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やはり、歴史以外の勉学の分野には関心を持てないので、歴史に全振りしたいと思います!

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『赤い、赤い、顔のサミュエル王子、ダブル追及、いじめと横領。権威と正論のパンチが響く。父よ、母よ、元の人格よ、風の如き、正論に負け、力の限り、ぶち当たる(王子が)王家の敵は男爵家、戦う正義のサミュエル王子ィ~』
魔法理論の授業の最中、俺はまたしてもくだらない替え歌をノートに書いて、楽しんでいた。
と、いうのも、攻略対象たちはあの時以来、俺の元には現れていないからだ。
これでは、接触しようにも接触できないではないか。だから、半ば自棄になって、こんなくだらない替え歌を思い付いたのだ。
しかし、俺も趣味が古い。大昔のヒーローの歌詞をここまで歌える悪役令嬢は俺くらいのものではないだろうか。
そんな事を考えながら、ペンを回していると、授業終了の鐘が校舎全体に鳴り響いていく。
次はお待ちかね、歴史の授業だ。俺が胸を躍らせながら、廊下を歩いていると、突然、背後から声を掛けられた。
俺が背後を振り向くと、そこにはニコニコとした顔のオリビア嬢の姿。
「ねぇ、グレース。あなたは今回の授業ちゃんと聞いていらしたわよね?」
「ええ、勿論です!決して、V○の替え歌なんて考えてませんでしたよ!アッハッハッ」
高笑いの最中に、俺は自分で喋った矛盾に気が付く。
『~なんて歌ってないよ』など、書いていたと自白している様なものではないか。俺は自分の馬鹿さ加減につくづく嫌気が差した。
ひとまずは笑ってその場を取り繕い、歴史の授業が始まる事を告げ、慌てて教室へと向かう。
やはり、意味のわからない魔法理論の授業などより、歴史の授業は聞いていて面白い。
特にこの世界の歴史は聞いた事がない事ばかりなので、どれもこれも斬新で面白い。
他の授業と違い、俺は積極的に手を挙げ、積極的に発言し、先生から高い評価を貰っていた。
ただ、彼女からすれば、『他の授業でも手を挙げてほしい』とのこと。
だが、俺にとって、歴史の授業以外に真面目に取り組むというのは、血を抜かれる麻雀の様に苦痛であり、落ちれば死ぬ鉄骨を渡らされるかの様な苦痛なのである。
テストも同じで、歴史以外のテストを受けるというのは、ギャンブルをした事もない状況で、エスポワール号に乗せられるのと同じ状況なのだ。
俺にとっては絶対不可能な対局をさせられるという事に等しい。
いや、このマンガの主人公ならば、覚醒すれば、打開できるだろうから、俺よりは幾分かはマシかもしれない。
だから、エスポワールに乗り込んだ時の様にならないために、前学期はやむを得ず敵であるサミュエル王子とオリビア嬢に泣き付き、勉強を助けてもらったので、なんとかなったのだが、オリビア嬢の先程の態度を見るに、今期は協力を求めるのは難しいかもしれない。
俺は気を落としながら、唯一、集中できる歴史の授業に耳を傾けていく。
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