ俺に対し、団長は口元の右端を吊り上げて、剣を鞘へと戻す。
「どうでしょう?これが、剣です。恐ろしいでしょう?これを実際に突き付けられた気分はどうですか?」
どうですかも、クソもない。めちゃくちゃ怖い。俺が前世で好きだった漫画の主人公が『刃物を突き付けられて、迫るのは怖い』と言っていたが、その通りだ。
めちゃくちゃ怖い。明治元年に、小御所会議に慶喜公の姿が見えない事に抗議の声を上げた土佐の守容堂に対し、西郷さんが『短刀一本あれば片付く』と言った台詞を聞いた容堂さんがビビって、意見を引っ込めた事を思い出す。
俺は完全に、戦意を失った。この場合についての事を団長に相談すると、
「では、実際に剣を使って稽古するのはどうでしょう?慣れれば、怖さも引っ込むかもしれませんよ」
やれやれ、どうやら、それに従うしかあるまい。俺は団長に協力をお願いした。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる