30 / 105
お待ちかね、ショタ王子!だが、同時に、眉を顰めた悪役令嬢も現れて……。
しおりを挟む
「お、お兄ちゃん!」
放課後の学園に一際目立つのは可愛らしい声。だが、それは女性のものではない。声は高いものの、それは女性が放つものではないという事を俺はよく理解していた。
俺はその日、ロイヤル騎士団長との剣の稽古を終え、馬車に乗ろうとした時に両耳でハッキリと聞いた。
間違いない。ショタ王子、原作のゲームで人気No.3(性悪女談)だ。
俺がその愛らしい姿を見て、大きく手を広げて、抱き締めに行こうとした時だ。
不意に、空中に激しい声が響いていく。
俺が声の方向を振り向くと、そこには完璧王子、サミュエルの姿。
「ウィニー!キミは王宮にいる筈でしょう!?どうして、こんな所にいるのですか!?」
「だって、だった……兄ちゃんに会いたかったんだもん。寂しくて……」
「私に会いたいのなら、召使いに言付けなさい。わざわざ来なくても良いでしょう?これを言うのは確か、二度目でしたよね?」
容赦のない言い方に顔から透明の液体を溢し、くすぶる少年。
なんて、愛らしい姿なのだろうか。俺は我も忘れ、サミュエル王子の前に現れた。
「待ってください!サミュエル王子殿下!ウィニー殿下はまだ幼い身なのです!兄が恋しいのも当然でしょう!?」
「ぐ、グレース。あなた、この時間まで?」
「そんな事はどうでもよろしいでしょう!?問題は、です!サミュエル王子殿下!あなたが弟君に向かって我慢ならない事を仰った事ですわ!」
「だ、だがな、ウェニーは使用人を通さずに、ここに来たのですよ!確かに、ウェニーが寂しいと思う気持ちも分かりますよ!けれど、家族である以上、王族でありーー」
「ですが、殿下!殿下は王子や王族である以上に兄です!その弟が兄を慕ってやって来たというのに、その様な態度はないでございませんこと!?」
駄目だ、俺がやると、どうしても、某有名タイムリープ作品のトラップマスターの様な、えせお嬢様口調になってしまう。
だが、こんな頼りない口調ではあるのだが、それでも、ウィニーを思う気持ちは負けないつもりだ。
俺は目を怒りの炎で燃やしながら、珍しく怯んだ様子のサミュエルを睨む。
俺は興奮し、次第に口から発する音のボリュームが大きくなっていく。
「そもそも、殿下がもう少しウィニー様を構っていらしゃれば、ウィニー様が直々に尋ねて来なかったんじゃありませんのことよ?今回の件はサミュエル様にも非があるのでは!?」
たじろいで、何も言えない完璧王子の姿を見るのは少し滑稽であり、卒業式パーティーの時の事を思えば、やり返したという気持ちもあったのだろう。
と、そんな事を考えているのと、俺とサミュエル、ウィニーの三人の前にある人物が乱入する。
それは、なんたる事か、王子の婚約者にして、公爵令嬢のオリビア・コンドールその人であった。
放課後の学園に一際目立つのは可愛らしい声。だが、それは女性のものではない。声は高いものの、それは女性が放つものではないという事を俺はよく理解していた。
俺はその日、ロイヤル騎士団長との剣の稽古を終え、馬車に乗ろうとした時に両耳でハッキリと聞いた。
間違いない。ショタ王子、原作のゲームで人気No.3(性悪女談)だ。
俺がその愛らしい姿を見て、大きく手を広げて、抱き締めに行こうとした時だ。
不意に、空中に激しい声が響いていく。
俺が声の方向を振り向くと、そこには完璧王子、サミュエルの姿。
「ウィニー!キミは王宮にいる筈でしょう!?どうして、こんな所にいるのですか!?」
「だって、だった……兄ちゃんに会いたかったんだもん。寂しくて……」
「私に会いたいのなら、召使いに言付けなさい。わざわざ来なくても良いでしょう?これを言うのは確か、二度目でしたよね?」
容赦のない言い方に顔から透明の液体を溢し、くすぶる少年。
なんて、愛らしい姿なのだろうか。俺は我も忘れ、サミュエル王子の前に現れた。
「待ってください!サミュエル王子殿下!ウィニー殿下はまだ幼い身なのです!兄が恋しいのも当然でしょう!?」
「ぐ、グレース。あなた、この時間まで?」
「そんな事はどうでもよろしいでしょう!?問題は、です!サミュエル王子殿下!あなたが弟君に向かって我慢ならない事を仰った事ですわ!」
「だ、だがな、ウェニーは使用人を通さずに、ここに来たのですよ!確かに、ウェニーが寂しいと思う気持ちも分かりますよ!けれど、家族である以上、王族でありーー」
「ですが、殿下!殿下は王子や王族である以上に兄です!その弟が兄を慕ってやって来たというのに、その様な態度はないでございませんこと!?」
駄目だ、俺がやると、どうしても、某有名タイムリープ作品のトラップマスターの様な、えせお嬢様口調になってしまう。
だが、こんな頼りない口調ではあるのだが、それでも、ウィニーを思う気持ちは負けないつもりだ。
俺は目を怒りの炎で燃やしながら、珍しく怯んだ様子のサミュエルを睨む。
俺は興奮し、次第に口から発する音のボリュームが大きくなっていく。
「そもそも、殿下がもう少しウィニー様を構っていらしゃれば、ウィニー様が直々に尋ねて来なかったんじゃありませんのことよ?今回の件はサミュエル様にも非があるのでは!?」
たじろいで、何も言えない完璧王子の姿を見るのは少し滑稽であり、卒業式パーティーの時の事を思えば、やり返したという気持ちもあったのだろう。
と、そんな事を考えているのと、俺とサミュエル、ウィニーの三人の前にある人物が乱入する。
それは、なんたる事か、王子の婚約者にして、公爵令嬢のオリビア・コンドールその人であった。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です

【完結】貴方の望み通りに・・・
kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも
どんなに貴方を見つめても
どんなに貴方を思っても
だから、
もう貴方を望まない
もう貴方を見つめない
もう貴方のことは忘れる
さようなら


好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる