337 / 365
第七部『エイジェント・オブ・クリミナル』
終わるのはお前か、オレかーその17
しおりを挟む
マリナと大樹寺雫との討論会はまず、どちらの側にも付かない局のアナウンサー両陣営の紹介から始まっていく。
アナウンサーはテレビカメラの前、討論のために用意れた大型の円卓の机の前でマイクを持ちながら、パネルに大樹寺雫とバプテスト・アナベル教の大まかな習わしと現在の活動状況。そして、現在彼女らが置かれている教団の立場を述べていく。
そして、紹介が終わるのと同時に討論のために用意された部屋の奥に存在する自動扉が開いて彼女が姿を表す。
若いどころか、幼いという印象さえ与える教祖の姿は少し前に裁判に出廷した時と同様。全く変わらない。あくまでも10代の少女であるから、見た目にはあまり変化がないのは当然と言えば当然なのだが、それでもあまりの容貌の変わらなさに司会の人は思わず感嘆の声を挙げていく。
討論のために中央に用意された円卓の机の左側に案内され、彼女は左側の椅子の中央に腰を下ろす。
そして、その側面に教祖を守るために彼女の側近の二人が腰を下ろす。
三名が座り終えたのを確認すると、司会のアナウンサーはマリヤ・カレニーナの紹介を始め、同時に彼女が日本を訪れた目的を話していく。
そして、一通り司会の男性が説明を終えると、音楽と共に荘厳な顔付きの彼女が扉を潜って姿を表す。
彼女は下唇を噛み締め、同時に鋭い瞳で席に悠々と腰を掛ける大樹寺を睨む。
だが、大樹寺は睨まれたとしても澄ました顔でやり過ごす。
彼女の煽りの性質は天性のものであるに違いない。
マリヤは落ち着いて座った大樹寺とは乱暴な様子で座っていく。
そして、彼女に続いて被害者の会の代表である孫を失った老婆と同じく被害者の会の役員であり、現役の神父である男が共に腰を下ろす。
この時、教祖の大樹寺は気にしないと言わんばかりの表情で三人を見つめていたが、彼女の信徒は教祖とは正反対の感情を有していたらしい。
特に侍女の藩金蓮は教祖の敵である三人に対して激しい憎悪を向けていく。
そうした中で公開テレビ討論会は始まっていく。
開口一番にマリヤは大樹寺のアキレス腱とも呼べる箇所を持ち出して彼女を攻撃していく。
「ミス・大樹寺!あなたは半年ほど前に自身の所有する教団のビルを爆破した疑いが掛かっていますね!?その上、それに乗じたテロまで画策していたとか!これはどういう事なんですか!」
マリヤに続いて同調するのはその事件で孫を失った老婆。彼女はすすり泣きを上げながら、大樹寺にそしてテレビカメラの前の視聴者に対して訴え掛けていく。
「あたしの孫はこいつの指示による爆破テロで亡くなりました!許す事はできません!孫はまだ大学を出たばかりだったんですよ!やっと、やっと……やっと希望を持てた所だったんです!全てはこいつのせいで……ッ!」
老婆はそう言って澄まし顔の大樹寺に人差し指を突き付けて叫ぶ。
前半こそ曇っていたものの、後半では大樹寺への怒りが勝ったのか、声を震わせていた。若い孫を失った老婆はこれを利用して大樹寺の過去の犯罪を引っ張り出す。
そう目論んでいたのだろうが、大樹寺の出した予想外の返答に彼女は思わず言葉を詰まらせてしまう。
なんと、彼女は丁寧に頭を下げてから、厳かな様子で謝罪の言葉を述べたのだった。
「申し訳ありません。全て私の監督責任です。吉田稔とその一派を止められなかったわたしの責任……彼らの暴走を防げなかった事については心の底からお詫び申し上げます」
老婆が言葉を詰まらせたのは唖然としたからではない。むしろ、その逆。
怒りからくる感情で胸がいっぱいになり、何を言えば良いのか分からなくなったのだ。
結局、その後は三人で教義の矛盾を突こうと試みたのだが、三人がどのような指摘をしたとしても大樹寺が的確な返答を送るのだ。
こうなってしまってはもうお手上げ。マリヤは敵のあまりの強大さに思わず表情を曇らせてしまう。
まるで、巨人の前に挑む小人。それが今の彼女の心境に近い。
だが、それでも戦わねばなるまい。そのために自身ははるばるロシアからやって来たのだから。
彼女は今度は話題を変え、大樹寺の贅沢問題について踏み込む。
「ミス・大樹寺。あなたの弟子は全て粗食を口にしているそうですね。大人も子供も栄養価の少ない食事を……」
「ええ、そうです。食事とて神様に近付くための修行の一環ですから」
