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第六部『鬼麿神聖剣』

キャンドール・コーブの由来

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キャンドール・コーブ事件は2332年の日本列島を襲った原因不明の事件であり、未だ尚、この事件を操ったされる海宮秀幸社長の背後には誰か別の人物が居たのではないかと噂されている。
だが、海宮秀幸社長はグリーン色のスリーピースのスーツを着こなし、報道陣の前に向かって言った。
「この事件は私の魔法を元に思い付いた一種のテロ事件です。背後は皆無と言っても良いでしょう」
あまりにも清々しい態度で海宮は言ったために、報道陣や警察関係者は信じざるを得ない。
報道陣の中で事件解決の直後に現れたユニオン帝国のトマホーク・コープの所有する私兵達が集まっていたとされる話があったのだが、この件についても海宮社長と警察関係者の両者によって無関係の話だと決定され、会見は終了した。
この会見の後に、海宮秀幸は警察署に戻り、事情聴取を行う事になっていたのだが、彼は頭の中で思い浮かんだある時代小説の話を思い出していく。
その小説のタイトルは『闇法師』
22世紀にて発表された明治の初期に於いて流行されたと噂される闇法師なる怪人物とそれにまつわる都市伝説について纏められた本だった。
本の中身は一人の少年の視点から話が進められており、その少年は驚くべき事に21世紀の初頭まで生存しており、しかもその死の直前まで何一つ健康に異常が無かった状態だったと言う。
老人は明治生まれとしては珍しく、インターネットサーフィンを趣味にしており、文明の利器に明るいと言う点で、21世紀を生きるのに相応しい人間であったと言っても良いかもしれない。
実際に彼は死の直前までインターネットを使用していたらしい痕跡があった。
遺族がその男の死体を見た時に、既に中年の年に達していた彼の孫が言った。
「分かりません。どうして、祖父がこのような恐ろしい顔をして死んだのか……」
この時の彼は世界最高齢の男性の死亡に際し、駆け寄って来たマスコミにこう告げたが、後に彼は祖父の死の70年後、西暦2079年の秋、病棟の個室にて自らの孫達に向かってこう告げていた。
「死ぬ前に言っておく……祖父の死は恐らく、奴のせいだ。闇法師のせいだ……。私は祖父が死ぬ前によく祖父から闇法師の伝説を聞かされた。闇法師は子供を一ヶ所に集めて、その場所で子供達を捕食する生き物だと……」
ここで彼は咳き込むものの、彼は最後の力を振り絞って祖父の死因を喋っていく。
「良いか……祖父は……いや、私もその闇法師に呪われているんだ。闇法師は恐らく、我々とは異なる世界から現れた魔物……恐らく、祖父が長生きしたのも奴らについての証言を語り継がせるためだろう。生前に祖父はーー」
ここで、彼の容体が急変し、病室のベッドの周りに詰めていた家族達は慌ててコールを押したが、看護師達が駆け付けるよりも前に、彼は死んでいた。
まるで、何者かから逃れるようとするようにベッドの上に敷かれた真っ白なシーツを掴みながら。
翌日、遺族達は男の遺品を整理していると、彼の周りから一冊のノートが見つかった。
ノートには彼の祖父が喋ったとされる闇法師なる存在についてもしっかりと語られといたとされる。
祖父の祖父とされる男が闇法師なる怪物と出会ったのは明治6年の冬の事だったらしい。
そこからは聞くに耐えない恐ろしい噂話と体験談が詰め込まれていた。
開けてはいけないパンドラの箱を開いた気分だったと、後に彼の遺族は語ったと言う。









「お、お許しくださいッ!私はあなた様の忠実なる臣下として、真っ当に仕えておりました!それなのにーー」
顔全身を涙で拭わせている彼に頭領と称される男は彼の弁明を強い声で遮って言った。
「真っ当にだと?貴様が何をした?弥一の妖魔術の特性が分かった今となっては貴様など不要……この意味が分かるな?」
西洋風の玉座の前で彼は跪きながら、雷蔵は命乞いをしていたが、彼は容赦なく鉄槌を下すように指示を出す。
兄の指示に従った長い金髪の髪の女性が命乞いを繰り返す男の首を跳ね飛ばす。
妹は跳ね飛ばした男の首を兄の元に献上し、捧げていく。
「見事だ。この調子でオレ達の邪魔をするあの忌々しい刑事の首も跳ねる事が出来たら、良いと思わないか?シャーロット?」
「ええ、そう思います!お兄様の仰る事に間違いはございませんわ!ただ、地魔の忍びが絶滅となってしまった今では天魔に頼るしか無い状態では……」
玉座の側による妹の美しい髪をシリウスは優しく解かしてやり、彼女の髪を嗅ぐ。
その間、シャーロットは顔を真っ赤にしていた。彼女は照れているのではなく、最愛の兄にこのような行為をしてもらえる事実のために、このような表情を浮かべていたのだ。
シャーロットの髪を撫で終えると、シリウスは険しい表情を取り戻し、弥一を呼び出す。
目の前で跪く弥一に向かって彼はこう告げた。
「天魔の誰でも良い。向かわせて、目障りな赤い肌の青年とその主人のガキを始末させろ。良いな?」
シリウスの言葉に弥一は平伏し、彼の指示を頭の中で反復させながら、城の何処かへと戻っていく。
シリウスはそれから、妹の唇を奪う。
本格的な愛する兄妹同士のスキンシップに入ろうとした瞬間に、二人がそれまで暮らしていた西洋風の城は消失し、二人は元いたコーンウォール氏の屋敷へと戻されていた。
屋敷では大柄なコーンウォール氏が新たに出来た二人の子供の扉を開け、夕食に誘う。
「どうしました?お父上……。もしかして、また通訳の任を私と妹に?」
彼が微笑を浮かべて尋ねると、コーンウォール氏は苦笑しながら、
「そうなんだよ。大久保氏と会食をする事になっていてね。その通訳を君に頼みたいんだ。それに、君とシャーロットは大久保氏とは既知の仲と聞くしね。君達二人にとっても良い機会だと思うんだが、どうだね?」
「ええ、勿論です。断る理由なんてありませんわ!お父様の通訳を務めさせて頂きますわ!」
最愛の娘の微笑む顔を見ると、彼の口元もつい歪んでしまう。
二人は玄関にまで連れて行かれると、日本政府が用意したとされる二台の馬車のうち、後からやってきた馬車の中に押し込まれ、大久保邸までの道を揺られていく。
ペンドラゴン兄妹は馬車に揺られる中、今後の方針を話し合っていく。
「どうなさいますか?お兄様?」
「今後は降魔霊蔵と天魔の連中に任せるとしよう。それでも、ダメな場合は……」
シリウスは武器保存ウェポン・セーブから取り出したとされる自動拳銃を見せて言った。
「オレの自身の手であの男を始末してやる」
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