魔法刑事たちの事件簿R(リターンズ)

アンジェロ岩井

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第四部Ⅱ 『入江の中の海賊』

ペンドラゴンの世界 前編

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裕子の証言の元に、高知城下町に存在する警察署の署長はシリウス・A・ペンドラゴン並びに彼の仲間達全てを捕縛する事を決意。
援軍を求めずに戦いを繰り広げる中村孝太郎刑事への援軍目的もあり、多くのパトカーに武装させた警察官を乗せて高知城の広場へと送り込む。
戦国期における武将達もこのような気分を味わっていたのだろうか。
後に高知警察署の署長はそう語った。
赤いサイレンが何度も鳴り響く中で、深夜に発生した思いも寄らぬ騒音に街の住人たちは目を覚ます。
カーテンを開けたり、サンダルを履いたまま彼らが目にしたのは尋常な数のパトカーの数であった。
けたたましいサイレンを響かせながら、近くの城の広場へと乗り込む警察官達の姿が彼らの目には奇異に移ってしまったらしい。
パトカーを眺め終わった後に、首都圏で発生した様々な多くの事件に関連する事だと推測した人々が警察署の前に押し掛けていたが、署に残った僅かな数の警察官達は暴れる住民達を何とか宥め、彼らを帰そうとした時だ。
高知城の広場にて何度も花火が空中に咲く時のような大きな音が鳴り響いている事に気が付き、彼らはもう一度僅かな数の警察官達に詰め寄っていく。
警察官達は困惑した顔を浮かべながら、住民に危ないので下がるように大きな声で指示を出す。
人々の混乱の声が響く中で、二人は互いに体を震わせながら、警察署の応接室で自分達に質問をしていた警察官の男性に震える声で全てを話していく。
二人は質問に答える中で、淳太は友人の無事を祈る。裕子は一刻も早く家族を殺した男が捕まる事を祈った。





「さてと、残った全部の数は五百って所かな?あんたはそれだけの数を相手にできるかい?」
聡子は先程まで斬り結んでいた相手に肩を預けながら問い掛ける。
長い金髪の髪の女性は小さな溜息を吐き出してから、低い声で答えた。
「分かりませんわ、ですが、わたしは命が尽きる限りまでお兄様のために戦いますから」
シャーロットのライトセイバーを持つ力が強くなっていく事に気が付く。
聡子は友人相手に効くような軽い口調を彼女に使う気にはなれないが、先程までとは違いもう少し緩やかな態度で彼女と話す事に決めた。
聡子はそれまでの気持ちを追い出す意味で、左の頬を強く叩いてから、落ち着いた口調で、
「あんたさ……本当に兄の事が好きなんだな?」
「ええ、お兄様のためならば、火の中だろうが、水の中だろうが、例え地獄の底にまでお供致しますわ!それが、妹として……いえ、その人を愛する人としての義務なのでは無いでしょうか!?」
「成る程ね。やっぱり、あんたって実の兄の事が好きなんだな?」
「ええ、あなたには分からないでしょうけれども……」
シャーロットはライトセイバーを振り、例の透明人間になる魔法を使用し、一斉射撃を始めたロサンゼルス伯の私兵部隊と斬り結ぶ。
聡子もそれに合わせて、自分の自慢の魔法敵全滅エナミー・アナミッションを使用し、敵の部隊へと突っ込む。
勿論、使い刃は峰である。彼女の中にはなるべくなら生かして捕らえると言う彼の上司にして想い人である青年の精神がしっかりと刻み込まれていた。
聡子は目の前に現れた百名余りの兵士達を相手にしながら、別の方向に視線をやる。
絵里子と明美、それに浩輔の三人は互いに身を寄せて目の前に集まっていた敵の部隊と交戦していた。
最も、戦っているのは浩輔と絵里子の二人だけで、明美は自分の魔法を使用し、身を守っているだけのようにしか思えなかったが……。
だが、彼女の魔法が戦闘向けでない事に加えて、彼女自身が戦闘に不向きな様子なのだ。
聡子は仕方が無いと思いながら、剣を振るっていく。
彼女は戦闘以外の面では欠かせない人間であるし、実際に捜査に同行し、共に犯人を追う姿も立派に勇気のある行動だと聡子は思っていた。
そんな事を考えながら、両手にビームライフルを掴んだ迷彩柄の兵士の腹に峰を打ち込む。
迷彩柄の兵士は悶絶し地面に崩れていく。
聡子は調子付きながら、目の前の相手と対峙していく。
彼女の瞳に迷いは無い。自分を奮い立たせて西日本最大の暴力団組織のボスの一人娘は多数の敵に挑んでいく。





「どうだッ!小僧!?これが、私の実力だッ!これが私の真の力だひれ伏せ!首を垂れて、私の高価な革靴を舐めて命乞いをしろ!」
シリウスは目の前の空間で横たわる孝太郎を見下ろしながら問い掛ける。
孝太郎はシリウスに顔や体を殴られ、相当なダメージを受けているに違いない。
孝太郎はそれでも目の前の敵に対峙するために起き上がっていく。
そして、もう一度ファイティングポーズを取ってシリウスと向き合う。
「貴様、この状況になってもまだ諦めないと言うのか?」
「当たり前だ。お前に時間を駆け巡る聖杯は渡さない……」
「面白いなッ!小僧!だが、我が魔法の前にはッ!我が力の前には貴様なんぞ無意味な存在に過ぎんッ!」
「ったく、さっきお前の胸元に潜ませていた携帯翻訳機ポータブル・トランスレーダーはオレの拳でとっくにぶっ壊した筈だが、どうしてまだ言葉のキャッチボールが交わし合えている?」
「オレが日本語を話せるからさ、オレだけじゃあない。書く事に至っては簡単な文字しか書けないが、読む事と喋る事は可能なんだ。例え、携帯翻訳機ポータブル・トランスレーダーが無くても、オレは日本で生きていけるさ」
シリウスは流暢な日本語で喋っていた。彼の言葉の中に先程まで二人で交わされていた機械を通じての独特の音にはなっていない。
「見事な日本語だ。誰に教わった?」
「ユニオン帝国の竜騎兵隊と言うエリート部隊に所属する人間には最低、三カ国語くらいは機械無しで喋れるのは最低限の良識だ。オレは中でも覚えが良くてね。英語と日本語以外でも中国語と朝鮮語を喋れるよ」
「アジア限定か?」
「フン、オレはいずれはアジアを……いや、世界を手中に収める男だぞ!それくらいは喋れて当然だ」
互いに満足のいく瞬間まで喋り終えると、もう一度拳を交わし合う。
孝太郎の右ストレートを自分自身の右手でブロックし、返す攻撃で喰らわせた左手によるカウンターを目の前の若い男の左腕によってブロックされる。
シリウスはもう一度時間を司る空間の中で殴り合いの決闘を始める事に異議は無いらしい。
どうやら、目の前の刑事も同じ考えであるらしく、彼の目に迷いは無い。
見えないコングを合図に、二人の男は真っ白な空間の中で殴り合っていく。
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