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第四部Ⅱ 『入江の中の海賊』

ペンドラゴンの世界 後編

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刈谷浩輔は雷を利用し、周りに集まって来た迷彩柄の兵士達を自分自身の体から発せられる雷の力によって次々と倒していく。
浩輔の雷に兵士達は次々と地面に倒れていく。
「その調子よ!徐々に数は減ってきているわッ!」
絵里子は彼に背中を預けている事に安心しているのだろうか、明るい調子で叫ぶ。
「ありがとうございます!!後、少しだけですね。早くこいつらを片付けてーー」
浩輔の会話はそこで強制的に終了させられてしまう。
何故ならば、彼の目の前に迷彩柄の軍服を羽織り、白のTシャツと軍人用の服を着た黒人の男が立っていたのだから。
黒人の男は丁寧に頭を下げて、自己紹介を始めていく。
「お初にお目にかかる。私の名前はジョージ・クレイ。ユニオン帝国軍の元大尉であり、現在はトマホーク・コープにおいて教育係を務めている男だ」
「トマホーク・コープ?何故、あの会社が?」
「ギルフォード社長はロサンゼルス伯とは盟友でね。この落とし前を付けるための戦争においては乗り気で、私を隊長として遣わしたんだ」
ジョージは真っ直ぐなブルーの瞳。短く整った髪に長くてスラっとした高い鼻。軍人と言う肩書に相応しい立派な唇。
彼がもし、帝国内における有色人種で無ければ、彼は一流の映画スターにでもなれただろうと浩輔は考えた。
ユニオン帝国内における人種階級には辟易するものがあった。全ては初代皇帝による意志であったとも言う。
ロックフォード家による支配はこの世の弊害を生み出したと言っても良いだろう。
浩輔は目の前の男の事を推測していると、突如、男が地面の中に消えた事に気が付く。
何処に消えたのかと浩輔が辺りを見渡していると、彼の足首を強く掴む力によって彼が砂の中に潜っている事に気が付く。
彼はもう一度砂の中から出てきた。いや、正確には砂と同化し砂の怪人となって登場したと言った方が良いだろう。
「か、怪獣映画!?まさか、こんな魔法を使える人がいたなんて!?」
浩輔がもつれた舌で目の前の男に向けて突っ込みを入れれと、男は浩輔の突っ込みを理解したらしく、大きく口元を歪めて彼の足を引っ張って地面に転倒させた。
「しまったッ!」
「終わったなッ!」
男は砂粒で構成された腕を振り上げて、浩輔の顔面にその拳をねじ込もうと試みた。
彼はその前に地面に向かって放電を喰らわせていく。男は地面に雷が響き渡るのと同時に、男は悲鳴を上げて浩輔を掴んでいた手を緩めて、地面に落とす。
浩輔は尻餅を付いたが、もう一度地面に向かって攻撃を繰り出す。
雷が響き渡る高知城の天守閣前の広場の砂の中をジョージは悠々自適に進み、もう一度浩輔の近くの地面に姿を見せていく。
浩輔は思いっきり飛び上がり、ジョージの手に掴まれる事を拒否していた。
浩輔は真下に向かって何度も雷を放っていく。
雷の力はその場所にしか効果が無いように限定させていた。
そのために、彼女らに危害を加える様子は無いのだ。
浩輔は自分の得意な魔法を使用し、黒人の男を狙う。
この戦いはもう暫くは続きそうだ。そんな事を考えながら、浩輔は雷を放ち続けていた。






