魔法刑事たちの事件簿R(リターンズ)

アンジェロ岩井

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第四部Ⅱ 『入江の中の海賊』

エアポートでの対決ーその③

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浩輔は背後の若槻葉子を連れてこの場から逃げようとしたが、葉子の方でそれを拒む。
「あなただけでてもお逃げなさい!この男は私の魔法七神の乱舞セブン・ラップスルがあれば、こんな男を倒す事など造作もありません!」
葉子は男を迎え撃とうと、日本刀を構えたが、浩輔が彼女のもとに突っ込み、彼女を抱き締めてその場から逃れた。
葉子は浩輔の乱暴な手段に顔を真っ赤にしていたが、現在はそんな事には構ってはいられない。
何故なら、今度は搭乗口に激突したジョンが二人を狙って、足を何度も地面の上ですり減らしていたから。
浩輔はもう一度強い雷を落として足元のモザイクタイルを破壊して、見えた土を雷から生じる磁力を利用して一本の槍を作り上げていく。
浩輔は右手を利用してジョンを攻撃しようと試みたが、ジョンは浩輔の槍を見ても動じる事はない。
もう一度二人に向かって猪のような突進をしようとしたが、自分自身の右肩に激痛が走り、顔を顰めて、その原因のために背後を振り向くと、そこには最初に自分を狙っていた男が両手に持っていると思われた弓矢を下げて笑っていた。
「オレの事を忘れてたよな?言っておくが、オレの魔法緑柱石の死グリーン・アローは早いうちにその刺さった矢を地面に落とさないと大変な事になるぜ、用心しなよ」
男は両手をガチャガチャと動かして自分の右肩に刺さった弓矢を乱暴に引き抜く。と、その時に弓矢と同時に空港のタイルの上に看板を塗るために用意されたペンキを職人の不手際で地面にぶち撒けたかのような大きな血が地面に飛び散っていく。
だが、男は悲鳴を上げる事なく、体全体に力を込めて肩の傷を防いでいく。
男は直ぐ様、もう一人の男の方に向き直り、突進を喰らわせた。
もし、彼自身の体を鉄の鎧に覆われたかのように体全体を固める魔法ならば、体全体もそれに合わせて重くなっている筈だから突進の速度も遅くなっていくに違いない。
だが、男の突進スピードは縮まるばかりか、以前と変わらぬスピードでもう一人の男を狙う。
男は今度は男の腹に向かって弓矢を放つが、男の鋼鉄の体の前には容易に弾かれてしまう。
男がその様子に顎を震わせていると、突然、登場口の向かい側で四人の戦いを眺めていた四人の中学生達が叫びだす。
特にその中の一人で、男らしい顔付きの少年が期待を裏切らないような男らしい逞しくて尚且つ聞いている人間に心地良ささえ与えるかもしれない。そんないい声の少年は懸命に声を振り絞りながら、自分に向かって叫んでいる。
「馬鹿野郎!早く逃げろ!その男にそんな攻撃なんぞ通じないぞ!」
男は少年の忠告に従って自分の体を転げさせてその場の苦難を乗り切る。
ジョンはもう一度体をコーティングして逃げる男を狙っていく。
ジョンの行動から逃れるべく、男はチッと舌を鳴らしてもう一度左側に向かって転がっていく。
引き続き男を狙おうとするジョンに向かって浩輔は自らの体を振り絞って雷撃を放っていく。
男は体全体に雷撃を浴びたが、魔法の影響か平然とした顔を浮かべていた。
それどころか、浩輔の雷を浴びて返ってエネルギーをチャージしたのか勢いを付けて浩輔の元に向かっていく。
浩輔は何度も何度も雷を放ったが、その度に男は動じる事なく、浩輔に向かって突進を止めようとはしない。
葉子が斬撃を放ったとしても、結果は変わらずに男は鉄のような硬い体のまま浩輔に向かって突っ込む。
浩輔はいつものようにモザイクタイルを破壊して、雷から生じる磁力を利用した槍を作り始めた。
浩輔は槍を利用して、男の隙を探す。
今度は逃げようとしない。浩輔は全身を固められた鎧にも弱点がある事を世界史の授業で言っていた事を思い出す。
同時に、彼が現在見ている架空の大陸を舞台にした王国の争いを描いたドラマの事を思い出す。
彼らはどのようにして目の前の男のような固い鎧に対処していたのかを思い出す。
走馬灯のようにドラマの名場面が流れていく。
確か、彼らは槍や剣で鎧によって固められていない場面を攻撃していたに違いない。
槍と剣は確か、脛や首の周りと言った鎧の隙を狙っていた。
そして、最後に機動力を奪うために狙っていたのは……。
浩輔は彼らが狙っていた場面を思い返し、磁力によって生じた槍をギリギリの場面まで使う事なく、目の前で待機させておく。
男は浩輔の目と鼻の先にまで迫っていた。浩輔はこの場面を狙っていたらしく、磁力によって生じた槍を彼が思いっきり地面を蹴った瞬間を狙って彼の足の裏側に躊躇いなく深い場所にまで突き刺す。
男は恐ろしい悲鳴を上げて地面に倒れていく。
「こ、こ、小僧ッ!貴様ァァァァァ~!!」
男は怒りに我を忘れたのだろう。武器保存ウェポン・セーブから銀色に塗られた自動拳銃を取り出す。
「こ、殺してやる……よくも、オレにこんな傷を負わせたな……」
「お前の考えているキャンドール・コーブ計画はここで終わりだ。もうこの国の小さな子供たちに悪影響を与えさせはしないッ!」
「ガキが偉そうに……言っておくが、オレを倒した所であの計画を阻止する事は不可能だぞ、あの計画は帝国の威信をかけた計画だ。オレが死んだとしても誰にも邪魔はさせないさ」
浩輔がその言葉聞いて震えていると、彼は足を引き摺りながらも立ち上がり、今度は強い力で浩輔の細い首を締めていく。
浩輔の呼吸が乱れていく。
「クソガキめ、ユニオン帝国最強のエージェントに向かってよくもそんな口を……」
浩輔はか細い声で男に向かって反論していく。
「黙れ、お前はこのぼくに敗北した……たかだか中学生の子供に最強の男が一手取られたんだ……ざまぁみろ……だ」
浩輔は男の締め殺す力に負けて両目を閉ざそうとしたが、その前に七つの斬撃がジョンを襲ったために、ジョンは浩輔から手を離さずにはいられなかった。
男は両手から浩輔を離して、葉子に向かって行く。
男は地面を蹴って葉子の元に向かって行く。
葉子が日本刀を構えてジョンを迎え撃とう構えた時だ。
ギラリと光る世界にも名だたる名剣が光った時に、彼女の前に男が現れて弓矢を彼に向かって放つ。
男の放った弓矢は男の脛を狙う。男は突進のスピードはそのままであったために、膝を撃ち抜かれてバランスを崩してしまう。
勢いよくバランスを崩した男の周りに最初に首を絞めた浩輔以外の少年少女達と二人の男女が囲い込む。
「さてと……これからどうする?ぼくの魔法ではあなたが逃げる未来は見えないけれど……」
「どうしたもこうしたもないよ。この男を殺すしかないじゃん」
弓矢を構えた男はヘラヘラと笑いながら言った。
「いいえ、捕らえましょう。彼からはキャンドール・コーブ計画について聞きたい事があります」
両目を細めた鋭い視線で言い放ったのは若槻葉子。
ジョンは自分自身が絶望的な状況に置かれている事に気が付く。
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