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第七部『エイジェント・オブ・クリミナル』
終わるのはお前か、オレかーその③
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聡子は壮絶な痛みに襲われていた。全身を襲う痛みのために彼女は立つ事も出来ない。
全身が痛覚に見舞われており、先程の絵里子の説明にもあった通り、少し動くだけでも体がズキズキと痛む。
このまま全身が動かないのではないか。聡子がそう考えていた時だ。先程の男がもう一度、包丁を振り上げて襲い掛かってくる。
刀を振り回そうにも体が動かない。聡子は覚悟して両目を瞑ったのだが……。
「やめなさい!」
なんと、絵里子が銃を撃って聡子を庇いに入っただけではなく、彼女が持っていた刀を手に取り、桜井貢の攻撃を防いだのだった。
予想だにしない出来事。狐に包まれた思いというのは今の様な状況の事を言うのだろう。
聡子はそう思わずにはいられない。だが、絵里子の刀を持つ手が震えている事や構え方が自身や孝太郎ならば持ち方であった事から彼女が剣を扱えないのは明白な事実。
聡子は慌てて駆け付けようしたが、体が思う通りに動かない。ここまで悔しい事があるだろうか。
上司が仲間が命がけで戦っているというのに応援に駆け付ける事も出来ないなんて……。
聡子は無意識のうちに歯をギリギリと鳴らす。同時に口元に大きな痛みが生じていく。
聡子は本当に自分が痛覚というものに支配されているというのを理解した。
だが、このまま上司を見殺しにはできぬ。
聡子がなんとか彼女の前に割り込もうとした時だ。突然、目の前の女性から大きな悲鳴と刀を地面に落とした際に聞こえる重い音が耳に届く。
何事かと聡子が目を見開いた時だ。咄嗟に貢と目が合い、彼は口元を歪めて得意そうに笑っている事に気が付く。
それを見た瞬間に、聡子は反射的に頭の中に浮かんだ事を口に出す。
「て、テメェ!やりやがったな!絵里子さんに痛覚をッ!」
「イェース!今の折原絵里子は完全に痛覚に苛まれている。苦しいだろうなぁ。なにせ、そよ風が当たるだけでも体には大ダメージだからよぉ」
桜井貢はサディスティクな笑みを浮かべて笑う。聡子は拳を震わせながら睨む。
悔しくたまらない。このままあのゲスのされるがままになっているという事実が。仲間を助けられない事実が。
「畜生、畜生……」
聡子は無意識のうちに涙を流していく。悔し涙。彼女の思いが流させる涙。
それを見ると、目の前のゲスはますます増長したらしい。聡子に勝ち誇った様な笑みを浮かべて、
「そんな顔をするなよ。お前は殺さないからなよぉ」
「どういう事だ?」
聡子は痛みのために横たわりっているため、真上で見下ろしているゲスを涙目で睨みながら問う。
「簡単な話だよ。あんたの親父はヤクザの組長なんだよな?あんたを人質にし、親父を言われるがままにさせていく。それで、我が教団は取り込んだ力を利用して国内の裏組織を全て取り入れていくんだよ。これで、我が教団はますますの発展を期待できるってもんだ!」
「テメェらの何処が十字軍だ!この卑怯者め!」
聡子の罵声に対しても彼は余裕のある表情と態度で返し、
「なんとでも言え、我らが教団は永遠に不滅!全ては我がご主人様のお気に召すままに世界は進んでいくのさ!」
と、包丁を持ったまま両手を広げて顔に理性をかいぐり捨てた狂信者の表情を浮かべて高笑いしていく。
が、その余裕がいけなかった。息を吐く暇もなく倉本明美が玄関から駆け寄り、床に落ちていた日本刀を取り上げるのと同時に素人とは思えない速さで桜井貢を斬りつけた。
貢は咄嗟に体を逸らしたために致命傷は免れたが、それでも、傷そのものを負うのは避けられなかったらしい。
桜井貢は大きな悲鳴を上げて壁にもたれかかっていく。
そして、怒りのままに明美の方へと向かって彼女の頬を思いっきり叩く。
ビンタの音が部屋中に響き渡り、明美は地面の上に崩れ落ちていく。
だが、それでも桜井貢は容赦なく彼女を蹴り付けていく。
「テメェ!この野郎!よくも、よくも、オレの体を刀で斬りやがって!許さねぇぞ!このままテメェは蹴り殺してやる!」
桜井貢の表情はもはや人間のそれではない。復讐に燃える悪鬼の表情。
それが、今の彼を表すのに相応しい形容詞かもしれない。
絵里子はその姿を見て涙を流しながら呟く。
