よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います！

翌日の教場にて、歌います

「おはよう、グレース」
「おはようございます。オリビア様、今日もご機嫌麗しゅうございますね？」
俺はそう言って、淑女らしい挨拶を交わしたのだが、なぜか、オリビア嬢は俺に不満そうな顔を見せた。
「あ、あのどうかなされましたか？オリビア様？」
その声を聞いて、オリビア嬢はますます不機嫌になっていく。
「良いわけないでしょう？あんたは昨日のエリアーナの横暴を許せるの？」
どうやら、昨日の事についてご立腹であったらしい。なんとも間の悪いタイミングで挨拶をしたものだ。
俺が愛想笑いを浮かべると、彼女は八つ当たりのために、俺の足を踵で踏む。
堪らずに悲鳴を上げる俺を放って、オリビア嬢は学園へと向かう。
仕方がないので、俺も彼女を追って学園へと向かう。
学園では、昨日の事があったためか、ピリピリとした空気が流れていた。
特に、昨日の令嬢方は俺やオリビア嬢、そして、クロエを突き刺す様に見つめていた。
それだけ、怒りを買ってしまったという事だろうか。
廊下を歩くたびに、聴こえる噂話によれば、エリアーナは面目を潰されたと怒り狂っているという事らしい。
昼休み。用事があると席を外したオリビア嬢。クロエも一人で落ち着いて食べたいという事から、俺は一人で食事をしていた。
食堂の端で、俺が両肩を落としながら、今日の昼食である魚のムニエルを突いていると、またしても、大きな声が食堂に響き渡る。
「あなたがここにいるなんて目障りなのよ！」
「そうよ！学園から出て行ってくださらない！」
そんな声に反応したのは当然、俺だけではない。他の生徒たちも同様の反応を見せている。
だが、今回、クロエを虐めているメンバーの中に、エリアーナの姿は見えない。
どういう事だろうか。だが、そんな事はどうでもいい。
俺は直ちに二人の間に割って入り、彼女の虐めをやめさせる。
「お待ちなさい！あなた方、恥ずかしくありませんの！？二人で一人を虐めるなんて！！」
「黙りなさい！この女はズルをして、この学園に入ったのよ。通常ならば、貴族しか入れない学園に！」
「そんな狡い方ならば、私たちの暇潰しに付き合わせても良いでしょう？」
こいつらに何を言っても無駄だろう。俺は諦めにも似た感情を抱くのと同時に、頭の中にある面白い感情が湧き起こったので、それを実行に移す。
俺は不意に、コップを握ると、コップを逆さに持ち替えると、令嬢二人に左手の人差し指を向けて、
「よろしいですわ。そんなに暇であるのならば、私のお歌でも聴いて、時間をお潰しなさいな」
俺はそう言うと、コップの底をマイクに見立てて、前世で90点以上を取った曲を熱唱していく。
なんとも言えない高揚感が歌っている俺を包み込む。お気に入りの歌詞を歌い、その歌が歌われる世界へと突入していく。
コップを握り締めながら、目を瞑り、楽しそうに歌っていく。
二曲を歌い終わり、熱狂と興奮に包まれた俺いよいよ、本命の曲へと取り掛かる。
「朝焼けに包まれてーー」
「走り出さなくてよろしい」
と、扇子で頭を小突かれて、ようやく俺は周りを見渡す。
そこには口を開けたり、目を丸くしたりする生徒たちの姿。
背後には眉間に皺を寄せたオリビア嬢の姿。
その状況を見た、俺は苦笑いをするしかなかった。