魔法刑事たちの事件簿R(リターンズ)

アンジェロ岩井

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第四部Ⅱ 『入江の中の海賊』

入江の中の海賊ーその③

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海宮秀幸はもう一度浩輔に向かって引き金を引いていく。
だが、浩輔は彼が引き金を引くのと同時に自慢の雷を当てていき、放たれた銃弾を消し炭にしていく。
そして、彼がもう一度引き金を引くよりも前に、彼に向かってもう一度雷を放っていく。
雷を受けた海宮の銃は消炭と化してしまう。
海宮は歯で何万もの苦虫をすり潰しながら、彼への対策を考えた。
彼は目の前から迫ってくる雷の魔法を持つ少年に対し、別の対処法を考える事にした。
自分の魔法はかつては小さくて無害な菌を周りに頒布させるだけの能力であったが、彼はジョン・マクドナルドと出会ってから、自分の大して強くの無い魔法に強化を施されたのだ。
そう、ユニオン帝国の一大実験にして日本共和国の今年最大のヒット番組、『キャンドール・コーブ』に登場する全てのものを自由に動かせると言う能力を。
だからこそ、彼は巨大なカトラスを操る事も出来たし、キャンドール・コーブと言う番組を通じてあちこちの家庭のテレビから子供の脳を侵食するウィルスを意のままに出す事もできるのも彼にとっては脅威を排除するのにはまたとない力を得る事が出来たと言えるだろう。
海宮は考え抜いた末に、キャンドール・コーブに登場する大きな船を浩輔に向かって放っていく。
浩輔は突如目の前に現れたガレオン船と呼ばれるマスト式の大型船に目を喰らったが、直ぐ様自分の魔法でその船を消し飛ばす。
船は浩輔の雷によって何とか地面に直撃するよりも前に消炭にする事に成功していた。
だが、彼が放った代価は大きい物であった。彼は目の前の存在に集中し過ぎたらしい。そう、海宮秀幸を逃してしまっていたのだ。
浩輔は仲間達が対処に苦戦している胞子類を雷で消し飛ばし、海宮秀幸が消え去っている事を告げる。
負け犬倶楽部イレギュラーズの面々は顔を見合わせて、玄関をくぐっていく。
若槻葉子も少年少女の後に続いていく。
海宮秀幸を追いかける中で、阿久津孝弘は何やら気付いたのだろう。
彼女に向かって興奮したらしく、大きな声で彼女に向かってある事を提言する。
「あんた、警察とのコネは使えるのか?」
「ええ、使えます。それがどうかしましたか?」
「なら、早く警察に海宮秀幸を逃さないように都心に包囲網を張るように言ってくれ!頼む!あいつを逃したら、終わりだぞ!」
若槻葉子は携帯端末を操作して、警察庁やら警視庁やらの重要人物に電話をかけていく。
どうやら、そう簡単には電話は繋がらないらしい。
若槻葉子が苛立ちを覚えている所で、ようやく刈谷浩輔が海宮の元へと辿り着いたらしい。
浩輔は目の前に現れた海宮に対し、強烈な雷撃を飛ばす。
海宮秀幸は雷撃を自分自身の目の前に嫌悪感を唆られるような醜悪なデザインの胞子類を飛ばして、自分の身代わりとして雷撃を打たせていく。
浩輔は今度は雷を二度、三度と繰り出していくが、その度に海宮がそれに対応して雷撃を防いでいくだけだ。
浩輔はもう一度体から雷撃を繰り出し、海宮を痺れさせようと目論む。
それでも、海宮は一切表情を歪める事なく、浩輔に対して優位に立っていると言う事をアピールしているのだろう。
浩輔が唇を噛み締めながら、彼を睨んでいると、彼の目の前に阿久津孝弘が現れて、彼の魔法である小さな近衛兵団リトル・ナイツを繰り出し、海宮に対して小さな兵団に突撃を指示する。
海宮は小さな兵士達が自分を襲うよりも前に、胞子類を繰り出す。
