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第六部『鬼麿神聖剣』
妖術『異界干渉』
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「妖術『異界干渉』それが、この世ならざるものをこの世界へと呼び出す最強の術式でございます」
玉座の上にて肘を付くシリウスの前に跪きながら、妖魔党の党首を務める甲賀衆の最強の忍び、降魔霊蔵は述べた。
「成る程、お前のいう『異界干渉』を使用したのならば、この世ならざるものを召喚可能だと申すのだな?」
「御意に」
降魔霊蔵は真剣な顔付きを浮かべながら言った。その事から、彼の言葉には信憑性があると言っても良いだろう。
降魔霊蔵は甲賀の里の焼け跡が見つけ出した『異界干渉』の術式をシリウスに教えていく。
『異界干渉』の術は印術の上段に位置する術式になるらしいが、一般的な印術と異なるのは『異界』という人間には干渉できない世界に干渉し、自らの下僕を選出しなければならない術らしく、運が悪ければ、召喚した化け物に体や精神を乗っ取られる事になるらしい。
降魔霊蔵は頭領に危険になるかもしれないと進言したが、彼はその言葉を一笑に返し、
「お前は私がそのような邪悪なものなどに負けるとでも思っておるのか?」
と、目を尖らせて睨む事により、目の前に跪く男を黙らせる事に成功したらしい。
彼は玉座の肘掛けの上で肘を突きながら、グラスに入れたばかりの氷のように冷たい声で、
「そもそも、このような術を使わなくてはならない程、伊勢同心を追い詰めたのは貴様の選出した忍びが無能であったからであろう。違うか?降魔?」
あまりにも一方的な言葉だ。妖魔党の党首を務めていた男は冷や汗を石の地面の下に垂らしながら、そう考えていたが、玉座の上に座る男に対しては能力の恐ろしさと自信が惚れているという弱みのためか、逆らう事などできない。
やむを得ずに、霊蔵は首を震わせながら首肯する。
シリウスはその様子に興味が無さそうにフンと軽く鼻を鳴らすと、玉座の側面に控えていた妹を呼び、彼女に何やら耳打ちをする。
「分りましたわ、それでは早速ご準備致しますので、少々お待ちくださいな」
シャーロットは満面の笑みで兄の申し付けを聞き、一度謁見の間から出た後に、大きな筆と墨の入った檜の桶を持って現れた。
シリウスは手で霊蔵に地面の前から退くように指示を出す。
霊蔵は頭領の指示に従い、玉座から大きな距離を残して存在する金色の扉の前に待機する。
その間、シャーロットは人の身長の倍はありそうな筆を風呂屋の桶より、三倍は大きなそうな特別性の桶に満タンに入れられた墨の中に付けながら、二つの正三角形を逆にしたものを二つ地面の上に描いていく。
そして、完成したのを見届けると、彼女はそれを踏まないようにその場から離れ、もう一度兄の側へと戻る。
シリウスは妹の作り上げた奇妙な星を見て、笑い、次に両眼を閉じ、印術上の段『異界干渉』の術を呟いていく。
すると、どうだろう。先程までは黒く輝く墨の色ばかりが目立っていたが、次の瞬間には墨である筈の奇妙な星の形が光り輝き、神秘的な色をその星から漂わせていた。
シリウスの配下達は全員が目を見張っていたが、彼はそれに構う事なく、術式を続けて述べていく。
するとどうだろう。彼の目の前に西洋風の甲冑を付けた人でならざるものが現れたかと思うと、玉座の上に座る頭領の前に歩いていき、影のようなものに変貌したのかと思うと、次の瞬間に勢いよくその影は玉座の上のシリウスの頭の中に飛び込む。
シリウスは次の瞬間には絶叫を上げていた。頭と体とが鋭利な刃物で穿り出されるような感覚に陥ったのだ。
その痛みに叫ぶなというのが無理であろう。痛みに耐えかねたのだろうか、シリウスは頭を両手で押さえながら、シリウスは玉座の上から落ちていく。
その様子を見て臣下達はただならぬ様子に気が付いたのだろう。
慌てて駆け寄っていくが、他ならぬ彼らのボスがそれを静止させた。
彼は歯を食い縛り、それから、鋭く下唇を噛んでいく。
それから、霊蔵とシャーロットの二人が見ても分かる程の出血を下唇から見せていたが、それでも彼は他の二人が自分を助けようとするのを拒否していた。
頭の中、シリウスは自身の祖先を自称する怪物と話を交わしていた。
