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第四部Ⅱ 『入江の中の海賊』
入江の中の海賊ーその②
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海宮の顔がたじろいでいく姿を浩輔はハッキリと眺めていた。彼は真っ直ぐに自分自身を見つめる小川宏子の視線に耐えきれなかったのだろうか。
彼は大きく足を踏み外して、体を揺らめかせていた。
だが、海宮は寸前の所で正気を取り戻したらしく、感じの良い笑顔を小川宏子に向けていた。
「な、何の話でしょう?お嬢ちゃん、大人を揶揄うのは良くないよ」
「惚けないでって言ってるでしょ!」
宏子は受付の存在するフロア全体に響き渡る程の大きな声で彼に向かって叫ぶ。
海宮の端正な顔が徐々に崩れていく姿を浩輔はハッキリと汲み取っていた。
浩輔は一か八か畳み掛けて見る事にした。
「おかしいですね?どうして、そんな風にたじろいでいるんでしょうか?やましい事が無ければ、平然としていられる筈ですが?」
「社長が動揺するのも無理はありませんよ!」
浩輔の追及に対し、思わぬ所から援護射撃が撃たれた。彼は背後を振り向く。
そこには受付のカウンターの前で両手の拳を強く握り締めている若い女性の姿があった。
大きく口を開いている事から、先程の言葉を放ったのは彼女らしい。
美しい女性はまだら色に染めた両頬を怒りのために震わせながら、
「大体さっきからあなた方は何なんですか!?社長にある事ない事尋ねて!確かに、今はキャンドール・コーブ事件で世間が大変な事になっているのは分かりますよ!けれど、我が社は無関係の事です!そもそも、あなた方は警察官でも何でも無いのに何の権限があってーー」
「やめてくださいッ!」
受付嬢の感情に溢れた擁護を海宮が自ら遮る。
海宮は彼女に向かって「甘いマスク」と言う形容詞がピッタリと似合う程の笑顔で彼女に向かって礼を述べた。
「ありがとう。キミの好意には感謝するよ。けれど、ぼくは自分だけの手で対処しなければならないんだ。悪いね」
海宮の笑顔に彼女は両頬をリンゴのように真っ赤に染めながら、顔全体から緊張の汗を流していた。
彼女は必死の顔で何度も何度も海宮に向かってお礼を述べた。
海宮は受付嬢に向かってもう一度笑顔を向けてから、改めて浩輔達の方向に向き直る。
すっかり落ち着きを取り戻したらしい彼は営業用のハンサムな笑顔を彼らに向けて、
「さてと、キミらは女性をあれ程泣かせておいて、それでもありもしない噂を根拠に我が社を追い詰めるつもりなのかな?」
海宮の言葉に浩輔達は言葉を失ってしまう。そして、彼は会社の入り口の前に止めていたリムジンの前で社長に同乗していたと思われるドルフィン・テレビの重役と思われる人間達の視線が痛い程に彼らを貫いていた。
浩輔は海宮の計画を知った。彼らは自分達を悪者にし、受付嬢を悪者に絡まれたヒロインに仕立てていたのだ。
差し詰め、彼の役割は悪者に絡まれたヒロインを助けるテレビのヒーローと言う所だろうか。
浩輔は打つ手がないと両肩を落としている所に、若槻葉子が手に持っていた携帯端末を彼らに向ける。
それから、彼女はドルフィン・テレビ全体に伝わるような大きな声で保存されていたと思われる動画を流していく。
流れていた動画を見て、海宮は勿論、浩輔達もその動画を見て目を丸くしてしまう。
何せ、動画の内容があまりにも鮮烈過ぎたけからだ。
動画には無機質な打ちっぱなしのコンクリートの部屋の中に拘束された髭の男が縛られていた。
男の口の中が僅かに膨らんでいた事から、彼が口に大きな怪我をしている事には間違い無いだろう。
大方、自決用に渡された毒薬が含まれた奥歯を強制的に抜かれたと言う所だろう。
他にもあちこちに陰惨な傷が付いていた。かつての凄腕エージェント、ジョン・マクドナルドもこうなっては形無しだろう。
浩輔はジョンの悲惨な境遇に思わず視線を逸らしてしまう。
それでも、流れている動画はこの場に存在する人間の意思とは関係無しに流れ続けていた。
ジョンはマスクを被った男に何度も激しい拷問を加えられ、その度に大きな声で命乞いを続けていた。
だが、拷問官達は男の意思とは関係無しに陰惨な拷問を続けていた。
僅か二日であのような傷を負わせると言うのはただ事では無いだろう。
ジョンは二日に渡る不眠不休の拷問に泣き疲れ、叫び疲れたのだろう。
彼は先生に詰め寄られ、逃げられないと覚悟を決めた学生が答案のカンニングを自白するように疲れた様子で自白した。
彼はコンクリートの中に入って、部屋全体に響きそうな程の大きな声で叫ぶ。
