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第七部『エイジェント・オブ・クリミナル』
最悪の魔法
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「お前がホワイト・ウルフか?」
孝太郎は銃を突き付けて問い掛けたが、目の前の正体不明の人間は問い掛けには応じない。
彼もしくは彼女は無言でM16を突き付けて孝太郎に向かって放っていく。
孝太郎はそれを鋼鉄の将軍を用いて防ぐ。
このまま先程の展開の繰り返しになるかと思われたが、そこに変化が起きる。
なんと、聡子が彼女の目の前に突撃し、彼女の脇腹に向かって軽機関銃を突き付けたのだ。
「くたばりやがれ!ど外道が!」
聡子は必死な形相で脇腹に銃弾を撃ち込もうとした。その時だ。聡子の全身をどうしようもない痛みが襲う。
全身が痛い。まるで、体全体が地面の上に叩き付けられたかのようだ。
交通事故に遭った人はこんな痛みに遭うのだろうか。
聡子はそんな事を考えながら、地面の上で悶え苦しむ。
思わず軽機関銃を手放し、地面の上でのたうち回る姿は普段の勝気な彼女の姿からは想像もできない。
思わず全員が目を離しそうになった時だ。孝太郎はある事実に気が付く。
そして、地面の上でのたうち回る聡子に警告の言葉を叫ぶ。
「聡子!逃げろ!あいつッ!お前に銃を!」
聡子が驚いた顔を見せたのと同時にホワイト・ウルフが聡子に拳銃の銃口を向ける。
「クソッタレ!」
孝太郎はそれよりも前に引き金を引き、ホワイト・ウルフの注意を向ける事に成功させた。
ホワイト・ウルフはこちらに銃口を向け、孝太郎の命を狙う。
万事休すかと思い、孝太郎は一言だけ目の前のテロリストに問う。
「おい、教えろ、お前はバプテスト・アナベル教に頼まれてここに来たんだろ?」
目の前の正体不明の人間は答えない。あいつはガスマスクの下にどの様な表情で自分を見ているのだろう。
孝太郎はそう思ったが、この状況で考える事はないと密かに笑いを溢す。
続いて、問いかける。
「教えろ、大樹寺雫とマフィアの背後関係をな。オレはもうじきお前に殺される。なら、死ぬ前に教えてもらっても良いだろ?」
それでも尚、目の前の怪物は答えない。
ホワイト・ウルフ。国際的テロリストにして約一年前から現れたという国籍性別不明のテロリスト。
何故か、巧みに武器を隠し、各国の王族や皇族にのみに狙いを定める悪魔。
噂では共産圏のスパイだという話も聞くが……。
ここまで考えた孝太郎は質問を変えてみる事にした。
「なら、質問を変更だ。冥土の土産はあんたの目的について教えてもらう事にするよ。教えろ、あんたが各国の王族や皇族を狙う理由は?」
どうせ答えてもらえない。そんな諦めにも似た思いが孝太郎を覆った時だ。目の前の正体不明の人間は突然、喋り始めた。
「……わたしが王族や皇族を狙うのはあのお方を世界皇帝へと掲げるため……それ以外に理由などない」
声を隠すためのヘリウムガスと携帯翻訳機のために声色も分からない。
が、彼もしくは彼女は答えてくれた。孝太郎の質問に。
孝太郎は更にそこから突っ込む事にした。
「あのお方というのは誰だ?北京の首席か?はたまた、モンゴルのーー」
「そんな奴らではない!」
大きな声で孝太郎の指し示した人物を遮る。
彼女は自己陶酔にも似た響きを持って話を続けていく。
「あのお方は今でこそ帝国の臣下と化しているが、いずれは世界皇帝へと成し上がるお方……わたしはあのお方が世界でただ一人の最高権威にして最高権力者にするためのお手伝いをしているに過ぎない」
「世界皇帝?まさか、シリウスか?」
その言葉を発するのと同時に、孝太郎の真下の地面に銃弾がめり込む。
恐る恐る目を上げると、そこには両手に持った軽機関銃を震わせるテロリストの姿が見えた。
「言葉に気を付けてもらいたい。畏れ多くもお前如きがシリウス・ペンドラゴン統一陛下を呼び捨てにされるとは……万死に値する!」
「やはり、あのシリウスか」
「お前、陛下と面識が?」
「面識も何も、その陛下はオレたちの手で追い詰めたんだ」
それを聞くのと同時に、テロリストは問答無用で孝太郎に向かって銃を乱射する。