途中、彼は何度もシリウスの精神と体とを乗っ取ろうとしていたが、それでも彼は衝突する子供を跳ね返すトランポリンのように何度も彼を弾いていた。
シリウスは竜王スメウルグを名乗る存在に何度も支配されそうになったが、最後は逆に彼を取り込む。
取り込む時は実に呆気無かったと言っても良かっただろう。
スメウルグがもう一度自身の体を吸収するために、飛び掛かって来た時に、彼の体を掴み、それから奴を吸い込むという強い意志を込めて彼に触った瞬間に、竜王スメウルグの精神はシリウスの体の中に吸い込まれてしまったのだ。
見た目に変化は無い。服装とてこの時代に来て安定した地位を得てからはいつも着ていた洋服だ。
だが、何かが違う気がしていた。試しに彼が右手の掌を開くと、玉座の前の広間の装飾に使われていた石が剥がれ粉々になっていく。
シリウスはその様子を見て口元を歪ませ、勝利を確信したような笑顔を浮かべていく。
竜王スメウルグの特徴である分解の魔法を彼は手に入れたと言っても良いだろう。
彼はそれから、体を震わせると、目の前の金色に輝く杯を作り出す。
シャーロットはそれを見て思わず叫んでしまう。
それはこの時代にトリップした時に使用した聖杯そのものであったからだ。
シリウスは妹の驚く姿を見ると、クックと笑い、
「お前も分かっただろう?この聖杯は私が作り出したものだったのだ。時を超える聖杯……これを使用して、私は世界を統べる皇帝となる」
「流石はお兄様です!まさか、お兄様が聖杯を作り出し、この日本の城の地下に飛ばすとは考えにも及びませんでした!」
シャーロットの賛辞を聞き、シリウスは口元を歪ませ、それから右手を伸ばし、降魔霊蔵に向かって叫ぶ。
「竜王の力を手に入れ私に最早不可能は無いッ!霊蔵ッ!お前に指示を出す!この城の中に目障りな甲賀の忍びどもを連れて来い!私の手で奴らを皆殺しにしてやるのだッ!」
頭領の指示に従い、彼は頭を下げる。
それから、指を鳴らし、弥一を呼び、降魔霊蔵を信州の地に落とすように指示を出す。
城から弾き出された霊蔵は草一つ無い砂の地面の上に落ち、自身の置かれた状況を再確認する。
目の前に二階建ての木造建築の建物が見える事から、ここは羽倉教の建物に違いない。
頭領が自身をここに落としたという事はまだここに目障りな甲賀の忍びがここにいる事を知っていたのだろう。
霊蔵はニヤリと笑いながら、建物の中に向かっていく。
玉座の上にて肘を付くシリウスの前に跪きながら、妖魔党の党首を務める甲賀衆の最強の忍び、降魔霊蔵は述べた。
「成る程、お前のいう『異界干渉』を使用したのならば、この世ならざるものを召喚可能だと申すのだな?」
「御意に」
降魔霊蔵は真剣な顔付きを浮かべながら言った。その事から、彼の言葉には信憑性があると言っても良いだろう。
降魔霊蔵は甲賀の里の焼け跡が見つけ出した『異界干渉』の術式をシリウスに教えていく。
『異界干渉』の術は印術の上段に位置する術式になるらしいが、一般的な印術と異なるのは『異界』という人間には干渉できない世界に干渉し、自らの下僕を選出しなければならない術らしく、運が悪ければ、召喚した化け物に体や精神を乗っ取られる事になるらしい。
降魔霊蔵は頭領に危険になるかもしれないと進言したが、彼はその言葉を一笑に返し、
「お前は私がそのような邪悪なものなどに負けるとでも思っておるのか?」
と、目を尖らせて睨む事により、目の前に跪く男を黙らせる事に成功したらしい。
彼は玉座の肘掛けの上で肘を突きながら、グラスに入れたばかりの氷のように冷たい声で、
「そもそも、このような術を使わなくてはならない程、伊勢同心を追い詰めたのは貴様の選出した忍びが無能であったからであろう。違うか?降魔?」
あまりにも一方的な言葉だ。妖魔党の党首を務めていた男は冷や汗を石の地面の下に垂らしながら、そう考えていたが、玉座の上に座る男に対しては能力の恐ろしさと自信が惚れているという弱みのためか、逆らう事などできない。
やむを得ずに、霊蔵は首を震わせながら首肯する。
シリウスはその様子に興味が無さそうにフンと軽く鼻を鳴らすと、玉座の側面に控えていた妹を呼び、彼女に何やら耳打ちをする。
「分りましたわ、それでは早速ご準備致しますので、少々お待ちくださいな」
シャーロットは満面の笑みで兄の申し付けを聞き、一度謁見の間から出た後に、大きな筆と墨の入った檜の桶を持って現れた。
シリウスは手で霊蔵に地面の前から退くように指示を出す。
