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俺、この子にだったら、婚姻を迫られてもいいかな?かな?あ、でも、団長殿も素敵かも、かも
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俺は少年が涙ながらに訴える場面を見て、少年の愛らしい姿を堪能した後に、その涙を指で拭う。
あぁ、なんと愛らしいのだろう。人差し指に付いた透明の液体は一生、保存したい。俺が自分の人差し指を見つめていると、ドレスの裾を引っ張られた。引っ張られた箇所を見ると、そこにはショタ王子の姿。
可愛らしい顔で彼は言った。
「ぼくにもさっきの話を聞かせてよ。ぼくも冒険小説の話を」
喜んでさせてもらおう。俺はクロエも交え、合間のヒーローの話を語っていく。
そして、そのヒーローが仲間と共に、基地に乗り込み、髑髏の影となって、首領を見送る場面に掛かり、物語を話し終えると、ショタ王子もクロエも目を輝かせていた。
「す、すごい!こんな面白い話、始めて!もっと……もっと教えて!」
「じゃあ、これはどうでしょう?鏡の世界に渡って、争いを繰り広げるヒーローたちの話なんだけど」
人差し指を掲げて俺が好きな話を説明しようとした時だ。
「こら、こんな純粋な子に何を教えようとしていますの」
と、頭を扇子で小突かれてしまう。頭を両手で抑えながら見上げると、そこにはオリビア嬢の姿。
オリビア嬢の様子や先程の低い声から、彼女が俺に対し、怒りの感情を向けているのは火を見るよりも明らかだ。
だが、一応、あれは小さい子も見る番組だろう。話しても問題はない筈だが……。
その旨を告げようとしても、オリビア嬢はギロッと鋭い目で俺を睨む。
この先に俺が喋ろうとする台詞を予想していたかの様だ。
俺はやむを得ずに口を紡ぐ。あぁ、頼むから、ウィニーよ、クロエよ、そんな目で俺を見ないでくれ。そんな、未練がましい目で見られたとしても、俺の背後で扇をポンポンと叩くオリビア嬢に向かって言ってくれ。
俺は溜息を吐きながら、代わりに別の話をしようと考えた。
宇宙関連のヒーローの話でもしようかと思った矢先の事だ。
「どうも、グレース様」
と、いきなり肩を掴まれて、否が応でも背後を振り返らされてしまう。
そこに立っていたのは、ロイヤル・ウェントワース騎士団長殿。
彼は大きな声を上げると、料理を持ちながら叫ぶ。
「この料理は俺の口に合っていてな!この料理を作った人に感謝しておるのだ!どこにおるのだ!?この料理を作ったものは!?」
騎士団長殿、それは俺の親父がシェフに習って懸命に作ったものだ。
ここまで気持ちよく褒められると、親父も本望だろう。
ふと、目をやると、その親父本人が、照れ臭そうにブランデーを飲んでいた。
全く、単純な人だ。
あぁ、なんと愛らしいのだろう。人差し指に付いた透明の液体は一生、保存したい。俺が自分の人差し指を見つめていると、ドレスの裾を引っ張られた。引っ張られた箇所を見ると、そこにはショタ王子の姿。
可愛らしい顔で彼は言った。
「ぼくにもさっきの話を聞かせてよ。ぼくも冒険小説の話を」
喜んでさせてもらおう。俺はクロエも交え、合間のヒーローの話を語っていく。
そして、そのヒーローが仲間と共に、基地に乗り込み、髑髏の影となって、首領を見送る場面に掛かり、物語を話し終えると、ショタ王子もクロエも目を輝かせていた。
「す、すごい!こんな面白い話、始めて!もっと……もっと教えて!」
「じゃあ、これはどうでしょう?鏡の世界に渡って、争いを繰り広げるヒーローたちの話なんだけど」
人差し指を掲げて俺が好きな話を説明しようとした時だ。
「こら、こんな純粋な子に何を教えようとしていますの」
と、頭を扇子で小突かれてしまう。頭を両手で抑えながら見上げると、そこにはオリビア嬢の姿。
オリビア嬢の様子や先程の低い声から、彼女が俺に対し、怒りの感情を向けているのは火を見るよりも明らかだ。
だが、一応、あれは小さい子も見る番組だろう。話しても問題はない筈だが……。
その旨を告げようとしても、オリビア嬢はギロッと鋭い目で俺を睨む。
この先に俺が喋ろうとする台詞を予想していたかの様だ。
俺はやむを得ずに口を紡ぐ。あぁ、頼むから、ウィニーよ、クロエよ、そんな目で俺を見ないでくれ。そんな、未練がましい目で見られたとしても、俺の背後で扇をポンポンと叩くオリビア嬢に向かって言ってくれ。
俺は溜息を吐きながら、代わりに別の話をしようと考えた。
宇宙関連のヒーローの話でもしようかと思った矢先の事だ。
「どうも、グレース様」
と、いきなり肩を掴まれて、否が応でも背後を振り返らされてしまう。
そこに立っていたのは、ロイヤル・ウェントワース騎士団長殿。
彼は大きな声を上げると、料理を持ちながら叫ぶ。
「この料理は俺の口に合っていてな!この料理を作った人に感謝しておるのだ!どこにおるのだ!?この料理を作ったものは!?」
騎士団長殿、それは俺の親父がシェフに習って懸命に作ったものだ。
ここまで気持ちよく褒められると、親父も本望だろう。
ふと、目をやると、その親父本人が、照れ臭そうにブランデーを飲んでいた。
全く、単純な人だ。
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