「お願い……もうやめて」と。
だが、明美を蹴り付けているゲスは絵里子の懇願など側から聞く様子はないらしい。それどころか、より一層の強さで明美を痛ぶる姿が見える。
聡子は受け身になっている絵里子とは対照的に、なんとか体に鞭を打ち、無理矢理自身の体を奮い立たせていく。
そして、足をふらつかせながらも地面の上に落ちている刀を拾い上げ、明美を痛ぶる事に夢中になっている桜井貢の背中を斬りつける。
桜井貢は今度こそ防ぐ暇がなかったのか、大きな悲鳴を上げて地面の上に倒れ込む。
例の男が地面の上に倒れるのを見計らって聡子は明美に手を伸ばす。
明美はすっかりと弱った表情で聡子の手を取り、彼女を引っ張り上げていく。
聡子は荒い息を上げながらも、明美に無事を問う。
明美は涙を流しながら告げる。
「うん、無事だよ。でも酷いのは聡子ちゃんの方じゃない……早く手当てしないと……」
「あたしの事なんてどうでも良いよ。それより、あんたの子供は無事だぜ。先に言って安心させてやりなよ」
「……でも」
「いいからいけ!」
いつになく険しい聡子の口調に明美は両目を瞑って自身の子供の元へと駆け込む。
子供の無事を心配する明美の表情を垣間見て聡子は安堵の息を漏らす。
そして、役目は終えたとばかりに地面の上に倒れ込む。それでも、彼女の体全身を痛覚が覆っていく。
このまま死んだらマシになるだろうか。聡子はそう考えていたが、そうは問屋が下ろさない。
明美はどうやら我が子の無事を確認した後に携帯端末で応援と救急車を呼んだらしく暫くの後にパトカーとサイレンの音が集合住宅の前に止まり、明美の家の中に警官と担架を持った複数の救急医が雪崩れ込む。
警官は真っ先に明美とその家族とを保護し、外へと連れ出す。
その後に救急医は聡子と絵里子とを担架の上に載せ、やがて死体となっているであろう桜井貢を運ぼうとしたのだが、突然、胸に痛みを感じてその場に倒れ込む。
桜井貢は死んでなどいない。彼は今の今まで意識を失っていたのだが、ようやく意識を取り戻し、全身から血を流しながらもあの三人への復讐を果たそうと画策していたのだ。
彼は例の魔法をもう一人の救急医に負わせ、そのまま包丁を持ったまま出口の方にいる三人を殺そうと向かったのだが、その矢先に彼の心臓に穴が空いて地面の上に倒れ込む。
彼は駆け付けた警察官の咄嗟の判断で桜井貢を射殺されたのだった。
全身が痛覚に見舞われており、先程の絵里子の説明にもあった通り、少し動くだけでも体がズキズキと痛む。
このまま全身が動かないのではないか。聡子がそう考えていた時だ。先程の男がもう一度、包丁を振り上げて襲い掛かってくる。
刀を振り回そうにも体が動かない。聡子は覚悟して両目を瞑ったのだが……。
「やめなさい!」
なんと、絵里子が銃を撃って聡子を庇いに入っただけではなく、彼女が持っていた刀を手に取り、桜井貢の攻撃を防いだのだった。
予想だにしない出来事。狐に包まれた思いというのは今の様な状況の事を言うのだろう。
聡子はそう思わずにはいられない。だが、絵里子の刀を持つ手が震えている事や構え方が自身や孝太郎ならば持ち方であった事から彼女が剣を扱えないのは明白な事実。
聡子は慌てて駆け付けようしたが、体が思う通りに動かない。ここまで悔しい事があるだろうか。
上司が仲間が命がけで戦っているというのに応援に駆け付ける事も出来ないなんて……。
聡子は無意識のうちに歯をギリギリと鳴らす。同時に口元に大きな痛みが生じていく。
聡子は本当に自分が痛覚というものに支配されているというのを理解した。
だが、このまま上司を見殺しにはできぬ。
聡子がなんとか彼女の前に割り込もうとした時だ。突然、目の前の女性から大きな悲鳴と刀を地面に落とした際に聞こえる重い音が耳に届く。
何事かと聡子が目を見開いた時だ。咄嗟に貢と目が合い、彼は口元を歪めて得意そうに笑っている事に気が付く。
それを見た瞬間に、聡子は反射的に頭の中に浮かんだ事を口に出す。
「て、テメェ!やりやがったな!絵里子さんに痛覚をッ!」
「イェース!今の折原絵里子は完全に痛覚に苛まれている。苦しいだろうなぁ。なにせ、そよ風が当たるだけでも体には大ダメージだからよぉ」
桜井貢はサディスティクな笑みを浮かべて笑う。聡子は拳を震わせながら睨む。
悔しくたまらない。このままあのゲスのされるがままになっているという事実が。仲間を助けられない事実が。
「畜生、畜生……」