霊蔵は頭領の指示に従い、玉座から大きな距離を残して存在する金色の扉の前に待機する。
その間、シャーロットは人の身長の倍はありそうな筆を風呂屋の桶より、三倍は大きなそうな特別性の桶に満タンに入れられた墨の中に付けながら、二つの正三角形を逆にしたものを二つ地面の上に描いていく。
そして、完成したのを見届けると、彼女はそれを踏まないようにその場から離れ、もう一度兄の側へと戻る。
シリウスは妹の作り上げた奇妙な星を見て、笑い、次に両眼を閉じ、印術上の段『異界干渉』の術を呟いていく。
すると、どうだろう。先程までは黒く輝く墨の色ばかりが目立っていたが、次の瞬間には墨である筈の奇妙な星の形が光り輝き、神秘的な色をその星から漂わせていた。
シリウスの配下達は全員が目を見張っていたが、彼はそれに構う事なく、術式を続けて述べていく。
するとどうだろう。彼の目の前に西洋風の甲冑を付けた人でならざるものが現れたかと思うと、玉座の上に座る頭領の前に歩いていき、影のようなものに変貌したのかと思うと、次の瞬間に勢いよくその影は玉座の上のシリウスの頭の中に飛び込む。
シリウスは次の瞬間には絶叫を上げていた。頭と体とが鋭利な刃物で穿り出されるような感覚に陥ったのだ。
その痛みに叫ぶなというのが無理であろう。痛みに耐えかねたのだろうか、シリウスは頭を両手で押さえながら、シリウスは玉座の上から落ちていく。
その様子を見て臣下達はただならぬ様子に気が付いたのだろう。
慌てて駆け寄っていくが、他ならぬ彼らのボスがそれを静止させた。
彼は歯を食い縛り、それから、鋭く下唇を噛んでいく。
それから、霊蔵とシャーロットの二人が見ても分かる程の出血を下唇から見せていたが、それでも彼は他の二人が自分を助けようとするのを拒否していた。
頭の中、シリウスは自身の祖先を自称する怪物と話を交わしていた。
途中、彼は何度もシリウスの精神と体とを乗っ取ろうとしていたが、それでも彼は衝突する子供を跳ね返すトランポリンのように何度も彼を弾いていた。
シリウスは竜王スメウルグを名乗る存在に何度も支配されそうになったが、最後は逆に彼を取り込む。
取り込む時は実に呆気無かったと言っても良かっただろう。
スメウルグがもう一度自身の体を吸収するために、飛び掛かって来た時に、彼の体を掴み、それから奴を吸い込むという強い意志を込めて彼に触った瞬間に、竜王スメウルグの精神はシリウスの体の中に吸い込まれてしまったのだ。
見た目に変化は無い。服装とてこの時代に来て安定した地位を得てからはいつも着ていた洋服だ。
だが、何かが違う気がしていた。試しに彼が右手の掌を開くと、玉座の前の広間の装飾に使われていた石が剥がれ粉々になっていく。
シリウスはその様子を見て口元を歪ませ、勝利を確信したような笑顔を浮かべていく。
竜王スメウルグの特徴である分解の魔法を彼は手に入れたと言っても良いだろう。
彼はそれから、体を震わせると、目の前の金色に輝く杯を作り出す。
シャーロットはそれを見て思わず叫んでしまう。
それはこの時代にトリップした時に使用した聖杯そのものであったからだ。
シリウスは妹の驚く姿を見ると、クックと笑い、
「お前も分かっただろう?この聖杯は私が作り出したものだったのだ。時を超える聖杯……これを使用して、私は世界を統べる皇帝となる」
「流石はお兄様です!まさか、お兄様が聖杯を作り出し、この日本の城の地下に飛ばすとは考えにも及びませんでした!」
シャーロットの賛辞を聞き、シリウスは口元を歪ませ、それから右手を伸ばし、降魔霊蔵に向かって叫ぶ。
「竜王の力を手に入れ私に最早不可能は無いッ!霊蔵ッ!お前に指示を出す!この城の中に目障りな甲賀の忍びどもを連れて来い!私の手で奴らを皆殺しにしてやるのだッ!」
頭領の指示に従い、彼は頭を下げる。
それから、指を鳴らし、弥一を呼び、降魔霊蔵を信州の地に落とすように指示を出す。
城から弾き出された霊蔵は草一つ無い砂の地面の上に落ち、自身の置かれた状況を再確認する。
目の前に二階建ての木造建築の建物が見える事から、ここは羽倉教の建物に違いない。
頭領が自身をここに落としたという事はまだここに目障りな甲賀の忍びがここにいる事を知っていたのだろう。
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