白き翼の天使が支配するーーanother story〜女神の力を受け継ぎし天使はいかにして世界の救済を図るかーー

アンジェロ岩井

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天使王編

モギー・ドルーマンという男について

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本日から多忙のために投稿を一日五本の投稿に変更させていただきます。申し訳ありません。
投稿時間は朝の7時、8時。お昼ちょうど、15時、17時を予定しております。









ポイゾが戻るまでの代役であったはずだと思っていたのだが、私はどうしてポイゾ以上に頼もしいと思うようになっているのだろう。
私にはわからなかった。それは口の悪さ以上に討伐隊の隊員としての腕前が強いせいだろうか、それとも口は悪いけれどもポイゾのような嫌味を言わないせいだろうか。
私には判別がつかなかった。少なくとも今のところは安心して背中を任せられる相手であるのは確かだ。

雄叫びを上げて電気の鎧に翼を生やし、二本の短剣を構えて天使たちの相手に備えた私の背中はブレードとこの男に任せっぱなしである。
私が背中を任せる黒色の着崩した背広と外套にハプタイと呼ばれる旧式のネクタイを巻き、頭には中折れ帽と呼ばれる帽子を被った粗暴な男の武器は長剣であった。

一本ではない。二本の剣だ。それを自在に操るのだ。蟷螂のように繰り出される剣を前にして天使たちも困惑しているらしい。それでも天使の中心人物だと思われるジャッカルのような姿をした怪物は剣を振り上げて、モギーの元へと向かっていく。

モギーは怪物とすれ違う瞬間に突発的に剣を振るったのである。モギーから剣を振るわれる様が私は一瞬わからなかった。
『刹那の見切り』というのは今のような状況を指していうのだろう。ジャッカルのような姿をした怪物から黒い煙が立ち上がっていく。

モギーはそれを見るなり得意げな顔を浮かべて吐き捨てた。

「あばよ、犬の天使やろう」

キザな台詞だ。私はその台詞から昔のテレビで放映されていたような西部劇の台詞を思い起こさせた。
モギーはそれこそ西部劇に登場する銃の達人であるガンマンのように剣を回しながら鞘の中に戻したのであった。

ちなみに今回の件で初めてモギーの働きぶりを見せてもらったのだが、長い間修練を積んでいたという言葉に嘘はなかった。
私も他の仲間たちもみんなモギーの働きぶりに一目を置いていた。

だが、その後の態度で戦いに生じた彼に対する尊敬の念や凄さなどは一瞬で吹き飛んでしまったのである。
彼はあろうことか、マリアをデートに誘い出したのだ。

「なぁ、いいだろ?オレと街でデートしねぇか?おじさんがなんでも買ってあげるぜ」

その言葉だけをとる危ない人物である。いや、デートに誘っている時点でマリアからすれば危ない人物であるというのは間違いないが……。

だが、マリアも負けていない。無言でモギーの足を踏んだのである。
それだけで終わればいいのだが、ここにオットシャックが挟まったことによってまたしても話がややこしくなってしまう。

「待てよ!マリアはオレが狙ってるんだぜッ!手を出すのはやめろよなッ!」

「あぁ、お前マリアとの歳の差を考えてみろよ。お前みたいなガキなんかマリアが相手にするはずねーだろが」

「そうそう。……いや、お前に言われたくねーよッ!テメェ、今すぐにオレと戦いやがれッ!」

「おっ、やるっていうのかい?いいぜ。白い手袋を先に投げたのはお前の方だ」

二人ともマリアをめぐっての決闘になりつつある。一人の女性をめぐっての二人の男性という一昔前の昼ドラにありそうな展開に私は思わず注目してしまっていた。
どちらもチャラ男風なので私としてはあまり関わりたくがないのだが、見物の価値はあるだろう。

私が不適切なことを考えていた時だ。ブレードが二人の間に割って入り、二人の決闘を止めた。
強制的に引き剥がされてしまった二人は不服そうに相手を睨んでいたが、すぐに鼻を鳴らしてそれぞれの馬に乗って王都へと戻っていくのである。

私はその帰りにモギーがティーの馬の近くに馬頭を揃えて、勉強を教えている姿が見えた。会話の内容から聞こえてくるのは歴史の話であったが、ティーはその内容を理解していたらしく首を縦に動かしている。

私も学習になるので聞こえる範囲で耳を傾けていた。モギーの喋り方が上手いというのもあるのだろう。
お陰で帰りの道を退屈せずに帰ることができた。

駐屯所に帰った後は鍛錬である。討伐隊の一員として鍛錬を欠かしてはならないのだ。
その時もモギーが鍛錬に混じってきたのだ。長らく兵隊として活躍していたいうだけのこともあり、どの鍛錬も説明なしでこなせていたのである。

モギーと木剣を斬り結んでいた時だ。その腕の良さに思わず感心させられてしまった。もっとも私は打ち合いの際に敗北して吹き飛ばされてしまったが……。
起き上がる際に手を貸してくれたので悪い人ではないことは確かだ。

もっとも、起き上がった後にもう一度木剣で叩き付けられたのでいい人でないのも確かである。
私はいよいよモギーという人物の人柄が掴めなくなってしまった。
私が傷心の思いで夕食まで過ごしていると、目の前の席に自分の分の夕食が載った盆を持ったモギーが座ってきた。

「よぉ、しんみりとした顔をしてるなぁ」

「誰のせいだと」

「あれは弱いお前が悪いんだろうが、もっと鍛えろ!オレ如きにあんなに負けてたら到底天使どもなんぞ殺せねぇぞ!」

そうやって豪快に笑いながらモギーは今日の夕食のメインディッシュである白身魚のフライに齧り付く。
その後にパンを齧り、スープを啜っていく。最後にグリーンサラダを食して彼の夕食は終わりだ。
夕食を食べ終えたモギーは私をニヤニヤと笑いながら見つめていた。

「な、なんですか」

「いやぁ、食うの遅いなと思ってさ」

余計なお世話だ。私は思わず苛立ってしまった。こんなことならば裏に目的があっても表向きは好青年を装っていたジョージの方がマシであった。
私が不機嫌な態度を露わにしてスープを啜っていると、目の前で座っている男が頬杖を突きながらニヤニヤと笑っている。

ポイゾを思わせるような陰湿な笑顔は不愉快極まりなかった。お陰で食事が不味くなってしまったのではないか。
もし、可能であるのならばモギーには夕食を弁償してもらいたものである。
そんなことを考えながら私は夕食を終了し、自室へと向かった。

そしてベッドの側にあったサイドテーブルから適当な小説を取って気分転換をはかる。
読んでいたのはマリアが王位争奪の計画の際に仲間たちを決起させるために比喩に使った小説『惨殺騎士ジミー・ウォーカー』である。

老若男女に受け入れられている人気小説である。アウトローな主人公でありながらも悪い相手のみしか殺さないことが人気の秘訣であった。
私は前の世界で似たような時代劇が思い出し、懐かしさからこの前街に行った時に手に取ってみたのだがなかなか面白い。

私は紅茶を啜りながらページをめくっていく。
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