「ドルフィン・テレビだよッ!チクバもミツトモも無理だと判断したロサンゼルス伯スティールはドルフィン・テレビの海宮社長と交渉して、そこに新しくキャンドール・コーブを放映させるように言ったんだァァァァァァァ~!!!」
若槻葉子はここで流れていた動画の再生を止めた。それから、携帯端末のホームボタンを押して、動画を簡単に再生しないようにしてから、体をのぞけ返らせて顔全体から冷や汗を流す海宮に向かって質問をする。
この動画を突きつけられてもまだシラを切り続けるつもりなのかと。
海宮は背後に自分に向かって懐疑的な視線を向ける重役達や可愛らしい瞳を潤わせて自分を見つめる受付嬢の姿に逃れられないと悟ったのだろう。
彼は両手を大きく宙に突き上げて、巨大なカトラスソードを作り上げる。
大きなカトラスソードは重役達を真っ二つに斬っていく。
真っ二つになった邪魔者を他所に、海宮は自分の会社から逃亡しようと試みたが、浩輔は彼に向かって雷を放って逃亡を阻止する。
浩輔が放った雷が海宮の乗っていた大きな車を眩い稲光によって包み込んでいく。
その様子を見て彼は逃れられないと悟ったのだろう。
彼は浩輔に向かって大きなカトラスソードを向ける。
浩輔は自分に向かって突きつけられたカトラスソードを自慢の雷で包み込んでいく。
雷によって巨大なカトラスソードは一瞬にして消炭になってしまう。
だが、海宮は絹のズボンにポケットを突っ込んだまま浩輔を見て右の頬を僅かに上げるだけ。
彼は少しも焦った様子を見せようとはしない。
海宮は次の手を警戒する浩輔に向かって今度は目の前に大きな胞子が集まったできたような思わず嫌悪感のそそられる蛸の形をした怪物が何体も現れた。
海宮は現れた怪物を浩輔だけではなく、彼の仲間やあろう事か元の部下であった受付嬢にも向けていく。
浩輔は自分の目の前に現れた胞子類を雷で吹き飛ばしてから、受付嬢へと向かう胞子類を片付けていく。
だが、その隙を狙って海宮は武器保存から六連発式のリボルバーを取り出して彼に銃口を向ける。
淳太は彼が撃たれる未来を感じ取ったのだろうか。浩輔に向かって警告の言葉を投げ付けた。
浩輔は即座に背後を振り向き、玄関口の側で海宮が自分に銃口を向けている事を知った。海宮は唇を噛み締めながら、彼に向かって引き金を引く。
浩輔は銃が発砲されるのと同時に慌てて地面を蹴って体を滑らせていく。
そのせいもあってか、海宮の銃弾は浩輔の背後にあった受付カウンターに直撃した。
海宮は舌を鳴らして、次の作戦に取り掛かっていく。
彼は大きく足を踏み外して、体を揺らめかせていた。
だが、海宮は寸前の所で正気を取り戻したらしく、感じの良い笑顔を小川宏子に向けていた。
「な、何の話でしょう?お嬢ちゃん、大人を揶揄うのは良くないよ」
「惚けないでって言ってるでしょ!」
宏子は受付の存在するフロア全体に響き渡る程の大きな声で彼に向かって叫ぶ。
海宮の端正な顔が徐々に崩れていく姿を浩輔はハッキリと汲み取っていた。
浩輔は一か八か畳み掛けて見る事にした。
「おかしいですね?どうして、そんな風にたじろいでいるんでしょうか?やましい事が無ければ、平然としていられる筈ですが?」
「社長が動揺するのも無理はありませんよ!」
浩輔の追及に対し、思わぬ所から援護射撃が撃たれた。彼は背後を振り向く。
そこには受付のカウンターの前で両手の拳を強く握り締めている若い女性の姿があった。
大きく口を開いている事から、先程の言葉を放ったのは彼女らしい。
美しい女性はまだら色に染めた両頬を怒りのために震わせながら、
「大体さっきからあなた方は何なんですか!?社長にある事ない事尋ねて!確かに、今はキャンドール・コーブ事件で世間が大変な事になっているのは分かりますよ!けれど、我が社は無関係の事です!そもそも、あなた方は警察官でも何でも無いのに何の権限があってーー」
「やめてくださいッ!」
受付嬢の感情に溢れた擁護を海宮が自ら遮る。
海宮は彼女に向かって「甘いマスク」と言う形容詞がピッタリと似合う程の笑顔で彼女に向かって礼を述べた。
「ありがとう。キミの好意には感謝するよ。けれど、ぼくは自分だけの手で対処しなければならないんだ。悪いね」
海宮の笑顔に彼女は両頬をリンゴのように真っ赤に染めながら、顔全体から緊張の汗を流していた。
彼女は必死の顔で何度も何度も海宮に向かってお礼を述べた。
海宮は受付嬢に向かってもう一度笑顔を向けてから、改めて浩輔達の方向に向き直る。
すっかり落ち着きを取り戻したらしい彼は営業用のハンサムな笑顔を彼らに向けて、
「さてと、キミらは女性をあれ程泣かせておいて、それでもありもしない噂を根拠に我が社を追い詰めるつもりなのかな?」