「ガキが……もう諦めろ」
「お前こそ、もうその魔法に拘るのはやめろ、ボロボロじゃ無いか……」
二人の顔と体、そして着ている衣服がボロボロになっている事に気付く。
この最終戦闘において、彼らは幾度殴り合ったのだろうか。
そんな事を考えていると、孝太郎は懐の中が妙に軽い事に気付く。
彼が慌てて両手を使用して全身を弄っていると、目の前の男は右手の掌に割れたショーウィンドウのような大きな金色の欠片を握っている事に気が付く。
孝太郎は大きな声を張り上げて、目の前の物が何であるのかを悟る。
シリウスは先程の戦いの何処かで聖杯の欠片を抜き去っていたのだ。
孝太郎はいつにも増して足を大きく踏んで、彼の胸元に向かって行くが、シリウスはその孝太郎を大きな拳で殴り付けた。
咄嗟の攻撃で交わしきれなかったのだろう。顎に強烈な一撃を喰らった孝太郎は地面の上でのたうち回っていく。
シリウスはバラバラになっていた聖杯の一部分を集めながら、聖杯を組み立てていく。
最初に取手と底の部分。それから、各地の城にバラバラに分かれていた欠片を組み合わせていく。
シリウスが最後の一ピースを聖杯に繋げようとした時だ。
孝太郎は武器保存ウェポン・セーブから取り出したと思われる拳銃で彼の腹を撃っていた事に気が付く。
シリウスは口から血を吹き出し、その場に倒れてしまう。
と、ここでシリウスが支配していた空間も開かれ、ロサンゼルス伯の兵士や彼らと戦っていた孝太郎の仲間達の目の前には血を流して倒れているシリウスと銃口から白い煙を放出させて倒れている中村孝太郎の姿が見えた。
兄の倒れる姿を見たシャーロットは悲痛な叫び声を上げて、自身の魔法とライトセイバーを振り回し、邪魔者を斬り殺しながら、兄の元に駆け寄っていく。
シャーロットは兄を巻き起こすために、ライトセイバーが邪魔だと分かるなり、ライトセイバーを放り投げた。
シャーロットは倒れた兄を抱き起こし、死の淵を見ようとしていた兄に向かって必死に呼び掛けていく。
「お兄様!お兄様!しっかりしてくださいませ!お願いです!最愛の妹をッ!シャーロットを見捨ててお逝きにはならないでくださいませ!」
「シャーロットか?」
シリウスは腹を抑えていた血だらけの手で彼女が握っていた右手を握り締める。
「はい!わたしです!お兄様!」
「そうか……妹の腕の中で死んでいけるなんて、オレは幸せだ」
弱々しい微笑みを浮かべるシリウスを生かすために、何か方法は無いのかを考えた。
彼女はすぐ側に落ちていた後一ピースを残して放置された聖杯と聖杯の最後の一欠片を見つけた。
シャーロットは聖杯の最後の一欠片を取り上げて、作りかけられていた聖杯に嵌めようとした。
孝太郎はようやく、彼女が何をやろうとしているのかを悟り、彼女に向かって大きな声で忠告の言葉を叫ぶ。
「やめろ!その聖杯は過去の何処かへと飛んでしまう最悪の欠片なんだッ!それで何処か別の時間に行ってしまうと、本当にお前の兄は死んでしまうぞ!?」
「嘘を仰い。あなた、お兄様を殺したくて、そのような出鱈目を仰っておられるのでしょう?そのような嘘にわたくしが誤魔化されるとでも?」
シャーロットは鋭く光る両目で彼を睨み付けてから、静止しようと彼女に向かって飛び掛かろうとした孝太郎が自分達の前に来ようとする前に、最後の一欠片を嵌め終えた。
すると、彼ら三人を聖杯から発せられた白い閃光が包み込む。
三年前に竜王スメウルグの導きにより、何が起きたのかを知っている孝太郎の仲間、三人は一斉に叫び声を上げたが、時既に遅しと言う事なのだろう。
彼女らの前に現れた白い閃光が消えてから、元の位置を眺めると、そこにはシャーロットが握っていたライトセイバーだけが残されていた。
絵里子は何が起きたのかを知り、膝が崩れていく事に気が付く。
その時に警察のサイレンの音が強く鳴り響いている事を知った。パトカーから現れた警察官達は拳銃を携え、高知城の天守閣前の広場に集まっていた怪しげな男達に向かって拳銃の銃口を突き付けて、彼らに自分達の元に降るように指示を出す。
その言葉にロサンゼルス伯の兵士達は反発し、警察官達と衝突。
結果として激しい銃撃戦が繰り広げられ、彼らの殆どは拿捕、若しくは射殺された。
その後に散った他の仲間達も後に逮捕できるだろうと高知城の城下の署長は後にマスコミの取材に対して答えた。
何はともあれ、ここにユニオン帝国竜騎兵隊とユニオン帝国内で極秘に計画された『キャンドール・コーブ』計画はここで終了した時言って良いだろう。
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