「では、あなたの食事は?」
「信者と同じものを」
大樹寺は平然とした顔で言い放つ。その顔には迷いはない。マリヤの両目に映るのは堂々とした真実を喋る者の瞳。
だが、マリヤは知っている。これが真実ではない事を。
彼女は週刊誌が報じていたあるネタを伝えていく。彼女が掴んだ中では一連の事件に次ぐ第二のスキャンダル。
彼女はここでそれを持ち出していく。
「三年前に日本を騒がせた宇宙究明学会の教祖、昌原道明は信者には粗食を強いて自身だけ美味しいものを貪り食っていたという証拠がありますが、大樹寺は三年前に日本を蝕んだ教祖と同じ事をしているのです!」
マリヤの訴えにスタッフ一同も動揺していく。そして、ロシアの聖女から続く言葉を待っていたが、その代わりに大樹寺がその答えに答えていく。
「……マスコミというのは昔からあることない事を書いて面白がるものです。第一、それが本物だという裏付けはありますか?わたしが贅沢をしているという証拠は?」
マリヤはその言葉に黙ってしまう。確かに自身が出した証拠はあくまでも週刊誌。確固たる証拠は皆無。
言葉のない聖女に代わり、彼女はロシア人にも分かりやすい比喩を使って話を始めていく。
「19世紀のロシア帝国の悲劇を忘れましたか?かつてのニコライ二世は血に飢えた暴君の様に伝えられていましたが、いざ、外国人の研究者がそれを紐解けば、それは真っ赤な嘘。実際は優しい父であり、穏やかな皇帝であったらしいです。つまり、何を言いたいのか……これはマスコミと警察によるでっち上げなんですよ。わたしがそんな人物だったら、バプテスト・アナベル教の弾圧も容易ですからね」
そう言って、平然と話す彼女の姿がマリヤには到底、信じられない。
彼女の目には人ではなく悪魔が喋ってるように見えてしまう。それくらい、彼女話は口が達者であったからだ。
その後も熱を帯びた討論会は続いたが、彼女の弟子が声を荒げた事はあっても、彼女自身は声を上げない。そんな状況が続く中で彼女は苦し紛れに叫ぶ。
大樹寺雫をかつてのドイツの独裁者に擬えた比喩表現を。
だが、彼女は取るに足らんと言わんばかりに微笑む。
そして、反論を返して局が用意した紅茶を啜る。
もう一度、心からの叫びを返すものの、彼女は意に返さない。
どうすれば良いのだろう。この不死身の怪物にどうすれば打撃を与えられるのだろう。
彼女が机の上でバタバタと足を動かしていると不意に首筋に冷たいものが当たっている事に気が付く。
一体、何が起きたのだろう。彼女の困惑とは裏腹にまわりでは悲鳴が轟く。
首を傾げる彼女が事態の重さを把握したのは耳に囁かれた声を聞いた時だ。
「……動くな。動くとあんたのその着せ替え人形みてーに綺麗な首が消し飛ぶぜ」
どうやら、自分は脅されているだろう。彼女はあくまでも落ち着いた様子で問う。
「あなたは一体、誰なの?」
彼女の背後で刀を突き付けている相手はクックっと笑って、
「悪いが、オレの名前は明かせんな。まぁ、でもそれじゃあ不便だから、おれの事はジョン・スミスとでも思ってくれればいい」
男はいや、ジョンは刀を突き付けて不気味な笑顔を浮かべていく。
怖い、助けて。マリヤは両目を瞑り、懸命に神に向かって助けを呼ぶ。
すると、例の赤い肌の刑事が扉を蹴って現れる。そして、拳銃を突き付けていく。
だが、相変わらず男は笑って、
「いいだろうぜ、孝太郎。ここで勝負をつけてやろうじゃあねぇか」
と、マリヤを突き飛ばし、仕込刀を持って彼に向かって斬り掛かっていく。
すいません。本日は投稿しないつもりでしたが、予想外に時間が空いたので更新できました。ご迷惑をかけた事をお詫び致します。
アナウンサーはテレビカメラの前、討論のために用意れた大型の円卓の机の前でマイクを持ちながら、パネルに大樹寺雫とバプテスト・アナベル教の大まかな習わしと現在の活動状況。そして、現在彼女らが置かれている教団の立場を述べていく。
そして、紹介が終わるのと同時に討論のために用意された部屋の奥に存在する自動扉が開いて彼女が姿を表す。
若いどころか、幼いという印象さえ与える教祖の姿は少し前に裁判に出廷した時と同様。全く変わらない。あくまでも10代の少女であるから、見た目にはあまり変化がないのは当然と言えば当然なのだが、それでもあまりの容貌の変わらなさに司会の人は思わず感嘆の声を挙げていく。
討論のために中央に用意された円卓の机の左側に案内され、彼女は左側の椅子の中央に腰を下ろす。