海宮の言葉に浩輔達は言葉を失ってしまう。そして、彼は会社の入り口の前に止めていたリムジンの前で社長に同乗していたと思われるドルフィン・テレビの重役と思われる人間達の視線が痛い程に彼らを貫いていた。
浩輔は海宮の計画を知った。彼らは自分達を悪者にし、受付嬢を悪者に絡まれたヒロインに仕立てていたのだ。
差し詰め、彼の役割は悪者に絡まれたヒロインを助けるテレビのヒーローと言う所だろうか。
浩輔は打つ手がないと両肩を落としている所に、若槻葉子が手に持っていた携帯端末を彼らに向ける。
それから、彼女はドルフィン・テレビ全体に伝わるような大きな声で保存されていたと思われる動画を流していく。
流れていた動画を見て、海宮は勿論、浩輔達もその動画を見て目を丸くしてしまう。
何せ、動画の内容があまりにも鮮烈過ぎたけからだ。
動画には無機質な打ちっぱなしのコンクリートの部屋の中に拘束された髭の男が縛られていた。
男の口の中が僅かに膨らんでいた事から、彼が口に大きな怪我をしている事には間違い無いだろう。
大方、自決用に渡された毒薬が含まれた奥歯を強制的に抜かれたと言う所だろう。
他にもあちこちに陰惨な傷が付いていた。かつての凄腕エージェント、ジョン・マクドナルドもこうなっては形無しだろう。
浩輔はジョンの悲惨な境遇に思わず視線を逸らしてしまう。
それでも、流れている動画はこの場に存在する人間の意思とは関係無しに流れ続けていた。
ジョンはマスクを被った男に何度も激しい拷問を加えられ、その度に大きな声で命乞いを続けていた。
だが、拷問官達は男の意思とは関係無しに陰惨な拷問を続けていた。
僅か二日であのような傷を負わせると言うのはただ事では無いだろう。
ジョンは二日に渡る不眠不休の拷問に泣き疲れ、叫び疲れたのだろう。
彼は先生に詰め寄られ、逃げられないと覚悟を決めた学生が答案のカンニングを自白するように疲れた様子で自白した。
彼はコンクリートの中に入って、部屋全体に響きそうな程の大きな声で叫ぶ。
「ドルフィン・テレビだよッ!チクバもミツトモも無理だと判断したロサンゼルス伯スティールはドルフィン・テレビの海宮社長と交渉して、そこに新しくキャンドール・コーブを放映させるように言ったんだァァァァァァァ~!!!」
若槻葉子はここで流れていた動画の再生を止めた。それから、携帯端末のホームボタンを押して、動画を簡単に再生しないようにしてから、体をのぞけ返らせて顔全体から冷や汗を流す海宮に向かって質問をする。
この動画を突きつけられてもまだシラを切り続けるつもりなのかと。
海宮は背後に自分に向かって懐疑的な視線を向ける重役達や可愛らしい瞳を潤わせて自分を見つめる受付嬢の姿に逃れられないと悟ったのだろう。
彼は両手を大きく宙に突き上げて、巨大なカトラスソードを作り上げる。
大きなカトラスソードは重役達を真っ二つに斬っていく。
真っ二つになった邪魔者を他所に、海宮は自分の会社から逃亡しようと試みたが、浩輔は彼に向かって雷を放って逃亡を阻止する。
浩輔が放った雷が海宮の乗っていた大きな車を眩い稲光によって包み込んでいく。
その様子を見て彼は逃れられないと悟ったのだろう。
彼は浩輔に向かって大きなカトラスソードを向ける。
浩輔は自分に向かって突きつけられたカトラスソードを自慢の雷で包み込んでいく。
雷によって巨大なカトラスソードは一瞬にして消炭になってしまう。
だが、海宮は絹のズボンにポケットを突っ込んだまま浩輔を見て右の頬を僅かに上げるだけ。
彼は少しも焦った様子を見せようとはしない。
海宮は次の手を警戒する浩輔に向かって今度は目の前に大きな胞子が集まったできたような思わず嫌悪感のそそられる蛸の形をした怪物が何体も現れた。
海宮は現れた怪物を浩輔だけではなく、彼の仲間やあろう事か元の部下であった受付嬢にも向けていく。
浩輔は自分の目の前に現れた胞子類を雷で吹き飛ばしてから、受付嬢へと向かう胞子類を片付けていく。
だが、その隙を狙って海宮は武器保存から六連発式のリボルバーを取り出して彼に銃口を向ける。
淳太は彼が撃たれる未来を感じ取ったのだろうか。浩輔に向かって警告の言葉を投げ付けた。
浩輔は即座に背後を振り向き、玄関口の側で海宮が自分に銃口を向けている事を知った。海宮は唇を噛み締めながら、彼に向かって引き金を引く。
浩輔は銃が発砲されるのと同時に慌てて地面を蹴って体を滑らせていく。
そのせいもあってか、海宮の銃弾は浩輔の背後にあった受付カウンターに直撃した。
海宮は舌を鳴らして、次の作戦に取り掛かっていく。
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