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第四部Ⅱ 『入江の中の海賊』
残酷な天使の待ち伏せーその②
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アンソニーは翼を大きく広げて、空中へと登っていく。
孝太郎は上空のアンソニー向けて新たに異空間の武器庫から取り出した銃口を構えて、アンソニーを撃っていくが、アンソニーの動体視力と体の俊敏性のために彼は楽々と孝太郎の銃弾を交わしていく。
そればかりでは無い。複雑怪奇な天使の姿をした男は上空から羽毛を取り出し、その小さな羽毛を地面の孝太郎に向けて発射していく。
それぞれが自分の魔法を使用して、アンソニーの魔法を防いだが、アンソニーは自分の攻撃が当たらなかった事に対して怒るどころか、反対に地面の下の孝太郎達が思わずに上空を見上げる程の大きな声で言った。
「ようやくキミ達の魔法が分かったよ!お陰でオレはもっともっと貴様らに対処できるようになったぜぇ~」
アンソニーは急降下し、羽から羽毛を飛ばしていく。
小さなナイフのように尖った羽毛は孝太郎達を襲っていく。
孝太郎は自分の右手を空中に構えて羽毛を消していくが、アンソニーは孝太郎が自分の羽毛に夢中になっている隙に、彼の背後に聳え立ち、彼の背中に銃を突き付ける。
背後を取られた孝太郎は咄嗟に背後に蹴りを入れる。アンソニーは咄嗟の攻撃に対処できずに手に持っていたかつての孝太郎の拳銃の引き金を引く前に後方に飛ばされてしまう。
アンソニーは廃ビルの壁にめり込む。彼の手から拳銃が転がっていくのを孝太郎は目撃した。
だが、アンソニーは致命的なダメージを負った訳ではないらしい。彼は頭を抑えながら立ち上がり、
「成る程、あそこで蹴りを入れるとは……しかもオレが銃を撃つよりも前とはな……」
「最後の警告といくか……抵抗を辞め、シリウスの居場所を教えろ!最悪の場合としてオレは射殺も考えている」
「クソッタレのフィリップ・クラウスめ、テメェの独善的な考えのためだけに無実の市民を撃ち殺そうって言うのか?」
「フィリップ・クラウスはお前の上司の方じゃあないのか、あそこまで警察官を殺す理由が無いのに殺したじゃあ無いか、何故そんな事をした?」
「オレはあの時は別行動を取っていたしな、知る訳がないだろ?」
アンソニーはヘラヘラと陰湿な笑いを浮かべながら答えた。
どうやら、彼からすれば警察官が何人死のうとも関係が無い事らしい。
孝太郎は義憤に駆られ、アンソニーの額に向けて銃を構えたが、その前にアンソニーが孝太郎の右腕を撃ち抜く。
孝太郎は痛みのために目を瞑り、唇を結びながら悲痛な叫び声を上げる。
アンソニーはその機会を利用し、再び空中に昇っていく。
絵里子は弟の怪我の治癒のために駆け寄り、右手を当てて最愛の弟の傷を治していく。
孝太郎が礼を述べるのと同時に絵里子は空中へと引っ張られてしまう。
アンソニーは絵里子を空中で拘束しながら、地面の孝太郎に向かって叫ぶ。
「あんた、オレと取り引きしないか?お前がこの場で頭を撃ち抜けば、お前の姉は返してやろう。ここで手を引けと言っても引く性質じゃあ無いのは、顔を見ればよーく分かるぜ」
アンソニーの言葉に孝太郎は言葉を失ってしまう。
孝太郎は生唾を飲み込み、手に持っていたリボルバーを自分の頭につける。
「孝ちゃん!ダメよ!あなたは死んじゃあダメなのよ!わたしはあなたが大好きなの!あの夜の日以来ずっとずっとあなたを愛してきたわ!!」
腕の中で叫ぶ絵里子の顔には涙と恐怖の色が混じり合っていた。
絵里子は懐かしい気分になったのか、優しい笑顔を浮かべながら、
「覚えてない?孝ちゃん、あの日の夜もこんな状況だったよね?あたしが捕まって、あなたに助けられたの……あたしね、あの時まであなたの味方をしてなかったよね?お父さんに怒られても、放っていた最低のお姉ちゃんだったよね?」
絵里子の言葉を孝太郎は涙目で首を横に振って否定の言葉を叫ぶ。
「違う!違う!姉貴はそんなんじゃあない!姉貴はずっとオレの味方をしてくれた!姉貴はずっとオレの愛する人だよ!これからもそうだ!絶対に変わらない!」
絵里子は先程の孝太郎とは対照的に小さく悟ったように静かに首を横に振る。
