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第四部Ⅱ 『入江の中の海賊』

ヘラクレスとアトラースの協奏曲ーその②

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エリヤは孝太郎と対峙し、自分をサメのように鋭い視線で睨む孝太郎を反対に険しい視線で睨む。
だが、孝太郎は動じない様子だ。今でこそただ見ているだけであるが、下手をすれば自分に向かって鼻でも鳴らしかねない程に彼を侮蔑の表情で睨んでいた。
エリヤは孝太郎を殺すために、武器保存ウェポン・セーブから一本の山刀を取り出し、右手に持つと、その右手を鞭のように彼の目の前で伸ばしていく。
本当の鞭のようにしなったエリヤの腕は孝太郎の心臓を真っ直ぐに狙っていた。
孝太郎はエリヤの腕を逆に警察官の護身術で捻り上げようとしたが、エリヤの腕はまるで弾道のように直前で向きを変えて孝太郎の心臓に斬りかかっていく。
孝太郎は今度は右手で鞭のように伸びたエリヤの腕を触る。
すると、一本の白色の鞭は途端に縮まっていき、元のサイズに戻っていく。
エリヤは孝太郎を歯軋りしながら見つめていた。自分の魔法と彼の魔法とがあまりにも相性が悪い事に気が付く。
破壊の魔法は本当に魔法や物質を破壊するのなら、最強の盾ではないだろうか。
エリヤがそんな事を考えていると、孝太郎が反対に武器保存ウェポン・セーブから取り出したと思われる七連発式のリボルバーを取り出す。
孝太郎はリボルバーの銃口をエリヤに突き付けながら降伏を促す。
エリヤは動じる事なく、自分も武器保存ウェポン・セーブから落ちた山刀の代わりに彼は軍用の迷彩柄のオート拳銃を取り出す。
「おいおい、あんた夜とは言えビッグ・トーキョーのど真ん中で『OK牧場の決闘』をやらかすつもりか?」
「その通りだ。正義の保安官ワイアット・アープ悪逆非道な牛泥棒のクラントン一家との対決って訳だ。あんたのボスをオールドマン・クラントンだと位置付ければ、確かにOKの牧場にはなるな」
その言葉が彼の引き金を引く様子になったに違いない。彼は眉間に皺を寄せて唸り声を上げて力一杯に引き金を引く。
深夜のビッグ・トーキョーで銃声の音がこだまする。
エリヤの銃弾は孝太郎ではなく、彼の側の街路樹を撃つだけで済んだらしい。
銃声が聞こえるなり、周りの建物に灯りが灯っていく。
どうやら、寝ていた人々が起きたらしい。そして、何が起こったのか確認するためだろう。殆どの人々が窓を開けていく。
エリヤとソフィアは濡れた目で互いを見つめ合う。
彼らに通報されればお終いだと判断したに違いない。
ソフィアは両腕を空中に掲げて何かの儀式を起こそうと試みたが、その前に孝太郎が銃声を空中に発砲して彼女の動きを静止させた。
そして、孝太郎は彼女が怯んだ隙に彼女に腕に向けて銃口を構える。
エリヤは自分とソフィアの中間的な場所に居た筈の孝太郎が何をしようとしていたのかを悟る。
エリヤは孝太郎がソフィアの腕を撃ち抜こうとしているのを見破ったのだ。
エリヤは孝太郎がソフィアに向けて銃口を構える孝太郎に向かって銃口を構えたが、その時に彼の相棒と思われる青色髪のボブショートの女性が咄嗟に叫んだために、彼の計画は頓挫してしまう。
孝太郎はソフィアに向けていた銃口をもう一度エリヤに向き直す。
孝太郎は険しい視線でエリヤを睨みながら、
「もう一度チャンスを与えよう。ここで降伏しろ、警察に出頭し、キャンドール・コーブの件についてお前達が知っている事を話せ、そうすれば命だけは助けてやろう」
「テメェ、そりゃあまんまクラントン一家の台詞じゃあねーか、警察官のお前がそんな事を言っても良いのか?」
孝太郎は冷静な声でエリヤに向かって言葉を返す。
「ああ、少なくとも何人もの子供を犠牲にして、兵器の発展を図るようなに比べたら、オレの言葉遣いなんて可愛いもんだと思うがな」
孝太郎の一言に彼の堪忍袋の尾が途切れたのだろう。
エリヤは大きな二本腕を突出させ、孝太郎に向かっていく。
彼は軍用の拳銃を握った右腕を前のように鞭のように突き出し、孝太郎を狙う。
孝太郎はその腕が目の前に迫るなり、彼は腕に向かって拳銃の銃口を向ける。
エリヤは銃口を見るなり、慌てて孝太郎の急所を目掛けて発砲しようとしたが、その前に孝太郎は眉一つ、口一つ動かす事なく引き金を引く。
エリヤの右腕の一部に孝太郎のリボルバーの銃口が食い込む。
エリヤは悲鳴を上げ、慌てて腕を元の位置に戻す。その際に彼が持っていた見事な迷彩柄のピストルが地面に転がっていくのを孝太郎は確認した。
孝太郎は続いて銃口を構えて、
「お前の負けだ。早くシリウスの居場所を吐いてもらおうか」
孝太郎の言葉にエリヤは「くっ」と悔し紛れの一言を吐き出す。
エリヤは孝太郎が銃口を突き付けた瞬間に彼は死を覚悟して目を瞑るが、いつまで経っても孝太郎は引き金を引こうとしない。
エリヤは孝太郎がわざと自分に向かって銃を発砲しないのではないかと考えた。
エリヤは武器保存ウェポン・セーブから小さなナイフを取り出していく。
エリヤは小さなナイフを孝太郎に向かって投げ付けていく。
小さなナイフは孝太郎を襲おうと試みたが、彼のナイフは孝太郎が築いた大きな膜の前に弾かれていくだけだった。
孝太郎は堕ちたナイフを拾いエリヤに向かってナイフを投げ返す。
エリヤにナイフは刺さるかと思ったが、その前にソフィアが重力と引力を操ってナイフを地面に落としたために、彼は事なき事を得たと言っても良いだろう。
エリヤは落としてしまった拳銃の代用品として一般に売られているコルト式の六連発式のリボルバーを取り出す。
エリヤが左手で銃口を構え際に、孝太郎は目を凝らす。
彼は両利きなのだろうか。それとも、軍隊で両方の手を使えるように訓練を受けたのだろうか。
いずれにしろ、孝太郎にとっては悪いニュースと言えただろう。
孝太郎はエリヤが引き金を引くよりも前に左手も狙い撃つ事に決めた。
孝太郎がリボルバーの引き金を引こうとした時だ。彼を大きな力が襲う。
ソフィアの重力だ。孝太郎はリボルバーをその場に落とし、右手を自分の体に当ててソフィアから放たれた重力を外す。
孝太郎が溜息を吐こうとした時だ。彼の前でもう一度銃声が鳴り響く。
彼の目の前に銃弾が飛んだのを孝太郎は確認した。
孝太郎は鋼鉄の将軍ジェネラル・オブ・スティールを利用し、エリヤの銃弾を防ぐが、エリヤはそれすらも想定していたかのように、体を鎧のような固い体で孝太郎に向かってきていた。
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