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待ち時間は天国、本番は地獄……てか、普通逆じゃあない!?
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最初は天国、後は地獄だ。と、言うのも待ち時間は三人であるアニメの話題で盛り上がれたのだが、その時間が終わった後には、この遊園地の中で一番、激しいジェットコースターに乗ってしまったからだ。
正直に言えば、胸が激しく脈を打ち、半ば吐き気に近いものが込み上げてきた事しか覚えていない。
俺の前の席で親父と涼子が楽しげにキャーキャーと叫んで、楽しげな表情を浮かべていたが、こんなアトラクションの何処が楽しいのか分からない。
ようやく、降りられた時、俺は廃人のように虚げであったらしく、親父と涼子が俺に肩を貸し、ベンチに座らせて、ようやく、俺を帰らせてくれたらしい。
「無理なら、無理と言えばよかっただろう?」
親父は右手で、眉間を抑えながら、溜息を吐く。
「ダメだよ。誠太郎さん。あたし、あのゴーカートの時からずっと言ってたのに、彼、付いてくるって聞かなかったんだもん」
「しょうがない。午後からは元樹くんと行動しなさい」
「ま、待ってくれ!オレはちゃんとーー」
「ダメだ。お前の心臓に悪い事はさせられん」
と、言うと、親父は強い意志を宿した両目で俺を射抜く。
鉄よりも固い意志、例えるのならば『鋼の意志』をもって臨まれれば、俺としても敵うところではない。
俺はやむを得ずに、親父の提案を了承した。
暫く、ベンチの上で休んだ後に、メリーゴーランドの前に行く事になった。
タイミングの良い事に、メリーゴーランドの前に着くのと同時に、お昼になったのだという。
更にタイミングの良い事に、元樹くんが大きく手を振って現れた。
「朝方ぶり~どうだった?」
「あぁ、楽しかったよ。絶叫系も悪くはないもんだな」
「嘘つけ、ジェットコースター無理なくせに」
と、俺は新しいお袋に肘で突かれてしまう。
それを見て、笑いを漏らす元樹くん。
その顔はとても愛らしい。某有名ゲームのキャラクターならば、思わず「お持ち帰りィィィィ~!!」と叫んでしまうだろう。
それくらい、歯に噛んだ笑いを見せる元樹くんは可愛かった。彼を見ていると、男の俺でも抱きしめたくなる。
「あの、ぼくの顔に何か付いてる?」
と、元樹くんが尋ねる。どうやら、彼の可愛さに目が眩んで口元が緩んでしまっていたらしい。
「い、いや、なんでもないよ!それより、メシにしよーぜ、メシに!」
「うん、その時に三人で何をしたのか聞かせてね。ボクは母さんから、桐生さんと姉さんの事を聞くように頼まれてるから」
最後の最後で、元樹くんは声と瞳とを凄ませる。
それを見て、涼子は顔を青ざめ、俺は堪らずに両肩を寄せてしまう。
正直に言えば、胸が激しく脈を打ち、半ば吐き気に近いものが込み上げてきた事しか覚えていない。
俺の前の席で親父と涼子が楽しげにキャーキャーと叫んで、楽しげな表情を浮かべていたが、こんなアトラクションの何処が楽しいのか分からない。
ようやく、降りられた時、俺は廃人のように虚げであったらしく、親父と涼子が俺に肩を貸し、ベンチに座らせて、ようやく、俺を帰らせてくれたらしい。
「無理なら、無理と言えばよかっただろう?」
親父は右手で、眉間を抑えながら、溜息を吐く。
「ダメだよ。誠太郎さん。あたし、あのゴーカートの時からずっと言ってたのに、彼、付いてくるって聞かなかったんだもん」
「しょうがない。午後からは元樹くんと行動しなさい」
「ま、待ってくれ!オレはちゃんとーー」
「ダメだ。お前の心臓に悪い事はさせられん」
と、言うと、親父は強い意志を宿した両目で俺を射抜く。
鉄よりも固い意志、例えるのならば『鋼の意志』をもって臨まれれば、俺としても敵うところではない。
俺はやむを得ずに、親父の提案を了承した。
暫く、ベンチの上で休んだ後に、メリーゴーランドの前に行く事になった。
タイミングの良い事に、メリーゴーランドの前に着くのと同時に、お昼になったのだという。
更にタイミングの良い事に、元樹くんが大きく手を振って現れた。
「朝方ぶり~どうだった?」
「あぁ、楽しかったよ。絶叫系も悪くはないもんだな」
「嘘つけ、ジェットコースター無理なくせに」
と、俺は新しいお袋に肘で突かれてしまう。
それを見て、笑いを漏らす元樹くん。
その顔はとても愛らしい。某有名ゲームのキャラクターならば、思わず「お持ち帰りィィィィ~!!」と叫んでしまうだろう。
それくらい、歯に噛んだ笑いを見せる元樹くんは可愛かった。彼を見ていると、男の俺でも抱きしめたくなる。
「あの、ぼくの顔に何か付いてる?」
と、元樹くんが尋ねる。どうやら、彼の可愛さに目が眩んで口元が緩んでしまっていたらしい。
「い、いや、なんでもないよ!それより、メシにしよーぜ、メシに!」
「うん、その時に三人で何をしたのか聞かせてね。ボクは母さんから、桐生さんと姉さんの事を聞くように頼まれてるから」
最後の最後で、元樹くんは声と瞳とを凄ませる。
それを見て、涼子は顔を青ざめ、俺は堪らずに両肩を寄せてしまう。
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