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第七部『エイジェント・オブ・クリミナル』

テロリストがカルト教団を狙う理由

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日本解放連合軍はかつて日本のみならず世界を騒がせたテロ組織である。
彼らは彼女らの殆どは大学生であり、彼ら彼女らは青春をスポーツや勉学、恋愛に費やすのではなく、高尚な思想とテロリズムに費やしていたのである。
警察や政府相手に大規模なテロを仕掛け、数々の魔法で人々を翻弄した日本解放連合軍であったが、とうとう日本のスパイ機関の前に返り討ちに遭ってしまう。
また、伊勢皇国にテロを仕掛けようとした時にメンバーの大半が募ったのもよくなかった。
スパイの情報により、彼ら彼女らの殆どは射殺・逮捕され壊滅状態になってしまう。
が、この時に約二名の男二人が警察の隙を突いて逃亡。
中東へと逃れた。彼らは四十七年の間、そこで警察を倒すための手筈を整え、日本へと帰国したのだった。
MCMを狂わせる電波を独自に開発した二人はそれで税関をやり過ごす。
そして、アパートの部屋の一室で三年の間、着々とテロの計画を練っていた。
そんな折に二人にとっての転換点が現れた。
それが、ビッグ・トーキョーのビル爆破事件の報道である。
狭いアパートの一室で二人はそれを知り、罪のない人々が大勢死に、特に大樹寺雫の計画により、孫を奪われた祖母の話を知り、義憤に駆られた二人はそれまで政府に向けていた怒りをバプテスト・アナベル教へと向ける事になった。
途中、大樹寺雫が死に、教団が半ば無効になろうとした時にはその怒りを警察に向かわせようとしたのだが、大樹寺雫の復活を知り、二人は計画を再開。
二人は入念に教団本部の下見を行い、教祖、大樹寺雫並びに教団幹部を皆殺しにするための爆弾の位置を考える。
そして、爆破後に着実に教団を壊滅させるために、銃を持って現れたのだ。
最も、そこに刑事がいるのは想定外の出来事であったが……。
両名は足元に向けられた弾丸を交わした後に報復のために、突然現れた刑事に向かって銃を撃ち続けたが、何故か刑事には当たらない。
まるで、見えないバリアーが刑事に貼られているかのように弾丸が彼の元を逸れていく。
若く林檎のように赤い肌をした刑事は弾丸を回避し、テロリストの二人に向かって銃を放ち続けていく。
予備の弾丸をリロードする間を狙うが、予想以上に動きが速くその隙を突く事は不可能だろう。
二人は互いに首を縦に動かし、目の前の男へと銃を撃ち続けていく。
だが、今度はどういう事だろう。目の前の男は避ける事なく銃弾の雨を受けても目の前へと進む。
銃弾は男の前に弾かれていき、両名はやむを得ずに銃を撃つのをやめ、代わりに魔法を使用し、孝太郎に向かって大きく開かれた右手の掌を向ける。
それを見てニヤリと笑う男。
男は相手の攻撃を無効化する魔法の持ち主であった。
孝太郎は自らの体を守るバリアーが剥がれた事を察知し、その場から素早く後退し、魔法の代わりに銃を向ける。
男はそれを見ると、自分がとんでもない位置に立ったという優越感を感じる。
なので、男は自身の魔法を解説していく。
「これがオレの魔法だよ。相手の魔法を一時的に無効化する。あくまでも一時的ではあるがね、それでも相手の魔法をぶっ潰すのには最適な魔法だとは思わないかい?」
「その通り、慶三の魔法は完璧なんだぜ、最も、一時的ではなく本格的に全ての魔法を無効にする奴が現れたらそれはどうなるか分からないがな」
どうやら、テロリストの片方は慶三という名前であるらしい。
孝太郎はその名前を知った時に警察学校時代に学んだテロリストの名前を思い出す。
そして、目の前のテロリストに向かって大きな声で問う。
「分かったぞ、お前たち亀岡正嗣と八王子慶三だろ!?ようやく、名前を思い出した。日本連合解放軍のリーダーと副リーダー。それが、お前たちだ……」
「その通りだ。若造、懐かしい。五十年前を思い出すぜ、オレがあんたくらいの時期はこの魔法で多くの警官を革命闘争で倒したもんだぜ」
「その通り、慶三以上に殺人経験が豊富なリーダーはいねぇよ。二百年前にしろ、五十年前にしろ、な」
孝太郎は沈黙していた。八王子慶三と亀岡正嗣の両名の対処に。
孝太郎は資料で両名の魔法の厄介さとコンビネーションの厄介さを知っていた。
資料によれば、まず八王子慶三が他の警官や刑事の魔法を無効にした後に……。
と、ここで孝太郎の目の前に亀岡正嗣が現れて、光の剣を作り出して孝太郎に向かって振るう。
孝太郎は慌てて武器保存から愛用の日本刀を取り出し、それを盾にして防ぐ。
が、刀と光の剣との合間から光の光線が肩に刺さった事により隙が生じてしまう。
足元が揺れた孝太郎に対し、亀岡正嗣は孝太郎の刀に向かって大きく刀を振りかぶっていき、孝太郎の両腕を痺れさせていく。
「若い警官、今なら教えてやる!オレの魔法はこの光の剣を媒体に光線を自由自在に操る『光の神の乱心アグライア・オブ・シンドローム』八王子さんの魔法と合わせりゃあ、最強の魔法よ!」
亀岡はそう言って光の剣から更に光の光線を飛ばしていく。
孝太郎は小さな棘のような光線が自身の肌に当たっていくのを感じる。
これでもあまり痛くないのは亀岡が光線の威力を最小にしてくれているからだろうか。
孝太郎がそう考えた時だ。意識がそちらに向かってしまい、刀を持つ手が緩んでしまう。
孝太郎が両手で握っていた刀は光の剣の前に跳ね飛ばされ、地面の上に転がってしまう。
「終わりだ」
亀岡は顔に勝ち誇ったような笑みを浮かべて斜め上から光の剣を振りかぶっていく。
「クソ」と孝太郎が最後の罵声を浴びせ、両目を瞑ろうとした時だ。
光の剣が妨害される音が聞こえた。ガキィィンという金属がぶつかる音が聞こえる。
孝太郎が恐る恐る両目を開けると、そこには刀を持った聡子の姿が見えた。
「孝太郎さん?無事!?」
「あぁ、すまん。聡子……」
聡子は日本刀を盾に光の剣を防ぐと、そのまま亀岡の懐へと踏み込む。
互いの剣と剣とが空を切り、互いの隙を狙い合う。
孝太郎は暫くの間はぼんやりとその姿を眺めていたが、居ても立っても居られずに、刀を仕舞い、代わりに背後の慶三の逮捕へと向かう。
慶三さえ拿捕すれば、亀岡は容易に倒せると踏んだのだ。
だが、物事はそうは上手くは運ばない。慶三は自身の元に踏み込ませないためにも、拳銃を構えて孝太郎を待ち構えていた。
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