「貴様、今、何と言った?」
もし、この正体不明のテロリストに目があったらのならば、ギラついて違いない。
恐らく、それくらいの目で自分を睨む筈だ。
孝太郎はそう推察していた。それくらいの念が地面にめり込んだ銃弾には感じられた。
孝太郎はこれを機会に、交渉の機会が途切れた事を残念に思ったが、意外な事に目の前のテロリストは続きを迫り始めた。
「教えろ、お前は皇帝陛下に何をなさった?」
「……いいだろう。あんたは先程のオレの質問に答えてくれたしな。オレは明治時代、世界の時間で表すと19世紀の前半に渡り、そこである人と協力してシリウスを倒した」
それを聞くのと同時に、テロリストは両手に持っていた銃を大きく振るわせて、
「黙れ!そんな事が可能なはずがない!時間を超える魔法は未だに発見されていない!皇帝陛下を倒せないからと言って口から出まかせをーー」
「なら、今どうしてその皇帝陛下とやらはあんたと一緒に伊勢に攻めてこない?」
「皇帝陛下には事情があるのだ!偽りの皇帝から与えられた任務から離れられないという事情がな!」
「成る程、即ち、あんたの敬愛する皇帝陛下とやらは余程、部下に合わせる余裕がないように見えるな」
「黙れ!黙れ!黙れェェェェェェェ~!!!」
それまでは務めて冷静であった筈のテロリストは銃を構えて、孝太郎の元へと向かう。
孝太郎は一か八か、自身の魔法を試してみる事にした。
まずは鋼鉄の将軍を使用した上で自身の破壊の魔法を試みる。
テロリストと刑事とが互いに魔法を構えてすれ違う。
すると、どうだろう。孝太郎は聡子が感じたと思われる痛みに襲われていく。
孝太郎は大きな悲鳴を上げはしたものの、自身の魔法が発動するの同時にその痛みは収まっていく。
痛みの引いた孝太郎はもう一度、銃を構えてテロリストと向かい合う。
「痛みは収まったぞ、さぁ、これでお前の得意魔法もーー」
孝太郎がそう言おうとした時だ。孝太郎の体に大きな衝撃が激突する。
悲鳴を上げるのと同時に、ホワイト・ウルフがもう一度、孝太郎に向かって銃を突き付ける。
「わたしをみくびっていたらしいな。わたしの魔法の一つの成果を……」
それを聞いて孝太郎は絶句する。
孝太郎は銃を突き付けて問い掛けたが、目の前の正体不明の人間は問い掛けには応じない。
彼もしくは彼女は無言でM16を突き付けて孝太郎に向かって放っていく。
孝太郎はそれを鋼鉄の将軍を用いて防ぐ。
このまま先程の展開の繰り返しになるかと思われたが、そこに変化が起きる。
なんと、聡子が彼女の目の前に突撃し、彼女の脇腹に向かって軽機関銃を突き付けたのだ。
「くたばりやがれ!ど外道が!」
聡子は必死な形相で脇腹に銃弾を撃ち込もうとした。その時だ。聡子の全身をどうしようもない痛みが襲う。
全身が痛い。まるで、体全体が地面の上に叩き付けられたかのようだ。
交通事故に遭った人はこんな痛みに遭うのだろうか。
聡子はそんな事を考えながら、地面の上で悶え苦しむ。
思わず軽機関銃を手放し、地面の上でのたうち回る姿は普段の勝気な彼女の姿からは想像もできない。
思わず全員が目を離しそうになった時だ。孝太郎はある事実に気が付く。
そして、地面の上でのたうち回る聡子に警告の言葉を叫ぶ。
「聡子!逃げろ!あいつッ!お前に銃を!」
聡子が驚いた顔を見せたのと同時にホワイト・ウルフが聡子に拳銃の銃口を向ける。
「クソッタレ!」
孝太郎はそれよりも前に引き金を引き、ホワイト・ウルフの注意を向ける事に成功させた。
ホワイト・ウルフはこちらに銃口を向け、孝太郎の命を狙う。
万事休すかと思い、孝太郎は一言だけ目の前のテロリストに問う。
「おい、教えろ、お前はバプテスト・アナベル教に頼まれてここに来たんだろ?」
目の前の正体不明の人間は答えない。あいつはガスマスクの下にどの様な表情で自分を見ているのだろう。
孝太郎はそう思ったが、この状況で考える事はないと密かに笑いを溢す。
続いて、問いかける。
「教えろ、大樹寺雫とマフィアの背後関係をな。オレはもうじきお前に殺される。なら、死ぬ前に教えてもらっても良いだろ?」
それでも尚、目の前の怪物は答えない。