そして、その側面に教祖を守るために彼女の側近の二人が腰を下ろす。
三名が座り終えたのを確認すると、司会のアナウンサーはマリヤ・カレニーナの紹介を始め、同時に彼女が日本を訪れた目的を話していく。
そして、一通り司会の男性が説明を終えると、音楽と共に荘厳な顔付きの彼女が扉を潜って姿を表す。
彼女は下唇を噛み締め、同時に鋭い瞳で席に悠々と腰を掛ける大樹寺を睨む。
だが、大樹寺は睨まれたとしても澄ました顔でやり過ごす。
彼女の煽りの性質は天性のものであるに違いない。
マリヤは落ち着いて座った大樹寺とは乱暴な様子で座っていく。
そして、彼女に続いて被害者の会の代表である孫を失った老婆と同じく被害者の会の役員であり、現役の神父である男が共に腰を下ろす。
この時、教祖の大樹寺は気にしないと言わんばかりの表情で三人を見つめていたが、彼女の信徒は教祖とは正反対の感情を有していたらしい。
特に侍女の藩金蓮は教祖の敵である三人に対して激しい憎悪を向けていく。
そうした中で公開テレビ討論会は始まっていく。
開口一番にマリヤは大樹寺のアキレス腱とも呼べる箇所を持ち出して彼女を攻撃していく。
「ミス・大樹寺!あなたは半年ほど前に自身の所有する教団のビルを爆破した疑いが掛かっていますね!?その上、それに乗じたテロまで画策していたとか!これはどういう事なんですか!」
マリヤに続いて同調するのはその事件で孫を失った老婆。彼女はすすり泣きを上げながら、大樹寺にそしてテレビカメラの前の視聴者に対して訴え掛けていく。
「あたしの孫はこいつの指示による爆破テロで亡くなりました!許す事はできません!孫はまだ大学を出たばかりだったんですよ!やっと、やっと……やっと希望を持てた所だったんです!全てはこいつのせいで……ッ!」
老婆はそう言って澄まし顔の大樹寺に人差し指を突き付けて叫ぶ。
前半こそ曇っていたものの、後半では大樹寺への怒りが勝ったのか、声を震わせていた。若い孫を失った老婆はこれを利用して大樹寺の過去の犯罪を引っ張り出す。
そう目論んでいたのだろうが、大樹寺の出した予想外の返答に彼女は思わず言葉を詰まらせてしまう。
なんと、彼女は丁寧に頭を下げてから、厳かな様子で謝罪の言葉を述べたのだった。
「申し訳ありません。全て私の監督責任です。吉田稔とその一派を止められなかったわたしの責任……彼らの暴走を防げなかった事については心の底からお詫び申し上げます」
老婆が言葉を詰まらせたのは唖然としたからではない。むしろ、その逆。
怒りからくる感情で胸がいっぱいになり、何を言えば良いのか分からなくなったのだ。
結局、その後は三人で教義の矛盾を突こうと試みたのだが、三人がどのような指摘をしたとしても大樹寺が的確な返答を送るのだ。
こうなってしまってはもうお手上げ。マリヤは敵のあまりの強大さに思わず表情を曇らせてしまう。
まるで、巨人の前に挑む小人。それが今の彼女の心境に近い。
だが、それでも戦わねばなるまい。そのために自身ははるばるロシアからやって来たのだから。
彼女は今度は話題を変え、大樹寺の贅沢問題について踏み込む。
「ミス・大樹寺。あなたの弟子は全て粗食を口にしているそうですね。大人も子供も栄養価の少ない食事を……」
「ええ、そうです。食事とて神様に近付くための修行の一環ですから」
「では、あなたの食事は?」
「信者と同じものを」
大樹寺は平然とした顔で言い放つ。その顔には迷いはない。マリヤの両目に映るのは堂々とした真実を喋る者の瞳。
だが、マリヤは知っている。これが真実ではない事を。
彼女は週刊誌が報じていたあるネタを伝えていく。彼女が掴んだ中では一連の事件に次ぐ第二のスキャンダル。
彼女はここでそれを持ち出していく。
「三年前に日本を騒がせた宇宙究明学会の教祖、昌原道明は信者には粗食を強いて自身だけ美味しいものを貪り食っていたという証拠がありますが、大樹寺は三年前に日本を蝕んだ教祖と同じ事をしているのです!」
マリヤの訴えにスタッフ一同も動揺していく。そして、ロシアの聖女から続く言葉を待っていたが、その代わりに大樹寺がその答えに答えていく。
「……マスコミというのは昔からあることない事を書いて面白がるものです。第一、それが本物だという裏付けはありますか?わたしが贅沢をしているという証拠は?」