「ううん、あたしはずっとあなたを苦しめてきたと思う。お父さんに怒られるのが怖くて……あなただけに矛先が向くように仕向けたわ。ずっとその事があたしの中に残ってたわ。だからね、これはその事を償ういい機会だと思うんだ」
絵里子達観した顔で最後に口を動かしながらアンソニーの腕を自ら振り払いビルの高さにして5階はありそうな高さの場所から地面に落ちていく。
孝太郎は銃を投げ捨て、姉の元へと一心不乱に駆け寄っていく。
絵里子の体が孝太郎の腕の中に収まったのは奇跡としか言いようがないだろう。
だが、絵里子は高所から飛び降りたために意識を失っていた。
孝太郎は何度も姉の肩を持って揺さぶっていたが、彼女の意識は戻らない。
孝太郎は顔を鎮めてから、背後の明美に向かって姉を病院に連れていくように指示を出す。
あまりの様子に明美は恐怖さえ感じて、絵里子の肩を持って車に乗り込む。
車が去ろうとするのをアンソニーは銃を構えて阻止しようとしたが、その前に孝太郎が翼を撃ち抜いてアンソニーの妨害を逆に阻止した。
「お前だけは許さない。オレの手で地獄に引き摺り落としてやる。外道め」
「人を外道呼ばわりとは酷いじゃあないか!言っておくが、オレは突き落としちゃあいねぇぜ、あの女が勝手にオレの手から逃れただけなんだッ!」
「テメェだけは地獄に叩き落としてやるッ!」
孝太郎はそう言ってめちゃくちゃに銃を発射したが、その全ての弾丸は彼の体を避け、夜の闇に吸い込まれていく。
焦っている姿を見たのか、アンソニーは空中から彼のものであった銃を撃っていく。
孝太郎はアンソニーの銃を体を転がす事によって交わしていく。
彼の瞳に迷いはない。孝太郎は異空間の武器庫から空になった銃の弾丸を補給するために、スペアの弾丸を出す。
孝太郎が予備の弾丸を詰め込もうとするも、アンソニーは孝太郎の動きを見越していたらしく、翼から羽毛を飛び立たせ、孝太郎を襲わせる。
孝太郎はその翼が直撃する事は避けられたが、拳銃と弾丸が地面に散らばっていくのを確認した。
孝太郎は聡子に向かって銃を貸すように要請を出す。
孝太郎の要請を受け取り、聡子は自分の異空間の武器庫から拳銃を投げ飛ばす。
孝太郎は聡子から飛ばされた黒塗りのオート拳銃を受け取り、アンソニーに向かってもう一度構え直す。
孝太郎は決意を固めて発砲した。
孝太郎は上空のアンソニー向けて新たに異空間の武器庫から取り出した銃口を構えて、アンソニーを撃っていくが、アンソニーの動体視力と体の俊敏性のために彼は楽々と孝太郎の銃弾を交わしていく。
そればかりでは無い。複雑怪奇な天使の姿をした男は上空から羽毛を取り出し、その小さな羽毛を地面の孝太郎に向けて発射していく。
それぞれが自分の魔法を使用して、アンソニーの魔法を防いだが、アンソニーは自分の攻撃が当たらなかった事に対して怒るどころか、反対に地面の下の孝太郎達が思わずに上空を見上げる程の大きな声で言った。
「ようやくキミ達の魔法が分かったよ!お陰でオレはもっともっと貴様らに対処できるようになったぜぇ~」
アンソニーは急降下し、羽から羽毛を飛ばしていく。
小さなナイフのように尖った羽毛は孝太郎達を襲っていく。
孝太郎は自分の右手を空中に構えて羽毛を消していくが、アンソニーは孝太郎が自分の羽毛に夢中になっている隙に、彼の背後に聳え立ち、彼の背中に銃を突き付ける。
背後を取られた孝太郎は咄嗟に背後に蹴りを入れる。アンソニーは咄嗟の攻撃に対処できずに手に持っていたかつての孝太郎の拳銃の引き金を引く前に後方に飛ばされてしまう。
アンソニーは廃ビルの壁にめり込む。彼の手から拳銃が転がっていくのを孝太郎は目撃した。
だが、アンソニーは致命的なダメージを負った訳ではないらしい。彼は頭を抑えながら立ち上がり、
「成る程、あそこで蹴りを入れるとは……しかもオレが銃を撃つよりも前とはな……」
「最後の警告といくか……抵抗を辞め、シリウスの居場所を教えろ!最悪の場合としてオレは射殺も考えている」
「クソッタレのフィリップ・クラウスめ、テメェの独善的な考えのためだけに無実の市民を撃ち殺そうって言うのか?」
「フィリップ・クラウスはお前の上司の方じゃあないのか、あそこまで警察官を殺す理由が無いのに殺したじゃあ無いか、何故そんな事をした?」
「オレはあの時は別行動を取っていたしな、知る訳がないだろ?」