孝弘の兵士達が胞子類を襲うのを見て、海宮は余裕な表情を見せて口元を歪ませる。
「フン、無駄だ。オレの魔法は無敵だ。そうだ、冥土の土産とやらに貴様らの魔法の本当の名前を教えてやろう。海賊達の入江キャンドール・コーブと言うのさ、オレが新たに与えられた魔法でね。オレのテレビ局で放送している番組と同じ名前だから、気に入っていてね」
「だから、何だと言うんだ?お前にぼく達が殺せるとでも?」
「減らず口の減らないガキだな、もう少し可愛げってものがあったら、お前を優秀な子役として推挙してやるのに」
「お断りだ。ぼくには将来やらなければならない事があるんでね」
浩輔は全身から雷を鳴らしていき、両腕の掌を突き出し、雷を海宮に向けていく。
海宮は浩輔の雷をもう一度巨大なガレオン船を出して大きなガレオン船を身代わりにして自分の身を守った。
海宮はガレオン船を壊すのに苦労したらしく、荒い息をゼィゼィと吐き出す浩輔に対し、海宮は余裕のある笑みを見せて、冷たい視線で彼を見下ろす。
「フン、どれだけ頑張ろうともお前はやっぱり単なるガキだな、いくら強力な魔法を使えたとしても、所詮は中学生……大人には敵わんと小場が決まっているんだ!」
海宮がそう言って浩輔にとどめを刺すべく、胞子類を繰り出し、弱っている浩輔に向けていく。
浩輔は胞子類を雷で消炭にしていきながら、目の前の地面を右足を突き出して、大きく音を立てて踏む。
「いいや、子供でも大人を倒せる事ができるんだッ!」
「ガキが知った風な口を聞くんじゃあねーよッ!」
海宮はもう一度大きく胞子類を飛ばす。それだけでは飽きたらなかったのだろう。大きなカトラスソードを浩輔に向けていく。
浩輔はまずは雷で胞子類を消炭にしてから、次にカトラスソードに向けて全身の毛が逆立ちする程、電気を放出させて狙いを定めていく。
浩輔の巨大な雷の前に海宮のカトラスソードは粉々に壊されてしまう。
浩輔が勝利の笑みを浮かべていると、何と彼自身が自分の目の前に現れたのだった。
浩輔は雷を出そうと大きく右手の掌を広げようとすると、彼は均整の取れた立派な頬を大きく歪めて、
「無駄なんだよォォ~!!!クソガキがァァァァァ~!!」
海宮はそれから自分自身の魔法で不気味な形の二体の人形を生み出す。
浩輔は目の前に現れた二体の人形に向かって雷を放電させようとしたが、浩輔が雷を放電するよりも前に、二体の人形は海宮が新たに作り出した巨大なガレオン船に乗り込み、船の中に乗りながら浩輔に向かって攻撃を繰り出していく。
浩輔は目の前に現れたガレオン船に向かって雷を放電したが、二体の不気味な人形の乗り込んだガレオン船は浩輔の雷を巧みに避け、そして自分自身の創造主である海宮秀幸を船の中に乗せた。
船の見張り台と思われる台の上から、中世ヨーロッパ時代の海賊の姿をした人形はけたたましい声を上げながら、浩輔に向かっていく。
浩輔はもう一度大きく右手の掌を広げて、雷を放出していく。
だが、巨大なガレオン船は浩輔の雷を交わし、浩輔に向かっていく。
このまま圧死させるつもりなのだろう。
浩輔が真上のガレオン船を睨んでいると、浩輔の元に黒色のスカートスーツを着たスレンダーな女性が彼の体を掴んでその場から転がっていく。
彼女は浩輔の頭を撫でて問い掛けた。
「大丈夫ですか?怪我は?」
「若槻さん……どうして?」
「子供を守るのは大人の義務ですから、それよりも……この後は二人で叩きませんか?わたしの魔法とあなたの魔法を組み合わせれば、あの悪魔のようなガレオン船も容易に攻略できると思います」
浩輔は首肯した。彼の瞳に迷いはない。
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