ホワイト・ウルフ。国際的テロリストにして約一年前から現れたという国籍性別不明のテロリスト。
何故か、巧みに武器を隠し、各国の王族や皇族にのみに狙いを定める悪魔。
噂では共産圏のスパイだという話も聞くが……。
ここまで考えた孝太郎は質問を変えてみる事にした。
「なら、質問を変更だ。冥土の土産はあんたの目的について教えてもらう事にするよ。教えろ、あんたが各国の王族や皇族を狙う理由は?」
どうせ答えてもらえない。そんな諦めにも似た思いが孝太郎を覆った時だ。目の前の正体不明の人間は突然、喋り始めた。
「……わたしが王族や皇族を狙うのはあのお方を世界皇帝へと掲げるため……それ以外に理由などない」
声を隠すためのヘリウムガスと携帯翻訳機のために声色も分からない。
が、彼もしくは彼女は答えてくれた。孝太郎の質問に。
孝太郎は更にそこから突っ込む事にした。
「あのお方というのは誰だ?北京の首席か?はたまた、モンゴルのーー」
「そんな奴らではない!」
大きな声で孝太郎の指し示した人物を遮る。
彼女は自己陶酔にも似た響きを持って話を続けていく。
「あのお方は今でこそ帝国の臣下と化しているが、いずれは世界皇帝へと成し上がるお方……わたしはあのお方が世界でただ一人の最高権威にして最高権力者にするためのお手伝いをしているに過ぎない」
「世界皇帝?まさか、シリウスか?」
その言葉を発するのと同時に、孝太郎の真下の地面に銃弾がめり込む。
恐る恐る目を上げると、そこには両手に持った軽機関銃を震わせるテロリストの姿が見えた。
「言葉に気を付けてもらいたい。畏れ多くもお前如きがシリウス・ペンドラゴン統一陛下を呼び捨てにされるとは……万死に値する!」
「やはり、あのシリウスか」
「お前、陛下と面識が?」
「面識も何も、その陛下はオレたちの手で追い詰めたんだ」
それを聞くのと同時に、テロリストは問答無用で孝太郎に向かって銃を乱射する。
「貴様、今、何と言った?」
もし、この正体不明のテロリストに目があったらのならば、ギラついて違いない。
恐らく、それくらいの目で自分を睨む筈だ。
孝太郎はそう推察していた。それくらいの念が地面にめり込んだ銃弾には感じられた。
孝太郎はこれを機会に、交渉の機会が途切れた事を残念に思ったが、意外な事に目の前のテロリストは続きを迫り始めた。
「教えろ、お前は皇帝陛下に何をなさった?」
「……いいだろう。あんたは先程のオレの質問に答えてくれたしな。オレは明治時代、世界の時間で表すと19世紀の前半に渡り、そこである人と協力してシリウスを倒した」
それを聞くのと同時に、テロリストは両手に持っていた銃を大きく振るわせて、
「黙れ!そんな事が可能なはずがない!時間を超える魔法は未だに発見されていない!皇帝陛下を倒せないからと言って口から出まかせをーー」
「なら、今どうしてその皇帝陛下とやらはあんたと一緒に伊勢に攻めてこない?」
「皇帝陛下には事情があるのだ!偽りの皇帝から与えられた任務から離れられないという事情がな!」
「成る程、即ち、あんたの敬愛する皇帝陛下とやらは余程、部下に合わせる余裕がないように見えるな」
「黙れ!黙れ!黙れェェェェェェェ~!!!」
それまでは務めて冷静であった筈のテロリストは銃を構えて、孝太郎の元へと向かう。
孝太郎は一か八か、自身の魔法を試してみる事にした。
まずは鋼鉄の将軍を使用した上で自身の破壊の魔法を試みる。
テロリストと刑事とが互いに魔法を構えてすれ違う。
すると、どうだろう。孝太郎は聡子が感じたと思われる痛みに襲われていく。
孝太郎は大きな悲鳴を上げはしたものの、自身の魔法が発動するの同時にその痛みは収まっていく。
痛みの引いた孝太郎はもう一度、銃を構えてテロリストと向かい合う。
「痛みは収まったぞ、さぁ、これでお前の得意魔法もーー」
孝太郎がそう言おうとした時だ。孝太郎の体に大きな衝撃が激突する。
悲鳴を上げるのと同時に、ホワイト・ウルフがもう一度、孝太郎に向かって銃を突き付ける。
「わたしをみくびっていたらしいな。わたしの魔法の一つの成果を……」
それを聞いて孝太郎は絶句する。
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