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お茶会にて悪役令嬢と語る
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「うわぁ」
思わず感嘆の言葉が口から出てしまう。
流石は公爵家。我が家とは比べ物にならない。壮麗な門を潜り抜けると、そこにはウチの庭の三倍はありそうな庭が広がり、そこにはお菓子やら紅茶やらが載った白いテーブルクロスの掛かった長方形の机が並べられている。
今日は、魔法学園に在籍している全ての令息や令嬢を招いての公爵殿下主催のお茶会。
絶対に失敗は許されない。もし、ここで失敗すれば……。
俺は頭の中に浮かんだ言葉を首を勢いよく横に振って振り落としていく。
最悪の結末は考えたくはない。取り敢えず、ここはこの壮麗で豪華なお茶会を楽しむ事にしよう。
なので、俺は他の令息や令嬢たちとの挨拶もそこそこにお菓子を楽しむ事にした。
スクエア状になっているココアとバターのクッキー。砂糖が掛かった四角いビスケット。真っ白なクリームの掛かったショートケーキ。
どれも美味い。俺は夢中になって食べた。
俺が何個か目かのショートケーキを食べていた時だ。不意に肩を掴まれて、俺は背後を振り向く。
そこに立っていたのは、サミュエル。そう、サミュエル王子だ。
俺は慌ててケーキを飲み込み、頭を下げる。
すると、サミュエル王子はクスクスと笑って、
「フフフ、やはり、キミは面白いなぁ。ほら、まだ唇にケーキが付いたままですよ」
王子は人差し指を俺の唇に当てると、クリームを拭い、それを口に入れる。
そして、優しい声で、
「ありがとう」と囁いて、その場を去っていく。
あれ、どうして、こんなにドキドキするんだろう。俺は前世男で、今も男の記憶に従って行動している筈。
だから、サミュエル王子と接触したとしても、なんの問題もない筈。
それなのに、それなのに、俺は胸の高鳴りを抑えられないでいる。
今ならば、少しだけ、あの性悪女が悪役令嬢から、あの王子を取りたくなったのも分かる。
暫く、惚けていると、目の前にオリビアが現れる。
慌てて頭を下げる俺。だが、オリビア嬢はおかしそうに笑うと、優しい声でケーキを俺によそう。
「どうぞ、我が家のシェフが誇るチョコレートショートケーキです。お召し上がりになってくださいな」
「あ、ありがとうございます」
まさか、公爵令嬢にケーキをよそってもらうとは、俺は萎縮した様子でケーキを受け取り、口いっぱいに頬張る。
口の中いっぱいにチョコレートの甘さが広がり、頬がとろけそうになる。
俺がなんとも言えない幸福感に包まれた後に、彼女は小さく笑いながら、
「それにしても意外でしたわ。まさか、グレースが男に目もくれずに、反対に今の今まで興味を示さなかったお菓子に目を向けるなんて、フフフ、まるで某有名悪役令嬢ものの主人公みたいだわ」
あの女……。やはり、警備員俺に拘束させたのは正解だった。茶会で男漁りをしていたらしい。
そして、この悪役令嬢、なんと言った?
確か、某有名悪役令嬢ものという事はあれをご存知なのか。
俺は聞き返そうとしたが、オリビア嬢はもう既に姿を消していた。
思わず感嘆の言葉が口から出てしまう。
流石は公爵家。我が家とは比べ物にならない。壮麗な門を潜り抜けると、そこにはウチの庭の三倍はありそうな庭が広がり、そこにはお菓子やら紅茶やらが載った白いテーブルクロスの掛かった長方形の机が並べられている。
今日は、魔法学園に在籍している全ての令息や令嬢を招いての公爵殿下主催のお茶会。
絶対に失敗は許されない。もし、ここで失敗すれば……。
俺は頭の中に浮かんだ言葉を首を勢いよく横に振って振り落としていく。
最悪の結末は考えたくはない。取り敢えず、ここはこの壮麗で豪華なお茶会を楽しむ事にしよう。
なので、俺は他の令息や令嬢たちとの挨拶もそこそこにお菓子を楽しむ事にした。
スクエア状になっているココアとバターのクッキー。砂糖が掛かった四角いビスケット。真っ白なクリームの掛かったショートケーキ。
どれも美味い。俺は夢中になって食べた。
俺が何個か目かのショートケーキを食べていた時だ。不意に肩を掴まれて、俺は背後を振り向く。
そこに立っていたのは、サミュエル。そう、サミュエル王子だ。
俺は慌ててケーキを飲み込み、頭を下げる。
すると、サミュエル王子はクスクスと笑って、
「フフフ、やはり、キミは面白いなぁ。ほら、まだ唇にケーキが付いたままですよ」
王子は人差し指を俺の唇に当てると、クリームを拭い、それを口に入れる。
そして、優しい声で、
「ありがとう」と囁いて、その場を去っていく。
あれ、どうして、こんなにドキドキするんだろう。俺は前世男で、今も男の記憶に従って行動している筈。
だから、サミュエル王子と接触したとしても、なんの問題もない筈。
それなのに、それなのに、俺は胸の高鳴りを抑えられないでいる。
今ならば、少しだけ、あの性悪女が悪役令嬢から、あの王子を取りたくなったのも分かる。
暫く、惚けていると、目の前にオリビアが現れる。
慌てて頭を下げる俺。だが、オリビア嬢はおかしそうに笑うと、優しい声でケーキを俺によそう。
「どうぞ、我が家のシェフが誇るチョコレートショートケーキです。お召し上がりになってくださいな」
「あ、ありがとうございます」
まさか、公爵令嬢にケーキをよそってもらうとは、俺は萎縮した様子でケーキを受け取り、口いっぱいに頬張る。
口の中いっぱいにチョコレートの甘さが広がり、頬がとろけそうになる。
俺がなんとも言えない幸福感に包まれた後に、彼女は小さく笑いながら、
「それにしても意外でしたわ。まさか、グレースが男に目もくれずに、反対に今の今まで興味を示さなかったお菓子に目を向けるなんて、フフフ、まるで某有名悪役令嬢ものの主人公みたいだわ」
あの女……。やはり、警備員俺に拘束させたのは正解だった。茶会で男漁りをしていたらしい。
そして、この悪役令嬢、なんと言った?
確か、某有名悪役令嬢ものという事はあれをご存知なのか。
俺は聞き返そうとしたが、オリビア嬢はもう既に姿を消していた。
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