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弟現る!
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彼が来てからというものの、一週間が過ぎるのが待ち遠しくて堪らない。
授業を受けている間も、部室で黙々と本を読んでいる時も、ウキウキは止まらない。
なにせ、あの弟が来るのだ。間違いなく、イチャコラは難しくなるだろう。
少なくとも、あの親父も少しは大人しくするだろう。
すると、自然と唇の端が吊り上がっていたのか、後ろの席の山杉に訝しめられた。
シャーペンで背中を突かれて、半ば強制的に背後を向かされた俺は適当な言い訳を口にし、その場を取り繕う。
部室でも同じ態度であったのでその態度を少しばかり注意されたが、俺はやんわりとそれを交わしていく。
後日聞いた話だが、ニタニタと笑う俺の姿はクラスの中でも評判になっていたらしい。
そんなこんなで待ち詫びていた週末。
親父と涼子は朝早くから、弁当やら何やらを用意して、アミューズメントパークに行く準備を楽しんでいたが、その後に地獄が待ち構えているなど想像もしていないに違いないだろう。
またしても、自然と口が自然と「へ」の字に歪んでいく。
俺の愉快な気持ちが絶頂へと達した時、地獄の死者の来訪を告げるチャイムの音が鳴り響く。
俺は自身が放った刺客を迎えにいく。
扉を開けると、そこには巨大なリュックを抱えた一人の可愛らしい少年が立っていた。
「来たよ。寝袋も、着替えも、お土産もこの中にちゃんとあるよ」
お土産?お土産とはどういう事だろう。俺が首を傾げていると、彼は無言でそれまで背負っていたリュックサックを地面の上に下ろし、そこから饅頭の箱を取り出す。
「これ、父さんが桐生さんの家でみなさんと食べなさいって……」
俺は元樹くんから差し出された饅頭の箱を両手で受け取ると、彼を家に招き入れていく。
土産を受け取った喜びとイチャラブカップルを絶望のどん底に落とせるという二つの喜びに沸いていた、俺は饅頭を胸に抱えながら、台所へと向かう。
台所では新婚二人が楽しげにバスケットに弁当を詰めていたが、俺と俺の背後からくっ付いている少年を見て、大きく口を開けていた。
二人は暫く、微動だにせずに、俺の背後から現れた、元樹くんを見つめていたが、そのままではいけないと感じたのか、新妻の涼子が声を荒げて、
「も、元樹!あんたなんでいるの!?あんたが来るのは夜の筈でしょ!?」
「いやさぁ~元樹くんとは彼がバイトしている、ラーメン屋でばったりと会ってね。そこで、俺がたまたま会ったから、意気投合して、遊園地に誘ったのさ」
何故か、黙っていた元樹くんの代わりに、答えた俺に対し、涼子は悔しそうに拳を震わせている。
やはり、親父とイチャつくだけだったらしいが、そうは問屋が卸さない。
俺が自慢げに腕を組んで、二人を見下ろしていると、元樹くんはまたしても、リュックサックを床に下ろし、そこから彼のものと思われる長財布を取り出す。
「お金なら、ある……だから、ぼくも連れて行って」
と、親父を睨む。親父は元樹くんの剣幕に耐えきれず、何度も何度も頭を下げていく。
授業を受けている間も、部室で黙々と本を読んでいる時も、ウキウキは止まらない。
なにせ、あの弟が来るのだ。間違いなく、イチャコラは難しくなるだろう。
少なくとも、あの親父も少しは大人しくするだろう。
すると、自然と唇の端が吊り上がっていたのか、後ろの席の山杉に訝しめられた。
シャーペンで背中を突かれて、半ば強制的に背後を向かされた俺は適当な言い訳を口にし、その場を取り繕う。
部室でも同じ態度であったのでその態度を少しばかり注意されたが、俺はやんわりとそれを交わしていく。
後日聞いた話だが、ニタニタと笑う俺の姿はクラスの中でも評判になっていたらしい。
そんなこんなで待ち詫びていた週末。
親父と涼子は朝早くから、弁当やら何やらを用意して、アミューズメントパークに行く準備を楽しんでいたが、その後に地獄が待ち構えているなど想像もしていないに違いないだろう。
またしても、自然と口が自然と「へ」の字に歪んでいく。
俺の愉快な気持ちが絶頂へと達した時、地獄の死者の来訪を告げるチャイムの音が鳴り響く。
俺は自身が放った刺客を迎えにいく。
扉を開けると、そこには巨大なリュックを抱えた一人の可愛らしい少年が立っていた。
「来たよ。寝袋も、着替えも、お土産もこの中にちゃんとあるよ」
お土産?お土産とはどういう事だろう。俺が首を傾げていると、彼は無言でそれまで背負っていたリュックサックを地面の上に下ろし、そこから饅頭の箱を取り出す。
「これ、父さんが桐生さんの家でみなさんと食べなさいって……」
俺は元樹くんから差し出された饅頭の箱を両手で受け取ると、彼を家に招き入れていく。
土産を受け取った喜びとイチャラブカップルを絶望のどん底に落とせるという二つの喜びに沸いていた、俺は饅頭を胸に抱えながら、台所へと向かう。
台所では新婚二人が楽しげにバスケットに弁当を詰めていたが、俺と俺の背後からくっ付いている少年を見て、大きく口を開けていた。
二人は暫く、微動だにせずに、俺の背後から現れた、元樹くんを見つめていたが、そのままではいけないと感じたのか、新妻の涼子が声を荒げて、
「も、元樹!あんたなんでいるの!?あんたが来るのは夜の筈でしょ!?」
「いやさぁ~元樹くんとは彼がバイトしている、ラーメン屋でばったりと会ってね。そこで、俺がたまたま会ったから、意気投合して、遊園地に誘ったのさ」
何故か、黙っていた元樹くんの代わりに、答えた俺に対し、涼子は悔しそうに拳を震わせている。
やはり、親父とイチャつくだけだったらしいが、そうは問屋が卸さない。
俺が自慢げに腕を組んで、二人を見下ろしていると、元樹くんはまたしても、リュックサックを床に下ろし、そこから彼のものと思われる長財布を取り出す。
「お金なら、ある……だから、ぼくも連れて行って」
と、親父を睨む。親父は元樹くんの剣幕に耐えきれず、何度も何度も頭を下げていく。
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