よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います!

アンジェロ岩井

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お待ちかね、ショタ王子!だが、同時に、眉を顰めた悪役令嬢も現れて……。

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「お、お兄ちゃん!」
放課後の学園に一際目立つのは可愛らしい声。だが、それは女性のものではない。声は高いものの、それは女性が放つものではないという事を俺はよく理解していた。
俺はその日、ロイヤル騎士団長との剣の稽古を終え、馬車に乗ろうとした時に両耳でハッキリと聞いた。
間違いない。ショタ王子、原作のゲームで人気No.3(性悪女談)だ。
俺がその愛らしい姿を見て、大きく手を広げて、抱き締めに行こうとした時だ。
不意に、空中に激しい声が響いていく。
俺が声の方向を振り向くと、そこには完璧王子、サミュエルの姿。
「ウィニー!キミは王宮にいる筈でしょう!?どうして、こんな所にいるのですか!?」
「だって、だった……兄ちゃんに会いたかったんだもん。寂しくて……」
「私に会いたいのなら、召使いに言付けなさい。わざわざ来なくても良いでしょう?これを言うのは確か、二度目でしたよね?」
容赦のない言い方に顔から透明の液体を溢し、くすぶる少年。
なんて、愛らしい姿なのだろうか。俺は我も忘れ、サミュエル王子の前に現れた。
「待ってください!サミュエル王子殿下!ウィニー殿下はまだ幼い身なのです!兄が恋しいのも当然でしょう!?」
「ぐ、グレース。あなた、この時間まで?」
「そんな事はどうでもよろしいでしょう!?問題は、です!サミュエル王子殿下!あなたが弟君に向かって我慢ならない事を仰った事ですわ!」
「だ、だがな、ウェニーは使用人を通さずに、ここに来たのですよ!確かに、ウェニーが寂しいと思う気持ちも分かりますよ!けれど、家族である以上、王族でありーー」
「ですが、殿下!殿下は王子や王族である以上に兄です!その弟が兄を慕ってやって来たというのに、その様な態度はないでございませんこと!?」
駄目だ、俺がやると、どうしても、某有名タイムリープ作品のトラップマスターの様な、えせお嬢様口調になってしまう。
だが、こんな頼りない口調ではあるのだが、それでも、ウィニーを思う気持ちは負けないつもりだ。
俺は目を怒りの炎で燃やしながら、珍しく怯んだ様子のサミュエルを睨む。
俺は興奮し、次第に口から発する音のボリュームが大きくなっていく。
「そもそも、殿下がもう少しウィニー様を構っていらしゃれば、ウィニー様が直々に尋ねて来なかったんじゃありませんのことよ?今回の件はサミュエル様にも非があるのでは!?」
たじろいで、何も言えない完璧王子の姿を見るのは少し滑稽であり、卒業式パーティーの時の事を思えば、やり返したという気持ちもあったのだろう。
と、そんな事を考えているのと、俺とサミュエル、ウィニーの三人の前にある人物が乱入する。
それは、なんたる事か、王子の婚約者にして、公爵令嬢のオリビア・コンドールその人であった。
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