マリヤはその言葉に黙ってしまう。確かに自身が出した証拠はあくまでも週刊誌。確固たる証拠は皆無。
言葉のない聖女に代わり、彼女はロシア人にも分かりやすい比喩を使って話を始めていく。
「19世紀のロシア帝国の悲劇を忘れましたか?かつてのニコライ二世は血に飢えた暴君の様に伝えられていましたが、いざ、外国人の研究者がそれを紐解けば、それは真っ赤な嘘。実際は優しい父であり、穏やかな皇帝であったらしいです。つまり、何を言いたいのか……これはマスコミと警察によるでっち上げなんですよ。わたしがそんな人物だったら、バプテスト・アナベル教の弾圧も容易ですからね」
そう言って、平然と話す彼女の姿がマリヤには到底、信じられない。
彼女の目には人ではなく悪魔が喋ってるように見えてしまう。それくらい、彼女話は口が達者であったからだ。
その後も熱を帯びた討論会は続いたが、彼女の弟子が声を荒げた事はあっても、彼女自身は声を上げない。そんな状況が続く中で彼女は苦し紛れに叫ぶ。
大樹寺雫をかつてのドイツの独裁者に擬えた比喩表現を。
だが、彼女は取るに足らんと言わんばかりに微笑む。
そして、反論を返して局が用意した紅茶を啜る。
もう一度、心からの叫びを返すものの、彼女は意に返さない。
どうすれば良いのだろう。この不死身の怪物にどうすれば打撃を与えられるのだろう。
彼女が机の上でバタバタと足を動かしていると不意に首筋に冷たいものが当たっている事に気が付く。
一体、何が起きたのだろう。彼女の困惑とは裏腹にまわりでは悲鳴が轟く。
首を傾げる彼女が事態の重さを把握したのは耳に囁かれた声を聞いた時だ。
「……動くな。動くとあんたのその着せ替え人形みてーに綺麗な首が消し飛ぶぜ」
どうやら、自分は脅されているだろう。彼女はあくまでも落ち着いた様子で問う。
「あなたは一体、誰なの?」
彼女の背後で刀を突き付けている相手はクックっと笑って、
「悪いが、オレの名前は明かせんな。まぁ、でもそれじゃあ不便だから、おれの事はジョン・スミスとでも思ってくれればいい」
男はいや、ジョンは刀を突き付けて不気味な笑顔を浮かべていく。
怖い、助けて。マリヤは両目を瞑り、懸命に神に向かって助けを呼ぶ。
すると、例の赤い肌の刑事が扉を蹴って現れる。そして、拳銃を突き付けていく。
だが、相変わらず男は笑って、
「いいだろうぜ、孝太郎。ここで勝負をつけてやろうじゃあねぇか」
と、マリヤを突き飛ばし、仕込刀を持って彼に向かって斬り掛かっていく。
すいません。本日は投稿しないつもりでしたが、予想外に時間が空いたので更新できました。ご迷惑をかけた事をお詫び致します。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-
砂風
ファンタジー
とある出来事により悲しんでいた男子高校生の杉井豊花は、ある日突然、異能力者になった。能力の内容は14歳の美少女になるというもの。
最初こそ願ったり叶ったりだと嬉々としていた豊花だが、様々な出来事が豊花の前に立ち塞がる。
女ならではの悩み、異能力者となったことによる弊害、忍び寄る裏社会の恐怖、命の奪い合いにまで遭遇してしまう。些細な問題から大きな事件まで次々に巻き込まれることになった豊花は、否が応にも解決を余儀なくされる。
豊花はまだ知らない。己の異能力が女体化以外にもあることを。戦える力があることを。
戦える力を手にした豊花は、次第に異能力の世界へと身を浸していく……。
※ローファンタジーです。バトル要素あり、犯罪要素あり、百合要素あり、薬物要素あり。苦手な方はご注意ください(でも読んでくださいお願いします)。
※※本作は『前代未聞の異能力者~自ら望んだ女体化だけど、もう無理!~』を横読みに変更し空行を空けた作品になります。こちらのほうは最新話まで随時投稿予定です。
底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~
阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。
転生した先は俺がやっていたゲームの世界。
前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。
だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……!