アンソニーはヘラヘラと陰湿な笑いを浮かべながら答えた。
どうやら、彼からすれば警察官が何人死のうとも関係が無い事らしい。
孝太郎は義憤に駆られ、アンソニーの額に向けて銃を構えたが、その前にアンソニーが孝太郎の右腕を撃ち抜く。
孝太郎は痛みのために目を瞑り、唇を結びながら悲痛な叫び声を上げる。
アンソニーはその機会を利用し、再び空中に昇っていく。
絵里子は弟の怪我の治癒のために駆け寄り、右手を当てて最愛の弟の傷を治していく。
孝太郎が礼を述べるのと同時に絵里子は空中へと引っ張られてしまう。
アンソニーは絵里子を空中で拘束しながら、地面の孝太郎に向かって叫ぶ。
「あんた、オレと取り引きしないか?お前がこの場で頭を撃ち抜けば、お前の姉は返してやろう。ここで手を引けと言っても引く性質じゃあ無いのは、顔を見ればよーく分かるぜ」
アンソニーの言葉に孝太郎は言葉を失ってしまう。
孝太郎は生唾を飲み込み、手に持っていたリボルバーを自分の頭につける。
「孝ちゃん!ダメよ!あなたは死んじゃあダメなのよ!わたしはあなたが大好きなの!あの夜の日以来ずっとずっとあなたを愛してきたわ!!」
腕の中で叫ぶ絵里子の顔には涙と恐怖の色が混じり合っていた。
絵里子は懐かしい気分になったのか、優しい笑顔を浮かべながら、
「覚えてない?孝ちゃん、あの日の夜もこんな状況だったよね?あたしが捕まって、あなたに助けられたの……あたしね、あの時まであなたの味方をしてなかったよね?お父さんに怒られても、放っていた最低のお姉ちゃんだったよね?」
絵里子の言葉を孝太郎は涙目で首を横に振って否定の言葉を叫ぶ。
「違う!違う!姉貴はそんなんじゃあない!姉貴はずっとオレの味方をしてくれた!姉貴はずっとオレの愛する人だよ!これからもそうだ!絶対に変わらない!」
絵里子は先程の孝太郎とは対照的に小さく悟ったように静かに首を横に振る。
「ううん、あたしはずっとあなたを苦しめてきたと思う。お父さんに怒られるのが怖くて……あなただけに矛先が向くように仕向けたわ。ずっとその事があたしの中に残ってたわ。だからね、これはその事を償ういい機会だと思うんだ」
絵里子達観した顔で最後に口を動かしながらアンソニーの腕を自ら振り払いビルの高さにして5階はありそうな高さの場所から地面に落ちていく。
孝太郎は銃を投げ捨て、姉の元へと一心不乱に駆け寄っていく。
絵里子の体が孝太郎の腕の中に収まったのは奇跡としか言いようがないだろう。
だが、絵里子は高所から飛び降りたために意識を失っていた。
孝太郎は何度も姉の肩を持って揺さぶっていたが、彼女の意識は戻らない。
孝太郎は顔を鎮めてから、背後の明美に向かって姉を病院に連れていくように指示を出す。
あまりの様子に明美は恐怖さえ感じて、絵里子の肩を持って車に乗り込む。
車が去ろうとするのをアンソニーは銃を構えて阻止しようとしたが、その前に孝太郎が翼を撃ち抜いてアンソニーの妨害を逆に阻止した。
「お前だけは許さない。オレの手で地獄に引き摺り落としてやる。外道め」
「人を外道呼ばわりとは酷いじゃあないか!言っておくが、オレは突き落としちゃあいねぇぜ、あの女が勝手にオレの手から逃れただけなんだッ!」
「テメェだけは地獄に叩き落としてやるッ!」
孝太郎はそう言ってめちゃくちゃに銃を発射したが、その全ての弾丸は彼の体を避け、夜の闇に吸い込まれていく。
焦っている姿を見たのか、アンソニーは空中から彼のものであった銃を撃っていく。
孝太郎はアンソニーの銃を体を転がす事によって交わしていく。
彼の瞳に迷いはない。孝太郎は異空間の武器庫から空になった銃の弾丸を補給するために、スペアの弾丸を出す。
孝太郎が予備の弾丸を詰め込もうとするも、アンソニーは孝太郎の動きを見越していたらしく、翼から羽毛を飛び立たせ、孝太郎を襲わせる。
孝太郎はその翼が直撃する事は避けられたが、拳銃と弾丸が地面に散らばっていくのを確認した。
孝太郎は聡子に向かって銃を貸すように要請を出す。
孝太郎の要請を受け取り、聡子は自分の異空間の武器庫から拳銃を投げ飛ばす。
孝太郎は聡子から飛ばされた黒塗りのオート拳銃を受け取り、アンソニーに向かってもう一度構え直す。
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