聡子は無意識のうちに涙を流していく。悔し涙。彼女の思いが流させる涙。
それを見ると、目の前のゲスはますます増長したらしい。聡子に勝ち誇った様な笑みを浮かべて、
「そんな顔をするなよ。お前は殺さないからなよぉ」
「どういう事だ?」
聡子は痛みのために横たわりっているため、真上で見下ろしているゲスを涙目で睨みながら問う。
「簡単な話だよ。あんたの親父はヤクザの組長なんだよな?あんたを人質にし、親父を言われるがままにさせていく。それで、我が教団は取り込んだ力を利用して国内の裏組織を全て取り入れていくんだよ。これで、我が教団はますますの発展を期待できるってもんだ!」
「テメェらの何処が十字軍だ!この卑怯者め!」
聡子の罵声に対しても彼は余裕のある表情と態度で返し、
「なんとでも言え、我らが教団は永遠に不滅!全ては我がご主人様のお気に召すままに世界は進んでいくのさ!」
と、包丁を持ったまま両手を広げて顔に理性をかいぐり捨てた狂信者の表情を浮かべて高笑いしていく。
が、その余裕がいけなかった。息を吐く暇もなく倉本明美が玄関から駆け寄り、床に落ちていた日本刀を取り上げるのと同時に素人とは思えない速さで桜井貢を斬りつけた。
貢は咄嗟に体を逸らしたために致命傷は免れたが、それでも、傷そのものを負うのは避けられなかったらしい。
桜井貢は大きな悲鳴を上げて壁にもたれかかっていく。
そして、怒りのままに明美の方へと向かって彼女の頬を思いっきり叩く。
ビンタの音が部屋中に響き渡り、明美は地面の上に崩れ落ちていく。
だが、それでも桜井貢は容赦なく彼女を蹴り付けていく。
「テメェ!この野郎!よくも、よくも、オレの体を刀で斬りやがって!許さねぇぞ!このままテメェは蹴り殺してやる!」
桜井貢の表情はもはや人間のそれではない。復讐に燃える悪鬼の表情。
それが、今の彼を表すのに相応しい形容詞かもしれない。
絵里子はその姿を見て涙を流しながら呟く。
「お願い……もうやめて」と。
だが、明美を蹴り付けているゲスは絵里子の懇願など側から聞く様子はないらしい。それどころか、より一層の強さで明美を痛ぶる姿が見える。
聡子は受け身になっている絵里子とは対照的に、なんとか体に鞭を打ち、無理矢理自身の体を奮い立たせていく。
そして、足をふらつかせながらも地面の上に落ちている刀を拾い上げ、明美を痛ぶる事に夢中になっている桜井貢の背中を斬りつける。
桜井貢は今度こそ防ぐ暇がなかったのか、大きな悲鳴を上げて地面の上に倒れ込む。
例の男が地面の上に倒れるのを見計らって聡子は明美に手を伸ばす。
明美はすっかりと弱った表情で聡子の手を取り、彼女を引っ張り上げていく。
聡子は荒い息を上げながらも、明美に無事を問う。
明美は涙を流しながら告げる。
「うん、無事だよ。でも酷いのは聡子ちゃんの方じゃない……早く手当てしないと……」
「あたしの事なんてどうでも良いよ。それより、あんたの子供は無事だぜ。先に言って安心させてやりなよ」
「……でも」
「いいからいけ!」
いつになく険しい聡子の口調に明美は両目を瞑って自身の子供の元へと駆け込む。
子供の無事を心配する明美の表情を垣間見て聡子は安堵の息を漏らす。
そして、役目は終えたとばかりに地面の上に倒れ込む。それでも、彼女の体全身を痛覚が覆っていく。
このまま死んだらマシになるだろうか。聡子はそう考えていたが、そうは問屋が下ろさない。
明美はどうやら我が子の無事を確認した後に携帯端末で応援と救急車を呼んだらしく暫くの後にパトカーとサイレンの音が集合住宅の前に止まり、明美の家の中に警官と担架を持った複数の救急医が雪崩れ込む。
警官は真っ先に明美とその家族とを保護し、外へと連れ出す。
その後に救急医は聡子と絵里子とを担架の上に載せ、やがて死体となっているであろう桜井貢を運ぼうとしたのだが、突然、胸に痛みを感じてその場に倒れ込む。
桜井貢は死んでなどいない。彼は今の今まで意識を失っていたのだが、ようやく意識を取り戻し、全身から血を流しながらもあの三人への復讐を果たそうと画策していたのだ。
彼は例の魔法をもう一人の救急医に負わせ、そのまま包丁を持ったまま出口の方にいる三人を殺そうと向かったのだが、その矢先に彼の心臓に穴が空いて地面の上に倒れ込む。
彼は駆け付けた警察官の咄嗟の判断で桜井貢を射殺されたのだった。
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