そんなとき、街が魔獣に襲撃される。
迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。
だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。
平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。
だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。
隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。
創世樹
mk-2
SF
それは、生命の在り方。創世の大樹の物語。
はるか遠く、遠くの宇宙にある星。その星に生命をもたらした一本の大樹があった。
冒険者エリーたちが道中で出逢う神秘に満ちた少年、世界制覇を目論む軍事国家、そして世界の何処かにある『大樹』をめぐる壮大な闘争と錯綜する思惑。
この星の生命は何処から来たのか? 星に住む種の存続は?
『鬼』の力を宿す女・エリー一行が果てなき闘いへ身を投じていく冒険活劇!
80日間宇宙一周
田代剛大
SF
――厄介な侵略者は、突然宇宙の果てからやってくる。
高度な知性を持つ異星人が巨大な宇宙船に乗って襲来し、その都市で一番高いビルを狙って、挨拶がわりの一発をお見舞いする。
SF映画でお馴染みのシーンだ。
彼らは冷酷非情かつ残忍で(そして目立ちたがりだ)、強大な科学力を武器に私たちの日常を脅かす。
その所業は悪そのものと言ってもいい。
だが、敵に知性や感情があり、その行為が侵略戦争ならば、場合によっては侵略者と交渉の余地はあるのではないだろうか。
戦争とは外交手段の一つだという人がいる。
これまでの戦争でも、宣戦布告もせずに敵国を奇襲した卑劣な独裁者はたくさんいたのだから、戦況によっては、ひとつのテーブルを囲み、恐るべき侵略者と講和会議をすることだって可能なはずだ。
それは現実離れした希望的観測だろうか?
☆
では現実の話をしよう。
長身で色白の美人だが、彼女はスーパーモデルでもハリウッド女優でもない。
冥王星宇宙軍のミグ・チオルコフスカヤ伍長(31)は、太陽系の果てで半年に4回ほど実際に侵略者と戦っている百戦錬磨の軍人だ。
彼女がエッジワースカイパーベルトという場所で、相手にしている敵のパワーは強烈だ。
彼らには、たった一つで全人類を73回分絶滅させるだけの威力があり、さらにその数は確認されているだけでも2千を超える。
最近の観測では、その百倍は存在するらしい。
現実の敵は絶望的に強く、さらに強すぎて私たちのような小さな存在など、認識すらしていないのだ。
私たちが大地を踏みしめるとき、膨大な数の微生物がその足の下敷きになって死んだと仮定しよう。
果たしてそれは、人類の土壌生物に対する侵略戦争と言えるのだろうか?
攻撃をするものと、されるものとのあいだに、圧倒的なスケールの差が存在する場合、それは戦争とか外交とか、そういった次元の話ではなくなる。
それは不条理な事故であり、理由のない大量虐殺なのだ。
☆
だから、冥王星の軍人たちは、決まってこうつぶやく。
もしもこれが“戦争”であったらどんなに素晴らしいことか、と。
たとえ侵略者が冷酷非情で残忍だろうと、言葉が通じるならば、終戦の可能性は0ではない。
だが残念ながら、この敵に決して言葉は通じない。
彼らは目的もなく人を殺す。
彼女たちが戦っている相手は、小惑星――ただの石と氷の塊だ。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
テイルウィンド
双子烏丸
SF
人類が宇宙に広く進出した、宇宙時代。星から星へと宇宙船が常に飛び交う世の中で、流行した競技、それは小型宇宙船による、レース競技だ。これは、その宇宙レースの色々と幼いショt……いや、優秀で若い宇宙レーサー、フウマ・オイカゼと、その他愉快なレーサーと登場人物が織りなす、SFレース活劇である!
銀河皇帝のいない八月
沙月Q
SF
女子高生が銀河皇帝に?
一夏の宇宙冒険を描く青春スペースオペラ。
宇宙を支配する銀河帝国が地球に襲来。
軍団を率いる銀河皇帝は堅固なシールドに守られていたが、何故か弓道部員の女子高生、遠藤アサトが放った一本の矢により射殺いころされてしまう。
しかも〈法典〉の定めによってアサトが皇位継承者たる権利を得たことで帝国は騒然となる。
皇帝を守る〈メタトルーパー〉の少年ネープと共に、即位のため銀河帝国へ向かったアサトは、皇帝一族の本拠地である惑星〈鏡夢カガム〉に辿り着く。
そこにはアサトの即位を阻まんとする皇帝の姉、レディ・ユリイラが待ち受けていた。
果たしてアサトは銀河皇帝の座に着くことが出来るのか?
そして、全ての鍵を握る謎の鉱物生命体〈星百合スター・リリィ〉とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる